悪役令嬢の無双転生〜二度目の人生は私が主人公！

後編《逆転の舞踏会 》

舞踏会が進む中、私は舞台を見渡しながら、計画通りの展開に胸を高鳴らせていた。アレクは私が再び彼に屈服するとでも思っているのだろうが、今度はそうはいかない。今夜こそ、彼を完全に打ち負かしてやるのだから。

「アリシア、そろそろ動く時間だ。準備はいいか？」

レオナルドが静かに近づき、耳打ちしてきた。彼の表情はいつも通り冷静だが、その目には確かな意志が宿っていた。

「もちろんよ、レオナルド様。あとは私たちの計画を実行するだけね」

私は軽く微笑み、会場の中心へと足を進める。そして、ついにその時が訪れた。アレクが私に向かって歩み寄り、満場の注目を集めながら声を上げた。

「アリシア、今日は特別な夜だ。どうだい、もう一度私と踊らないか？」

彼の言葉には明らかに裏がある。以前の私なら、この誘いを受けていたかもしれないが、今の私は違う。アレクの陰謀に気づいた今、彼の罠にかかるつもりはない。

「いいえ、アレク様。私はもうあなたと踊るつもりはありません。むしろ、今夜こそあなたに別れを告げに来たのです」

その言葉に、周囲はざわめき始めた。アレクの顔には動揺が走り、彼は目を細めた。

「何を言っている？ まだそんなことを――」

「アレク、君は自分が何をしてきたのか理解しているのか？」

不意にレオナルドの声が響いた。彼が前に出て、冷ややかな視線をアレクに向けた。

「君は自分の利益のために多くの人を利用してきた。そして、私もその標的の一人だった。だが、もう君の好きにはさせない」

レオナルドの言葉に、アレクの顔色が変わる。彼は何とか冷静を保とうとするが、周囲の視線が彼に向けられた瞬間、動揺は隠せなかった。

「……まさか、君がアリシアと手を組んでいるとは」

「そうよ、アレク。あなたの手のひらで踊らされるのはもううんざり。今度は私が、あなたをこの場で追い詰める番よ」

私は静かに手を掲げ、会場の注目を集めた。そして、持っていた手紙を取り出し、全員の前で読み上げ始めた。

「これは、アレク王太子が私に対して仕掛けていた数々の陰謀を示す証拠です。彼は私を無実の罪で貶め、自分の立場を守るために捏造を重ねていました」

周囲は再びざわつき始め、貴族たちの視線がアレクに突き刺さる。彼の顔には、もう冷静さは見られない。

「な……何を言っている？ 証拠なんてないだろう！」

「証拠なら、ここに全て揃っているわ。あなたが私に送った手紙、密かに交わしていた取引、そして私を嵌めるために動いていた者たちの証言――これがあなたの全てです」

私の言葉に会場は一瞬静まり返り、その後、ざわめきが広がった。貴族たちが次々にアレクを非難する声を上げ始める。

「そんな、馬鹿な……」

アレクは完全に追い詰められ、言葉を失った。私は彼に向かって最後の一撃を与えるべく、さらに続けた。

「アレク様、今こそあなたに別れを告げます。私はもう、あなたの傀儡にはならない。そして、あなたも私を操ることはできないわ」

そう言い切った私は、アレクに背を向け、堂々と会場を後にする。周囲の視線が私に集まり、誰もが私の勝利を確信していた。


◆◆◇◇◆◆

外に出た私は、ほっと一息ついた。計画は完璧に成功し、私はついにアレクから自由になった。

「アリシア、君の勝ちだな」

レオナルドが静かに微笑みながら近づいてきた。彼の目には確かな信頼が宿っていた。

「ええ、これで私はやっと自由よ。レオナルド様、ありがとう。あなたのおかげで私はここまで来られたわ」

「礼を言うのは私の方だよ。君のおかげで、私もアレクの呪縛から解放された」

私たちはお互いに微笑み合い、その瞬間、未来への希望が胸に広がった。私はもう誰にも操られることなく、自分の道を歩むことができる。

「これからは、私たちの力で新しい世界を築きましょう」

そう言った私に、レオナルドは静かに頷いた。

「共に新しい未来を――アリシア」


◆◆◇◇◆◆

こうして私は、かつての悪役令嬢から真の主人公へと変わり、二度目の人生を歩み始めた。今度こそ、私は誰にも屈することなく、自由を手に入れたのだ。

（完）