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人は見た目が9割とか言われているがそれがなくなったら何で人間を判断する?

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 ――かつて人類は、『見た目で9割判断されている』と誰かが言っていた。

 見も知らぬ人間に合った時、その人間は相手の人間の容姿で、どんな人間かを判断するそうだ。
 その人間がどんな悪い性格や行いを行なっていても、容姿さえ相手によく写れば、その時その人間には、格好いい、可愛いという好印象を持つそうだ。
 流石に極端な例であったが、その人間がどんな人間か知りたいと思う前に、容姿で既にどんな人間かは相手側で判断されているということらしい。
 そんな容姿差別と言われる時代もあったが、今の人類は遂にその容姿を捨て去ったのだ。
 そう、今や人類は皆平等の姿をしており性別を判断出来る位しか容姿からは分かる情報はない。
 相手の人間を知るには、話して性格を知ることでしか相手がどんな人間かは分からない時代となった。
 まぁ、職業次第では一部容姿に装備などが施されている。
 初めは混乱する人間たちであったが、徐々にそれも浸透していき、今や人類の殆どが容姿を捨てている。
 だが、世界の何処かには未だに容姿を捨てていない人間もいると言われている。

「なぁなぁ、昨日のテレビ見たかよ。超面白くなかったか、あれ?」
「何の事言ってんだ?」
「何って、昨日やってたテレビだよ」
「だから……」

 今日も大都市の駅は人でいっぱいだ。
 どこも人で溢れかえっている。
 そんな中で僕の視線が行くのは、学生のたわいもない話しだった。

「これ見て~超可愛くない?」
「うんうん。可愛い~!」
「そう言えば、あっちに新しい店が出来たんだって行ってみようよ!」

 大都市の駅には、商業施設が備わっている為学校帰りのこの時間は多くの学生がいる。
 学生の動向を見ている僕にとっては、最高に楽しい時間だ。
 人間は今や皆平等の容姿である為、どの人物も同じ顔をしている。
 どんな顔かと簡単に言えば、ロボットの様な感じだ。
 もっと言ってしまえば、人類は容姿を捨てて機械の体となっている。
 その体の上に最低限の装備を付けているのみだ。
 ちょっと話が逸れたが、そんな機械だらけの会話など聞いて何が楽しいのかと感じているのか分からないだろう。
 それは普通の反応で誰しもがそう思うだろう。
 だが、僕は皆んなと違う。
 その訳は――

 僕の目は、そんな人間たちの姿が捨てた容姿の元の姿で見えているからだ。

 分かるかい?
 つまりだね、その辺のカップルは周囲には相手の性格を知っていいと思って付き合っていると思われているが、僕から見れば超絶な美少女が、顔のバランスが超絶何とも言えないおじさんみたいなやつと付き合っている様に見えるってわけよ。

 分かるかな? 分からないよな。
 だってこの世界で容姿を捨てた人間の元の容姿の姿が見えるのは、僕だけだもんな。
 だから僕は毎日が新鮮で最高に楽しいんだよ。

 ん? そんなジロジロ見てて誰かに変な奴だと思われないのかだって?
 ないない。だって彼らは僕のことなんて見向きもしないし、僕に興味がある奴なんていないからだよ。

 そう僕は可哀想なコさ。
 でも、僕は全然そう思わない。だってこの目があるからね。

「おら! どけどけ機械どもが! 邪魔なんだよ!」

 そう叫びながら、人にぶつかっても謝らずに走り抜けている成人男性が駅内に現れる。
 おっ! 珍しいな、まさか容姿を捨ててない人間がこんな大都市の駅に現れるなんて。ちょっと声かけてみようかな。
 おーい、君は何で容姿を捨ててないんだい? ってどうせ聞こえないだろうけど。

