19 / 33
贖宥状とシモニーの取引
しおりを挟む
クルルギ大司祭は半ば脅しともとれる態度をとるウェルヘムにただ余裕ともとれる笑みを浮かべてくる。
「なんだ貴様ら、この私に対してなんて無礼な…許さんぞ!!今すぐにでも……」
怒りと屈辱を感じてしまうウェルヘム。
『なんて単純で引っ掛かりやすい奴よ…しめしめ…コイツはアンガ、他のご家族やリリアン様よりもずっといいように扱いやすいのかもしれん、念入りに私の部下共を使ってコイツの怪しげな動向を探っといて本当に良かったわい。』
隣にいる令嬢もリリアン様とは違って少しでもうまそうな話を持って来れば、疑う事もなく喜んで引き受けてくれそうだ。
しかも、今までの彼女の行いを見れば、贖宥状の件は黙認してくれるのは確実。
後は、この公爵様を上手く懐柔すれば、より大きな利益と権力を握ることが出来るだろう。
そう考えたクルルギはウェルヘムとスカーレットを自身の職場でもあるアリエント教会へと案内することを決めた。
馬車に乗った三人は治安の悪くなったスイング街の比較的に安全で人通りの少ない場所にあるアリエント教会に着いた。
クルルギ大司教は教会内部の案内を一通り進める。
礼堂や祭壇等、至る所に豪華な彫刻や絵画が施され、聖人の像が配置されていた。
「すまないがクルルギ大司教、まさかこんなつまらない観光案内だけで済ませるつもりでは無いよな。」
「そうですわ。私とウェルヘム様はあなた方から持ち掛けてきた話に同意しただけでこんな退屈な教会の観光などしたくはありませんもの。出来るだけ早めに済ませたいですわ、私達の関係をしつこく嗅ぎ回るという、あまりにも聖職者らしからぬ卑しい行為をした上に、いざバレたら贖宥状の取引についての話し合いを進める気は本当にありますの??」
わざとつまらなさそうな表情をあからさまにしているが、何処となく目が血走っているのが分かる。
内心ではかなり急かしているのだろうとクルルギは見ていた。
「そんなことはありませんよ。そう焦らずにこのまま真っ直ぐ進めたら目的地へと向かう秘密の扉がありますので。」
「秘密の扉??どういう事だ。」
「そんなものどこにあるといいますの?私達が今いるのはあなたの部屋ですけど出入り口の扉以外にどこにあるというの??」
疑問に感じるとウェルヘムとスカーレットはクルルギに問い詰めると彼はこの広く大きな本棚の後ろにあります、とにこやかに答えた。
その後で部下と思われる数人の司教を呼び出して本棚を動かすよう指示を出す。
数人の司教はついさっき会った者たちよりも屈強な身体つきをしている為か、広くて大きな本棚はすぐに左右に動き、そこには厳重にまでに鍵のかかった扉が姿を現した。
クルルギはすぐに金箔のかかったいくつかの鍵を服の中から取り出してゆっくりと扉の鍵を開ける。
ガチャガチャと大きな音を立てて全部の扉の鍵を開けて開いた先には僅かな蝋燭が灯っている薄暗い通路が見えた。
「こんな所に道があったとは…私自身全く知らなかった…これは一体どういうことなんだ。」
「そうですわ、しかもこんな薄暗くて気味の悪い通路……まさかそのまま歩かなければなりませんの……?」
眉を潜める二人にクルルギは答える。
「はい、そうですよ。仕方ありませんがなんといっても私達にとってはあなた方以外の周囲には決して見られてはいけない場所ですし、なんといっても今までにない利益を生み出している大事な贖宥状を発行しておりますので……。」
そう告げるクルルギはとても聖職者とは思えない程に歪んだ笑みをしていた。
「目的地に着いたら、折り行って話し合いをしましょう。ウェルヘム様とスカーレット様…まあ主に取引みたいなものですけどね…ですが、もしこの場でお断りをしたり、逃げ出すような愚かな行為をすればどのような目に遭うか、公爵様には分かっておられると思いますので…さあ目的地まで真っ直ぐ進みましょうか。」
屈強な司教達が囲っている為、ウェルヘムとスカーレットは顔をひきつらせながらも必死で笑顔を振りまいて返事をする。
その様子にクルルギは滑稽だと思いながらも、笑顔を見せたまま、薄暗い通路を彼ら二人と共に歩き始めた。
