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2章 バイト先で偶然出逢わない
2章20 皐月組 ①
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「よォ、兄弟。ゆっくりしてけよ――」
ニヤリと嗤って座るよう勧めてくる皐月 惣十郎――この皐月組の現当主の息子であり跡取りでもある男に、弥堂はどこか呆れたような眼を向ける。
「なんだ惣十郎。そのザマは」
「あン? これかァ?」
顏が見えないほど入念に巻かれた包帯。
彼はなにも普段からこのような姿をしているわけではないからだ。
弥堂の質問を受けた惣十郎は包帯だらけで布団の上に座る自身の姿を指して、カッカッカッと上機嫌に笑った。
「ワリィな、こんな見てくれでよ。実は昨日親父にヤキ入れられちまったんだ」
「ヤクの件か?」
答えながら弥堂は黒服が用意してくれた座布団の上に座る。
オドオドとしながらウマヅラくんもそれに倣った。
「おォ、その通りだぜ兄弟。こないだの“WIZ”の件でちょいと勝手しすぎちまったからな」
「親父さん具合悪いんじゃなかったか?」
「おぉ。それもそうなんだが、親父のヤツ久々に人殴ったらよ、腰やっちまいやがんの」
「ダメじゃねえか……」
「本気で関係悪化したわけではないんですが、オジキたちの手前、シメシは必要だったんです」
弥堂が余計に呆れてしまうと、布団の横に座る40台の男が惣十郎の言葉を補足した。
スーツ姿で表情も硬い質実剛健な雰囲気の男だ。その声も静かで重い。
「久しぶりです。山南さん」
「ご無沙汰だね、弥堂さん。元気そうでよかったです」
弥堂が軽く頭を下げて挨拶をすると、山南は薄く笑って答えた。
弥堂は彼に少し複雑そうに眉を緩めた。
「敬語はやめてくれ山南さん。アンタにそんな風にされると、身の置き処に困る」
「フ、ということは効果的だということですね。とはいっても、アナタは若の客人だ。兄弟分の盃を交わしてはいないが、私は事実上そう見ている」
山南は僅かに口角を上げて、浮かべていた薄い笑みを少しだけ意地の悪いものにした。
「とは言っても、アンタは若頭だろ? それで惣十郎はその補佐だ。アンタの方が立場は上のはずだ」
「それこそ事実上ですよ。次の代を若が継ぐことは内々に決まっていますからね」
「そうだぜ? オレは今研修中のインターンってとこだ」
「ヤクザの世界でそんなもん通用すんのか? それこそシメシが付かねえだろ」
「まぁ、ウチのような田舎の三次団体はその辺は緩いんですよ。なにせ若が子供の頃から一緒に生活してきたヤツらが少なくないし、組員のガキがそのままウチに入ってくることも昔から多い」
「そうそう。ウチの組は家族経営のアットホームな職場だからよ」
「ダブルでブラックな最低の職場だな。ロクなモンじゃねえ」
「そういうこった! わかってんじゃあねェか兄弟!」
一般の人たちには何が面白いのかわからないブラックジョークで、悪い男たちは談笑する。
「それより今日は……」
雑談から本題に切り替えようとした山南だったが、ふと弥堂の顏に目が留まった。
「どうした山南……、って――」
その様子を訝しんだ惣十郎も、山南の視線を追って同様に固まる。
「なんだ?」
ヤクザ二人にジッと見つめられて弥堂は怪訝な顔をした。
よく見ると二人の視線が向いているのは弥堂の顏ではなく頭の上だ。
皐月組の中でも血も涙もない人間として周知されている男の頭の上に、ラブリーなネコさんが乗っかっていることに彼らは激しい違和感を覚えたのだ。
弥堂の頭の上でグデっとしていたメロだったが、弥堂が山南に話しかけたタイミングで起き上がっていて、その為に目に付いたようだ。
この世全ての存在をナメきっていて誰にでもケンカを売る狂犬であると悪魔にも恐れられていた男が、誰かに対して敬意を表したことに激しい違和感を覚えたので、メロは思わずギョッと身を起こしてしまったのだ。
