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悪事と調査
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リリアンはウェルヘムが教会の不祥事を黙認している事に内心、腹を立てていると同時に呆れてもいたが、二人の前では冷静を装う。
「この書類によれば、アリエント教会のクルルギ大司祭が多額の金銭や寄付と引き換えに罪をおかした者達に贖宥状を数多く発行・配布をしていた上に自身の懐に入れているとまで同僚や司祭にまで噂されていると報告されていると書かれているわ。」
「そして、その重大な不祥事を黙認するだけではなく、資金援助までしていると噂されている貴族がウェルヘムって訳ね…呆れて言葉も出ないわ。それはそうとして、この件はカエサル教皇は御存じなのかしら。」
リリアンはラフェルとガゼルに問いかける。
リリアンは考える。
ここ最近、クルルギ大司祭が従事している教会のあるスベリア街の治安が悪くなっていると社交界等でよく会う友人や知り合いが良く、顔をしかめて話していた事を。
盗みや小さな揉め事が多くなっていたのは彼女自身も気にはなっていたから。
それをカエサル教皇が知らない筈はなく、放置して置く事なんて考えられない。
カエサル教皇は、とにかく真面目で不器用な上に正義感の強い人物なのだから。
ラフェルとガゼルは彼女の問いかけに答える。
「はい、カエサル教皇はクルルギ大司祭の不祥事に気付いている為、ヴォルウェン国王にご相談の末に、証拠が全て集まり次第、重い罰を下すという国王の決定を完全に同意しました。」
「とはいえ、今の調査結果ではどうしてもクルルギ大司祭に重い罰を下す事は難しい。だからこそどうしても、あなたに調査の協力を申し出る為にあなたに直接会いに来たのです。…それとウェルヘム様の事もありますし……。」
ウェルヘムの手間、自身の兄の妻であるリリアンを前に言葉を濁してしまう二人に彼女は、ニコッと笑顔を向けた。
「大丈夫よ、気にしないで!彼の事なんてどうなっても構わないし、そんな事よりもクルルギ大司祭が起こした不祥事の証拠を集めるだけ集めて重い罰を受けてもらう方がずっと大切でしょう。ウェルヘムにしたってこの事を黙認しているだけではなく当事者の資金援助の報告まであったのだから、いくら公爵の地位についているからって許されるべきではないわ!」
徹底的に調べ上げて、クルルギ大司祭と同様の罰を与えられるべきよ。
……まぁ、ウェルヘムがこの不祥事の黙認と当事者の資金援助の主な原因は、スカーレットとの浮気現場を見られてしまった事に対する口止めなのは確かみたいね。
以前、ジゼルとスカルとの調査では、ウェルヘムとスカーレットはスベリア街によく出かけていたという報告が上がっていたのを知っているから大方の予想はついてしまう。
けど、そのせいで街の人々が辛い思いをしているのならば許せる事ではないわ。
「そうか、それは良かったです。ならばすぐにヴィラーネット様にご報告をいたしますね。」
「すまないな…私達二人だけでは、どうしても今回の調査に少し手間取る部分が多くてな、君が協力してくれて本当に感謝している。」
ありがとうございます、と感謝の言葉を延べてくれるラフェルとガゼル。
でも、それは仕方のないことだとリリアンは心の中で思う。
ラフェルは学問においては凄く優秀だけど、あまりにも真面目で、話下手な所があるから、聞き込みや社交界で上手く立ち回る事にあまり向いていない。
ガゼルはラフェルとは正反対の気さくで剣術等、戦闘においてはとても優秀だけど、無骨な部分が多くて戦術以外の知識には疎い方だから。
だからこそ、要領の良さや社交界で上手く立ち回りで数多くの人脈をきづき上げたリリアンに協力を申し出たのだろう。
でも、彼女はこの二人には好感を持っている。
