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第489話 ハンスからの封書
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「そう。状況は理解したわ」
タツミの報告を聞き、マイナは冷静に返事をするのだった。
そのままマイナは王国軍と話した事を口にし始める。
現状王都内では、バベッチが仕掛けたゲリライベントの影響で各地にて動揺が少し出ており、そちらの対応で王国軍も動いており学院側の異変も分かっているが割ける人員は多くはないという事であった。
マイナはやって来た王国軍兵に対し、ここでの報告はハンスの元へと行くのかを確認すると王国軍兵は頷き「随時報告せよと命令を受けている」と答えた。
更にはハンスより封書を預かっているとし、マイナに手渡したのだった。
マイナはその場で封を解き、中の手紙に目を通した。
そこには何ら現状とは関係のない文章の羅列が並んでおり、何でこんな物を封書にしたのかというレベルであったがマイナはふと昔にも似た事があったと思い出す。
それは王国転覆事件時に行った連絡時に、敵に渡ったとしても本当の意図が伝わらない形式にしてやりとりをしていたのだ。
今受け取った封書はその時と似ており、ハンスがこんな意味のない事をするはずがないとマイナは思っていた為気付けたのだった。
マイナはすぐに手紙に対し微量の魔力を流すと、並んでいた文章が並び変わり本当の文章が出来上がる。
出来上がった本当の手紙には、学院にリーリアとティアが潜入している事やリリエルが突然姿を消し見つかっていない事が書かれていた。
そして学院長とし学院生の事を守って欲しいとあり、最後には何故かダンジョンは健在かという一文が書かれて終わっていた。
マイナは暫くその手紙を見つめた後、ハンスの意図に気付き手紙を閉じると燃やすのだった。
まさかの行動に王国軍兵が驚いていると、マイナは王国軍兵に対し現状を説明し、ハンスに報告する際に今から言う事を最後に一言付け加える様に伝えた。
「まだまだ健在だ、と」
「は、はぁ」
そう言い残しマイナは作戦室へと戻ろうとした所で、オービンたちが声を掛けて来たのだった。
そうして現状に至るのであった。
マイナはハンスからの手紙の話しはせずに、王国軍の協力はすぐには望めない事とこの場のメンバーで学院内へと侵入し内部から第一の結界を解除すると口にした。
「内部からですか?」
「でも内部って、どう入るんだよ? 地面でも掘るってか?」
トウマの疑問に対しマイナが「考え方はそれですよ」と答え、何を考えているのか分からずトウマが首を傾げているとオービンが口を開いた。
「もしかして、地下から学院内に潜入するって事ですか?」
「おいおいオービン、地下っていうがそれじゃ今あいつが言った様に、今から地下掘って学院の真下まで開通させないといけないって事じゃねぇのか?」
「いや、今から掘ったりする必要はないんだよヒビキ。お前も知っているだろ、既に学院の真下に通じる地下はあるんだよ」
オービンの発言に「はぁ?」とヒビキが答え、他の皆もまだピンと来ていない状況だったが、ルークとタツミが同時にオービンが思い浮かべている物に辿り着く。
「(ダンジョンか)」
「ダンジョンだな」
タツミの発言で皆が一気にハッとした顔をする。
「そう。学院の真下には遺跡を改造したダンジョンが存在しています。さすがに第一の結界でもそこまでの範囲まで覆ってはいませんし、その先の出口も校舎から離れている事から第二の結界内でもないでしょう」
「確かにそれを使えば学院内に侵入は可能ですが、あの入口は学院内にしかないのではないのですか?」
マイナはタツミの問いかけに「その通りです」と答えたが、続けて話した。
「ですが、あの場所へと通じる出入口は学院外にも一つだけあるのです。今から二十年以上も前に王国転覆事件があった際、偶然見つかった遺跡への出入り口。そこから一部の人々は地下の遺跡へと避難をしているのです」
「あの場所にですか?」
