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2章 バイト先で偶然出逢わない

2章03 4月29日 ⑪

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 コロっと論調を変えたようにしか思えない望莱の言葉に希咲は戸惑う。


「――どういうこと?」

「今までしていたのはここまでに起こったことの考察。そして今からはこれからどうするかの話をします」


 当たり前のことのように望莱は言う。

 希咲は不可解さから眉を寄せた。


「それはわかるけど……。でもさ、あんた言ってること変わってんじゃん」
「そうですか?」

「そうよ。だって、弥堂に近づくなって言ったじゃん。その理由が天使とか警察とかのことがあるからって説明してくれたんでしょ?」
「そうですね」


 即答で肯定してから、そこで望莱は困ったように笑う。


「個人的な本音で言えば、確かに“せんぱい”に関わって欲しくないし、水無瀬先輩からも手を引いて欲しいです。それは正直なお気持ちです」

「えっと、ごめん……」

「いいんですよ。それに、それとこれとは別ですから」

「ベツ……って?」

「今言ったのはわたしの“お気持ち”。けれど、わたし基本的なスタンスは推しの全肯定ですから。推しの活動の邪魔はしません」

「や。言ってることはわかるかもだけど……。あんた、その“推し”ってどこまで――」

「――どこまでも、ですよ」


 希咲の問いを最後まで聞くことなく、望莱は答える。


「もちろん100%ぜんぶ本気です。わたしのして欲しいことと違っても、わたしは七海ちゃんのしたいことを全力で応援しますし、加担もします」

「…………」


 嬉しさも危うさも同時に感じてしまい、希咲は返答に困る。


「というかですね。さらに本音を言うと、ここで七海ちゃんと言い争ったとしても、やろうと思えば論破も説得も出来るといえば出来ます。でも、七海ちゃんはメンヘラさんですから……」

「はっ⁉」


 しかし、続いた望莱の言葉に希咲の眉は瞬時に吊り上がった。

「はぁ……」と、望莱はこれ見よがしに溜息を吐く。


「この場では『わかったぁ』とか言っても、どうせ数日ももたずに『みらいはああ言ってたけどぉ……、正しいってわかってるけどぉ、でもぉ、あたしはぁ、どうしてもぉ、したいのぉ……』とかってなりますから」

「あたしそんなバカっぽくないから!」

「いいえ。七海ちゃんは大体こうです。まぁ、冗談はともかく。予期せぬタイミングで強硬手段に出られるよりは、最初から不利だとわかった上で一緒に勝ちにいく方がリスクが減る場合もあります。その方法を考えることがわたしの得意なことでもありますし」

「うっ……、なんか、ちょっとモヤるけど……、でも、ありがと……?」

「うふふ」


 承認欲求を満たして望莱は清楚に微笑む。


「けど、それだけでもないんです」

「え?」

「今のは七海ちゃん個人にフォーカスした時の理由なんですけど、実はわたしたち全体にとっても今後に関わる問題になるかもしれないんです」

「どういうこと?」


 表情を改めた希咲が慎重に問うと、望莱も真剣な顏に戻る。


「まず、警察の動きを見守ってからこっちの動きを決めるっていうのは無難な対応です。でもわたし、場合によってはこれだと詰む可能性もあるって思っていまして」

「なんで?」

「ヒントは『英雄』です」


 与えられたヒントについて希咲は少し考える。


「……天使のこと?」

「いいえ。もちろん、天使をやっつけた七海ちゃんのことを隠すっていうのはマストです。ですが、今回の事件には、最低あともう一人の英雄がいるんですよ」

「もう一人……? それって聖人のこと――あ、違う。そうじゃない。そういうことか……!」

「はい。魔王級の悪魔が撤退したのではなく、斃されたのであれば――当然それを斃した者が居ますよね? ということは、その人もまた英雄の扱いになるんですよ」

「でも……、それがなんでダメなの?」

「英雄は一人なら許容できます。でも、二人以上はダメです。非常にマズイです」

「どうして?」

「まず、そうですね……。仮に七海ちゃんのことがバレちゃったとするじゃないですか? そうなったらわたしは日本を亡ぼすと言いましたが、それをしなかった場合の話をします」