惣十郎と山南は目を見開いて驚いた後、揃って同情的な目になる。
「……兄弟、オメーちょっと疲れてんだよ。ちっとウチで寝てけ。女も呼ぶからよ」
「……オイ。お歳暮でもらったハワイのお茶あったろ。滋養強壮の。アレに変えろ」
「いらねえよ」
弥堂は胡乱な瞳で彼らの申し出をきっぱりと断った。
それでも彼らがチラチラと頭上のネコさんを見てくるので、手でメロを押さえつけて無理矢理座らせる。
それから、出しかけていた普通の日本茶を引っ込めようとする行儀見習いの組員さんに、「それでいい」と声をかけて湯呑を受け取った。
「あ、ありがとうございます……」
酷く恐縮した様子のウマヅラくんの前にもお茶を置くと、お茶出しの組員さんは一礼して部屋を出て行った。
パタリと、障子が閉まる。
「――で? 今日はどうした?」
それを見計らったように惣十郎が水を向けてきた。
「…………」
弥堂は少し間を置いて、自身の前に置かれた湯呑を手に取る。
そしてそれを呷った。
「へェ……?」
自身がした問いへの答えがされていないが、惣十郎は面白げにした。
「なるほどね。ンで、ソイツは?」
そして、ここまでほぼ無視していたウマヅラくんのことを、この時にようやく尋ねる。
自身のことに話題を振られて、ウマヅラくんはビクリと震えた。
そんな彼に、弥堂はジロリと横目を向けた。
「おい、飲め」
「え……?」
「その茶を飲め。早くしろ」
「あ、あぁ……」
弥堂に急かされて、ウマヅラくんはおっかなびっくりしながら湯呑に口をつけ、一口飲む。
彼が湯呑を置くと、弥堂は視線を惣十郎へと戻した。
「――もう一日早ければ、お前が痛い目見なくて済んだかもな」
「……と云うと?」
「こいつ、“WIZ”の売人だ」
「へェ……?」
「ひっ――」
ここで初めて興味を持ったように、惣十郎は獰猛な視線でウマヅラくんを刺した。
「こいつは馬島 尚斗。“ハーヴェストグループ”が持っている“STARDUST”って店のホストだ」
「ホストね。まぁ、種撒きの場としてはありがちだな」
「それと、こいつらとは別口で“R.E.D SKULLS”の中に外人街から売人が入ってるようだ」
「“スカルズ”だと?」
「あぁ。“WIZ”を捌くために潰れかけてた“皇帝”を立て直したようだ。だが普通に売るのではなく、何か新しいスキームを作ろうとしているように思える」
「なるほどな……。だが、どうであれ、だ。こいつァお手柄だぜ、兄弟」
「それはこいつ次第だな。三下だからどこまで情報を抜けるかは期待できん」
「そっからはこっちに任せとけよ。よォ、テメエ――」
声を一段低くした惣十郎に馬島は震える。
「――テメエこの野郎。“WIZ”なんか売りやがってこのクズが」
「ひっ、す、すいません……っ」
どちらに対しても『どのクチが』と思いながら惣十郎の挨拶代わりの尋問を聞き流し、弥堂は他人事のように宙空へ眼を遣った。
すると、頭の上でメロがウトウトでもしているのだろうか。
寝床を均すように弥堂の頭をフミフミし始める。
たまに頭皮に爪が引っ掛かって鬱陶しいので、弥堂は迷惑そうな顔をした。
「――オレらっのシマでナメたマネしやがって……、まぁいい。たっぷり絞ってやるさ。山南――」
「はい――オイッ! この野郎を連れてけッ!」
惣十郎の意図を目線で組んだ若頭は障子の外へ声を張る。
すると――
「――ヘイ! カシラァ!」
「おい、立てこの野郎」
障子がすぐにスッと開き、数人の黒服が部屋に入ってきた。
「ひ、ひぃぃ……、ま、まって……っ!」
ウマヅラくんはガターンっと腰を抜かして尻を引き摺って後退る。
「なァに、ベツにケジメつけろって話じゃあねェ。テメエの態度と、持ってるネタ次第だがな……」
「ち、ちがう……っ! 話が違うぞ……っ!」
「アン?」
惣十郎が眉を顰めるが、ウマヅラくんが非難する相手は彼ではない。
