上 下
472 / 564

第471話 第二の結界

しおりを挟む
「タツミ先生!?」

 私を含め突然現れたタツミに声を上げたが、タツミは気にせずにマイナに対して話を続けた。
 マイナもタツミの話を遮ることをせずに軽く頷いた。
 するとタツミは学院に張られた結界について話し始める。
 現在抜け道など見当たらない結界だが、タツミはもしもの時の為に個人的に学院防衛用の魔道具に細工をしていた。
 そう現在学院を覆っている結界は、以前学院が襲撃された後に増設された魔道具による防衛結界なのである。
 もしもの時の為に学院を外敵から護るようとしていたが、今回はそれを逆手に取られてしまっていた。
 基本的に外部からの結界解除は行えず内部からの魔力操作のみとなっており、更にはその操作は限られた人物のみである。
 その為今回侵入者はその一人であるデイビッドに成りすましたのではないかとタツミは推測する。
 更には、以前の襲撃事件時にオービンに扮した相手が侵入出来たのも偽デイビッドが関与し、内部から魔力感知を偽装していたのではないかと余罪もあるのではと口にする。
 話が少し脱線したが、タツミは直ぐに話しを戻した。
 学院には現在学院側が用意していた魔道具の発動によっての結界と思われているが、更に内部にもう一つの結界があるとタツミは話す。

「それはどういう事ですか、タツミ先生?」

 デイビッドが詳細を問いかけると、タツミは学院の全体地図がないかと返すとマイナが机にその地図を広げる。
 するとタツミはペンで結界範囲をかき始め、更に校舎を覆うように結界が張られているとペンで記した。

「二つも結界があるなんて、どうして分かるのです?」
「直接見たからですよ、デイビッド副学院長」

 その言葉に全員が驚く。
 直接見たという事は、学院内部に入ったという事になり、先程の口にしていた細工から内部に出入りが出来たという証明であったからだ。
 するとそこでルークがタツミの方を見つめ問いかけた。

「タツミ、お前また偽者とかじゃないよな?」

 ルークの発言に空気がピリッとする。
 確かにルークのいう通り、デイビッドの偽者やこれまでの事件などを踏まえて他にも偽物がいてもおかしくない状況であった。
 ましてやこんな状況で学院内部に侵入できるという情報を持ってくるのだから、疑われない訳がなかった。
 タツミはそんな事をマイナ辺りから言われるだろうと想定していたのか、慌てたり驚くこともなく冷静な顔でルークに対し返事をする。

「俺がお前らに対して本物だという証明など出来ない。俺をどう思うかはお前ら次第だ。まあ仮に俺が敵だとしたら、わざわざこんな情報教えずに手っ取り早くここに閉じ込めるけどな。お前らを自由にはさせないよ」

 そうタツミは悪い顔をしながら口にすると、リーガとライラックが小声で「こわっ」と呟くのだった。
 タツミはそのままルークからマイナへと視線を向けた。

「どうされますか、マイナ学院長。俺はこの場で拘束されようとかまいませんよ」
「……はぁー、やめて下さいタツミ先生。そこまで変に挑発する様な事をしなくても、私は拘束しませんよ」
「マイナ学院長それはつまり、タツミ先生は偽者ではないという事ですか?」
「違いますよデイビッド副学院長。例え偽者だったとしても、私が好きにはさせないだけです」

 真っ向から力でねじ伏せる発言に、私は学院長に対する印象が優しい学院長から少し変わった。
 それは皆も少しからず同じ様な感じたのか、それが表情に出ていた。

「ちょ、ちょっとマイナ学院長もタツミ先生も、学院生がいる前でやめて下さい」

 デイビッドが二人の異様な雰囲気に止めに入ると、タツミが軽く息を吐いた。

「すいませんデイビッド副学院長。ちょっと昔の血が騒ぎました」
「え、昔の血って何ですか?」
「ほぉ~トウマ興味あるのか?」

 不意に問いかけたトウマに対しタツミがぐいっと顔を近付け、耳元で囁いた。

「知りたいなら、じっくりと教えてやるぞ」

 トウマはそれに対し全身が身震いし、鳥肌が軽く立ち何となく身の危険を察し丁重に断るのだった。
 その後マイナがタツミに学院内部に張られた結界、第二の結界と称し知っている情報を共有させた。
 学院内部に入り込んだタツミは、内部から結界を生成している魔道具の破壊をしようとしたが、丁寧にその魔道具まで結界で囲われ手出しが出来ない様になっていた。
 そして校舎全体を囲っている結界に至っては、入る事など出来ず魔法でさえ全く歯が立たない物であるとタツミは口にした。
 ただしタツミは学院全体を覆っている魔道具の結界と、第二の結界について突破できるかもしれない文字を見ていた。

「解除コードを示せと、結界に文字が浮かび上がっていたんだ」
「解除コードって」
「俺にはよく分からないが、学院を覆っている結界の発生源の魔道具は四カ所で、それぞれに同じ文言があったな。それと第二の結界事態には、全ての解除コードを示せと記されていたな」

