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第443話 嵐の様な特急便
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私は呼び出された先で、まさかクリバンス王国の女王ティア・クリバンスがいると思わず固まってしまう。
ティアの服装は女王という様な格好ではなく、ラフな格好であった。
「クリスとしては、始めましてね。でもここではクリスとして振る舞う必要はないわ、アリスちゃん」
「!?」
「急にごめんなさいね。リーリア、貴方のお母さんから話は聞いているの」
それを聞き、私は咄嗟に部屋にいるタツミとリリエルの方を見る。
「私はどちらでも大丈夫よ。クリスでも、アリスでも」
「お前は覚えているか分からないが、俺は修学旅行のあの一件でもう知っているぞ」
リリエルとタツミの反応から、既にこの場の全員が私の正体を知っているのだと理解する。
そしてゆっくりと深呼吸した後に、ため息をついた。
「そう、ですか。それじゃ、アリスとして振る舞ってもいいですか?」
「もちろんよ、アリスちゃん」
「っ……何て言いますか、その、ちゃん付けされるの慣れていないので少し恥ずかしいです、ティア王女様」
「ごめんなさい。つい、昔の癖で」
少し慌てた表情で謝るティアに私も慌てて「ただ慣れてないだけですので」と答える。
そんな様子を見てリリエルが小さく笑う。
「あのティアがリーリアの娘と話しているなんて、あの頃は思いもしなかったわ」
「そう言えば、リリエルさんはお母様が学院生の時の教員だったんですよね。それでティア王女様とも知り合いって事は」
「そうよ。リーリアから聞いてないかもしれないけど、私と貴方のお母さんとは同級生よ」
今までお母様からそんな事聞いた事なかったんですけど!? 嘘、お母様ってティア王女様と同級生だったの!?
私が驚いていると、リリエルが更に情報を付け足して来る。
「ちなみに、今通っている学院の学院長のマイナだが、あいつもリーリアとティアの同級生だぞ」
「えぇ!? 学院長もですか!?」
まさかの情報に少し混乱していると、リリエルがそんな私の状態を見て笑う。
「リリエル先生、あまりアリスちゃ……アリスさんをいじめないでください」
「別にいじめてた訳じゃないだろ。お前らの関係性を教えてあげただけだ。そもそも、リーリアが教えていればこんな風にはならなかったろ?」
その後暫く落ち着く時間をもらい、私は情報を整理しひとまず落ち着いた。
「すいません、もう大丈夫です」
「そうか。それじゃ、早速本題に入ろうかアリス」
「あのリリエルさん、そもそもなんですが何で私呼ばれたんです? しかも、ティア王女様もいてこれから何を話すんですか?」
するとティアがその問いかけに答えた。
「そうね。まずはそこからよね。今日アリスさんをこうして呼び出したのは、貴方に今後危険があるかもしれないという事を伝えるためよ」
「っ!? 危険、ですか?」
「ええ。この前の王都襲撃事件については既にマイナ、学院長から話があったかしら?」
私はつい先程その話を聞いた事をティアに伝えると「そう」と口にする。
「その、私に危険があるかもってどういう事ですか? 私何に巻き込まれているんですか? 今回の事件に関係があるんですか?」
思わぬ言葉に私は動揺が隠しきれずにティアに対して質問攻めしてしまうが、そこにリリエルが割り込んで来る。
「アリス。こっちを見て」
「っ」
「まず今回の事件にアリスは関係ない、貴方がどうって事じゃないからそれは考えないでいい。次に危険があるかもというのは、可能性があって確定じゃない。そして最後に、何故危険があるのかというのをこれから根拠を一から説明する」
リリエルはゆっくり私が理解出来る速さで知りたい情報を渡してくれた。
私はそれを聞き、少しだけ落ち着いたが未だに状況が理解出来ずにいた。
私自身が分からない所で何かに巻き込まれているって事よね? しかもそれはティア王女様が出て来る程の事で、リリエルさんやタツミ先生もそれに関わってるって事。
あーもう、頭がいっぱいっぱい。
一体私は何に巻き込まれているの?