弥堂だ――
「――ケ、ケツもってくれるって……! 安全な場所に連れてってくれるって言ったじゃねェか……ッ!」
ウマヅラくんの苦し紛れなクレームに弥堂は嘆息する。
「お前は馬鹿か?」
「な、なんだと……ッ」
「お前はもう外人街にも路地裏にも睨まれてる。だったら生き残るにはもう皐月組しかねえだろ?」
「そ、そうかもしれねえが……。でも、ここで謳ったのがバレたらオレはもう……っ」
「だから、お前は皐月組がお前を守りたくなるようなネタを出す必要がある。自分は役に立つパシリだと、売り込む必要が。生き残るために何をすればいいか明確だろ?」
「うっ、うぅ……っ」
「なんでそんな簡単なことがわからない。お前のウダツが上がらないのはそういうとこだぜ?」
「…………」
本気で不可解そうな顔をする弥堂の言葉に、ウマヅラくんはガックリと首を垂れた。
両脇を二人の男にそれぞれ抱えられ部屋の外へ引き摺られていく。
「あぁ、そうだ――」
そんな彼に、弥堂は思い出したように追撃をする。
「――今夜中までに“WIZ”をあと何本か用意しとけよ」
「は……?」
その無茶な要求にウマヅラくんはガバっと顔を上げた。
「む、ムリだ……! さっきもムリだって……」
「知るかよ。クズが」
弥堂が肩を竦めて答えを突っぱねると、
「即答しろよこの野郎ッ」
「そういうとこだぜガキが」
彼を引き摺っている組員たちが次々にウマヅラくんを脅かす。
そのまま彼は泣きながら別室へと連れていかれた。
足音が遠ざかると、部屋に残った者たちは何事もなかったように話を再開させる。
「さて、取引か。何か頼みごとがあるって言ってたな兄弟。こんなプレゼント貰っちまったら何でも聞いちまいそうだぜオレぁ。言いな」
「あぁ――」
弥堂は話す順番を少し考えてから、口を開く。
「まず聞きたいことがあるんだが」
「いいぜ。なんだ?」
「コロシについて」
「アン? 自分で殺らねェのか? 誰を殺ってくれって?」
「そうじゃない。国道の廃墟のホームレス。あれについて聞かせろ――」
この場所に相応しく、早速物騒な話から始まった。
ニヤリと嗤って座るよう勧めてくる皐月 惣十郎――この皐月組の現当主の息子であり跡取りでもある男に、弥堂はどこか呆れたような眼を向ける。
「なんだ惣十郎。そのザマは」
「あン? これかァ?」
顏が見えないほど入念に巻かれた包帯。
彼はなにも普段からこのような姿をしているわけではないからだ。
弥堂の質問を受けた惣十郎は包帯だらけで布団の上に座る自身の姿を指して、カッカッカッと上機嫌に笑った。
「ワリィな、こんな見てくれでよ。実は昨日親父にヤキ入れられちまったんだ」
「ヤクの件か?」
答えながら弥堂は黒服が用意してくれた座布団の上に座る。
オドオドとしながらウマヅラくんもそれに倣った。
「おォ、その通りだぜ兄弟。こないだの“WIZ”の件でちょいと勝手しすぎちまったからな」
「親父さん具合悪いんじゃなかったか?」
「おぉ。それもそうなんだが、親父のヤツ久々に人殴ったらよ、腰やっちまいやがんの」
「ダメじゃねえか……」
「本気で関係悪化したわけではないんですが、オジキたちの手前、シメシは必要だったんです」
弥堂が余計に呆れてしまうと、布団の横に座る40台の男が惣十郎の言葉を補足した。
スーツ姿で表情も硬い質実剛健な雰囲気の男だ。その声も静かで重い。
「久しぶりです。山南さん」
「ご無沙汰だね、弥堂さん。元気そうでよかったです」
弥堂が軽く頭を下げて挨拶をすると、山南は薄く笑って答えた。
弥堂は彼に少し複雑そうに眉を緩めた。
「敬語はやめてくれ山南さん。アンタにそんな風にされると、身の置き処に困る」
「フ、ということは効果的だということですね。とはいっても、アナタは若の客人だ。兄弟分の盃を交わしてはいないが、私は事実上そう見ている」
山南は僅かに口角を上げて、浮かべていた薄い笑みを少しだけ意地の悪いものにした。
「とは言っても、アンタは若頭だろ? それで惣十郎はその補佐だ。アンタの方が立場は上のはずだ」
「それこそ事実上ですよ。次の代を若が継ぐことは内々に決まっていますからね」
「そうだぜ? オレは今研修中のインターンってとこだ」
「ヤクザの世界でそんなもん通用すんのか? それこそシメシが付かねえだろ」
「まぁ、ウチのような田舎の三次団体はその辺は緩いんですよ。なにせ若が子供の頃から一緒に生活してきたヤツらが少なくないし、組員のガキがそのままウチに入ってくることも昔から多い」
「そうそう。ウチの組は家族経営のアットホームな職場だからよ」
「ダブルでブラックな最低の職場だな。ロクなモンじゃねえ」
「そういうこった! わかってんじゃあねェか兄弟!」
一般の人たちには何が面白いのかわからないブラックジョークで、悪い男たちは談笑する。
「それより今日は……」
雑談から本題に切り替えようとした山南だったが、ふと弥堂の顏に目が留まった。
「どうした山南……、って――」
その様子を訝しんだ惣十郎も、山南の視線を追って同様に固まる。
「なんだ?」
ヤクザ二人にジッと見つめられて弥堂は怪訝な顔をした。
よく見ると二人の視線が向いているのは弥堂の顏ではなく頭の上だ。
皐月組の中でも血も涙もない人間として周知されている男の頭の上に、ラブリーなネコさんが乗っかっていることに彼らは激しい違和感を覚えたのだ。
弥堂の頭の上でグデっとしていたメロだったが、弥堂が山南に話しかけたタイミングで起き上がっていて、その為に目に付いたようだ。
この世全ての存在をナメきっていて誰にでもケンカを売る狂犬であると悪魔にも恐れられていた男が、誰かに対して敬意を表したことに激しい違和感を覚えたので、メロは思わずギョッと身を起こしてしまったのだ。
惣十郎と山南は目を見開いて驚いた後、揃って同情的な目になる。
「……兄弟、オメーちょっと疲れてんだよ。ちっとウチで寝てけ。女も呼ぶからよ」
「……オイ。お歳暮でもらったハワイのお茶あったろ。滋養強壮の。アレに変えろ」
「いらねえよ」
弥堂は胡乱な瞳で彼らの申し出をきっぱりと断った。
それでも彼らがチラチラと頭上のネコさんを見てくるので、手でメロを押さえつけて無理矢理座らせる。
それから、出しかけていた普通の日本茶を引っ込めようとする行儀見習いの組員さんに、「それでいい」と声をかけて湯呑を受け取った。
「あ、ありがとうございます……」
酷く恐縮した様子のウマヅラくんの前にもお茶を置くと、お茶出しの組員さんは一礼して部屋を出て行った。
パタリと、障子が閉まる。
「――で? 今日はどうした?」
それを見計らったように惣十郎が水を向けてきた。
「…………」
弥堂は少し間を置いて、自身の前に置かれた湯呑を手に取る。
そしてそれを呷った。
「へェ……?」
自身がした問いへの答えがされていないが、惣十郎は面白げにした。
「なるほどね。ンで、ソイツは?」
そして、ここまでほぼ無視していたウマヅラくんのことを、この時にようやく尋ねる。
自身のことに話題を振られて、ウマヅラくんはビクリと震えた。
そんな彼に、弥堂はジロリと横目を向けた。
「おい、飲め」
「え……?」
「その茶を飲め。早くしろ」
「あ、あぁ……」
弥堂に急かされて、ウマヅラくんはおっかなびっくりしながら湯呑に口をつけ、一口飲む。
彼が湯呑を置くと、弥堂は視線を惣十郎へと戻した。
「――もう一日早ければ、お前が痛い目見なくて済んだかもな」
「……と云うと?」
「こいつ、“WIZ”の売人だ」
「へェ……?」
「ひっ――」
ここで初めて興味を持ったように、惣十郎は獰猛な視線でウマヅラくんを刺した。
「こいつは馬島 尚斗。“ハーヴェストグループ”が持っている“STARDUST”って店のホストだ」
「ホストね。まぁ、種撒きの場としてはありがちだな」
