公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

マミナ

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密告⑧

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そのテーブルにはいくつかの書類が置いている。

一体何の書類なのだろうか…?

私はテーブルに置かれているいくつかの書類を周囲を見渡してこっそりと見た。

私は驚く。

まさかこの書類は二人に渡す贖宥状なのだろうか…?

この部屋には厳重に鍵の掛かった金庫と本棚がいくつもあった。

それに、二人が座ったテーブルとは違う広くて長く、質素で大きなテーブルがいくつもある。


まさか、司教やシスター等が十人以上、この部屋で贖宥状の大量発行をしていたのだろうか…?

マルクスはそんな風に考えながらもクルルギ大司教を見ていた。

クルルギ大司教の声が聞こえた。

「お気づきになりましたか、ウェルヘム様。流石です。」

あからさまに笑顔を作って褒める彼にウェルヘムは当然だろうと得意気な表情になる。

スカーレットもウェルヘムにうっとりとした表情を見せる。

そんな二人にクルルギはテーブルに置いていた書類を丁寧に渡した。

そうかこれが…贖宥状か。


「ウェルヘム様、あなたはリリアン様という妻がいるにも関わらず他の女性に不貞を働いていたという噂を他の貴族からされていると聞きました、なんとも残念なことですね。」

そうだったのか。

だからこそ公爵という高貴な立場にいるウェルヘム様がこんな治安の悪くなったこの街で平民を装った服装をして薄暗い夜に人目を気にしてこんなことを…。

妻以外の女性と不貞を働くなど、アリエント教では厳罰に科せられるのは確実だ。

だからこそ、発覚した場合に減刑をする方法の一つとして贖宥状が欲しいと高価な価格で買おうとする者が後を絶たないのだ。

それに、このスカーレットという若い女性は貴族の令嬢でありながら不貞を働いているのか…。

私はウェルヘム公爵とスカーレットに怒りを覚える。

「それは他の貴族達の負け惜しみのようなものだ。何なら他の貴族とて何人かは妻以外に何人もの側室を抱えているなんて珍しくもないし、この国の法律自体、必ずしも妻以外の配偶者の存在を認めているではないか。」

そうだとしても愛してくれる奥方様になんて失礼なことを…!!

「そうですわ、ウェルヘム様の言う通りよ。噂をしている人たちは私の事を淫乱だの、盗っ人だのとあまりにも酷い物言いでわざと私に聞こえるように大きな声で陰口を言い合ってる醜さで、本当に私達と同じ貴族とは思えませんわ。」

どう見ても噂をしている人たちよりも醜悪なのは理解していないようだ。

責任転嫁をしているの君たちには言われたくないだろう。

「しかし、今はあの妻にだけは知られる訳にはいかず、もし知られて訴えられてしまえば事態は面倒になってしまう…だからこうしてこんな場所にまで平民のふりをして誰にもバレないように用心していたというのに……。」

何を言っている、私ならともかくクルルギ大司教にはとうに君たちの動きなど筒抜けもいいところだと思うが…。

平民のふりをして誰にもバレないようにコソコソとしていたつもりだったのだろうか。

ただでさえ服装からして平民よりも目立つ色合い格好をしているじゃないか。

だからクルルギ大司教に行動を察知され、常に見張られるという失態を犯したというのに。

あなたの奥方様であるリリアン様は賢く聡明で女性でありながら領主としての仕事をこなしているというのに…まさか夫であるウェルヘムがこのような恥ずべき行為を…?

「そうですか…それはなんて心苦しい思いをあなた方はしていたのですね……ですがご心配には及びません。その為にこの贖宥状が今ここにあるのです。」

大丈夫ですよと言っているかのような表情を見せるクルルギに少し違和感を持つウェルヘムとスカーレットだが、とりあえずこの贖宥状に日付と名前を書いた。

「本当にありがとうございますウェルヘム様。これであなたはこの贖宥状という神の御意志によって不貞の罪に問われる事なくこれからの人生は幸福に包まれることでしょう。そして、あなた方に対してあらぬ噂を立てる他の貴族の方々には必ず不幸が起きるのは確実ですよ。」

クルルギ大司教は口が上手い。

そのせいでどれだけの貴族が騙された挙句、弱みを握られて彼の悪事に加担されらるのが関の山だ。

だがその事実が明るみになっていないせいで彼は、大司教の地位につき、教皇や王族との信頼が厚く、貴族の中には彼の信者が多くいるのだ。

しかも、この教会は他の教会よりも莫大な収益を上げているのは周知の事実。

それがとても表に出すことの出来ない不正や悪事によっての利益を含めたものだったとしても、莫大な富は人々の目を眩ませるのはここ数年で何度も見てきているのだから、目の前にいる二人も例外ではないのだろうと私は苦しい表情を見せた。


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