公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

マミナ

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贖宥状とシモニーの取引

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クルルギ大司祭は半ば脅しともとれる態度をとるウェルヘムにただ余裕ともとれる笑みを浮かべてくる。

「なんだ貴様ら、この私に対してなんて無礼な…許さんぞ!!今すぐにでも……」

怒りと屈辱を感じてしまうウェルヘム。

『なんて単純で引っ掛かりやすい奴よ…しめしめ…コイツはアンガ、他のご家族やリリアン様よりもずっといいように扱いやすいのかもしれん、念入りに私の部下共を使ってコイツの怪しげな動向を探っといて本当に良かったわい。』

隣にいる令嬢もリリアン様とは違って少しでもうまそうな話を持って来れば、疑う事もなく喜んで引き受けてくれそうだ。

しかも、今までの彼女の行いを見れば、贖宥状の件は黙認してくれるのは確実。

後は、この公爵様を上手く懐柔すれば、より大きな利益と権力を握ることが出来るだろう。

そう考えたクルルギはウェルヘムとスカーレットを自身の職場でもあるアリエント教会へと案内することを決めた。

馬車に乗った三人は治安の悪くなったスイング街の比較的に安全で人通りの少ない場所にあるアリエント教会に着いた。

クルルギ大司教は教会内部の案内を一通り進める。

礼堂や祭壇等、至る所に豪華な彫刻や絵画が施され、聖人の像が配置されていた。

「すまないがクルルギ大司教、まさかこんなつまらない観光案内だけで済ませるつもりでは無いよな。」

「そうですわ。私とウェルヘム様はあなた方から持ち掛けてきた話に同意しただけでこんな退屈な教会の観光などしたくはありませんもの。出来るだけ早めに済ませたいですわ、私達の関係をしつこく嗅ぎ回るという、あまりにも聖職者らしからぬ卑しい行為をした上に、いざバレたら贖宥状の取引についての話し合いを進める気は本当にありますの??」

わざとつまらなさそうな表情をあからさまにしているが、何処となく目が血走っているのが分かる。

内心ではかなり急かしているのだろうとクルルギは見ていた。

「そんなことはありませんよ。そう焦らずにこのまま真っ直ぐ進めたら目的地へと向かう秘密の扉がありますので。」

「秘密の扉??どういう事だ。」

「そんなものどこにあるといいますの?私達が今いるのはあなたの部屋ですけど出入り口の扉以外にどこにあるというの??」

疑問に感じるとウェルヘムとスカーレットはクルルギに問い詰めると彼はこの広く大きな本棚の後ろにあります、とにこやかに答えた。

その後で部下と思われる数人の司教を呼び出して本棚を動かすよう指示を出す。

数人の司教はついさっき会った者たちよりも屈強な身体つきをしている為か、広くて大きな本棚はすぐに左右に動き、そこには厳重にまでに鍵のかかった扉が姿を現した。

クルルギはすぐに金箔のかかったいくつかの鍵を服の中から取り出してゆっくりと扉の鍵を開ける。

ガチャガチャと大きな音を立てて全部の扉の鍵を開けて開いた先には僅かな蝋燭が灯っている薄暗い通路が見えた。

「こんな所に道があったとは…私自身全く知らなかった…これは一体どういうことなんだ。」

「そうですわ、しかもこんな薄暗くて気味の悪い通路……まさかそのまま歩かなければなりませんの……?」

眉を潜める二人にクルルギは答える。

「はい、そうですよ。仕方ありませんがなんといっても私達にとってはあなた方以外の周囲には決して見られてはいけない場所ですし、なんといっても今までにない利益を生み出している大事な贖宥状を発行しておりますので……。」

そう告げるクルルギはとても聖職者とは思えない程に歪んだ笑みをしていた。

「目的地に着いたら、折り行って話し合いをしましょう。ウェルヘム様とスカーレット様…まあ主に取引みたいなものですけどね…ですが、もしこの場でお断りをしたり、逃げ出すような愚かな行為をすればどのような目に遭うか、公爵様には分かっておられると思いますので…さあ目的地まで真っ直ぐ進みましょうか。」

屈強な司教達が囲っている為、ウェルヘムとスカーレットは顔をひきつらせながらも必死で笑顔を振りまいて返事をする。

その様子にクルルギは滑稽だと思いながらも、笑顔を見せたまま、薄暗い通路を彼ら二人と共に歩き始めた。

    
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