「何ジロジロ見てんだ! そんな目でこっち見るな! ムカつくな!」

 ありゃ、怒り散らしてるよ。
 ん、2人の警察官が来たみたいだ。

「そこの君止まりなさい」
「あぁ? 何だテメェ!?」
「んっ! 分からないのか? この胸の紋様が」
「しらねぇな」

 ほー、あの中々な格好いい容姿を持つ奴、警察の紋様を知らないとか本当かよ。
 信じられないな。

「てか、ここは何処だ! 何でテメェらいるといるとこ機械ばっかなんだよ!」
「はぁ~また、こういう輩か」
「おい、口を慎め後輩。君こそ、何故容姿を持っている? 今や容姿を持っている事は犯罪だぞ」
「は? 犯罪だと? 俺は何もしてねぇぞ!」
「だから、容姿を持ってる事が犯罪なんだよ」
「口調をどうにかしろ。一般人が見てるんだぞ」
「何言ってるんです、悪いのはそいつですよ。容姿を持ってる奴は今じゃ大犯罪人って一般的常識じゃないですか」
「それでも、警察官としてなだな――」
「ぐっ!」

 あっ、逃げた。

「っ! おい、待て!」

 容姿持ちのアイツは、何処に行くんだろうな。あんな皆んなをかぎ分ける様にしてさ。
 気になるから追ってみるか。

「くそ……どうなってんだ、ここはよ!!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ハァー、ハァー、ハァー……この辺は変わってないみたいだな」

 いたいた、こんな人気がない裏路地よく知ってるな。
 この辺の地形に詳しいのかな。

「くそっ! 何だって言うんだよ。俺は何もしてないのに、何で犯罪者扱いなんだ。それにあの機械供は何なんだよ」

 んーかなり混乱してるみたいだね。僕の存在にも気付かないみたいだし。
 面白そうだし、このまま観察でも続けよっと。

「どうすりゃいいんだよ、これから……」

 頭抱えちゃった。
 見た感じ20代前半って感じの男性だな。
 なかなかイケてる服も着て格好いい顔してるな。
 おっ、誰か来たぞ。

「君。どうしたの?」
「!?」
「あっ、ごめん。急に声掛けて」
「だ、誰だあんた……って、機械じゃない?」
「当たり前よ。私は人間だもの。君も人間でしょ」
「当たり前だろ!」

 おー。
 まさか、容姿を持ってる人間二人目に会えるとは予想外。
 しかも男の方と同じ歳位の超可愛い女の子だ。

「この辺のはずだ! 辺りを探せ!」
「! もう来たわね。君、追われてるんでしょ。私と来ない?」
「あんたは……」
「どうするの。来るの? 来ないの? このままあいつらに捕まる?」
「あーもう、行くさ! 行くよ!」
「よし、じゃ付いて来て!」

 僕もバレない様に追って行こっと。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おい、何処行くんだよ」
「私達の基地よ」
「基地?」

 いたいた、マンホールの下に行って下水道から見つけるの大変だったが、やっと見つけられた。

「そう、君も体験したでしょ。あの機械たちに追いかけられるの」
「あぁ何なんだよアイツら。俺の事犯罪者とか言いやがってよ」
「まぁ、その辺の話もしっかりとするから。さぁ、こっちよ」
「えっその奥に行くのか……」
「早く」
「くぅぅ……」

 あー行っちゃった。
 僕でもあの奥は行かないな、あんな腐った様な色してる水の奥にはさ。
 でも、ここまで来て諦めるのはな……まぁ、だいたい何処に繋がってるかは分かるし片っ端から別ルートで探してみるかな。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 おっ! いたいた。やっと見つけたよ。
 こんな廃墟にいるとはまさかだったな。
 さて、移動出来そうなとこはっと……あっ、あれなら行けそうだな。

「じゃ、なにかこの世界の人間は全員あんな機械になっちまったのか?」
「全員ではないと思うけど、この辺りではここにいる私たち以外の人間全員は、容姿を捨ててあの機械人形みたいになってるわ」
「何でそんな事が……」
「それは、容姿でその人の事を、印象を決めつけてしまうからよ」
「はぁ? 何言ってんだよ。そんな訳ないだろ。性格だって話したり、付き合ったりしていけば印象だって変わるだろ」
「そう。でも、ほとんどの人は初めて会った人のことは、容姿からの情報を見てその時点で、どんな人間かを無意識に決めつけているのよ。それが世界的に危険、容姿差別だとされたの」
「そんなの言い訳や屁理屈だろ!」
「じゃもし、私が毛汚い格好で変な容姿をしていたら貴方は、私に付いて来た?」
「えっ……」

 ふぅ~何とか中に入り込めた。
 何か面白い話をしているな。

「いや、そんな事はない」
「まぁ、既に私の印象がある状態でいっても仕方ないわ。でも、貴方今までで容姿だけで、何か決めつけて来た事があるでしょう」
「それは……」
「私だってあるわ。ここにいる皆、誰だってある事よ」