私はその場で片手で頭を抱えてしまう。
「これは当然の反応だと思いますよ。大切な事ですし、もう一度時間をとった方がいいのではないですか?」
そう口を挟んだのはタツミであった。
タツミの言葉にティアも頷き、再び休憩する時間をとる。
そこでティアは立ち上がり、気分転換にと皆の分の飲み物を買いに行くと口にし一度部屋から出て行く。
その姿を見てリリエル「何も聞かず出て行くやつがいるか」と呟き、ゆっくりと立ち上がりティアの後を追う。
私は座ったままでいると、部屋に残ったタツミが話し掛けて来た。
「外の景色でも見ると、少しは楽になるぞ」
そう言われ、私は言われるがまま立ち上がり窓の方へと歩いて行き、景色を見つめた。
「……私、自分が思っていた以上に頭のスペース狭いかも、です」
「色々言われたら、誰しもそうなるもんだ」
一方でティアを追いかけたリリエルは、部屋からかなり離れた場所でティアを見つける。
「おいティア、こんな反対側の端まで来る事ないだろ」
「リリエル先生……やっぱり、彼女に伝えないとダメですかね」
「……絶対じゃない。だが、彼女にあいつが手を出さないとも言い切れない。これは私の独断だ、最終的にどうしたいかはティアお前が決めることだ」
「昔からリリエル先生は変わらないですね。判断は自分で決めろっていうところ」
ティアは窓に映る自分を見つめながら、そこに移るリリエルに視線を向ける。
「お前が私が伝えると言ったら、自分に一任させて欲しいと言ったからだろ。リーリアの娘だからなのか、昔の自分と重ね合わせているからかは分からないが、どうするのかは改めて今決めておけ」
「そこまで分かってて、私に一任させてくれたんですね。まさかあの頃の自分の方まで見抜かれているとは、思ってなかったですよ」
「魔女っていうのは大抵何でも知っているものよ」
リリエルの言葉にティアは振り返り苦笑いをする。
「それでどうするんだ、ティア」
そこでティアは小さく深呼吸した。
「……伝えます。彼女を、大切な親友の子を護るために。リーリアは何を勝手にと怒るかもしれないですが、それは覚悟の上です」
「リーリアに言う時くらいは、私の名前を出せばいい。そもそもは、私からの提案なのだからな」
「では、遠慮なくリリエル先生に押し付けますね」
「怖い女王様になったもんだ」
そして二人は飲み物を買い部屋へと戻って行くのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そんな訳で、俺やミカロスは暫くはこのままだ。それにその後は王国軍からの聴取があるから、直ぐに寮には戻れない」
「そうなんですね」
「それでこの手紙で次期寮長、副寮長の俺たち二人を呼んだのか」
ルークは再び手紙を手に持ってオービンに見せる。
「そう言えば、そんなのいつ届いたんだルーク」
「昨日来たろ、嵐の様な特急便がさ」
トウマはルークの言葉にピンと来ず首を傾げると、オービンが笑う。
「気になるんだが、どんな風にあいつから受け取ったんだいルーク?」
ミカロスからの問いかけにルークは手紙を四つ折りにしながら答え始める。
「飲みかけの飲み物の下に、こんな風に張り付けた状態で渡されましたよ。偶然手で触れなかったら、気付かずに捨ててましたよ」
「あははは、ヒビキ奴面白い渡し方する」
「危うく捨ててたか。全く、あいつは」
そこでトウマも気付いたのか声を上げる。
「え!? あれ? あの最後にヒビキ先輩から渡された、あれについてたのか?」
「そう。でも兄貴、何でわざわざ手紙なんて送って来たんだよ。事件について話があるってさ」
「その方が、お前は素直に来てくれると思ったんだよ。どうせ呼び出しても、変な理由を付けて来ないっていう可能性もあったからな」
「そんな事は……ねえよ」
目をそらして答えるルークに、オービンは優しく微笑む。
すると突然部屋の扉が開き誰かが入って来た。
