図書館のあの子は恋のヒントをくれる

マミナ

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第2話

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翌日、教室に入ると、いつも通りの光景が広がっていた。俺は特に目立つタイプでもなく、いつも隅っこの席でひっそりと過ごしている。だが、その日は違った。

「おい佐々木、ちょっと聞いたぜ?」

「…なんだよ、田村」

俺に声をかけてきたのは、クラスメイトで友人の田村健太。彼は明るくて、人懐っこい性格で、俺とは正反対の存在だ。普段なら適当にあしらって終わるところだが、今日はなぜか彼の視線が妙に鋭い。

「昨日、お前、三浦真央と図書館で一緒にいたんだろ?」

「……っ!?」

心臓が飛び跳ねた。まさかこんなに早く噂が広まるなんて思っていなかった。

「い、いや、別に一緒にいたってわけじゃない。たまたま隣に座ってただけだよ」

「あー、なるほどねぇ? でもさ、俺は見たんだぜ。お前ら、けっこう仲良さそうに話してたよな?」

「えっ…見てたのかよ!? お前、いつの間に…!」

「俺も図書館にちょっと用があってさ。それよりも、あの三浦とだぞ? クラスの男子なら誰でも狙いたいような子だ。お前、何やってんだよ!」
田村はニヤニヤしながら肩を叩いてくる。その一方で、周囲の数人も俺たちの会話に耳を傾け始めた。

「ちょ、やめろって。俺には何も関係ないんだよ。ただのクラスメートだし」

「でも、図書館であの子がわざわざお前の隣に座るなんて、怪しいよな? 俺たちには絶対にそんなことしないし。もしかして、ちょっといい感じなんじゃないか?」
田村がさらに言葉を重ねると、他のクラスメイトたちも興味津々の様子で近づいてきた。

「まさか、佐々木って実はモテるやつだったのか?」

「ちょっと、真央ちゃんの気持ち考えろよ! 佐々木がうらやましいなあ」

「おいおい、やめろって! そんなわけないだろ!」
顔が熱くなり、何とか言い返すが、周囲のからかいは止まらない。もうやめてくれ!という気持ちでいっぱいだった。

しかし、そのとき――。

「ねえ、佐々木君、次の授業始まるよ」
ふと、静かな声が俺の後ろから聞こえた。振り返ると、そこには三浦真央が立っていた。彼女はいつもの落ち着いた表情で、俺に目を向けていた。

「えっ…あ、そうだな」
周りのクラスメイトたちが一瞬静まり返る。その後、彼らはニヤニヤしながら俺と真央を交互に見つめた。

「うわー、やっぱりいい感じだな、お前ら!」

「応援してるぜ、佐々木!」
みんなが口々に言い、俺は顔を真っ赤にしてその場から逃げ出したかった。

「……もう、勘弁してくれよ」
心の中で叫びながらも、ほんの少しだけ真央との距離が縮まったような気がして、胸の鼓動が止まらなかった。

★★☆☆★★
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