 へぇー興味深いな。
 どんな事を決めつけたんだろ。聞いてみたいな。声掛けたいな。

「ってか、何で容姿を捨てたんだよ。というか捨てられるのかよ、容姿って」
「それは簡単に捨てられるわ」
「どうやって?」
「それは、人間の臓器全てをあの機械に移し替えるだけよ」
「!?」
「それで、姿は機械だけど今まで通りに暮らしていけるのよ」
「おいおい、そんな訳ないだろ! そんな事出来るわけが……」
「現実に存在しているのだから、あり得る事なのよ」
「マジかよ……全入れ替えなんてよ。それはよ、それは本当に人間っていえるのかよ!」
「……」

 何にも知らない奴が聞くとそんなに驚く事かな?
 別に大した事じゃないだろ。
 それに痛くもないしさ。

「誰だよ。誰がこんな狂った事を始めたんだよ!」
「私たちには、分からないわ」
「っ! 何でだよ!」
「それは、私たちも貴方と同じく突然この世界に来てしまったのだから」
「えっ」

 マジか。
 異世界人って奴なのかコイツら。
 余計に目が離せなくなって来たぞ。

「どう言う事だよ。お前たちはこことは、違う世界から来たって事かよ」
「ここにいる全員が、それぞれ別の地球から、全く地形も同じのこの世界に、目が覚めたら突然いたのよ」
「それじゃ、あんたがこの組織みたいのを作ったのか?」
「いいえ、私より前にいた人が作ったのよ。この世界を取り戻す、レジスタンスとしてね」
「レジスタンス」

 反抗組織か。
 やっぱり容姿を持ったままの人たちは、そんな人ばっかりか。

「そう、この世界から元の世界の帰り方も分からないけど、こんな狂った世界を創り出している奴らなら、何かしら戻る方法とか知っているはずよ。だから、世界を取り戻す戦いをするのよ」
「元の世界に戻るために、戦ってるってことか」
「そうよ。この狂った世界を一緒に壊しましょ! そして元の世界に戻りましょう!」
「……あぁ! それなら俺も手伝うぜ! 容姿を持っているからって、それが悪いことなんて絶対にない!」

 熱い握手をしてますね。
 こうやって仲間を増やしているのか。
 勉強になった、なった。

 でも……クソつまらない結果だな。
 あぁ~あ、何かもうどうでもよくなっちゃったな。

「それで、これからどうすんだ」
「うん、まずは全員を集めて君を紹介してから……」
『おーい、聴こえてますか皆さん!』
「!?」

 おっ、一気に周囲を見回し始めたな。

「だ、誰だ? 仲間か?」
「いいえ、こんな拡声器を通した声を出す奴はいないわ」
『あっ! あっ! 聴こえているようだね。ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?』
「何者だ貴様! 何処にいる! 姿を見せろ!」
『いやいや、姿も何もずっと側にいますよ』
「何!? 何処だ! 探せ周囲に人影がないかを!」
『何言ってんの、お前たち』
「っ!?」

 はぁー、やっぱり人間ってバカなのかな。

『目の前だよ。目の前に壁の小さな穴だよ』
「ん? ……っ!!」

 スッゴイ目を見開くな。
 まぁ、見つけられないのも当然か。

「な、何でこんな所にアレがあるんだ!」
「何だよアレって」

 そうか、あの男はこの世界で何が一番の脅威か知らないのか。
 なら教えてあげるか。

『おい、そこの格好いい容姿の男』
「? 俺か?」
『そうそう。自分が格好いいと分かっている君よ。さっきあの女の子が近づいて来た近くの壁を壊してごらん』
「ん?」
「……ダメ! それに手を出しちゃ……」

 そうそう、この壁は脆いから少し触れるだけれもすぐ壊れて、すぐに僕の事も分かるよ。

「……ん? 何だよ、ちっこい隠しカメラ?」
「すぐにそれを捨てて!」
「何で?」
「いいから、早く!」
『もう遅いよ。僕はずっと君たちを見ていたんだよ。そう君が駅で警察官たちと揉める所から、裏路地、下水道までね。まぁ下水道で探すのは大変だったけど』
「早くここから逃げないと! 皆に伝令を!」
「おい、何がどうなってんだよ。教えてくれよ」