リリアン・ラフェル・ガゼルは早速、ヴォルウェンとヴィラーネットにリリアンが協力してくれてることを報告し、王宮内での書斎にてクルルギ大司祭の不祥事とウェルヘムの資金援助についての調査を本格的に開始した。
「この書類によれば、アリエント教会のクルルギ大司祭が多額の金銭や寄付と引き換えに罪をおかした者達に贖宥状を数多く発行・配布をしていた上に自身の懐に入れているとまで同僚や司祭にまで噂されていると報告されていると書かれているわ。」
「そして、その重大な不祥事を黙認するだけではなく、資金援助までしていると噂されている貴族がウェルヘムって訳ね…呆れて言葉も出ないわ。それはそうとして、この件はカエサル教皇は御存じなのかしら。」
リリアンはラフェルとガゼルに問いかける。
リリアンは考える。
ここ最近、クルルギ大司祭が従事している教会のあるスベリア街の治安が悪くなっていると社交界等でよく会う友人や知り合いが良く、顔をしかめて話していた事を。
盗みや小さな揉め事が多くなっていたのは彼女自身も気にはなっていたから。
それをカエサル教皇が知らない筈はなく、放置して置く事なんて考えられない。
カエサル教皇は、とにかく真面目で不器用な上に正義感の強い人物なのだから。
ラフェルとガゼルは彼女の問いかけに答える。
「はい、カエサル教皇はクルルギ大司祭の不祥事に気付いている為、ヴォルウェン国王にご相談の末に、証拠が全て集まり次第、重い罰を下すという国王の決定を完全に同意しました。」
「とはいえ、今の調査結果ではどうしてもクルルギ大司祭に重い罰を下す事は難しい。だからこそどうしても、あなたに調査の協力を申し出る為にあなたに直接会いに来たのです。…それとウェルヘム様の事もありますし……。」
ウェルヘムの手間、自身の兄の妻であるリリアンを前に言葉を濁してしまう二人に彼女は、ニコッと笑顔を向けた。
「大丈夫よ、気にしないで!彼の事なんてどうなっても構わないし、そんな事よりもクルルギ大司祭が起こした不祥事の証拠を集めるだけ集めて重い罰を受けてもらう方がずっと大切でしょう。ウェルヘムにしたってこの事を黙認しているだけではなく当事者の資金援助の報告まであったのだから、いくら公爵の地位についているからって許されるべきではないわ!」
徹底的に調べ上げて、クルルギ大司祭と同様の罰を与えられるべきよ。
……まぁ、ウェルヘムがこの不祥事の黙認と当事者の資金援助の主な原因は、スカーレットとの浮気現場を見られてしまった事に対する口止めなのは確かみたいね。
以前、ジゼルとスカルとの調査では、ウェルヘムとスカーレットはスベリア街によく出かけていたという報告が上がっていたのを知っているから大方の予想はついてしまう。
けど、そのせいで街の人々が辛い思いをしているのならば許せる事ではないわ。
「そうか、それは良かったです。ならばすぐにヴィラーネット様にご報告をいたしますね。」
「すまないな…私達二人だけでは、どうしても今回の調査に少し手間取る部分が多くてな、君が協力してくれて本当に感謝している。」
ありがとうございます、と感謝の言葉を延べてくれるラフェルとガゼル。
でも、それは仕方のないことだとリリアンは心の中で思う。
ラフェルは学問においては凄く優秀だけど、あまりにも真面目で、話下手な所があるから、聞き込みや社交界で上手く立ち回る事にあまり向いていない。
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だからこそ、要領の良さや社交界で上手く立ち回りで数多くの人脈をきづき上げたリリアンに協力を申し出たのだろう。
でも、彼女はこの二人には好感を持っている。
リリアン・ラフェル・ガゼルは早速、ヴォルウェンとヴィラーネットにリリアンが協力してくれてることを報告し、王宮内での書斎にてクルルギ大司祭の不祥事とウェルヘムの資金援助についての調査を本格的に開始した。
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