「しなかった場合っていうか、すんな」

「ふふふ。もしも七海ちゃんがメジャーデビューしちゃったら――」

「英雄バレをメジャーデビューって言うな」

「んもぅ。七海ちゃん? 今はマジメに話をしているんですよ? ふざけてチャチャを入れないでください」

「なんなのっ!」


 七海ちゃんを怒らせて栄養を補給してから望莱は真剣に伝えるために声音を重くした。


「もしも七海ちゃんのことがバレたら、その場合は陰陽府ではなく清祓課――つまり政府の方に付きます」

「まぁ、そっちのがマシか……」

「ですです。でも、この英雄ポジには元々兄さんを置く予定だったんです」

「聖人を?」

「はい。あの兄ですから。いつまでも隠しておけないです。多分もう清祓課には半分くらいはバレてるかもしれないですし」

「あ、うん。絶対にいつかやらかすわよね」

「もうすぐ1年ですけど、むしろここまでよくもった方ですね」


 彼がやらかすシーンを想像して希咲がげんなりとすると、望莱は苦笑いをした。


「まぁ、だからいずれそうなる予定だったんです。そうしたら清祓課に押し付けて、将来不良債権確定のダメ兄をそのまま就職させてしまおうと」

「まぁ、陰陽府の方とは絶対に合わないわよね」

「ですです。だったんですけど、その予定が変わりました」

「あ、そっか。あたしが……、ゴメン……」

「いいんですよ。それに七海ちゃんのことがなくても現状のマズさは変わらないですし」

「え?」


 目を丸くした希咲に自分の危惧することを語る。


「ここで問題になるのが、兄さんと七海ちゃん――英雄が二人となる。そうしたら最悪兄さんは陰陽府の方にくれてやらないといけないかもです」

「は? なんで?」

「バランスが悪くなるからです。政府と陰陽府。片方だけに英雄が二人。それはパワーバランスが崩れすぎています」

「あたしも聖人も清祓課に入ったら陰陽府が納得しないってこと?」

「そうです。陰陽府がまだ元気な内にそんな独占をしてしまったら、東西で戦争になるかもしれないです」

「そ、そんな大事になんの……?」

「最悪の場合、ですけどね」


 そう捕捉した望莱の表情から、それが楽観的なものではないことが希咲にも伝わった。


「では、今回の事件を経た現状を、その情勢に当て嵌めてみましょう」

「あ、わかってきたかも」

「はい。仮に魔王を斃したのが弥堂せんぱいだとします。その彼が警察に捕捉されたらそのまま清祓課に取り込まれるでしょう。というか、絶対にそうされます。応じなければ彼はよくて無期懲役、ほぼ確で死刑になります」

「し、死刑って……」

「彼らはやろうと思えばそれくらいのことは可能です。そして、そうすることは酷く正しいことです」

「そんなの……」


 わずかな怒りを噛み潰すように俯く希咲の顏を見て、望莱は話を変える。


「まぁ、それは一旦置いておきましょう。今重要なのは、弥堂せんぱいが魔王討伐の英雄と為った場合です。その先にどういった不都合がありますか?」

「……その後で、あたしか聖人のどっちかがバレたら――」

「――そうです。どっちがバレるにしろ、わたしたちは陰陽府に与しなければならなくなる。それって色々な意味でNGですよね」

「……マジめんどくさくなってるわね。こっちはそんな場合じゃないのに」


 苦虫を噛み潰したような顔をする希咲に望莱も同調してみせた。


「全くめんどくさいです。でも、もっとめんどいのは、七海ちゃんも兄さんもどっちも見つかることです。そうすると政府か陰陽府、どっちかに所属する英雄を二人にしなければならない。それを避けるなら、誰か一人を教会かアメリカにでも送ります? もうわけわかんないことになっちゃいますよね。いっそ戦争でもしてしまった方が楽って思っちゃいそうです」

「そっか。つまり、今回は無難な行動じゃなくって、攻めていかなきゃいけないのは――」

「――そう。弥堂せんぱい。正確には魔王を斃した人物を警察よりも陰陽府よりも先に、わたしたちで押さえる必要があります」

「愛苗を見つけたら終わりなんてことには絶対にならないってことね……」


 どうしてこんなことになってしまったのかと嘆きたくなくが、今はそんな余裕もない。


「わたしは別に戦争でもいいんですけど、出来ればもう少し準備が整ってからの方が有利になれます。でも、七海ちゃんの家族のこととか考えたら、七海ちゃん的には戦争は“ヤ”ですよね?」

「そうね。ヤね」

「では、そうはならないように一緒に頑張りましょう」

「ん。わかった」


 お互いの意思を確認し、その為の話に移る。


「ですがその前に。まだあと二つほどしておかなければならない話があります。さっきはああ言いましたけど、これに同意頂けない場合は、わたしたちが美景に戻るまで動くのは待ってもらいます」

