婚約者を奪われたけど、イケメン騎士団長が私を選んでくれました

第6話復讐の幕開け

「な、何が起こっているんだ…？」
レオンは王宮の会議室にいた。今まで盤石だと思っていた彼の立場が、急速に崩れ去っていることに気づいたのはつい最近だった。リリアと共に築いたはずの未来が、なぜこんなにも不安定になってしまったのか、理解できない。

「レオン様、どうしましょう？貴族たちが次々と私たちを非難して…」
リリアも同様に狼狽えていた。彼女の完璧な微笑みは、今や消え去り、聖女としての威厳すら失いかけている。二人の周囲でささやかれる噂は、日を追うごとに広がっていった。アリスが仕掛けた小さな種が、やがて大きな嵐となって彼らを飲み込もうとしていた。

「どういうことだ…！？」
レオンは強く机を叩いた。冷静さを失い、声が震えているのが自分でもわかる。貴族たちが突如として彼を支持しなくなり、リリアの力も影響力を失っている。それどころか、リリアに対する聖女としての信頼が揺らぎ始めているのだ。今までリリアが享受してきた称賛はどこへ行ったのか――一転して彼女は疑惑の目で見られる存在になっていた。

「アリスのせいよ…きっとあの女が裏で何かを仕組んでいるんだわ！」
リリアは焦りを隠しきれず、震える声で叫んだ。彼女は自分が完璧であり続けることで、すべてがうまくいくと信じていた。しかし、現実はそう甘くはなかった。彼女がどれだけ美しくても、どれだけ神聖な存在であろうとも、アリスが仕掛けた復讐の糸は、彼女の周りを絡め取っていた。

「どうして、どうしてこんなことに…！私たちは勝ったはずじゃないの？」
リリアの瞳には、焦りと恐怖が浮かんでいた。聖女としての絶対的な地位が崩れ去り、王子としてのレオンの威厳も失われていく。それがどれほどの屈辱であるか、二人には理解し始めていた。

「くそっ、アリスめ！まさかこんな形で復讐をしてくるなんて…」
レオンも同様に苦悶の表情を浮かべた。彼は今までの自信を失い、すがるようにリリアに視線を送った。しかし、リリアもまた混乱している。二人が互いに頼り合おうとするが、その絆すらも崩壊しつつあった。

その時、部屋の扉が開き、エドガーが静かに入ってきた。彼の表情には冷たい微笑が浮かんでいる。彼は、アリスの計画が順調に進んでいることを知っていた。

「レオン、リリア。どうやら君たちは、自分たちが勝ったと勘違いしていたようだな」

エドガーの冷徹な言葉に、レオンは歯ぎしりした。

「何のつもりだ、エドガー！お前もアリスと一緒に、俺たちを貶めるつもりか！」

エドガーは冷静に首を振り、彼らに一歩近づいた。そして、静かに語りかける。

「これはアリスの復讐だ。君たちが彼女にしたことの報いだよ。聖女としての名声や、王子としての威厳。それらは全て、一度崩れ始めると止まらない」

その言葉に、リリアは震えた。彼女は涙を堪えながら、エドガーに訴えるような目で見上げた。

「そんな…お願い、何とかして…私たちを助けて…」

エドガーは冷たく微笑んだまま、静かに答えた。

「遅いんだよ、リリア。君たちがアリスを裏切った瞬間から、すべては決まっていたんだ」

レオンとリリアは、エドガーの言葉に絶望の表情を浮かべるしかなかった。