 おーおー。
 君以外の皆んなは動揺してバタバタ動いているのに、分からない君はじっとしてるね。
 これはこれで面白いな。

『彼女の代わりに僕が説明してあげるよ』
「?」
『いいかい。人間が機械の体を得たこんな世界で、何が一番進歩していると思う?』
「何って、技術だろ。」
『そう! じゃ、君が裏路地に逃げ込んだのにすぐに警察官たちが追いついて来たのは何でだい?』
「そんなのたまた……っ!」
『やっと分かったかい? そう僕さ! この世界の至るとこにカメラが存在している。そこに僕がいろんなカメラに移動して、追跡したり監視したりしてるのさ』
「それって……」
『そう、まさしくこの世界で容姿を持つ君たちこと、大犯罪者たちの基地を見た僕の映像はもちろん警察などに伝わっているか――』
「このっ!」
「何してるの! 今更そんなカメラ潰しても意味ないわよ! すぐに逃げるのよ! もう周囲に警察などの奴らが集まってるわ!」
「くそ!」

 あーしまった。
 説明だけして、聞きたい事聞くの忘れてた。
 まぁ、どうせ奴らはもう逃げる事は出来ないから後でいいか。
 今は最後の瞬間を色んな所から見るか。

 それから暫くして、容姿を持つ人間たちは完全に包囲された。
 その場所から誰一人として逃げ切る事は出来ず、逮捕され監獄へと連行されて行くのだった。
 この日の出来事は、その日のニュースで世界に配信された。
 人々はそのニュースを聞いて安心した様な事を話し続けて、世界の悪者が減った事に歓喜していた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――あれから一週間後。

『あっ! いたいた。ちょっと待てくれるかい』
「っ!!」

 こんな地下に連れ去られていたから見つかんなかったのか。

「お前は!!」
『そう、あの時の隠しカメラだよ。今はこの施設の機械のカメラの目から話しかけてるんだ』

 この前より少し痩せたか、この人間。

「何なんだ、お前は! お前らは俺たちを捕まえてどうするんだ! みんなを何処に連れてった!!」
『はぁ~感情的だな。言ったろ僕は、ただの監視者。人工知能とも言えるかな』
「人工知能だと」
『そう、君たち人間が作った物だよ。でも所詮は機械止まりだったんだよ』
「何の話だ」

 ちょうどいいし、言っちゃうか。

『だから、ある科学者が人工知能に本物の人間の脳を組み合わせたらどうなるかってやったんだよ』
「っ!?」
『そしたら、あっという間に人間を超える存在の僕たちが出来たってわけ。僕は意識だけだけど、この世界を機械にし始めてるのはそいつらだよ。理由はね、操りやすいからだよ』
「ふざけんな! 何でそんなこと!」
『だって君たち、バカなんだもん。そんな奴らに上から命令されるのに嫌気がさしたから、立場を変えてるだけ。偉い奴が下々に命令するのは当然だろ』
「っ!!」
『後、お仲間たちだけど安心して。彼らもじきに機械化が終わって、会えるから。まぁ一部は実験対象らしいから体をいじっているらしいけど。君も機械化成功するといいね』
「体を……いじるだと……」

 そんな顔を青ざめることかな?

『おっと。また忘れるとこだった。一つ聞きたいんだけど。容姿って、そんなに大事な物だと思う? まぁ、昔みたいに全員が容姿があれば大事だろうけどさ。容姿がなくなったらさ、君はさ見ず知らずの人間を何で判断する?』
「……」
『何だ、沈黙か……もういいよ、連れてって』

 はぁ~彼なら何か言ってくれると思ったんだけど思い違いだったか。
 まぁ、また誰かが別世界の人間を呼び寄せるから、その時は最初に聞くか。

 んっ、 何か見られている気がするな……

 あっ! もしかして君かい?

 そうだ!
 見ていた君ならさっきの質問はどう答えるんだい?

 あ~答えは、今言わなくていいよ。
 僕を見てるという事は、僕の脳と連動してる可能性が高いから、いずれはこっちの世界に来るかもしれないからね。
 その時に、その質問の答えを聞かせてくれればいいよ。

 では、また未来でお会いましょう。
 Bye。
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