「あーもう、同じような事聞かれるし、拘束長いわだし、本ッ当に疲れたわ……って、ルークにトウマじゃない」
そこへ現れたのは、エリスであった。
ティアの服装は女王という様な格好ではなく、ラフな格好であった。
「クリスとしては、始めましてね。でもここではクリスとして振る舞う必要はないわ、アリスちゃん」
「!?」
「急にごめんなさいね。リーリア、貴方のお母さんから話は聞いているの」
それを聞き、私は咄嗟に部屋にいるタツミとリリエルの方を見る。
「私はどちらでも大丈夫よ。クリスでも、アリスでも」
「お前は覚えているか分からないが、俺は修学旅行のあの一件でもう知っているぞ」
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そしてゆっくりと深呼吸した後に、ため息をついた。
「そう、ですか。それじゃ、アリスとして振る舞ってもいいですか?」
「もちろんよ、アリスちゃん」
「っ……何て言いますか、その、ちゃん付けされるの慣れていないので少し恥ずかしいです、ティア王女様」
「ごめんなさい。つい、昔の癖で」
少し慌てた表情で謝るティアに私も慌てて「ただ慣れてないだけですので」と答える。
そんな様子を見てリリエルが小さく笑う。
「あのティアがリーリアの娘と話しているなんて、あの頃は思いもしなかったわ」
「そう言えば、リリエルさんはお母様が学院生の時の教員だったんですよね。それでティア王女様とも知り合いって事は」
「そうよ。リーリアから聞いてないかもしれないけど、私と貴方のお母さんとは同級生よ」
今までお母様からそんな事聞いた事なかったんですけど!? 嘘、お母様ってティア王女様と同級生だったの!?
私が驚いていると、リリエルが更に情報を付け足して来る。
「ちなみに、今通っている学院の学院長のマイナだが、あいつもリーリアとティアの同級生だぞ」
「えぇ!? 学院長もですか!?」
まさかの情報に少し混乱していると、リリエルがそんな私の状態を見て笑う。
「リリエル先生、あまりアリスちゃ……アリスさんをいじめないでください」
「別にいじめてた訳じゃないだろ。お前らの関係性を教えてあげただけだ。そもそも、リーリアが教えていればこんな風にはならなかったろ?」
その後暫く落ち着く時間をもらい、私は情報を整理しひとまず落ち着いた。
「すいません、もう大丈夫です」
「そうか。それじゃ、早速本題に入ろうかアリス」
「あのリリエルさん、そもそもなんですが何で私呼ばれたんです? しかも、ティア王女様もいてこれから何を話すんですか?」
するとティアがその問いかけに答えた。
「そうね。まずはそこからよね。今日アリスさんをこうして呼び出したのは、貴方に今後危険があるかもしれないという事を伝えるためよ」
「っ!? 危険、ですか?」
「ええ。この前の王都襲撃事件については既にマイナ、学院長から話があったかしら?」
私はつい先程その話を聞いた事をティアに伝えると「そう」と口にする。
「その、私に危険があるかもってどういう事ですか? 私何に巻き込まれているんですか? 今回の事件に関係があるんですか?」
思わぬ言葉に私は動揺が隠しきれずにティアに対して質問攻めしてしまうが、そこにリリエルが割り込んで来る。
「アリス。こっちを見て」
「っ」
「まず今回の事件にアリスは関係ない、貴方がどうって事じゃないからそれは考えないでいい。次に危険があるかもというのは、可能性があって確定じゃない。そして最後に、何故危険があるのかというのをこれから根拠を一から説明する」
リリエルはゆっくり私が理解出来る速さで知りたい情報を渡してくれた。
私はそれを聞き、少しだけ落ち着いたが未だに状況が理解出来ずにいた。
私自身が分からない所で何かに巻き込まれているって事よね? しかもそれはティア王女様が出て来る程の事で、リリエルさんやタツミ先生もそれに関わってるって事。
あーもう、頭がいっぱいっぱい。
一体私は何に巻き込まれているの?