「うん。なに?」

「まず、一つ目ですが……」


 彼女にしては珍しく、言いかけてから少し考え込むような仕草を見せた。


「どうしたの?」

「……今からわたし、七海ちゃんがすっごく怒ること言いますね」

「え? な、なに?」

「あくまで可能性としてですが、常に頭に入れておいて欲しいことがあります。出来れば怒らないで、冷静にちゃんと話を聞いて欲しいです」

「ん、わかった」


 望莱の言わんとしていることには見当がつかないが、希咲はしっかりと受け止めることにした。


「では。水無瀬先輩が敵である可能性もあるということです」

「は? ちょっとあんたなに言って――」


 しかし、出てきた望莱の言葉に即座に噛みつこうとする。


「ジィっ……」

「はっ――⁉」


 それを予測していた望莱がジト目で圧をかけるとハッとした七海ちゃんはお口を噤んだ。


「ごめん……」

「うふふ。とまぁ、ここまでの話でわかると思いますが、今回の真相はどんなビックリ展開になってもおかしくないです。それはご理解いただけますよね?」

「……うん」

「状況的には水無瀬先輩も敵側だったって話になることも十分にありえるんです。弥堂せんぱいとグルで魔王の召喚を行った。そんな可能性だってあります」

「…………」

「なんなら水無瀬先輩の方が主犯で――とか、水無瀬先輩が悪魔で弥堂せんぱいを魅了して操ってた――とか。そんなことだってあるかもしれません」

「でもさ……」

「誤解しないで下さい。その真相を解き明かそうって話がしたいんじゃないです。今してる話の目的は別です」

「え?」

「ただ、そういう可能性もあるということを、ちゃんと理解して事に当たって欲しいです。でないと、とても危険です。これは七海ちゃんが水無瀬先輩をどう思っているかとは全く別の話です」

「……わかった」


 言葉とは裏腹に納得のいっていない様子の希咲に、望莱は尚も言い募る。


「何故危険なのかというと。この事件を最前線で追うということは、どんな真実が突然目の前に出てくるかわからないからです」

「どんな、真実……」

「俄かには受け入れ難い真実が出てきて、そしてそれに対して即断即決で自分がどうするかを瞬間的に決めなければならない。そうなった時に事実が受け入れられなくて思考停止をしていたら、死んじゃうことだってあります」

「そうね……。それはわかる……」

「わたしがここで言いたいのは水無瀬先輩を疑えということではありません。ただ、そういう可能性もあると、それをちゃんと受け入れてください。そうじゃないと七海ちゃんが危ないかもしれない。わたしはそれを受け入れられません」

「……わかった」

「そして、そうなってしまった時に重要になるのは、自分の軸をブラさないということです」

「軸……?」


 望莱はあくまで真剣に希咲へ伝える。


「はい。軸です。たとえ世界がどうなろうとも――それでも絶対に変わらない自分です。自分は必ずこうする。必ずこうである。そういった軸となるものがあれば、どんな真実に直面しようとも迷わずにいられます」

「それって……」


 その話を聞いて希咲には思い当たるものがあった。


「どうしました?」


 思案げな顏の希咲を望莱が窺う。


「ちょっとね、弥堂とお喋りした時のこと思い出した。あいつはきっとそうなんだって……、今になってわかった、かも」

「ふふふ、七海ちゃんはえっちですね」

「なんでよ! マジメに言ってんの!」


 どこか後悔を滲ませたような様子の彼女を望莱が茶化すと、希咲はすぐにまた怒りだした。望莱は楽しげに笑う。


「では、一つ目の話はそういうことで。次は二つ目。その軸をどういうものにするか。それを決めましょう」

「あたしの軸、か……」

「重要なことです。そして、今後の策を提案する前に、わたしは七海ちゃんに問います」

「えっと……、なに?」


 どこか畏まったような望莱の物言いに希咲も無意識に居住まいを正した。


「それは――覚悟です」


 その言葉は希咲の胸の中心を刺した。


「それを問いますが、でもその前に先にわたしの話をしておきましょう」


 自分の言葉の重みを受け止めて貰えていることを確認しながら、望莱は口を開く。


「この事件に介入し、そのことでどんな真実が出てこようとも、その先にそういうことになろうとも――それでも決して変わらないわたしの軸です」

「……うん」

「まぁ、とはいってもさっきお話したとおりなんですけど。わたしは七海ちゃん全肯定です」

「いや、あんたね」

「いいえ。七海ちゃん。これは全く冗談なんかじゃないんですよ」


 またふざけているのではと咎めようとして、しかし希咲は望莱の瞳を見て言葉を飲んだ。


「仮に水無瀬先輩が犯人で、なんなら彼女が魔王だった――そんな話でもいいです。その上でも、七海ちゃんが彼女の味方をすると言うのなら、わたしは別にそれでも構いません。推しの活動の邪魔はしません。応援します」

「そんなの――」

「――そんな可能性もあると言いました。そして、その先に起こること。わたしと七海ちゃん。それとせんぱいたち。彼と彼女と組んで、全世界と戦うことになったとしても構いません。わたしはそうすることに一切の躊躇いはありませんし、そうなったとしても一欠けらほどの後悔もしません。きっとその時には兄さんたちと敵対するでしょう。全く問題ありません。なんなら人類の抹殺すらやり遂げてみせましょう」

