図書館のあの子は恋のヒントをくれる

マミナ

文字の大きさ
上 下
7 / 7

第7話(最終話)

しおりを挟む
放課後の図書館。あの日から、俺たちの関係は少しずつ変わっていった。気まずさは全くなく、むしろ、より自然に隣にいることができるようになった。そして、今日はそんな俺たちの「初めてのデート」だ。

「佐々木君、待たせちゃった?」
図書館の扉を開けて入ってきた真央は、いつもと違う。髪型がほんの少しだけ整えられていて、服装も制服じゃない。まるで少し特別な日を意識しているかのようだ。

「いや、全然…真央、今日はなんか、いつもより綺麗だな」
言葉が自然に出た。これが俺の正直な感想だ。

「えっ、そう? ちょっと気合い入れたからかな…」
真央は頬を赤く染めて、恥ずかしそうにうつむいた。

「そ、そうなんだ。気合いって、俺のために?」
不意に、心臓が跳ね上がる。この状況に慣れてない俺は、どう反応していいか分からず、戸惑ってしまう。

「ふふ、そうかもね。今日は佐々木君と一緒だから、少しだけオシャレしてみたの」
真央が俺を見上げて、柔らかく微笑む。その笑顔が眩しくて、俺は照れくさくて目をそらしてしまう。

「そっか…ありがとう。俺、めっちゃ嬉しいよ」
何とか言葉にしようとしたけど、結局は単純な返事しかできなかった。でも、その言葉に真央がほんのり微笑む。

「佐々木君、今日も一緒に本読もうか?」
真央が言うと、俺たちはいつもの席に座る。でも今日は、何かが違う。二人の間に、今までよりも柔らかい空気が流れている。

「うん、読もう。でも、その前に…」
俺は真央の手をそっと握った。初めて触れる彼女の手は、驚くほど温かく、少し緊張しているのが伝わってくる。

「佐々木君…」
真央が少し驚いた顔をして俺を見つめる。その瞳に映るのは、優しさと微かな戸惑い。だけど、その後すぐに、彼女の手は握り返してくれた。

「ごめん、ちょっとドキドキしてる」
俺は正直に言った。これまで何度も図書館で一緒に過ごしてきたのに、手を握るだけでこんなにも緊張するなんて、自分でも驚く。

「ふふ、私もだよ。佐々木君の手、暖かいね」
真央が微笑みながら言う。その言葉に、俺はほっとした気持ちと、さらに高まる感情が混ざり合う。

「真央、これからもこうやって、一緒にいられるといいな」
俺の言葉に、真央は少し驚いたような顔をした。でもすぐに、彼女は頬を赤らめながら小さく頷いた。

「私も…そう思う。これからも、ずっと一緒にいたいよ、佐々木君」

その言葉を聞いた瞬間、俺の心は一気に暖かくなった。こんな風に、自分の気持ちを素直に伝えられるなんて、今まで考えられなかった。

「ありがとう、真央。俺…本当に君のこと、大好きだ」
自然と出た言葉。だけど、その一言がどれだけ大切なものか、俺は改めて感じた。

「私も…佐々木君のこと、ずっと好きだったよ」
真央は少し照れた表情をしながら、静かに言った。その言葉がまるで魔法のように、俺たちの間にあった不安や緊張を全て溶かしていく。

俺たちはお互いに微笑み合い、手を離さずにそのまま静かに時を過ごした。図書館の静かな空間で、ただ隣にいることがこんなにも幸せだなんて、想像もしていなかった。

「これからも、一緒に…だよね?」
真央が小さく囁く。

「うん、これからもずっと一緒だ」

その瞬間、俺たちの関係は確かに次のステージへ進んだ。そして、その未来がどれほど素敵なものになるのか、俺たちは胸いっぱいの期待を抱きながら、新しい一歩を踏み出していく。

★★☆☆★★
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

王太子になる兄から断罪される予定の悪役姫様、弟を王太子に挿げ替えちゃえばいいじゃないとはっちゃける

下菊みこと
恋愛
悪役姫様、未来を変える。 主人公は処刑されたはずだった。しかし、気付けば幼い日まで戻ってきていた。自分を断罪した兄を王太子にさせず、自分に都合のいい弟を王太子にしてしまおうと彼女は考える。果たして彼女の運命は? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...