公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

疑念

え…どういう事なの…?

今､なんて言いましたの?

書物を落とした事に気付かずに固まってしまったリリアンにスカル・ロードは慌てて、彼女が落としてしまった書物を拾い上げる。

そして、追い打ちをかける様に彼は話を続ける。

ただ俯き苦しい表情をしたままで。

「リリアン様、私も本当はウェルヘム様が別の女性と密通している事など信じたくありませんが､ウェルヘム様のご友人の一人であるジゼル・クレイドル公爵様から最近、彼が周囲の視線を気にする様な言動をとっていることと､何人もの貴婦人や令嬢を連れて平民も数多く行き交う大都市や街にジゼル様を含めたご友人の誘いを断ってまで出掛ける事がここ最近増えたとの事です。」

ジゼル・クレイドル公爵はこうしたウェルヘムの行動を次第に疑問を感じるようになったとの事で、迷いながらも、彼の執事に相談をしに来たとの事だった。

ああ、確かに以前ジゼル様が私達が住んでいる屋敷の大広間であなたと密かに話合っているのを見たわ。

その時、ジゼル様とあなたの重い表情をしていたのが少し気がかりではあったけど。

まさか、この事だったなんて……。

俯くリリアンにスカルは口を濁しながらも話を続ける。

「私は半信半疑でしたがジゼル様はウェルヘム様の大切なご友人ですし、私の方としても最近のウェルヘム様のご様子が少しおかしいと感じていましたのでジゼル様のお頼みをお引き受けいたしました。」

そして、スカルとジゼルはウェルヘムの最近の行動を探るべく、リリアンには内密の調査を始めたのだ。

部下や衛兵をウェルヘムの尾行に使い､彼等がウェルヘムの行動に不審が無いかを記録した後､スカルのジゼルに報告するよう命じた。

そしたらなんと…ウェルヘムが見知らぬ若い女性とハグしたり、口づけを交わしているところを何度か目撃したという報告を受けたのだ。

「勿論、私とジゼルは酷く驚きましたよ。まさか､ウェルヘム様が奥方であるリリアン様に黙ってこの行為を行っていたのですから…。しかし､当のウェルヘム様は私とジゼル様がこの行為を問いただしても、全く見に覚えが無いとおっしゃるばかりで…。」

苦しい表情で俯きながら､呟くスカルにリリアンは内心、暗い感情を無理矢理に笑顔を見せたの｡

「そうなの､それなら大丈夫だと思うわ、だってウェルヘムがそう言っているのなら私は信じる事にするわ。」

「そうですか…､しかしながら私はこの調査をどうしても中止にする事は待っていただきたいのです｡」

「ええ、分かっているわ。私達夫婦の今後についてもウェルヘムが合っていると報告されている若い女性の事はどうしても気になるもの｡」

最近、彼が出掛ける事が多くなっていると感じているのは私も同じだとリリアンは思う。

しかも､普段私達夫婦が行かない所にまで彼一人で出掛けて、知らない女性と会っていただなんて…。

信じる事が出来ないとリリアン思った。

それでも彼が私に嘘をついているのではないか?

そうした疑念も頭の中に僅かながらでもあるのも本音｡

その後、スカルとリリアンは図書室を離れて､リリアンは大広間､スカルは書斎に行くことにした。

その日の夜は、ベッドで愛しのウェルヘムが顔色の悪いリリアンに優しい言葉をかけたが、彼女は憂鬱な気分になり、殆ど眠る事が出来なかった｡