「正確にいうと、学院の真下にある遺跡を改造したダンジョンではなく、そとは別の地下遺跡。ですが、通路は繋がっている事は確認されています」
「そんな場所があったのね」
直後マイナは学院外にある遺跡への入口の場所を地図にて指さす。
そこは、王都外壁付近に存在する小さな広場であった。
その場所は常に王国軍兵が立って警備しており、歴史的価値がある物品などが発見された場所として基本立ち入り禁止区域とされている場所であった。
「学院からは遠いが、ここから地下の遺跡へと潜り学院真下にあるダンジョンへと向かいます。そしてこれには、私とオービンそしてミカロスであたります」
「三人だけで行くのですが、マイナ学院」
タツミからの言葉にマイナは頷き、学院側での対処はタツミを含め副学長を筆頭に対処する様に指示する。
そして残る学院生には、他の学院生の誘導と教員たちの補佐をするように指示を出した。
「こちらの作戦が必ずうまくいく保証はないので、少数で向かいます。同行してもらうオービンたちの同意も得ています」
「分かりました。こちらの事はお任せくだ」
その時だった、横からルークが口を挟んで来た。
「待って下さい! 俺も、俺も同行させてください!」
「……どうして同行したいのですか?」
「それは……友人を攫われた親友を助けたいからです! お願いします!」
ルークはその場で頭を下げるが、マイナは首を縦に振らなかった。
「ダメです、許可できません。今回の目的は第一の結界解除にあります。クリスさんの身の心配は分かりますが、救助は二の次です。第一の結界さえ解除すれば救助も可能になりますし、そういう気持ちであればこの場で待機していた方が、いいはずです」
「っ……それじゃダメなんです。助けに行ける手段があるなら、それをみすみす見逃せません! 自分勝手なのは承知していますが、どうかお願いしますマイナ学院!」
引き下がらないルークに困った表情をマイナがしていると、オービンが前に出て来た。
「ルーク、お前がクリス君を心配しているのはよく分かった。だけど、これはクリス君だけの為じゃない、中に捕らわれている皆も助ける為のものだ。チームで行動する以上、その目的がずれるのは好ましくない」
「兄貴……分かってる、だけど」
「だけど、そこまでしても彼を助けに行きたいんだな、お前は」
「っ!」
「マイナ学院、ルークも同行させてやってください。地下の遺跡に敵が潜んでいた際には、役に立ちます。現状の俺を考えると、実力も分かって頼りになる存在です。それに単独行動は絶対にさせません」
「……」
「もしここにルークを置いて行っても、こいつは俺たちのことを付けて来ますよ。そういう奴ですよ、俺の弟は」
そこでマイナはため息をつくと「分かった」と同行を認めるのだった。
「ただし、今言った事は必ず守ってもらいます。単独行動は絶対にしない。この目的は第一の結界解除。いいですね」
「はい! ありがとうございますマイナ学院!」
「ルーク、お前は俺の補佐だ。いいな」
「分かったよ、兄貴」
するとオービンは後ろを振り返り、ミカロスの方に視線を向ける。
「という訳だミカ、お守りを増やして悪いな」
「はぁー最初から迷惑を掛ける前提で話を進めるなオービン。ルークも無茶を通してもらったんだ、指示には必ず従えよ」
「はい、ミカロス先輩」
そうして、遺跡の入口へと向かうメンバーが確定するとすぐにマイナ、オービン、ミカロス、ルークは目的の場所へ向かって行った。
残ったメンバーはタツミの指示の下行動を始めるが、ヒビキは面倒そうな顔をして動かずにいた。
「ヒビキお前な」
「タツミ先生、俺は別にやるなんて一言もいってないですよ。それにあんなに補佐する奴らがいれば、俺なんていらないでしょ」
そう口にするとヒビキは近くの椅子に座ると、オービンから受け取った通信用魔道具を机の上に置いた。
「俺には俺のやるべき事があるんで、そっちは出来ません」
「……そうか、分かった。だが、非常時にはこちらを手伝ってもらうからな」
タツミはそのまま作戦室を後にしようとした時だった、ヒビキが机に置いた通信用魔道具から途切れ途切れの声が聞こえて来たのだ。
その声に対し、タツミはヒビキへと寄って誰の声かを聞き取り始める。
「この通信用魔道具の相手は誰だ、ヒビキ」
「学院内に侵入しているエリスだよ。これまで通信が取れなかったんだ」
「エリスが今学院内にいるのか? いや、今はそれは後回しだ」
タツミはそこで初めてエリスが学院内に居る事を知り驚くが、今はエリスからの通信内容を聞き取る事が先決だとし、黙って途切れ途切れの声に集中する。
だが、途切れすぎて何を言っているのか分からなかった。
「エリス、何を言っているか全然分からないぞ。何が言いたいんだ」
ヒビキが答え返すも、それが相手に届いているか分からず通信先からは、変わらず途切れた声が聞こえ続けていた。
どうする事も出来ずにそのまま何度か一方的なやり取りをしていると、徐々に途切れていた声が鮮明になり始める。
それと同時に二人はその声を聞いて、相手がエリスだと思っていたがそうではないと理解した。
「これは……エリスじゃないぞ。誰だ?」
「女性であるのは間違いない。何処かで聞いた事が……」
二人が鮮明になり始めた声を聞き、相手が誰かと頭を悩ましていると突然ハッキリした声が通信用魔道具から聞こえて来て、その正体が判明する。
「『ちら……こちら、学院内の校舎入口前。通信先、これで鮮明に声が聞こえているか? 戦闘の際に故障していた所を直し、調整したからこれで聞こえているはずだが』」
「思い出した! フェンだ」
「フェン? あーエリスが侵入の際に連絡した相手か」
「『お、繋がったかな。こちら校舎内に捕らわれている者、通信先の人聞こえてますか?』」
「聞こえているぞ」
そうタツミが返事をすると、フェンは誰なのかなど問いかける事無く話し続けた。
「『それなら繋がっているうちに、状況だけまず伝えるんで偉い人に報告してください。応急的な修理なのでいつ通信が切れるか分からないので、質問とかなしでお願いしますね』」
そうしてフェンは一方的にこれまでの状況と、現状を通信先にいるヒビキとタツミに伝え始めるのだった。
タツミの報告を聞き、マイナは冷静に返事をするのだった。
そのままマイナは王国軍と話した事を口にし始める。
現状王都内では、バベッチが仕掛けたゲリライベントの影響で各地にて動揺が少し出ており、そちらの対応で王国軍も動いており学院側の異変も分かっているが割ける人員は多くはないという事であった。
マイナはやって来た王国軍兵に対し、ここでの報告はハンスの元へと行くのかを確認すると王国軍兵は頷き「随時報告せよと命令を受けている」と答えた。
更にはハンスより封書を預かっているとし、マイナに手渡したのだった。
マイナはその場で封を解き、中の手紙に目を通した。
そこには何ら現状とは関係のない文章の羅列が並んでおり、何でこんな物を封書にしたのかというレベルであったがマイナはふと昔にも似た事があったと思い出す。
それは王国転覆事件時に行った連絡時に、敵に渡ったとしても本当の意図が伝わらない形式にしてやりとりをしていたのだ。
今受け取った封書はその時と似ており、ハンスがこんな意味のない事をするはずがないとマイナは思っていた為気付けたのだった。
マイナはすぐに手紙に対し微量の魔力を流すと、並んでいた文章が並び変わり本当の文章が出来上がる。
出来上がった本当の手紙には、学院にリーリアとティアが潜入している事やリリエルが突然姿を消し見つかっていない事が書かれていた。
そして学院長とし学院生の事を守って欲しいとあり、最後には何故かダンジョンは健在かという一文が書かれて終わっていた。
マイナは暫くその手紙を見つめた後、ハンスの意図に気付き手紙を閉じると燃やすのだった。
まさかの行動に王国軍兵が驚いていると、マイナは王国軍兵に対し現状を説明し、ハンスに報告する際に今から言う事を最後に一言付け加える様に伝えた。
「まだまだ健在だ、と」
「は、はぁ」
そう言い残しマイナは作戦室へと戻ろうとした所で、オービンたちが声を掛けて来たのだった。
そうして現状に至るのであった。
マイナはハンスからの手紙の話しはせずに、王国軍の協力はすぐには望めない事とこの場のメンバーで学院内へと侵入し内部から第一の結界を解除すると口にした。
「内部からですか?」
「でも内部って、どう入るんだよ? 地面でも掘るってか?」
トウマの疑問に対しマイナが「考え方はそれですよ」と答え、何を考えているのか分からずトウマが首を傾げているとオービンが口を開いた。
「もしかして、地下から学院内に潜入するって事ですか?」
「おいおいオービン、地下っていうがそれじゃ今あいつが言った様に、今から地下掘って学院の真下まで開通させないといけないって事じゃねぇのか?」
「いや、今から掘ったりする必要はないんだよヒビキ。お前も知っているだろ、既に学院の真下に通じる地下はあるんだよ」
オービンの発言に「はぁ?」とヒビキが答え、他の皆もまだピンと来ていない状況だったが、ルークとタツミが同時にオービンが思い浮かべている物に辿り着く。
「(ダンジョンか)」
「ダンジョンだな」
タツミの発言で皆が一気にハッとした顔をする。
「そう。学院の真下には遺跡を改造したダンジョンが存在しています。さすがに第一の結界でもそこまでの範囲まで覆ってはいませんし、その先の出口も校舎から離れている事から第二の結界内でもないでしょう」
「確かにそれを使えば学院内に侵入は可能ですが、あの入口は学院内にしかないのではないのですか?」
マイナはタツミの問いかけに「その通りです」と答えたが、続けて話した。
「ですが、あの場所へと通じる出入口は学院外にも一つだけあるのです。今から二十年以上も前に王国転覆事件があった際、偶然見つかった遺跡への出入り口。そこから一部の人々は地下の遺跡へと避難をしているのです」
「あの場所にですか?」
「正確にいうと、学院の真下にある遺跡を改造したダンジョンではなく、そとは別の地下遺跡。ですが、通路は繋がっている事は確認されています」
「そんな場所があったのね」
直後マイナは学院外にある遺跡への入口の場所を地図にて指さす。
そこは、王都外壁付近に存在する小さな広場であった。
その場所は常に王国軍兵が立って警備しており、歴史的価値がある物品などが発見された場所として基本立ち入り禁止区域とされている場所であった。
「学院からは遠いが、ここから地下の遺跡へと潜り学院真下にあるダンジョンへと向かいます。そしてこれには、私とオービンそしてミカロスであたります」
「三人だけで行くのですが、マイナ学院」
タツミからの言葉にマイナは頷き、学院側での対処はタツミを含め副学長を筆頭に対処する様に指示する。
そして残る学院生には、他の学院生の誘導と教員たちの補佐をするように指示を出した。
「こちらの作戦が必ずうまくいく保証はないので、少数で向かいます。同行してもらうオービンたちの同意も得ています」
「分かりました。こちらの事はお任せくだ」
その時だった、横からルークが口を挟んで来た。
「待って下さい! 俺も、俺も同行させてください!」
「……どうして同行したいのですか?」
「それは……友人を攫われた親友を助けたいからです! お願いします!」
ルークはその場で頭を下げるが、マイナは首を縦に振らなかった。
「ダメです、許可できません。今回の目的は第一の結界解除にあります。クリスさんの身の心配は分かりますが、救助は二の次です。第一の結界さえ解除すれば救助も可能になりますし、そういう気持ちであればこの場で待機していた方が、いいはずです」
「っ……それじゃダメなんです。助けに行ける手段があるなら、それをみすみす見逃せません! 自分勝手なのは承知していますが、どうかお願いしますマイナ学院!」
引き下がらないルークに困った表情をマイナがしていると、オービンが前に出て来た。
「ルーク、お前がクリス君を心配しているのはよく分かった。だけど、これはクリス君だけの為じゃない、中に捕らわれている皆も助ける為のものだ。チームで行動する以上、その目的がずれるのは好ましくない」
「兄貴……分かってる、だけど」
「だけど、そこまでしても彼を助けに行きたいんだな、お前は」
「っ!」
「マイナ学院、ルークも同行させてやってください。地下の遺跡に敵が潜んでいた際には、役に立ちます。現状の俺を考えると、実力も分かって頼りになる存在です。それに単独行動は絶対にさせません」
「……」
「もしここにルークを置いて行っても、こいつは俺たちのことを付けて来ますよ。そういう奴ですよ、俺の弟は」
そこでマイナはため息をつくと「分かった」と同行を認めるのだった。
「ただし、今言った事は必ず守ってもらいます。単独行動は絶対にしない。この目的は第一の結界解除。いいですね」
「はい! ありがとうございますマイナ学院!」
「ルーク、お前は俺の補佐だ。いいな」
「分かったよ、兄貴」
するとオービンは後ろを振り返り、ミカロスの方に視線を向ける。
「という訳だミカ、お守りを増やして悪いな」
「はぁー最初から迷惑を掛ける前提で話を進めるなオービン。ルークも無茶を通してもらったんだ、指示には必ず従えよ」
「はい、ミカロス先輩」
そうして、遺跡の入口へと向かうメンバーが確定するとすぐにマイナ、オービン、ミカロス、ルークは目的の場所へ向かって行った。
残ったメンバーはタツミの指示の下行動を始めるが、ヒビキは面倒そうな顔をして動かずにいた。
「ヒビキお前な」
「タツミ先生、俺は別にやるなんて一言もいってないですよ。それにあんなに補佐する奴らがいれば、俺なんていらないでしょ」
そう口にするとヒビキは近くの椅子に座ると、オービンから受け取った通信用魔道具を机の上に置いた。
「俺には俺のやるべき事があるんで、そっちは出来ません」
「……そうか、分かった。だが、非常時にはこちらを手伝ってもらうからな」
タツミはそのまま作戦室を後にしようとした時だった、ヒビキが机に置いた通信用魔道具から途切れ途切れの声が聞こえて来たのだ。
その声に対し、タツミはヒビキへと寄って誰の声かを聞き取り始める。
「この通信用魔道具の相手は誰だ、ヒビキ」
「学院内に侵入しているエリスだよ。これまで通信が取れなかったんだ」
「エリスが今学院内にいるのか? いや、今はそれは後回しだ」
タツミはそこで初めてエリスが学院内に居る事を知り驚くが、今はエリスからの通信内容を聞き取る事が先決だとし、黙って途切れ途切れの声に集中する。
だが、途切れすぎて何を言っているのか分からなかった。
「エリス、何を言っているか全然分からないぞ。何が言いたいんだ」
ヒビキが答え返すも、それが相手に届いているか分からず通信先からは、変わらず途切れた声が聞こえ続けていた。
どうする事も出来ずにそのまま何度か一方的なやり取りをしていると、徐々に途切れていた声が鮮明になり始める。
それと同時に二人はその声を聞いて、相手がエリスだと思っていたがそうではないと理解した。
「これは……エリスじゃないぞ。誰だ?」
「女性であるのは間違いない。何処かで聞いた事が……」
二人が鮮明になり始めた声を聞き、相手が誰かと頭を悩ましていると突然ハッキリした声が通信用魔道具から聞こえて来て、その正体が判明する。
「『ちら……こちら、学院内の校舎入口前。通信先、これで鮮明に声が聞こえているか? 戦闘の際に故障していた所を直し、調整したからこれで聞こえているはずだが』」
「思い出した! フェンだ」
「フェン? あーエリスが侵入の際に連絡した相手か」
「『お、繋がったかな。こちら校舎内に捕らわれている者、通信先の人聞こえてますか?』」
「聞こえているぞ」
そうタツミが返事をすると、フェンは誰なのかなど問いかける事無く話し続けた。
「『それなら繋がっているうちに、状況だけまず伝えるんで偉い人に報告してください。応急的な修理なのでいつ通信が切れるか分からないので、質問とかなしでお願いしますね』」
そうしてフェンは一方的にこれまでの状況と、現状を通信先にいるヒビキとタツミに伝え始めるのだった。
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