 そこでルークたちはバベッチのゲリライベントが学院の結界突破の鍵になっていると改めて理解する。
 そしてマイナがタツミに対しても、ルークたちが置かれている状況を説明する。

「そうですか。あれはただの変なイベントではなく、これと連動していたという事ですか」
「結果的には解除コードを奪いに行かなきゃいけないって事ですね」

 デイビッドの呟きに対し、ルークはマイナの方を見て口を開く。

「俺たち、行きますよ」
「ルークさん」

 するとトウマが続けて発言する。

「おいおい、勝手に俺たちって決めるなよ。他の奴らの意見聞いてないだろ」
「俺はもちろん行くぞ! そもそもそのつもりだったしな」
「学院の危機、次期寮長として動くのは当然ですわ」
「少し荷が重いけど、俺がやれる事はやるよ」
「お、お前ら……」

 トウマは他の次期寮長たちの早い決意に押されていると、ルークが「お前はどうするんだ、トウマ?」と訊ねられる。
 それに対し軽く口に溜まった唾を飲み込み、口を開く。

「お前が行くのに、俺が行かないわけないだろう。俺たちが出来る事はやる! ただそれだけだ!」

 トウマの発言に続く様に各次期副寮長たちも次期寮長たちに付いて行くと口にした。

「皆さん……ですが、貴方達に全てを任せはしません。私たちが出来るサポートは全力でします」

 マイナはルークたちの決意を聞き、こんな事に巻き込んでしまったという後ろめたい気持ちを捨てた。
 そしてマイナを筆頭に王都内に発生した結界の場所や、相手となる王国軍隊長から解除コードを奪取する作戦会議を始めるのだった。
 作戦会議にはルークたち次期寮長副寮長以外にも、私たちも参加しルークたちのサポートや学院でのサポートに別れ手伝う事になった。
 その後作戦会議は一時間程行われ、タイムリミットが二時間半を切った所で作戦が開始され、ルークたち次期寮長副寮長たちは一斉に学院から離れていく。
 ルークたちのサポートして数名の教員筆頭に、ニック、フェルト、リーガ、ライラック、マックスも行動を開始した。
 一方で学院側には、私を含めピース、シンリ、ケビンが残り学院近くにてサポート班として行動する事なり、途中でタツミとイベント中医療班として共に行動していたガードルが加わるのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

アニラジロデオ ~夜中に声優ラジオなんて聴いてないでさっさと寝な!

坪庭 芝特訓
恋愛
 女子高生の零児(れいじ 黒髪アーモンドアイの方)と響季(ひびき 茶髪眼鏡の方)は、深夜の声優ラジオ界隈で暗躍するネタ職人。  零児は「ネタコーナーさえあればどんなラジオ番組にも現れ、オモシロネタを放り込む」、響季は「ノベルティグッズさえ貰えればどんなラジオ番組にもメールを送る」というスタンスでそれぞれネタを送ってきた。  接点のなかった二人だが、ある日零児が献結 (※10代の子限定の献血)ルームでラジオ番組のノベルティグッズを手にしているところを響季が見つける。  零児が同じネタ職人ではないかと勘付いた響季は、献結ルームの職員さん、看護師さん達の力も借り、なんとかしてその証拠を掴みたい、彼女のラジオネームを知りたいと奔走する。 ここから第四部その2⇒いつしか響季のことを本気で好きになっていた零児は、その熱に浮かされ彼女の核とも言える面白さを失いつつあった。  それに気付き、零児の元から走り去った響季。  そして突如舞い込む百合営業声優の入籍話と、みんな大好きプリント自習。  プリントを5分でやっつけた響季は零児とのことを柿内君に相談するが、いつしか話は今や親友となった二人の出会いと柿内君の過去のこと、更に零児と響季の実験の日々の話へと続く。  一学年上の生徒相手に、お笑い営業をしていた少女。  夜の街で、大人相手に育った少年。  危うい少女達の告白百人組手、からのKissing図書館デート。  その少女達は今や心が離れていた。  ってそんな話どうでもいいから彼女達の仲を修復する解決策を!  そうだVogue対決だ!  勝った方には当選したけど全く行く気のしない献結啓蒙ライブのチケットをプレゼント!  ひゃだ!それってとってもいいアイデア!  そんな感じでギャルパイセンと先生達を巻き込み、ハイスクールがダンスフロアに。 R15指定ですが、高濃度百合分補給のためにたまにそういうのが出るよというレベル、かつ欠番扱いです。 読み飛ばしてもらっても大丈夫です。 検索用キーワード 百合ん百合ん女子高生/よくわかる献血/ハガキ職人講座/ラジオと献血/百合声優の結婚報告/プリント自習/処世術としてのオネエキャラ/告白タイム/ギャルゲー収録直後の声優コメント/雑誌じゃない方のVOGUE/若者の缶コーヒー離れ

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

処理中です...