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第32話 第一期期末試験⑥~再戦~

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 私はルークが先にドームに入ったのを見てから、遅れてドームへと入り指定場所に移動した。
 これまで通り、前試合からの補給がされているので、試合開始までは時間がまだあった。
 すると、やたらとドーム外に人が集まり始めていた。

 それは他のリーグ戦が終わっている寮生たちが、まだやっている試合を観に来ていたのでだ。
 私とルークで最終戦ではあるが、前年最終期末試験トップ成績のルークの勝負を、一目でも見ようと他の寮生たちも集まっていた。
 その中には、ダンデ、スバン、ロムロスと言った次期寮長候補生たちもいた。
 私は思っていたより、多くの人が注目していると思い少し緊張したが、頬を両手で軽く叩き、気合を入れ直した。

 今私の対戦成績は、1勝1敗でルークは2勝0敗であり、ここで私が勝てばニックと私たちの対戦成績は並び、同率1位となる。
 そうすれば、実力試験の点数は同じになり、学科試験でルークに勝っている私が、そのまま1位になれる。
 この試合に勝てば、目の前に立っているルークに私は期末試験で勝ったと、堂々と宣言できるのだ。

 大丈夫、一度奴とはゴーレム勝負をしており、どういった戦法を使うかも想定済みだ。
 それに加えて、私もあれから成長しているんだ。
 今日こそ、お前の足を掴んで、高みの見物をしている場所から引きずり降ろしてやる!
 私はより一層に気合を入れ、鼻息を荒くした。
 すると突然、今まで全く話し掛けてこなかったルークが話し掛けて来た。

「おい、クリス! ゴーレム勝負をするのは、これで2度目だな! 前回からどれだけ強くなったか、俺に教えてくれよ!」
「うっせ! 言われなくても、見せてやるよ! 前にも言ったが、いつまでも学院の頂点気分でいられると思うなよ! 今日、俺がお前をそこから引きずり落としてやるから、覚悟しとけ!」

 私の罵倒じみた言葉をルークが聞くと、うっすら笑っているように見えて、背筋が一瞬寒くなった。
 するとルークは、この場でいらない事を口にした。

「そうだ、クリス。あの日の約束、忘れるなよ! 結果は、この試合で決まるも同然だぞ!」
「っ! お、お前な! 今そんな事言わなくていいんだよ!」

 私が少し動揺していると、教員の方から準備が整ったので始めると言い渡される。
 そして教員が、私たちにルール内容の承諾を求め、私たちが頷くと3分間の試合準備時間が言い渡された。
 同時に、上空の3分間の残り時間が減り始めた。
 私は初めの1分間は、魔力質量に集中し魔力を貯めた後、魔力技量にて武装を創りつつ、魔力制御で貯めた魔力を全身に行き届く様にした。
 ルークも当たり前の様に、魔力同時使用で、魔力質量と魔力技量にてゴーレムを仕上げて行った。

 そして、残り15秒を切って両者のゴーレムが完成した。
 私は、両手の全てに筒状にした防具を装備させ、残りで胴部の防具を創り装備させた。
 ルークの方は、両腕と胴部のみ防具を装備させた、シンプルな形になっていた。
 直後、試合開始の鐘の合図が鳴り響くが、両者とも全く動かなかった。
 するとルークが私に話し掛けて来た。

「クリス! 俺は攻めない。だから、お前の力を全力で放って来い!」
「っ!?」

 罠と言うより、完全な挑発であり、本気で言ってきているとルークの性格から理解した。
 なら、遠慮なくやらせてもらう! お前用に取っておいた、とっておきを見せてやる!
 私はゴーレムに片膝を付かせ、両手の筒を地面へと接着させた。
 そこから一気にゴーレムに貯めた魔力を地面へと魔力制御を使い、流し込んだ。
 私の予期せぬ行動に、ドーム外ではざわついていた。
 そして私はそこから、魔力創造を使用しゴーレム横に2ずつ土の塊を創りだし、同時に魔力技量を使用して、ゴーレムを創りだした。

 私は膝を付かせたゴーレムを立ち上がらせて、一気に5対1という構図を作り出した。
 創り出した4体のゴーレムは、元は1体のゴーレムの魔力から創りだしているので、簡単に言えば5等分に分けたというイメージだ。
 だが操作は、魔力を分けた1体を元に操作するので、魔力制御が得意でないと出来ないが、私には出来る。
 何故ならば、私が女性であり、元の学院で一番得意としていたのが、魔力制御だからだ。
 魔力技量は幼い時に遊びで身についていたので、ここでは男子を演じるので技量をメインにしていたが、この試合ではそんな事する必要もない。