私はその場で片手で頭を抱えてしまう。
「これは当然の反応だと思いますよ。大切な事ですし、もう一度時間をとった方がいいのではないですか?」
そう口を挟んだのはタツミであった。
タツミの言葉にティアも頷き、再び休憩する時間をとる。
そこでティアは立ち上がり、気分転換にと皆の分の飲み物を買いに行くと口にし一度部屋から出て行く。
その姿を見てリリエル「何も聞かず出て行くやつがいるか」と呟き、ゆっくりと立ち上がりティアの後を追う。
私は座ったままでいると、部屋に残ったタツミが話し掛けて来た。
「外の景色でも見ると、少しは楽になるぞ」
そう言われ、私は言われるがまま立ち上がり窓の方へと歩いて行き、景色を見つめた。
「……私、自分が思っていた以上に頭のスペース狭いかも、です」
「色々言われたら、誰しもそうなるもんだ」
一方でティアを追いかけたリリエルは、部屋からかなり離れた場所でティアを見つける。
「おいティア、こんな反対側の端まで来る事ないだろ」
「リリエル先生……やっぱり、彼女に伝えないとダメですかね」
「……絶対じゃない。だが、彼女にあいつが手を出さないとも言い切れない。これは私の独断だ、最終的にどうしたいかはティアお前が決めることだ」
「昔からリリエル先生は変わらないですね。判断は自分で決めろっていうところ」
ティアは窓に映る自分を見つめながら、そこに移るリリエルに視線を向ける。
「お前が私が伝えると言ったら、自分に一任させて欲しいと言ったからだろ。リーリアの娘だからなのか、昔の自分と重ね合わせているからかは分からないが、どうするのかは改めて今決めておけ」
「そこまで分かってて、私に一任させてくれたんですね。まさかあの頃の自分の方まで見抜かれているとは、思ってなかったですよ」
「魔女っていうのは大抵何でも知っているものよ」
リリエルの言葉にティアは振り返り苦笑いをする。
「それでどうするんだ、ティア」
そこでティアは小さく深呼吸した。
「……伝えます。彼女を、大切な親友の子を護るために。リーリアは何を勝手にと怒るかもしれないですが、それは覚悟の上です」
「リーリアに言う時くらいは、私の名前を出せばいい。そもそもは、私からの提案なのだからな」
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トウマはルークの言葉にピンと来ず首を傾げると、オービンが笑う。
「気になるんだが、どんな風にあいつから受け取ったんだいルーク?」
ミカロスからの問いかけにルークは手紙を四つ折りにしながら答え始める。
「飲みかけの飲み物の下に、こんな風に張り付けた状態で渡されましたよ。偶然手で触れなかったら、気付かずに捨ててましたよ」
「あははは、ヒビキ奴面白い渡し方する」
「危うく捨ててたか。全く、あいつは」
そこでトウマも気付いたのか声を上げる。
「え!? あれ? あの最後にヒビキ先輩から渡された、あれについてたのか?」
「そう。でも兄貴、何でわざわざ手紙なんて送って来たんだよ。事件について話があるってさ」
「その方が、お前は素直に来てくれると思ったんだよ。どうせ呼び出しても、変な理由を付けて来ないっていう可能性もあったからな」
「そんな事は……ねえよ」
目をそらして答えるルークに、オービンは優しく微笑む。
すると突然部屋の扉が開き誰かが入って来た。
「あーもう、同じような事聞かれるし、拘束長いわだし、本ッ当に疲れたわ……って、ルークにトウマじゃない」
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