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第317話 二代目月の魔女としての
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「認めたわね」
ジュリルの言葉に私は何も反応せずに、顔をただ俯けて立っていた。
その時、通路の方から壁にもたれ掛かりながら現れたのはマリアであった。
「やはりでしたか……」
「おや、マリアさんではありませんか」
その言葉に私は反応し、ゆっくりと振り向くとボロボロのマリアが視界に入る。
「マリ、ア……」
「ジュリル様、これはどう言う事か教えて頂けるますでしょうか?」
「あら、てっきりレオンの口を割ったのかと思いましたわ」
「彼は最後まで私の足止めに徹して何も話しませんでしたので」
「そうですか。では簡単に言いますと、クリスの正体がアリスだと教えて頂きました。犯罪者はついでで、警備団の方々と連携しての計画ですのでご安心を」
マリアは直ぐに私の方に視線を向けて来たので、私は「ごめん……マリア」と呟いた。
それで正体を明かすしかない状況だったのだと勝手に解釈するマリア。
すぐにでも無気力な私に駆け寄りたいマリアだったが、レオンとの戦闘でかなり消耗してしまい思う様に体が動かない状況であった。
「正体を暴いて何をするつもりなのですか、ジュリル様」
「そうね。このまま学院に報告して、適正な罰を受けてもらうわ。クリスいや、アリスもそれを分かった上で学院に居続けていたわけですし」
「……」
「やはり許せないから、ですか?」
「そうね。どんな理由があるにしろ、性別を偽って皆を騙し学院のルール分かりつつ破り、ましてや常識として貴族の令嬢がそんな事をしていた事を許せないからかしら」
ジュリルの言っている事は、間違っていない……当然の理由だ。
私はゆっくりとジュリルの方へと視線を向けた。
マリアもジュリルの言った事に対して、反論する事はなく唇を噛んでいた。
「と言うのが、二代目月の魔女としての意見よ」
「……?」
突然そう言い出したジュリルに、私もマリアもどう言う事なのか理解出来ずにいると、続けてジュリルは話し続けた。
「月の魔女は、危機から民を救ったヒーローであり、皆のお手本かつ導き手でもある。期待を背負い、それ以上の結果を出し、世を正す憧れの存在」
「ジュリ、ル?」
「月の魔女は私の憧れであり、今ではその名を継ぎ二代目月の魔女としての一面もある。だからこそ、月の魔女に恥じない行動を姿勢を示さなければいけない。貴方もそれは分かるでしょ、アリス?」
そうだ、月の魔女は私の憧れでもありジュリルが言った通りの存在だ。
その名を継いで二代目月の魔女としてジュリルはこれまで学院で生活して来て、その名に恥じない結果も出している。
だからこそ、私の様なルール違反者を見過ごす訳には行かないのだろう。
「……えぇ、そうね。ジュリルの立場なら、私の様な存在は見過ごせないわよね」
「っ……」
「マリア、もう隠す必要ないわ。いつか来る日が、来ただけよ」
「アリスお嬢様」
後悔していても仕方ない、これからの事と向き合わなければダメだ。
バレてしまった以上、私だけでなく家にも迷惑を掛けてしまう。
だが、ここで私が独断で全てやった事にジュリルと口裏を合わせてもらえれば、後はお母様たちにはそれを認めてもらえれば被害は最小限で済む。
元々は私のわがままなのだから、最後までわがままを受け入れてもらう。
と、考えて口を開こうとした時だった、ジュリルが思いがけない事を口にした。
「だけども、それは私の意見ではなく、二代目月の魔女としての意見。私個人としての意見は少し違うわ」
「え?」
「私としては、クリスがアリスであってくれて嬉しいわ。まぁ、モランの件やルーク様の件とか色々と言いたい事はあるし、騙されていた事には変わりないから思う所はあるわ」
「嬉しい?」
「えぇ、対抗戦後から疑っていましたの。貴方に近しい人に話を訊いたりもしましたのよ。貴方と言う人柄がより深く知れただけで、決定的な一つも話はありませんでしたけど」
し、知らなかった……そんな時から探られてたなんて。
てか、誰に話を訊いたの? そこも気になるんですけど。
「アリス、対抗戦の時私に勝ったことを覚えていますか?」
「え……えぇ、覚えているわ」
「あの時私は全力で貴方にぶつかり、そして負けました。貴方を侮っていた所もありますが、負けは負けです。その後学院では、二代目月の魔女が負けたと一時期噂になった様ですが、ご存じでしたか?」