「…………っ」

「これがわたしの覚悟です」


 それは彼女がいつも口にしていることと同じだ。

 希咲はそれを冗談だと思ってはいたが、全く真に受けていなかったわけでもない。

 しかし、それは本当にどんな時も変わらない本当なのだ。

 望莱が言ったように、それこそがどんな状況でも変わらない彼女の『存在のカタチ』なのだ。


 そのことを希咲は深く理解した。

 それなら――


「さて、では七海ちゃんの覚悟を問いましょう――」


――次は自分が応える番となる。


「この先にどんな真実が出てくるかわかりません。七海ちゃん。それでも七海ちゃんは、水無瀬先輩の味方を出来ますか?」

「…………」


 希咲は即答しない。


 一度息を吐いて目を閉じ、自分の深いところまで精査する。

 身体中を廻って奥の奥まで――


 何処にも一つも迷いはなかった。


 瞼を開ける。


「――出来るわ」

「ですよね」

「つか、言うまでもないことよ。何があってもあたしは愛苗の味方よ」

「やーん、じぇらしーです」

「でも、愛苗が敵とか、それだけは絶対にないわ。仮になにか事情があってそうなっちゃってたとしても――そんなのあたしが全部どうにかする。世界と戦争とかそんなバカなことはしない」

「ふふ、わかりました。七海ちゃんの覚悟。確かにこのみらいちゃんが受け止めました」


 画面越しに見つめ合い、お互いに口の端を持ち上げる。


「それでは、実際にこれからどうするかの話をします」

「うん。よろしく」


 それだけ確認しあい実質的な話に移行した。


「目的は水無瀬先輩の発見、それと保護――ですね?」

「そうよ」

「その成功条件の第一が、誰よりも早く彼女の身柄を押さえること。次点として、誰かに先に見つけられていたとしても基本奪還する方針。つまり、成功の最低条件は水無瀬先輩の無事を確保すること。そうですね?」

「うん。まず愛苗が無事であることが最優先」

「わかりました。では、どうやってそれを達成するか。わたしのアイディアを提供します」

「おねがい」


 希咲は望莱の話に注意を傾ける。


「やっぱり弥堂せんぱいです」

「そうよね」

「まず彼が水無瀬先輩に関与していたものとして決めつけます。もしもそうでないとしても、関与がないことも確かめなければならないからです」

「でも……、どうしよっか。警察の目もあるし。攻めるって言ってもバカ正直に会いに行くわけにもいかないわよね」

「そうですね。そのコンタクトは慎重にすべきです」

「街の防犯カメラに映ったあいつの過去映像とかで追えないかな? あいつの分も消えてるんだっけ?」

「そうですね。それについては別の発見もあったんですけど……、と、その前に」

「ん? また?」

「はい。また『その前に』なんですけど」

「うん。なに?」


 少し軽くなった望莱の口調に合わせて、希咲も同じ調子で返す。


「せんぱいは、水無瀬先輩のことを覚えてないと言ったんでしたっけ?」

「えっと、覚えてないっていうか、『そんなヤツのことは知らない』って……」

「なるほど。ところで七海ちゃん」

「なに?」

「どうしてそれを信じたんですか?」

「え?」


 素朴な疑問――そんな風に問いかけられた望莱の言葉に、希咲はどこか胸に穴を空けられたような錯覚をした。


「ど、どうしてって……」

「だって、あの人ってすっごい嘘吐きじゃないですか? もう病気とかそういう職業なんじゃないかってくらいの。そんな嘘吐き」

「あ……」

「どうしてそんな嘘吐きの言う『知らない』『わからない』を、そのまんま信じちゃったんです?」

「そ、そういえば……」


 言われてみれば何故だろうとすぐに自問を始める。


「もちろん彼がこの件について嘘を吐いていると確定しているわけじゃないです。本当に忘れちゃってることもあるかもしれません」

「うん……、確かに、そうだわ……」

「これは『騙されてんじゃねーよ』とかってことが言いたいんじゃなくって。ほら? 七海ちゃんって色々鋭いじゃないですか? そういうのよく気が付きますし、人が頑張って吐いてる嘘をすぐ見破ってくるヒドイ女じゃないですか?」

「いや、ウソつく方がヒドイでしょ」

「ふふ。と、まぁ。だから、ですよ? そんな七海ちゃんが何でこんなにあっさりとあの嘘吐きの言うことを信じたのかなーって。煽りとかじゃなくて普通に疑問だったんです。なにかそう思うような理由とかあったんですか?」


 問われて、希咲は初めて自分でもその理由を探す。


 確かにあの時は色々とテンパっていてとても冷静な状態ではなかった。

 だけど、だとしても。


 望莱の言うとおり、『あの嘘吐き』の言うことを自分がそのまま信じるのもおかしな話だ。


 どうして信じてしまったのか。

 その理由を見つけ出す為に、当時のことを思い出す。
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