2 / 7
第2話
しおりを挟む
翌日、教室に入ると、いつも通りの光景が広がっていた。俺は特に目立つタイプでもなく、いつも隅っこの席でひっそりと過ごしている。だが、その日は違った。
「おい佐々木、ちょっと聞いたぜ?」
「…なんだよ、田村」
俺に声をかけてきたのは、クラスメイトで友人の田村健太。彼は明るくて、人懐っこい性格で、俺とは正反対の存在だ。普段なら適当にあしらって終わるところだが、今日はなぜか彼の視線が妙に鋭い。
「昨日、お前、三浦真央と図書館で一緒にいたんだろ?」
「……っ!?」
心臓が飛び跳ねた。まさかこんなに早く噂が広まるなんて思っていなかった。
「い、いや、別に一緒にいたってわけじゃない。たまたま隣に座ってただけだよ」
「あー、なるほどねぇ? でもさ、俺は見たんだぜ。お前ら、けっこう仲良さそうに話してたよな?」
「えっ…見てたのかよ!? お前、いつの間に…!」
「俺も図書館にちょっと用があってさ。それよりも、あの三浦とだぞ? クラスの男子なら誰でも狙いたいような子だ。お前、何やってんだよ!」
田村はニヤニヤしながら肩を叩いてくる。その一方で、周囲の数人も俺たちの会話に耳を傾け始めた。
「ちょ、やめろって。俺には何も関係ないんだよ。ただのクラスメートだし」
「でも、図書館であの子がわざわざお前の隣に座るなんて、怪しいよな? 俺たちには絶対にそんなことしないし。もしかして、ちょっといい感じなんじゃないか?」
田村がさらに言葉を重ねると、他のクラスメイトたちも興味津々の様子で近づいてきた。
「まさか、佐々木って実はモテるやつだったのか?」
「ちょっと、真央ちゃんの気持ち考えろよ! 佐々木がうらやましいなあ」
「おいおい、やめろって! そんなわけないだろ!」
顔が熱くなり、何とか言い返すが、周囲のからかいは止まらない。もうやめてくれ!という気持ちでいっぱいだった。
しかし、そのとき――。
「ねえ、佐々木君、次の授業始まるよ」
ふと、静かな声が俺の後ろから聞こえた。振り返ると、そこには三浦真央が立っていた。彼女はいつもの落ち着いた表情で、俺に目を向けていた。
「えっ…あ、そうだな」
周りのクラスメイトたちが一瞬静まり返る。その後、彼らはニヤニヤしながら俺と真央を交互に見つめた。
「うわー、やっぱりいい感じだな、お前ら!」
「応援してるぜ、佐々木!」
みんなが口々に言い、俺は顔を真っ赤にしてその場から逃げ出したかった。
「……もう、勘弁してくれよ」
心の中で叫びながらも、ほんの少しだけ真央との距離が縮まったような気がして、胸の鼓動が止まらなかった。
★★☆☆★★
「おい佐々木、ちょっと聞いたぜ?」
「…なんだよ、田村」
俺に声をかけてきたのは、クラスメイトで友人の田村健太。彼は明るくて、人懐っこい性格で、俺とは正反対の存在だ。普段なら適当にあしらって終わるところだが、今日はなぜか彼の視線が妙に鋭い。
「昨日、お前、三浦真央と図書館で一緒にいたんだろ?」
「……っ!?」
心臓が飛び跳ねた。まさかこんなに早く噂が広まるなんて思っていなかった。
「い、いや、別に一緒にいたってわけじゃない。たまたま隣に座ってただけだよ」
「あー、なるほどねぇ? でもさ、俺は見たんだぜ。お前ら、けっこう仲良さそうに話してたよな?」
「えっ…見てたのかよ!? お前、いつの間に…!」
「俺も図書館にちょっと用があってさ。それよりも、あの三浦とだぞ? クラスの男子なら誰でも狙いたいような子だ。お前、何やってんだよ!」
田村はニヤニヤしながら肩を叩いてくる。その一方で、周囲の数人も俺たちの会話に耳を傾け始めた。
「ちょ、やめろって。俺には何も関係ないんだよ。ただのクラスメートだし」
「でも、図書館であの子がわざわざお前の隣に座るなんて、怪しいよな? 俺たちには絶対にそんなことしないし。もしかして、ちょっといい感じなんじゃないか?」
田村がさらに言葉を重ねると、他のクラスメイトたちも興味津々の様子で近づいてきた。
「まさか、佐々木って実はモテるやつだったのか?」
「ちょっと、真央ちゃんの気持ち考えろよ! 佐々木がうらやましいなあ」
「おいおい、やめろって! そんなわけないだろ!」
顔が熱くなり、何とか言い返すが、周囲のからかいは止まらない。もうやめてくれ!という気持ちでいっぱいだった。
しかし、そのとき――。
「ねえ、佐々木君、次の授業始まるよ」
ふと、静かな声が俺の後ろから聞こえた。振り返ると、そこには三浦真央が立っていた。彼女はいつもの落ち着いた表情で、俺に目を向けていた。
「えっ…あ、そうだな」
周りのクラスメイトたちが一瞬静まり返る。その後、彼らはニヤニヤしながら俺と真央を交互に見つめた。
「うわー、やっぱりいい感じだな、お前ら!」
「応援してるぜ、佐々木!」
みんなが口々に言い、俺は顔を真っ赤にしてその場から逃げ出したかった。
「……もう、勘弁してくれよ」
心の中で叫びながらも、ほんの少しだけ真央との距離が縮まったような気がして、胸の鼓動が止まらなかった。
★★☆☆★★
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王太子になる兄から断罪される予定の悪役姫様、弟を王太子に挿げ替えちゃえばいいじゃないとはっちゃける
下菊みこと
恋愛
悪役姫様、未来を変える。
主人公は処刑されたはずだった。しかし、気付けば幼い日まで戻ってきていた。自分を断罪した兄を王太子にさせず、自分に都合のいい弟を王太子にしてしまおうと彼女は考える。果たして彼女の運命は?
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる