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第487話 お披露目

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 他人からすればバベッチの考えは歪んだ愛情であり、好意であるのは明確であった。
 だが、本人はそう捉えておらずその方法が一番だと信じているのだ。
 その為か他人からの気持ちに対する否定は、理解出来ず相手の方が何故理解出来ないのかと逆に思ってしまうのである。

「本気で言っているの、それ」

 私がそう問い返すとバベッチの表情が再び真顔になる。

「嘘を言う訳ないだろ。何、アリスは他人の恋には協力できないタイプ? それとも自分の母親が関わっているから遠慮したい感じ?」
「そういう事じゃない! 私を人質にした所でお母様が貴方のいう事なんて聞く訳ないって事よ! ましてや好意なんて、受け入れてもらえるわけないでしょう!」
「何、アリスは俺の気持ちを全否定するの? 俺がこれまで物凄く頑張って来たのに、それまでも否定するのか」

 ダメ、話が通じてない。というより、そもそも会話でどうにか出来る相手じゃないでしょ。何してるの私。
 そう判断し、すぐに私はバベッチとの会話を止めこの場から逃走を考え瞬時に距離をとる。
 特に手足に拘束などもなく、魔法も掛けれれていない。
 この場から後方へ全力疾走すれば出口の扉があり、そこから外へと出れる。
 なら、今バベッチと距離が取られているこの状況を利用して一気に出口へと駆け抜けて、まずは校舎へと逃げ込もう。
 バベッチと一対一という状況は良くない気がするし、さっき聞いた話が本当なら校舎内でお母様やティア女王様たちと合流出来るかもしれない。
 私はそう考えつつ一気に駆け抜ける為に、脚部特化型のゴーレム武装を展開準備に入る。
 そして最低限展開の魔力が溜まった所で瞬時に脚部のみにゴーレム武装を展開し、一気に背後の出口目掛け地面を蹴り抜いた。
 そのまま出口を突き破る気持ちで向かったが、出口の扉に触れる直前に見えない壁に当たってしまい、弾き飛ばされてしまう。
 私は数歩後退し、何が起きているのか理解出来ず数回瞬きしているとバベッチが声を掛けて来た。

「逃げられると思ったのか、アリス? そんな訳ないだろ、当然感知できない様にこの場所にも結界を展開させているよ」
「だから拘束もなにもしていなかったの?」
「拘束でもして変に抵抗されたら面倒だし、結界の方が楽だったからそうしただけさ」

 そこでバベッチはため息をつくと、私の方へと視線を向けた。

「協力はしてくれない、人のことは否定して、更にはこの場から逃走か。悲しいよ、俺は。リーリアの子と思って少しハードルを高くし過ぎたかもしれないな。認識を改めないと」
「貴方の中で思い描いている人物は、ただの都合のいい人に過ぎないわ。そんなの私の訳ないでしょ。誰だってそうよ。自分の思った通りに行動する人なんていないのよ」

 私はそのまま戦闘態勢をとる。
 ここから逃げらないのなら、戦闘しつつ他の逃走経路や手段を見つけるしかない。

「そうか。俺の通りにはならないか。それは残念だ……なら、強引に従わせるしかないよな。アリスもそうなると分かって発言したんだよな? 分かってそういう姿勢とっているんだろ?」

 バベッチの問いかけに私は黙って少し睨みながら握った拳に力が入る。

「まぁ、別にこうなる事を想定してなかった訳じゃない。むしろこうなる方が高いと考えてたよ。でも。でもな、話でなんとかなるなら俺はそうしたかったよ、アリス」
「……」
「大丈夫、安心していいよ。殺しはしない程度に痛めつけるだけだから!」

 その直後バベッチは瞬時に片腕を上げると、私の立っていた場所が勢いよく盛り上がる。
 そしてその頭上には、いつの間にか鋭い氷の刃が展開されていた。
 私はすぐさまその場から前方に飛び回避するが、宙で身動きが取れない状態をバベッチが見逃すはずはなく、炎の矢を無数に展開し私目掛けて放って来たのだ。
 普通ならば相手の尋常じゃない攻撃量と範囲、更に空中という状況で直撃は避けられないはずだが、アリスはそんな状況でも無傷で乗り越えられる力を既に身に付けていた。
 それはこれまで特訓し続けてきた、ゴーレム武装である。
 だがこの時アリスが展開したゴーレム武装はこれまでのものではなく、兄アバンからの助言やルークとの戦闘、そしてエリスとの特訓を経て辿り着いた完成されたゴーレム武装であった。

 その姿は胸を中心に上半身を鎧の様に覆った姿で、両腕両脚は籠手の様に薄い装備を展開させそこに魔力を薄く纏わせている姿だった。
 直後、アリスの胸の中心部から両腕に質が高く多くの魔力が流れ、腕に武装が展開される。
 そして武装した状態の両腕を勢いよく振り広げると、向かって来たいた無数の炎の矢がアリスから発生した突風により吹き飛ばされる。
 しかし後続から未だに炎の矢は放たれており、一時的な退けにしかなってはいないがアリスはその場だけ凌げればよく、次は胸の中心部に腕に展開した魔力を戻すと腕の武装が解除される。
 そしてそのまま胸から血液を流すように脚に質の高い魔力が多く流されると、次は脚部に武装が展開する。
 アリスはそのまま空中を蹴ると、足から突風が発生し一瞬で反対側へと移動した。
 そのままアリスは舞台の上へと着地すると、脚部の展開を解除しバベッチの方へ振り返るのだった。
 バベッチは、まさか先程の攻撃から無傷で抜けるとは思わず驚きながら振り返っていた。

「そんなゴーレム武装あったか? 俺の知らないゴーレム武装だな」
「当然よ。このゴーレム武装は今まで誰にも見せた事がないのだから」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「何故だ! 何故躊躇なく自分の子供を倒せるんだ!」

 そう叫ぶのは校舎内にてリーリアとティアと対峙していたバベッチであった。
 バベッチは二人の息子であるアバンとオービンを出現させ、二人と戦わせた。
 最初は動揺していた二人であったが、すぐさま動揺はなくなり自身の子供を躊躇なく倒したのであった。
 バベッチが創り出したアバンとオービンは完全に二人にやられてしまい、廊下で気を失って伸びてしまっていた。

「何故って、そんなの決まっているでしょ。自分の本当の子ではないからよ。それに他の家庭はしらないけれど、昔はよく模擬戦相手をしていたからその時の様に振る舞っただけよ」

 リーリアの返答にティアは「そんな事していたの」といった表情を向けるが、口にはしなかった。

「目の前で創り出されたら違うと分かるわ。それに、例え息子だとしても攻撃して来たら容赦なく叩くわ」
「誰の想像なのか、思い込みなのか知らないけれど私たちには通用しないわよ、バベッチ」
「うっ……」

 バベッチは動揺したのかその場で一歩後退すると。ティアが瞬時にバベッチの足元を凍らせ身動きを封じる。

「っ!? くそ!」

 すぐさまバベッチは凍らせた足元を溶かそうと魔法を使用するが、その瞬間意識が足元に向けられ二人から視線を外してしまう。
 それを見逃さずリーリアがバベッチとの距離を詰め、腹部目掛けて勢いのまま拳を叩き込む。
 その瞬間にティアも魔法で凍らせていた足元を解除し、リーリアはバベッチをそのまま近くの壁へと目掛けて拳を振り抜き、殴り飛ばしたのであった。
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