「……い、いや……それは知らなかったわ」
そうだったんだ、知らなかった。
確かに学院で最強とも言われる二代目月の魔女がクレイス魔法学院の女子生徒に負けたとなれば、噂にもなるか……
その頃は直ぐに学院祭があってあまり噂とかも気にしていなかった。
「別にそれで恨んでいるとかではありませんし、咎めたい訳でもありません。私も噂で動揺する程、弱くありません」
それもそうか、二代目月の魔女としての期待に答える為日々努力をし、結果を出し続け、色々な人から言葉を浴びて来ているとも言っていたからか。
「ただ、私は物凄く悔しかったのです。アリス、貴方に負けて泣くほど悔しかったのですよ」
「……」
「再戦したくとも、出来たとしても一年後。しかも運よく対戦相手にならない限り、それは叶わない。この先一生この悔しさを晴らす事が出来ないかもしれないと考えていたのです……」
対抗戦は年に一度であり、必ず来年対戦出来る訳でない。
再戦したくとも、別学院である相手とそう簡単に対戦など出来るはずもないから、負けた相手には勝ち逃げされて終わる。
アリスはジュリルの悔しい気持ちが少し分かっていた。
「ですが! 貴方は私のすぐ傍にいた。アリスではなく、クリスとして。そう思う様になって、貴方がアリスなのかを調べ始めたのですわ」
「ジュリル」
「そして貴方は、自身でアリスである事を認めましたわ」
その時点で私は、ジュリルが次に何を言おうとしているのか何となく分かってしまった。
「だから、私は再戦を要求しますわアリス! 負けっぱなしは性に合いませんの!」
「そう来るよね……」
「ですが、これだけ言っても貴方が再選を受けるか分かりませんし、受けたとしても本気でやるか分かりませんから、条件を出しますわ」
「条件?」
「はい。もし再選を受けて頂けないのなら、貴方の秘密を学院に報告します。勝負してくれるのであれば、直ぐに報告はいたしませんわ」
「っ……直ぐにってどう言う事なの?」
「それは勝敗にも条件を付けるからですわ。私が負けたら、貴方の秘密は誰にも言いませんし、このまま学院に通い続ける事に目を瞑ります」
そう言われ、私は唾を飲み込み「ジュリルが勝ったら?」と口にした。
すると少し間を空けてからジュリルが答えた。
「私が勝った際には、アリス貴方には王都メルト魔法学院を自主退学していただきますわ」
ジュリルの言葉に私は何も反応せずに、顔をただ俯けて立っていた。
その時、通路の方から壁にもたれ掛かりながら現れたのはマリアであった。
「やはりでしたか……」
「おや、マリアさんではありませんか」
その言葉に私は反応し、ゆっくりと振り向くとボロボロのマリアが視界に入る。
「マリ、ア……」
「ジュリル様、これはどう言う事か教えて頂けるますでしょうか?」
「あら、てっきりレオンの口を割ったのかと思いましたわ」
「彼は最後まで私の足止めに徹して何も話しませんでしたので」
「そうですか。では簡単に言いますと、クリスの正体がアリスだと教えて頂きました。犯罪者はついでで、警備団の方々と連携しての計画ですのでご安心を」
マリアは直ぐに私の方に視線を向けて来たので、私は「ごめん……マリア」と呟いた。
それで正体を明かすしかない状況だったのだと勝手に解釈するマリア。
すぐにでも無気力な私に駆け寄りたいマリアだったが、レオンとの戦闘でかなり消耗してしまい思う様に体が動かない状況であった。
「正体を暴いて何をするつもりなのですか、ジュリル様」
「そうね。このまま学院に報告して、適正な罰を受けてもらうわ。クリスいや、アリスもそれを分かった上で学院に居続けていたわけですし」
「……」
「やはり許せないから、ですか?」
「そうね。どんな理由があるにしろ、性別を偽って皆を騙し学院のルール分かりつつ破り、ましてや常識として貴族の令嬢がそんな事をしていた事を許せないからかしら」
ジュリルの言っている事は、間違っていない……当然の理由だ。
私はゆっくりとジュリルの方へと視線を向けた。
マリアもジュリルの言った事に対して、反論する事はなく唇を噛んでいた。
「と言うのが、二代目月の魔女としての意見よ」
「……?」
突然そう言い出したジュリルに、私もマリアもどう言う事なのか理解出来ずにいると、続けてジュリルは話し続けた。
「月の魔女は、危機から民を救ったヒーローであり、皆のお手本かつ導き手でもある。期待を背負い、それ以上の結果を出し、世を正す憧れの存在」
「ジュリ、ル?」
「月の魔女は私の憧れであり、今ではその名を継ぎ二代目月の魔女としての一面もある。だからこそ、月の魔女に恥じない行動を姿勢を示さなければいけない。貴方もそれは分かるでしょ、アリス?」
そうだ、月の魔女は私の憧れでもありジュリルが言った通りの存在だ。
その名を継いで二代目月の魔女としてジュリルはこれまで学院で生活して来て、その名に恥じない結果も出している。
だからこそ、私の様なルール違反者を見過ごす訳には行かないのだろう。
「……えぇ、そうね。ジュリルの立場なら、私の様な存在は見過ごせないわよね」
「っ……」
「マリア、もう隠す必要ないわ。いつか来る日が、来ただけよ」
「アリスお嬢様」
後悔していても仕方ない、これからの事と向き合わなければダメだ。
バレてしまった以上、私だけでなく家にも迷惑を掛けてしまう。
だが、ここで私が独断で全てやった事にジュリルと口裏を合わせてもらえれば、後はお母様たちにはそれを認めてもらえれば被害は最小限で済む。
元々は私のわがままなのだから、最後までわがままを受け入れてもらう。
と、考えて口を開こうとした時だった、ジュリルが思いがけない事を口にした。
「だけども、それは私の意見ではなく、二代目月の魔女としての意見。私個人としての意見は少し違うわ」
「え?」
「私としては、クリスがアリスであってくれて嬉しいわ。まぁ、モランの件やルーク様の件とか色々と言いたい事はあるし、騙されていた事には変わりないから思う所はあるわ」
「嬉しい?」
「えぇ、対抗戦後から疑っていましたの。貴方に近しい人に話を訊いたりもしましたのよ。貴方と言う人柄がより深く知れただけで、決定的な一つも話はありませんでしたけど」
し、知らなかった……そんな時から探られてたなんて。
てか、誰に話を訊いたの? そこも気になるんですけど。
「アリス、対抗戦の時私に勝ったことを覚えていますか?」
「え……えぇ、覚えているわ」
「あの時私は全力で貴方にぶつかり、そして負けました。貴方を侮っていた所もありますが、負けは負けです。その後学院では、二代目月の魔女が負けたと一時期噂になった様ですが、ご存じでしたか?」
「……い、いや……それは知らなかったわ」
そうだったんだ、知らなかった。
確かに学院で最強とも言われる二代目月の魔女がクレイス魔法学院の女子生徒に負けたとなれば、噂にもなるか……
その頃は直ぐに学院祭があってあまり噂とかも気にしていなかった。
「別にそれで恨んでいるとかではありませんし、咎めたい訳でもありません。私も噂で動揺する程、弱くありません」
それもそうか、二代目月の魔女としての期待に答える為日々努力をし、結果を出し続け、色々な人から言葉を浴びて来ているとも言っていたからか。
「ただ、私は物凄く悔しかったのです。アリス、貴方に負けて泣くほど悔しかったのですよ」
「……」
「再戦したくとも、出来たとしても一年後。しかも運よく対戦相手にならない限り、それは叶わない。この先一生この悔しさを晴らす事が出来ないかもしれないと考えていたのです……」
対抗戦は年に一度であり、必ず来年対戦出来る訳でない。
再戦したくとも、別学院である相手とそう簡単に対戦など出来るはずもないから、負けた相手には勝ち逃げされて終わる。
アリスはジュリルの悔しい気持ちが少し分かっていた。
「ですが! 貴方は私のすぐ傍にいた。アリスではなく、クリスとして。そう思う様になって、貴方がアリスなのかを調べ始めたのですわ」
「ジュリル」
「そして貴方は、自身でアリスである事を認めましたわ」
その時点で私は、ジュリルが次に何を言おうとしているのか何となく分かってしまった。
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「そう来るよね……」
「ですが、これだけ言っても貴方が再選を受けるか分かりませんし、受けたとしても本気でやるか分かりませんから、条件を出しますわ」
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「はい。もし再選を受けて頂けないのなら、貴方の秘密を学院に報告します。勝負してくれるのであれば、直ぐに報告はいたしませんわ」
「っ……直ぐにってどう言う事なの?」
「それは勝敗にも条件を付けるからですわ。私が負けたら、貴方の秘密は誰にも言いませんし、このまま学院に通い続ける事に目を瞑ります」
そう言われ、私は唾を飲み込み「ジュリルが勝ったら?」と口にした。
すると少し間を空けてからジュリルが答えた。
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