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第284話 やりたい道は自ら掴み取る
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オービンの言葉にルークは一瞬思考が止まった。
するとオービンはルークの肩から手を離して話し出す。
「分かる、分かるぞ。今までそんな事がないのは知ってるし、うちは基本的に父上がそんな話が来ても断っているしな。俺にも前からいくつか来てるが、全て父上が断ってる」
「……だ、だよな」
「あぁ、父上母上は俺たちとそう言う話は基本的には断ると同意を聞かれて決めている」
「じゃ! 何でそんな話が来てるんだ! しかも俺に! 兄貴じゃねぇのかよ?」
「……今回は間違いなくお前が指名されている。話が通ってしまったのも、父上母上が認めたからじゃない」
「どういう事だよ?」
「何でも、知らないうちに話が勝手に進んでいたらしい」
「そんなバカな!」
ルークの驚きにオービンも同じ気持ちで頷く。
そしてオービンは黒板に簡単に経緯を描き始めた。
「本来、こう言う見合い話は外交関連とされ、担当部署へと回される。そこから相手の調査を行い、父上たちに報告。そして各関連部署長たちとの会議を経て、最終的に父上が決定を下す」
「細かい所までは知らないが、簡単に話が通る訳ないのは知っている」
「だが、この流れには唯一の例外がある。それは、関連部署長の認定印が過半数ある事だ」
「認定印?」
オービンは頷き、黒板に絵を描きながら話し続けた。
「認定印と言うのは、簡単に言えば問題ないと言う証明だ。調査をせず、会議も行わず直接父上に報告し、判断を仰げるんだ。しかもだ、その場合は父上の認定印が押されれば、仮決定状態になる」
「まさか、今回の一件はそうやって決まったのか?」
「まだ確定と言う訳ではないが、それだと辻褄が合う。それに、一部者が認定印を押した覚えはないと言っているし、父上も認定印を押していないと言っているんだ」
「っ……てことは、誰かが認定印を勝手に使用した」
「もしくは、その人物になりすまして認定印を押した」
その時2人の頭には、以前起きた誘拐事件時の偽者ことを思い出していた。
あの時、タツミ、フェルト更にはオービンと実際に目の前で瓜二つの人物がいたため、今回も同様の可能性があると考えていた。
「まぁ、この辺の話はともかく父上や母上が調査している。ルーク、お前には既に決まってしまっているお見合いに出て欲しんだ。決まってしまったお見合いを今更断る事も出来ないんだ……」
「兄貴が悪い訳じゃないのに、申し訳なさそうにするなよ。親父もが悪い訳じゃねぇし、誰かが仕組んだって事だろ。断りはしねぇよ」
「ルーク……すまない」
「だから謝るなよ。はぁ~で、日程は?」
「正式にはまだだが年明け早々らしい。それに向けて、来週には一度父上が母上と俺たちだけで話がしたいそうなんだ」
「分かった、来週だな」
その後オービンは黒板に描いたものを消した後、ルークに他の連絡事項などを話した後2人は教室を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それで、断ったんだ」
「っ……もういいじゃないですか、エリス先輩!」
「えぇ~今良い所じゃないの」
「全然良くないですよ! と言うか、話が違うじゃないですか!」
「ちぇっ、さすがにこれ以上はダメか」
「はぁ~ちぇっ、じゃないんですよ。全く……」
私はエリスとの交渉成立した後、何故かルークとの関係について問われ始め、断固して答えずにいた。
だが、エリスは答えてくれないのなら交渉はなしだと脅されてしまい、仕方なくちょこっとだけ話したら、何故かその場に居たかの様にエリスが理解しており、ずんずんと話が進んでしまったのだ。
何でエリス先輩がそんな事まで知ってるのよ! おかしいでしょ! ……いや、話した私も悪かったな。
話さなければこんな事にはならなかったはず。
と、一瞬思ったが既に告白の件まで知っているエリスならば、私とルークの出来事を大半理解しているのではないかと思ってしまう。
もしかしたら、エリス先輩は知っていてわざと聞いてるんじゃ……何かそう考えると寒気がする。
私は改めてエリスの情報網と言うべきか、怖さを理解した。
「ごめんって。そんなに避けないでよ」
「……いや、これは誰でも避けますよ。そんなに知られていたら」
「あ~……ちょっと好奇心がね~あはは……自重します」
そう言って軽く頭を下げたエリスを見て、私は小さくため息をつき少し避けた状態から、普通の状態に戻る。
するとエリスは話題を変えて話し掛けて来た。
「そう言えば、クリスの家にもお見合いの話が来たりするの?」
「うちですか? う~ん、どうですかね。来るとは思いますけど、今まで実際に話を聞いた事はないんですよ」
「へぇ~珍しいわね。両親の方針? それとも、本人の意思?」
「俺の方からは何とも。たぶん両親の方で色々とやってくれているんだと思います」
「いい家庭ね」
「そう、だと俺も思います」
エリスはそれを優しい顔で、私が少し照れくさそうに答える所を見ていた。
するとエリスは唐突にポケットから一通の封筒を取り出して、私に見せつけて来た。
「私なんて、ずっと父様から見合い話の連絡が来るのよ。もう、うんざりってほどにね。彼氏もいるって言っているのによ」
「それは大変ですね」
「母様は止めてくれてるみたいなんだけど、父様はそんなの認めん! とか、どこぞの馬の骨より断然いい! とか手紙に書いて来て、毎回見合い相手の写真まで送って来るの」
そう呆れた様に話しながら、エリスは封筒からそのお見合い相手と思われる写真を取り出した。
そこにはどこかの王子と思われる人物が映っていた。
「見た目は確かにカッコいいけど、ミカに比べたら全然ね。と言うか、私王子とか好きじゃないし。はぁ~来週から帰省して父様の説得よ」
「そ、そうなんですね……」
「本当、さっさと父様にもミカとの関係を認めて欲しいわ。クリスも、お見合い大変と言うか面倒だから、好きな相手がいるなら今のうちに言っておいた方がいいわよ。これ、アドバイスね」
「ありがとうございます」
その直後エリスが急に私に顔を寄せて来て、小声で話し始める。
「ちなみにここだけの話、私が帰省する時にミカも帰省するらしいから、突撃してどさくさに紛れて挨拶するつもりなのよね」
「えぇ! だ、大丈夫なんですかそれ!?」
「分からないわ。でも、このままじゃいずれ別れさせられる気がするのよね。だから、先手を打つの。何もしないで勝手に決められるなんて、私は嫌だもの。そして必ず欲しい結果を手に入れるわ」
私はこの瞬間、エリスの自分がやりたい道を自ら掴み取りに行く姿勢がカッコいいと思っていた。
「ごめんね。関係ない事まで話しちゃったね。今のは、ここだけの話ね」
「分かりました」
するとエリスは立ち上がり、軽く背伸びをした。
「それじゃ私は行くね。貴方もたまには家に帰省しないよ。そうしないと、私みたいに突然お見合いの手紙が来ちゃうかもしれないわよ」
「っ……考えておきます」
そのままエリスは大図書館から立ち去って行った。
私はエリスを見送った後、取り出した本を片付ける為にまとめていると、近くから誰かに見られている視線を感じ手を止める。
何だろ、誰かの視線を感じる気が……
私は何処からの視線かを当たりをつけ、本を持ち片付けに行くふりをして、背後近くの本棚付近を覗き込んだ。
「っ……はぁ~やっぱり気のせい、だよね。敏感になり過ぎたかな。事前にこの辺には誰も居ない事は確認してたし……って言ってもエリス先輩はいたんだけど」
私は気にし過ぎだったと思い、本を元の場所へと返しに行った。
そうして私がその場から離れて行った後、私が先程覗き込んだ本棚の奥から息を殺していた人物が、ゆっくりと息を吐く。
そう、この時私が感じ取っていた視線は勘違いではなく、本物であったのだ。
そしてこの時、本棚の奥から姿を現したのはジュリルであった。
「……クリス、貴方は一体……」
するとオービンはルークの肩から手を離して話し出す。
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「……だ、だよな」
「あぁ、父上母上は俺たちとそう言う話は基本的には断ると同意を聞かれて決めている」
「じゃ! 何でそんな話が来てるんだ! しかも俺に! 兄貴じゃねぇのかよ?」
「……今回は間違いなくお前が指名されている。話が通ってしまったのも、父上母上が認めたからじゃない」
「どういう事だよ?」
「何でも、知らないうちに話が勝手に進んでいたらしい」
「そんなバカな!」
ルークの驚きにオービンも同じ気持ちで頷く。
そしてオービンは黒板に簡単に経緯を描き始めた。
「本来、こう言う見合い話は外交関連とされ、担当部署へと回される。そこから相手の調査を行い、父上たちに報告。そして各関連部署長たちとの会議を経て、最終的に父上が決定を下す」
「細かい所までは知らないが、簡単に話が通る訳ないのは知っている」
「だが、この流れには唯一の例外がある。それは、関連部署長の認定印が過半数ある事だ」
「認定印?」
オービンは頷き、黒板に絵を描きながら話し続けた。
「認定印と言うのは、簡単に言えば問題ないと言う証明だ。調査をせず、会議も行わず直接父上に報告し、判断を仰げるんだ。しかもだ、その場合は父上の認定印が押されれば、仮決定状態になる」
「まさか、今回の一件はそうやって決まったのか?」
「まだ確定と言う訳ではないが、それだと辻褄が合う。それに、一部者が認定印を押した覚えはないと言っているし、父上も認定印を押していないと言っているんだ」
「っ……てことは、誰かが認定印を勝手に使用した」
「もしくは、その人物になりすまして認定印を押した」
その時2人の頭には、以前起きた誘拐事件時の偽者ことを思い出していた。
あの時、タツミ、フェルト更にはオービンと実際に目の前で瓜二つの人物がいたため、今回も同様の可能性があると考えていた。
「まぁ、この辺の話はともかく父上や母上が調査している。ルーク、お前には既に決まってしまっているお見合いに出て欲しんだ。決まってしまったお見合いを今更断る事も出来ないんだ……」
「兄貴が悪い訳じゃないのに、申し訳なさそうにするなよ。親父もが悪い訳じゃねぇし、誰かが仕組んだって事だろ。断りはしねぇよ」
「ルーク……すまない」
「だから謝るなよ。はぁ~で、日程は?」
「正式にはまだだが年明け早々らしい。それに向けて、来週には一度父上が母上と俺たちだけで話がしたいそうなんだ」
「分かった、来週だな」
その後オービンは黒板に描いたものを消した後、ルークに他の連絡事項などを話した後2人は教室を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それで、断ったんだ」
「っ……もういいじゃないですか、エリス先輩!」
「えぇ~今良い所じゃないの」
「全然良くないですよ! と言うか、話が違うじゃないですか!」
「ちぇっ、さすがにこれ以上はダメか」
「はぁ~ちぇっ、じゃないんですよ。全く……」
私はエリスとの交渉成立した後、何故かルークとの関係について問われ始め、断固して答えずにいた。
だが、エリスは答えてくれないのなら交渉はなしだと脅されてしまい、仕方なくちょこっとだけ話したら、何故かその場に居たかの様にエリスが理解しており、ずんずんと話が進んでしまったのだ。
何でエリス先輩がそんな事まで知ってるのよ! おかしいでしょ! ……いや、話した私も悪かったな。
話さなければこんな事にはならなかったはず。
と、一瞬思ったが既に告白の件まで知っているエリスならば、私とルークの出来事を大半理解しているのではないかと思ってしまう。
もしかしたら、エリス先輩は知っていてわざと聞いてるんじゃ……何かそう考えると寒気がする。
私は改めてエリスの情報網と言うべきか、怖さを理解した。
「ごめんって。そんなに避けないでよ」
「……いや、これは誰でも避けますよ。そんなに知られていたら」
「あ~……ちょっと好奇心がね~あはは……自重します」
そう言って軽く頭を下げたエリスを見て、私は小さくため息をつき少し避けた状態から、普通の状態に戻る。
するとエリスは話題を変えて話し掛けて来た。
「そう言えば、クリスの家にもお見合いの話が来たりするの?」
「うちですか? う~ん、どうですかね。来るとは思いますけど、今まで実際に話を聞いた事はないんですよ」
「へぇ~珍しいわね。両親の方針? それとも、本人の意思?」
「俺の方からは何とも。たぶん両親の方で色々とやってくれているんだと思います」
「いい家庭ね」
「そう、だと俺も思います」
エリスはそれを優しい顔で、私が少し照れくさそうに答える所を見ていた。
するとエリスは唐突にポケットから一通の封筒を取り出して、私に見せつけて来た。
「私なんて、ずっと父様から見合い話の連絡が来るのよ。もう、うんざりってほどにね。彼氏もいるって言っているのによ」
「それは大変ですね」
「母様は止めてくれてるみたいなんだけど、父様はそんなの認めん! とか、どこぞの馬の骨より断然いい! とか手紙に書いて来て、毎回見合い相手の写真まで送って来るの」
そう呆れた様に話しながら、エリスは封筒からそのお見合い相手と思われる写真を取り出した。
そこにはどこかの王子と思われる人物が映っていた。
「見た目は確かにカッコいいけど、ミカに比べたら全然ね。と言うか、私王子とか好きじゃないし。はぁ~来週から帰省して父様の説得よ」
「そ、そうなんですね……」
「本当、さっさと父様にもミカとの関係を認めて欲しいわ。クリスも、お見合い大変と言うか面倒だから、好きな相手がいるなら今のうちに言っておいた方がいいわよ。これ、アドバイスね」
「ありがとうございます」
その直後エリスが急に私に顔を寄せて来て、小声で話し始める。
「ちなみにここだけの話、私が帰省する時にミカも帰省するらしいから、突撃してどさくさに紛れて挨拶するつもりなのよね」
「えぇ! だ、大丈夫なんですかそれ!?」
「分からないわ。でも、このままじゃいずれ別れさせられる気がするのよね。だから、先手を打つの。何もしないで勝手に決められるなんて、私は嫌だもの。そして必ず欲しい結果を手に入れるわ」
私はこの瞬間、エリスの自分がやりたい道を自ら掴み取りに行く姿勢がカッコいいと思っていた。
「ごめんね。関係ない事まで話しちゃったね。今のは、ここだけの話ね」
「分かりました」
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「それじゃ私は行くね。貴方もたまには家に帰省しないよ。そうしないと、私みたいに突然お見合いの手紙が来ちゃうかもしれないわよ」
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私はエリスを見送った後、取り出した本を片付ける為にまとめていると、近くから誰かに見られている視線を感じ手を止める。
何だろ、誰かの視線を感じる気が……
私は何処からの視線かを当たりをつけ、本を持ち片付けに行くふりをして、背後近くの本棚付近を覗き込んだ。
「っ……はぁ~やっぱり気のせい、だよね。敏感になり過ぎたかな。事前にこの辺には誰も居ない事は確認してたし……って言ってもエリス先輩はいたんだけど」
私は気にし過ぎだったと思い、本を元の場所へと返しに行った。
そうして私がその場から離れて行った後、私が先程覗き込んだ本棚の奥から息を殺していた人物が、ゆっくりと息を吐く。
そう、この時私が感じ取っていた視線は勘違いではなく、本物であったのだ。
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