「それと、こいつらとは別口で“R.E.D SKULLS”の中に外人街から売人が入ってるようだ」
「“スカルズ”だと?」
「あぁ。“WIZ”を捌くために潰れかけてた“皇帝”を立て直したようだ。だが普通に売るのではなく、何か新しいスキームを作ろうとしているように思える」
「なるほどな……。だが、どうであれ、だ。こいつァお手柄だぜ、兄弟」
「それはこいつ次第だな。三下だからどこまで情報を抜けるかは期待できん」
「そっからはこっちに任せとけよ。よォ、テメエ――」
声を一段低くした惣十郎に馬島は震える。
「――テメエこの野郎。“WIZ”なんか売りやがってこのクズが」
「ひっ、す、すいません……っ」
どちらに対しても『どのクチが』と思いながら惣十郎の挨拶代わりの尋問を聞き流し、弥堂は他人事のように宙空へ眼を遣った。
すると、頭の上でメロがウトウトでもしているのだろうか。
寝床を均すように弥堂の頭をフミフミし始める。
たまに頭皮に爪が引っ掛かって鬱陶しいので、弥堂は迷惑そうな顔をした。
「――オレらっのシマでナメたマネしやがって……、まぁいい。たっぷり絞ってやるさ。山南――」
「はい――オイッ! この野郎を連れてけッ!」
惣十郎の意図を目線で組んだ若頭は障子の外へ声を張る。
すると――
「――ヘイ! カシラァ!」
「おい、立てこの野郎」
障子がすぐにスッと開き、数人の黒服が部屋に入ってきた。
「ひ、ひぃぃ……、ま、まって……っ!」
ウマヅラくんはガターンっと腰を抜かして尻を引き摺って後退る。
「なァに、ベツにケジメつけろって話じゃあねェ。テメエの態度と、持ってるネタ次第だがな……」
「ち、ちがう……っ! 話が違うぞ……っ!」
「アン?」
惣十郎が眉を顰めるが、ウマヅラくんが非難する相手は彼ではない。
弥堂だ――
「――ケ、ケツもってくれるって……! 安全な場所に連れてってくれるって言ったじゃねェか……ッ!」
ウマヅラくんの苦し紛れなクレームに弥堂は嘆息する。
「お前は馬鹿か?」
「な、なんだと……ッ」
「お前はもう外人街にも路地裏にも睨まれてる。だったら生き残るにはもう皐月組しかねえだろ?」
「そ、そうかもしれねえが……。でも、ここで謳ったのがバレたらオレはもう……っ」
「だから、お前は皐月組がお前を守りたくなるようなネタを出す必要がある。自分は役に立つパシリだと、売り込む必要が。生き残るために何をすればいいか明確だろ?」
「うっ、うぅ……っ」
「なんでそんな簡単なことがわからない。お前のウダツが上がらないのはそういうとこだぜ?」
「…………」
本気で不可解そうな顔をする弥堂の言葉に、ウマヅラくんはガックリと首を垂れた。
両脇を二人の男にそれぞれ抱えられ部屋の外へ引き摺られていく。
「あぁ、そうだ――」
そんな彼に、弥堂は思い出したように追撃をする。
「――今夜中までに“WIZ”をあと何本か用意しとけよ」
「は……?」
その無茶な要求にウマヅラくんはガバっと顔を上げた。
「む、ムリだ……! さっきもムリだって……」
「知るかよ。クズが」
弥堂が肩を竦めて答えを突っぱねると、
「即答しろよこの野郎ッ」
「そういうとこだぜガキが」
彼を引き摺っている組員たちが次々にウマヅラくんを脅かす。
そのまま彼は泣きながら別室へと連れていかれた。
足音が遠ざかると、部屋に残った者たちは何事もなかったように話を再開させる。
「さて、取引か。何か頼みごとがあるって言ってたな兄弟。こんなプレゼント貰っちまったら何でも聞いちまいそうだぜオレぁ。言いな」
「あぁ――」
弥堂は話す順番を少し考えてから、口を開く。
「まず聞きたいことがあるんだが」
「いいぜ。なんだ?」
「コロシについて」
「アン? 自分で殺らねェのか? 誰を殺ってくれって?」
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