 すぐさま私は2体でルークに向かって、突撃させた。
 しかし、いとも簡単に魔法も使わず体術で撃破されてしまう。
 私は休む間も与えずに、更に2体のゴーレムを左右から挟み込むように突っ込ませていたので、撃破されると同時に2体がルークの元に突然と現れるように見えた。
 そして私は、『エクスプローション』の魔法を唱え撃破を狙うが、ルークはそれを読んでいたかのように『ガスト』を使用し、前方から突き飛ばされる様に後方に移動した。
 直後、私の2体のゴーレムがぶつかり合い、大きな爆発が起こり一帯は煙に包まれる。
 私は苦しい顔をしていたが、ルークは何故か残念そうな顔をしていた。

「(何故、以前と同じ戦法を取ったんだ。一度通用したからと、同じ戦法が通じるわけないだろ)」

 ルークが私に対して、少し呆れていると徐々に煙が晴れて行き、そこに広がった異様な光景に一瞬、眉が動く
 広がっていた光景は、ルークを楕円状に囲う様に、土が鉄球の様に硬く固まった球体が、無数に宙に浮いていたのだ。
 そのまま私は、一気に球体をルークに向け放つが、ルークが小さく呟いた。

「くだらない」

 次の瞬間、ルークに向けて放たれた球体が、ルークへと届く前に空中で全て停止したのだ。
 まさかの事に、驚いていると次々に私の魔力制御下から、球体のリンクが切れて行っているのが分かった。

「これは……乗っ取り」

 私の魔力制御下にあった物を、強引にルークが周囲に魔力を放ち、魔力制御を乗っ取ったのだ。
 そのままルークは、空中に停止させた球体を全て破壊した。
 その時点で、私は完全に手詰まりとなり、冷や汗が頬をたどった。
 するとルークがため息を漏らす。

「お前なら、もっと近づいてくれると思っていたが、少し期待し過ぎたか…いや、俺が勝手にハードルを高く設定していたのが原因か」

 何かぶつぶつと言っている様に見えたが、全く私には聞こえていなかった。

「まぁ、今回はこんな所か。いい機会だ、クリス! 今の俺の力を見せてやる! そして、再認識しろお前が倒すと豪語した相手を!」

 突然大声を出したルークに反応すると、ルークは両手で魔力を使用し始めた。
 直後地面から土の塊が次々と浮き上がり、どんどんゴーレムが天に上げた片腕にくっつき始めると、そこに貯めていた魔力を一点に流し始めた。
 そして更に、同時に『バースト』の魔法を唱えると、ゴーレムの片腕から天に掲げ伸びる箇所が炎で包まれる。
 そのまま、さらに土の塊はくっつき、そこに魔力は流れ続き、炎の威力も上がって行き、そこで私は気付いたのだ、ルークは今3つの魔力同時使用をしているのだと。

 今まで第2学年では、二代目月の魔女ことジュリルしか出来なかった事を、ルークは顔色一つ変えずにやっていた。
 この状況でも凄いのに、更にルークは考えられない行動をした。
 それは、『バースト』でない別の魔法『アイス』と『スパーク』を唱え、その3つの魔法が徐々に天に昇りながら重なって行き、そして魔法融合を発生させたのだ。
 魔力の3つ同時使用でも驚きなのに、そこに魔法融合まで行い、完全に周囲は理解が追い付いていなくなっていた。

 魔法融合とは、生涯で一度出来れば運が良いと言われる程、奇跡的な出来事という認知であり、多くの学者が研究対象としている物でも、近年やっと証明されていたりと注目されているものだ。
 そんな魔法融合を直で目の当たりにし、更に魔力の3つ同時使用しながら行ったルークに対し私は、完全に戦意喪失していた。

「何なんだよ、この第二王子……バケモノじみてるだろ。と言うか、こいつの鼻を折るとか本当に出来るのか、私」

 そしてルークが、魔法融合させた魔法がドラゴンの姿に代わり、私のゴーレム目掛け放たれてゴーレムは消滅し、勝敗が着き私の負けが決まった。
 それと同時に私の頭の中では、ルークとのデートが頭がよぎった。


 リーグ1の最終戦終了時の順位
  1位 ルーク  3勝0敗
  2位 ニック  2勝1敗
  3位 クリス  1勝2敗
  4位 ガウェン 0勝3敗


 こうして、第一期期末試験最終日の実力試験が終了したのだ。
 最終結果順位や成績は、数日後発表されると言い渡され、第一期期末試験全日程が終了した。
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