「なんだ貴様ら、この私に対してなんて無礼な…許さんぞ!!今すぐにでも……」
怒りと屈辱を感じてしまうウェルヘム。
『なんて単純で引っ掛かりやすい奴よ…しめしめ…コイツはアンガ、他のご家族やリリアン様よりもずっといいように扱いやすいのかもしれん、念入りに私の部下共を使ってコイツの怪しげな動向を探っといて本当に良かったわい。』
隣にいる令嬢もリリアン様とは違って少しでもうまそうな話を持って来れば、疑う事もなく喜んで引き受けてくれそうだ。
しかも、今までの彼女の行いを見れば、贖宥状の件は黙認してくれるのは確実。
後は、この公爵様を上手く懐柔すれば、より大きな利益と権力を握ることが出来るだろう。
そう考えたクルルギはウェルヘムとスカーレットを自身の職場でもあるアリエント教会へと案内することを決めた。
馬車に乗った三人は治安の悪くなったスイング街の比較的に安全で人通りの少ない場所にあるアリエント教会に着いた。
クルルギ大司教は教会内部の案内を一通り進める。
礼堂や祭壇等、至る所に豪華な彫刻や絵画が施され、聖人の像が配置されていた。
「すまないがクルルギ大司教、まさかこんなつまらない観光案内だけで済ませるつもりでは無いよな。」
「そうですわ。私とウェルヘム様はあなた方から持ち掛けてきた話に同意しただけでこんな退屈な教会の観光などしたくはありませんもの。出来るだけ早めに済ませたいですわ、私達の関係をしつこく嗅ぎ回るという、あまりにも聖職者らしからぬ卑しい行為をした上に、いざバレたら贖宥状の取引についての話し合いを進める気は本当にありますの??」
わざとつまらなさそうな表情をあからさまにしているが、何処となく目が血走っているのが分かる。
内心ではかなり急かしているのだろうとクルルギは見ていた。
「そんなことはありませんよ。そう焦らずにこのまま真っ直ぐ進めたら目的地へと向かう秘密の扉がありますので。」
「秘密の扉??どういう事だ。」
「そんなものどこにあるといいますの?私達が今いるのはあなたの部屋ですけど出入り口の扉以外にどこにあるというの??」
疑問に感じるとウェルヘムとスカーレットはクルルギに問い詰めると彼はこの広く大きな本棚の後ろにあります、とにこやかに答えた。
その後で部下と思われる数人の司教を呼び出して本棚を動かすよう指示を出す。
数人の司教はついさっき会った者たちよりも屈強な身体つきをしている為か、広くて大きな本棚はすぐに左右に動き、そこには厳重にまでに鍵のかかった扉が姿を現した。
クルルギはすぐに金箔のかかったいくつかの鍵を服の中から取り出してゆっくりと扉の鍵を開ける。
ガチャガチャと大きな音を立てて全部の扉の鍵を開けて開いた先には僅かな蝋燭が灯っている薄暗い通路が見えた。
「こんな所に道があったとは…私自身全く知らなかった…これは一体どういうことなんだ。」
「そうですわ、しかもこんな薄暗くて気味の悪い通路……まさかそのまま歩かなければなりませんの……?」
眉を潜める二人にクルルギは答える。
「はい、そうですよ。仕方ありませんがなんといっても私達にとってはあなた方以外の周囲には決して見られてはいけない場所ですし、なんといっても今までにない利益を生み出している大事な贖宥状を発行しておりますので……。」
そう告げるクルルギはとても聖職者とは思えない程に歪んだ笑みをしていた。
「目的地に着いたら、折り行って話し合いをしましょう。ウェルヘム様とスカーレット様…まあ主に取引みたいなものですけどね…ですが、もしこの場でお断りをしたり、逃げ出すような愚かな行為をすればどのような目に遭うか、公爵様には分かっておられると思いますので…さあ目的地まで真っ直ぐ進みましょうか。」
屈強な司教達が囲っている為、ウェルヘムとスカーレットは顔をひきつらせながらも必死で笑顔を振りまいて返事をする。
その様子にクルルギは滑稽だと思いながらも、笑顔を見せたまま、薄暗い通路を彼ら二人と共に歩き始めた。
5
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる