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1章 魔法少女とは出逢わない
1章71 水無瀬 愛苗 ①
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灯りの消えた病室の中で、黒猫は少女の寝顔を見下ろす。
彼女の近くに居付くようになって時間が経ち、黒猫はここに来た時のことを思い出す。
ある日に夜の空を彷徨っていると、声が聴こえた。
消えたくない――
さみしい――
そんな女の子の声を。
それは黒猫にとっての“不要な栄養”ではなかった。
だが、その想いに共感を覚えて、気紛れに声のした方へ近づいてみた。
開いた窓、中を覗くと、泣いている女の子。
その泣き声があまりにかなしくて、その部屋の白さがあまりにさみしくて、黒猫はつい声をかけてしまった。
弱いことで上手に生きられないつらさ。
ひとりぼっちのさみしさ。
痩せゆく魂。
それが伝わって。
それがわかって。
それを知っているから。
黒猫は彼女と一緒にいることにした。
少女は病気だった。
心臓が弱い。
身体を切って他の心臓と取り換えなければ治らない。
でもそれにはたくさんのお金がかかる。
さらに順番も待たなければならない。
順番を早くするにはもっとお金がいる。
少女の両親はそのお金を作るために頑張っている。
だけどその結果毎日少女に会いに来ることが出来なくなった。
このままだと順番が回ってくるまで、少女はもたないかもしれない。
少女の治療をしているニンゲンたちの話を盗み聞きしたらそれがわかった。
ひとりでただ弱っていきながら、自分が死ぬのを待つばかり。
黒猫にはそのかなしさがよくわかった。
だから、せめてその日までは彼女の傍に居ようと思った。
黒猫はもしかしたら少女を救えるかもしれないモノを持っていた。
でもそれを使う気にはなれなかった。
黒猫は悪魔だ。
弱い悪魔。
強いモノに虐げられるだけの惨めな存在。
黒猫は役目を持ってニンゲンの街に遣わされた。
魔法少女に為れる、その適正を持ったニンゲンを探すようにと。
その為の“卵”を持たされた。
長く難しい説明をされたが黒猫はあまり頭がよくないので少ししか理解が出来なかった。
とりあえず魔法少女と為ったニンゲンがカワイソウなことになるのだけはわかった。
だから、少女に“卵”をあげなかった。
病室の中で少女と喋り、少女と遊び、一緒にたくさん笑った。
笑えば先のイヤなことは考えなくて済む。
だから黒猫は笑う。
少女は自分の身体のことをあまり知らないみたいだ。
黒猫は知っていた。
だからたくさん笑った。
少女は部屋から出ることが出来ない。
だから黒猫は代わりに外に出て、自分の見てきたことなどを脚色し殊更大袈裟に少女に話して聞かせた。
少女はたくさん笑ってくれた。
部屋で一緒にテレビを観ることが多かった。
少女は魔法少女のアニメがとても好きなようだ。
黒猫はそれが少しイヤだった。
だから一緒に笑って観ていた。
魔法少女など好きにならないで欲しい。
魔法少女になど憧れないで欲しい。
だってそれを肯定されたら、黒猫は“卵”を使うことを考えなければならなくなってしまうではないか。
どうしようもないことなのだと諦めさせて欲しい。
そういうものなのだと割り切らせて欲しい。
そうじゃないとそんなに遠くない“いつか”に。
黒猫は選択をしなければならない。
使うか、使わないか。
救うか、救わないか。
殺すか、死なせるか。
自分の責任で、自分で選び、そしてその結果を自分で見続けなければならない。
嘘と誠実を裏返すことを繰り返しながら、裏切りの安寧の中で笑い続けるのだ。
その選択を強いられることを黒猫は何より恐れていた。
時間が過ぎて日々を経て。
少女は段々と起きていられる時間が短くなっていった。
痩せ細って衰えて、元気がなくなっていった。
『わたしががんばるからいけないのかな……?』
『魔法少女じゃないからがんばれないのかな?』
弱気な言葉も増えていった。
黒猫は明るく笑い返した。
そして、やがて――
黒猫は眠る少女を見下ろす。
機械に繋がれたまま目覚めなくなった少女の寝顔を。
悪魔の手には青い宝石のついたハートのペンダント。
『わたしが魔法少女だったら、みんなしあわせになれるのかな……』
黒猫は自分で選びたくなかった。
だからもう少し。
だからもっと。
少女との日々を続けたいと思った。
ここで終わらせる選択をしたくなかった。
熟成されたジレンマ――その存在の意味。
これまでの日々で黒猫は選択を出来なかった。
灯りの消えた病室の中で、悪魔は少女の寝顔を見下ろした。
「――めろちゃん……?」
ぼんやりとした愛苗の瞳が自分に向いている。
「あっ……、あぁ……っ」
嘘の破綻、裏切りの露呈。
それは今までの全ての崩壊の始まりだ。
悪魔の少女は半ば自失しながら、地に横たわるニンゲンの少女の顔を見下ろした。
「……よかった」
「え……?」
やがて愛苗の口からポロリと零れた言葉にメロはさらに混乱する。
怒られると、傷つけて嫌われると思って、それを詰る言葉を恐れていたら、彼女の口から出てきたのは真逆のものだった。
「無事、だったんだね……メロちゃん……、よかったぁ……」
「マ、マナぁ……」
どんな時でも他人が優先。
彼女の浮かべた力ない笑顔にメロの目に涙が滲んだ。
だが、これで――
『よかった』で終わるはずがない。
「メロちゃん、どうして女の子なの……?」
「あっ……」
メロはまた言葉に詰まる。
これまで何年かの時間を愛苗と共に過ごしてきて、自分はネコ妖精で魔法少女のサポートをする存在だと説明していた。
今のようにニンゲンの姿になれることはおろか、悪魔であることも、そして魔法少女とはなんなのか――真実は何ひとつ伝えていない。
「ジ、ジブンは……ッ」
もしも本当のことを知られれば、今みたいに心配の気持ちを向けて貰えることも、笑顔で名前を呼び掛けてもらえることも、もう二度と失くなってしまう。
メロは狼狽えて愛苗から目を逸らす。
「クカカカ……」
すると背後から笑い声が聴こえる。
ハッとして振りかえったメロの目に映ったのは、ニヤニヤとした笑みを浮かべたクルードだ。
「――あぐっ……ぅぅ……っ⁉」
クルードは無造作に手を伸ばすとメロの頭を鷲掴みにして持ち上げた。
「メロちゃん……っ⁉ やめてぇ……っ!」
愛苗の目に僅かに力が戻り、クルードへ非難の声をあげた。
それを受けてもクルードはニヤついたまま彼女を見下ろしていた。
「メロちゃんにひどいことしないで……っ!」
「なんでだ?」
「なんでって、そんなの――」
「――だって悪魔だぜ? コイツ」
「え?」
「悪魔だって言ってんだ。コイツは悪魔。オマエの敵だぜ」
「メロちゃんが……?」
見開かれた愛苗の目がメロへ向けられる。
メロは頭を握られる痛みを忘れ、その瞳に覚えて身体を震わせた。
「あく、ま……?」
「そうだ。オレサマたちと同じ悪魔だ」
「だって……、メロちゃんは妖精さんだって……」
「――そんなわけないでしょう」
ふと声を挿しこんできたのは、いつの間にかここまで来ていたアスだ。
「妖精とは自我の薄い精霊の欠片のようなもの。まったく別物ですよ」
「そうだったんだ……」
「おや? それだけですか?」
「えっ? それだけって……」
「ニンゲンは悪魔を忌み嫌っているでしょう? そんなモノが今までずっと正体を偽って身近にいたんですよ? 嫌悪感が湧きませんか?」
アスは愛苗から何かを引き出すように問い詰める。
冷笑を浮かべながら細められた目の奥には残忍な光があった。
「嫌悪感なんて……、だって、色んなひとがいたっていいと思うし……。悪魔さんだからって嫌うなんてヒドイと思います……」
「なんだそりゃ」
「やれやれ、ここに至っても鈍いですね……」
ふわふわとした愛苗の答えにアスもクルードも呆れを見せる。
メロは言葉無くただ震え続けていた。
「なにか変だと思わないんですか?」
「変って……」
「心臓の病で死にかけて、偶然奇跡的に助かり、そうしたら魔法少女に変身して魔法が使えるようになった――」
「え? どうしてアスさんがそれを……」
「さぁ? どうしてでしょうね?」
ようやく目に怪訝な色を映した愛苗をアスはせせら笑う。
「退院して日常生活に戻ったと思ったら、これまで一度も見たことの無かったゴミクズーなどという巫山戯た魔物が突然現れるようになる。それもアナタの行先だけで。何も思いませんでしたか?」
「それは、えっと……、不思議だなぁって……。それよりも、メロちゃんを放してください……っ!」
「いいぜ?」
「えっ――?」
愛苗の要求に意外にもクルードは快諾し、そしてそれに驚きの声をあげたのは掴まっている本人であるメロだ。
「オラよッ」
「メロちゃん……っ!」
クルードは愛苗の前にメロを放り捨てる。下手人を突き出すように。
愛苗は身体をよろめかせながらも、地面に落ちたメロに駆け寄る。
抱きしめた彼女の躰はひどく震えていた。
「こんなに怯えて……、カワイソウ……」
「フフフ、怯えているのは『誰に』なんでしょうね?」
「え?」
「まぁいいです。続きですが――やがて魔法少女としての活動や魔法に慣れてきたアナタの前に謎の組織が現れます。ゴミクズーを操り人間社会に迷惑をかける“闇の秘密結社”、そして“悪の怪人”。何とも思いませんか?」
「あの、迷惑をかけるのはよくないって、思います……」
「偶然が過ぎるって思いません?」
「…………」
核心、真相。
それに迫るアスの語り口に、愛苗にも段々と不穏な気持ちが湧き上がってきた。
「魔法ってなんでしょう? 魔法少女ってなんでしょう? ある日偶然この世で初めて、アナタにだけ、何の脈絡もなく天から授けられた特別なモノなのでしょうか?」
「それは……」
「“闇の秘密結社”とはなんでしょう? これも偶然、アナタが魔法に目覚めたのと同じタイミングで突然発足したものなのでしょうか?」
「…………」
「仮にそうだったとしても、これは組織です。では、それを構成する“ゴミクズー”は? “悪の怪人”は? これらは個体です。組織がなくとも個別に生まれます。それもアナタが魔法少女になったのと時を同じくして、突然発生しそのまま組織化されたとでも?」
「わ、私、そんなの……っ」
『わかりません』という言葉は飲み込んで、愛苗は黙る。
アスは尚も種明かしを続ける。
「そんなわけないですよね? ボラフさんはそれなりに年季を経た成熟した人格を持ってましたよね? アナタより年上だと思いませんでした? ということは、アナタが生まれるよりも前から、我々のようなモノは存在していたと考えられませんか?」
「それは……、はい……」
似たような話を弥堂もしていたと思い出し、愛苗は頷く。
「そしてここ一週間ほど。急激に事態は進んで色々と見えてきましたね。そこで明らかになった我々の正体――それはなんだったでしょう?」
「あの……、悪魔……さん……」
「えぇ、正解です。そういえばアナタに我々が悪魔だとまだ名乗っていなかったと思ったのですが、どうやって知ったのです?」
「それは、弥堂くんが……」
「またあの男ですか……。アレはなんなんでしょうね。我々としても完全にイレギュラーな存在です。アナタは知っていますか? 彼のこと」
「弥堂くんは同じクラスで、風紀委員で……」
「あぁ、もう結構です」
望んだ情報は得られないと断じて、アスは発言権を自身に戻す。
「さて、ではもう一度問いましょうか」
「…………」
「アナタが生まれる前から存在していたはずなのに、なのにアナタ以外のニンゲンが誰も知らない――そんな謎の敵の正体は悪魔だった。さらに、ある日弱っているアナタのもとに偶然現れた謎の妖精――その正体も悪魔だった。敵も味方も……! アナタ以外はみぃーんな悪魔ッ! これは果たして偶然でしょうか……⁉」
「そんな……、だって……っ」
「もうおわかりでしょう? 最初から全部仕組まれていたんですよ。アナタのお友達は――友達だと思っていたソレは悪魔で、私の部下で、そしてアナタの敵だったのです……!」
愛苗は呆然とした目をメロへ向ける。
「メロちゃん……」
「マ、マナ……、ジブンは……」
メロは否定をしなかった。
「――揺らぎましたね?」
「あっ……、うぅ……っ」
アスのその言葉に愛苗はギクリと身を震わせた。
「疑いましたね? 自信が失くなりましたね? 今までの全てが崩れた――そんな気がしましたね?」
「あ……、うっ……、ぅくっ……、い、痛い……っ!」
畳みかけるようなアスの詰問に愛苗は胸に痛みを感じて蹲った。
「マナッ⁉」
メロは慌てて彼女へ駆け寄り手を伸ばす。
だが――
「――ッ!」
寸でで彼女に触れることを躊躇い、手を止めた。
「グハッ――グハハハハハハ――ッ!」
その様子にクルードが哄笑をあげた。
「オイッ! 敵がテメェに近づいてるぜェ⁉ いいのかァ⁉ ボーっとしてて!」
「て、てき……?」
愛苗は信じられないような目でクルードを見上げる。
「敵だろうがッ! そいつは! 悪魔だ! 嘘吐きだッ!」
「メ、メロちゃんは――」
「殺せよ! 敵だぞ! この裏切者ッて! そいつをブッ殺せェ!」
「そ、そんなことするわけありません……っ!」
「本当に? いいのですか? その者はアナタを背中から刺すかもしれませんよ? だって、今までだってずっと、アナタを騙していたんだから……ッ!」
「くぅ、ぅぐっ……」
寄って集って責め立てる悪魔たちの言葉に物理的なダメージを受けたように胸が痛む。
息も苦しくなり愛苗は動けなくなった。
「オゥオゥ、揺らいでるなァ……! いいぞ! ほら考えろ。オマエは誰だ⁉」
「わたしは……、だれ……?」
「ふむ、あともう一歩ですね」
「全部嘘だッ! 今までのオマエは全部ニセモノだッ! オマエの全部は嘘だッ!」
「いままで……、わたしのぜんぶ……、わたしは……」
「ギャハハハハ……ッ!」
愛苗の瞳から光が薄れていく。
クルードはそれを愉しそうに見物しながら馬鹿笑いをあげる。
その時――
「――【切断】」
「――ウオォォォッ⁉」
突然弥堂がクルードの前に現れ、その大口に聖剣の切っ先を捻じ込もうとした。
クルードは反射的に飛び退いてそれを避けた。
「テメェッ! ビックリしてまた避けちまっただろうがッ!」
「チッ」
舌打ちをしながら弥堂は愛苗の前に立つ。
「びとうく……」
「何してんだ馬鹿が。さっさと立て」
「でも……」
「知ったことか」
傷ついた少女に優しい言葉など一切無い。
「やると決めてここに来たんだろ。違うのか?」
「やる……、決めた……」
「何を悩んでいるのか知らんが――知っているが、そんなものは後にしろ」
「…………」
「お前が何をどう思おうと、お前以外の全てのものは――『世界』は変わらない。だから殺してから考えろ。それで済む」
「じぶんは、変えられる……」
「チィ……」
愛苗の目に僅かに光が戻る。
アスはそれに面白くなさそうに眉を歪めた。
「わざわざオレサマを狙ってくるたァ褒めてやる。だが――」
言葉の途中でクルードの姿を見失う。
「――お呼びじゃあねェんだよ雑魚が……ッ!」
一瞬後にはもう弥堂の目の前に。
「くっ――!」
振り落とされる拳を弥堂は身体を横に投げ出して躱す。
しかし――
「――ぐっ⁉」
飛んだ方向には銀色の光の壁。
クルードの打撃は避けたものの、その壁に身体を強く弾かれた。
そして――
「――本当にお呼びではありませんよ」
続けてアスの手から放たれた複数の魔法弾に滅多撃ちにされ、弥堂は地を転がる。
「弥堂くん――っ⁉」
目の前に転がってきた弥堂に愛苗は手を伸ばす。
「あぐぅ……っ⁉」
だが、胸に激しい痛みを覚えて彼女も倒れてしまった。
前方に投げ出された手の指先に塗れた感触がする。
無理をしてそちらへ目を向けると指先が赤く染まっていた。
倒れた弥堂の身体の下から地面に血が拡がっている。
「び、びとうくん……、ぅくっ……」
すぐにでも彼を助けにいきたいが、胸の痛みはさらに激しくなり身体に力が入らなかった。
愛苗の窮地に弥堂が現れたが、しかし状況は何も変わらず。
目の前には敵が。
ほぼ無傷なままの悪魔が二体――いや、三体も居る。
二人は遂に絶対絶命のところまで追い詰められてしまった。
彼女の近くに居付くようになって時間が経ち、黒猫はここに来た時のことを思い出す。
ある日に夜の空を彷徨っていると、声が聴こえた。
消えたくない――
さみしい――
そんな女の子の声を。
それは黒猫にとっての“不要な栄養”ではなかった。
だが、その想いに共感を覚えて、気紛れに声のした方へ近づいてみた。
開いた窓、中を覗くと、泣いている女の子。
その泣き声があまりにかなしくて、その部屋の白さがあまりにさみしくて、黒猫はつい声をかけてしまった。
弱いことで上手に生きられないつらさ。
ひとりぼっちのさみしさ。
痩せゆく魂。
それが伝わって。
それがわかって。
それを知っているから。
黒猫は彼女と一緒にいることにした。
少女は病気だった。
心臓が弱い。
身体を切って他の心臓と取り換えなければ治らない。
でもそれにはたくさんのお金がかかる。
さらに順番も待たなければならない。
順番を早くするにはもっとお金がいる。
少女の両親はそのお金を作るために頑張っている。
だけどその結果毎日少女に会いに来ることが出来なくなった。
このままだと順番が回ってくるまで、少女はもたないかもしれない。
少女の治療をしているニンゲンたちの話を盗み聞きしたらそれがわかった。
ひとりでただ弱っていきながら、自分が死ぬのを待つばかり。
黒猫にはそのかなしさがよくわかった。
だから、せめてその日までは彼女の傍に居ようと思った。
黒猫はもしかしたら少女を救えるかもしれないモノを持っていた。
でもそれを使う気にはなれなかった。
黒猫は悪魔だ。
弱い悪魔。
強いモノに虐げられるだけの惨めな存在。
黒猫は役目を持ってニンゲンの街に遣わされた。
魔法少女に為れる、その適正を持ったニンゲンを探すようにと。
その為の“卵”を持たされた。
長く難しい説明をされたが黒猫はあまり頭がよくないので少ししか理解が出来なかった。
とりあえず魔法少女と為ったニンゲンがカワイソウなことになるのだけはわかった。
だから、少女に“卵”をあげなかった。
病室の中で少女と喋り、少女と遊び、一緒にたくさん笑った。
笑えば先のイヤなことは考えなくて済む。
だから黒猫は笑う。
少女は自分の身体のことをあまり知らないみたいだ。
黒猫は知っていた。
だからたくさん笑った。
少女は部屋から出ることが出来ない。
だから黒猫は代わりに外に出て、自分の見てきたことなどを脚色し殊更大袈裟に少女に話して聞かせた。
少女はたくさん笑ってくれた。
部屋で一緒にテレビを観ることが多かった。
少女は魔法少女のアニメがとても好きなようだ。
黒猫はそれが少しイヤだった。
だから一緒に笑って観ていた。
魔法少女など好きにならないで欲しい。
魔法少女になど憧れないで欲しい。
だってそれを肯定されたら、黒猫は“卵”を使うことを考えなければならなくなってしまうではないか。
どうしようもないことなのだと諦めさせて欲しい。
そういうものなのだと割り切らせて欲しい。
そうじゃないとそんなに遠くない“いつか”に。
黒猫は選択をしなければならない。
使うか、使わないか。
救うか、救わないか。
殺すか、死なせるか。
自分の責任で、自分で選び、そしてその結果を自分で見続けなければならない。
嘘と誠実を裏返すことを繰り返しながら、裏切りの安寧の中で笑い続けるのだ。
その選択を強いられることを黒猫は何より恐れていた。
時間が過ぎて日々を経て。
少女は段々と起きていられる時間が短くなっていった。
痩せ細って衰えて、元気がなくなっていった。
『わたしががんばるからいけないのかな……?』
『魔法少女じゃないからがんばれないのかな?』
弱気な言葉も増えていった。
黒猫は明るく笑い返した。
そして、やがて――
黒猫は眠る少女を見下ろす。
機械に繋がれたまま目覚めなくなった少女の寝顔を。
悪魔の手には青い宝石のついたハートのペンダント。
『わたしが魔法少女だったら、みんなしあわせになれるのかな……』
黒猫は自分で選びたくなかった。
だからもう少し。
だからもっと。
少女との日々を続けたいと思った。
ここで終わらせる選択をしたくなかった。
熟成されたジレンマ――その存在の意味。
これまでの日々で黒猫は選択を出来なかった。
灯りの消えた病室の中で、悪魔は少女の寝顔を見下ろした。
「――めろちゃん……?」
ぼんやりとした愛苗の瞳が自分に向いている。
「あっ……、あぁ……っ」
嘘の破綻、裏切りの露呈。
それは今までの全ての崩壊の始まりだ。
悪魔の少女は半ば自失しながら、地に横たわるニンゲンの少女の顔を見下ろした。
「……よかった」
「え……?」
やがて愛苗の口からポロリと零れた言葉にメロはさらに混乱する。
怒られると、傷つけて嫌われると思って、それを詰る言葉を恐れていたら、彼女の口から出てきたのは真逆のものだった。
「無事、だったんだね……メロちゃん……、よかったぁ……」
「マ、マナぁ……」
どんな時でも他人が優先。
彼女の浮かべた力ない笑顔にメロの目に涙が滲んだ。
だが、これで――
『よかった』で終わるはずがない。
「メロちゃん、どうして女の子なの……?」
「あっ……」
メロはまた言葉に詰まる。
これまで何年かの時間を愛苗と共に過ごしてきて、自分はネコ妖精で魔法少女のサポートをする存在だと説明していた。
今のようにニンゲンの姿になれることはおろか、悪魔であることも、そして魔法少女とはなんなのか――真実は何ひとつ伝えていない。
「ジ、ジブンは……ッ」
もしも本当のことを知られれば、今みたいに心配の気持ちを向けて貰えることも、笑顔で名前を呼び掛けてもらえることも、もう二度と失くなってしまう。
メロは狼狽えて愛苗から目を逸らす。
「クカカカ……」
すると背後から笑い声が聴こえる。
ハッとして振りかえったメロの目に映ったのは、ニヤニヤとした笑みを浮かべたクルードだ。
「――あぐっ……ぅぅ……っ⁉」
クルードは無造作に手を伸ばすとメロの頭を鷲掴みにして持ち上げた。
「メロちゃん……っ⁉ やめてぇ……っ!」
愛苗の目に僅かに力が戻り、クルードへ非難の声をあげた。
それを受けてもクルードはニヤついたまま彼女を見下ろしていた。
「メロちゃんにひどいことしないで……っ!」
「なんでだ?」
「なんでって、そんなの――」
「――だって悪魔だぜ? コイツ」
「え?」
「悪魔だって言ってんだ。コイツは悪魔。オマエの敵だぜ」
「メロちゃんが……?」
見開かれた愛苗の目がメロへ向けられる。
メロは頭を握られる痛みを忘れ、その瞳に覚えて身体を震わせた。
「あく、ま……?」
「そうだ。オレサマたちと同じ悪魔だ」
「だって……、メロちゃんは妖精さんだって……」
「――そんなわけないでしょう」
ふと声を挿しこんできたのは、いつの間にかここまで来ていたアスだ。
「妖精とは自我の薄い精霊の欠片のようなもの。まったく別物ですよ」
「そうだったんだ……」
「おや? それだけですか?」
「えっ? それだけって……」
「ニンゲンは悪魔を忌み嫌っているでしょう? そんなモノが今までずっと正体を偽って身近にいたんですよ? 嫌悪感が湧きませんか?」
アスは愛苗から何かを引き出すように問い詰める。
冷笑を浮かべながら細められた目の奥には残忍な光があった。
「嫌悪感なんて……、だって、色んなひとがいたっていいと思うし……。悪魔さんだからって嫌うなんてヒドイと思います……」
「なんだそりゃ」
「やれやれ、ここに至っても鈍いですね……」
ふわふわとした愛苗の答えにアスもクルードも呆れを見せる。
メロは言葉無くただ震え続けていた。
「なにか変だと思わないんですか?」
「変って……」
「心臓の病で死にかけて、偶然奇跡的に助かり、そうしたら魔法少女に変身して魔法が使えるようになった――」
「え? どうしてアスさんがそれを……」
「さぁ? どうしてでしょうね?」
ようやく目に怪訝な色を映した愛苗をアスはせせら笑う。
「退院して日常生活に戻ったと思ったら、これまで一度も見たことの無かったゴミクズーなどという巫山戯た魔物が突然現れるようになる。それもアナタの行先だけで。何も思いませんでしたか?」
「それは、えっと……、不思議だなぁって……。それよりも、メロちゃんを放してください……っ!」
「いいぜ?」
「えっ――?」
愛苗の要求に意外にもクルードは快諾し、そしてそれに驚きの声をあげたのは掴まっている本人であるメロだ。
「オラよッ」
「メロちゃん……っ!」
クルードは愛苗の前にメロを放り捨てる。下手人を突き出すように。
愛苗は身体をよろめかせながらも、地面に落ちたメロに駆け寄る。
抱きしめた彼女の躰はひどく震えていた。
「こんなに怯えて……、カワイソウ……」
「フフフ、怯えているのは『誰に』なんでしょうね?」
「え?」
「まぁいいです。続きですが――やがて魔法少女としての活動や魔法に慣れてきたアナタの前に謎の組織が現れます。ゴミクズーを操り人間社会に迷惑をかける“闇の秘密結社”、そして“悪の怪人”。何とも思いませんか?」
「あの、迷惑をかけるのはよくないって、思います……」
「偶然が過ぎるって思いません?」
「…………」
核心、真相。
それに迫るアスの語り口に、愛苗にも段々と不穏な気持ちが湧き上がってきた。
「魔法ってなんでしょう? 魔法少女ってなんでしょう? ある日偶然この世で初めて、アナタにだけ、何の脈絡もなく天から授けられた特別なモノなのでしょうか?」
「それは……」
「“闇の秘密結社”とはなんでしょう? これも偶然、アナタが魔法に目覚めたのと同じタイミングで突然発足したものなのでしょうか?」
「…………」
「仮にそうだったとしても、これは組織です。では、それを構成する“ゴミクズー”は? “悪の怪人”は? これらは個体です。組織がなくとも個別に生まれます。それもアナタが魔法少女になったのと時を同じくして、突然発生しそのまま組織化されたとでも?」
「わ、私、そんなの……っ」
『わかりません』という言葉は飲み込んで、愛苗は黙る。
アスは尚も種明かしを続ける。
「そんなわけないですよね? ボラフさんはそれなりに年季を経た成熟した人格を持ってましたよね? アナタより年上だと思いませんでした? ということは、アナタが生まれるよりも前から、我々のようなモノは存在していたと考えられませんか?」
「それは……、はい……」
似たような話を弥堂もしていたと思い出し、愛苗は頷く。
「そしてここ一週間ほど。急激に事態は進んで色々と見えてきましたね。そこで明らかになった我々の正体――それはなんだったでしょう?」
「あの……、悪魔……さん……」
「えぇ、正解です。そういえばアナタに我々が悪魔だとまだ名乗っていなかったと思ったのですが、どうやって知ったのです?」
「それは、弥堂くんが……」
「またあの男ですか……。アレはなんなんでしょうね。我々としても完全にイレギュラーな存在です。アナタは知っていますか? 彼のこと」
「弥堂くんは同じクラスで、風紀委員で……」
「あぁ、もう結構です」
望んだ情報は得られないと断じて、アスは発言権を自身に戻す。
「さて、ではもう一度問いましょうか」
「…………」
「アナタが生まれる前から存在していたはずなのに、なのにアナタ以外のニンゲンが誰も知らない――そんな謎の敵の正体は悪魔だった。さらに、ある日弱っているアナタのもとに偶然現れた謎の妖精――その正体も悪魔だった。敵も味方も……! アナタ以外はみぃーんな悪魔ッ! これは果たして偶然でしょうか……⁉」
「そんな……、だって……っ」
「もうおわかりでしょう? 最初から全部仕組まれていたんですよ。アナタのお友達は――友達だと思っていたソレは悪魔で、私の部下で、そしてアナタの敵だったのです……!」
愛苗は呆然とした目をメロへ向ける。
「メロちゃん……」
「マ、マナ……、ジブンは……」
メロは否定をしなかった。
「――揺らぎましたね?」
「あっ……、うぅ……っ」
アスのその言葉に愛苗はギクリと身を震わせた。
「疑いましたね? 自信が失くなりましたね? 今までの全てが崩れた――そんな気がしましたね?」
「あ……、うっ……、ぅくっ……、い、痛い……っ!」
畳みかけるようなアスの詰問に愛苗は胸に痛みを感じて蹲った。
「マナッ⁉」
メロは慌てて彼女へ駆け寄り手を伸ばす。
だが――
「――ッ!」
寸でで彼女に触れることを躊躇い、手を止めた。
「グハッ――グハハハハハハ――ッ!」
その様子にクルードが哄笑をあげた。
「オイッ! 敵がテメェに近づいてるぜェ⁉ いいのかァ⁉ ボーっとしてて!」
「て、てき……?」
愛苗は信じられないような目でクルードを見上げる。
「敵だろうがッ! そいつは! 悪魔だ! 嘘吐きだッ!」
「メ、メロちゃんは――」
「殺せよ! 敵だぞ! この裏切者ッて! そいつをブッ殺せェ!」
「そ、そんなことするわけありません……っ!」
「本当に? いいのですか? その者はアナタを背中から刺すかもしれませんよ? だって、今までだってずっと、アナタを騙していたんだから……ッ!」
「くぅ、ぅぐっ……」
寄って集って責め立てる悪魔たちの言葉に物理的なダメージを受けたように胸が痛む。
息も苦しくなり愛苗は動けなくなった。
「オゥオゥ、揺らいでるなァ……! いいぞ! ほら考えろ。オマエは誰だ⁉」
「わたしは……、だれ……?」
「ふむ、あともう一歩ですね」
「全部嘘だッ! 今までのオマエは全部ニセモノだッ! オマエの全部は嘘だッ!」
「いままで……、わたしのぜんぶ……、わたしは……」
「ギャハハハハ……ッ!」
愛苗の瞳から光が薄れていく。
クルードはそれを愉しそうに見物しながら馬鹿笑いをあげる。
その時――
「――【切断】」
「――ウオォォォッ⁉」
突然弥堂がクルードの前に現れ、その大口に聖剣の切っ先を捻じ込もうとした。
クルードは反射的に飛び退いてそれを避けた。
「テメェッ! ビックリしてまた避けちまっただろうがッ!」
「チッ」
舌打ちをしながら弥堂は愛苗の前に立つ。
「びとうく……」
「何してんだ馬鹿が。さっさと立て」
「でも……」
「知ったことか」
傷ついた少女に優しい言葉など一切無い。
「やると決めてここに来たんだろ。違うのか?」
「やる……、決めた……」
「何を悩んでいるのか知らんが――知っているが、そんなものは後にしろ」
「…………」
「お前が何をどう思おうと、お前以外の全てのものは――『世界』は変わらない。だから殺してから考えろ。それで済む」
「じぶんは、変えられる……」
「チィ……」
愛苗の目に僅かに光が戻る。
アスはそれに面白くなさそうに眉を歪めた。
「わざわざオレサマを狙ってくるたァ褒めてやる。だが――」
言葉の途中でクルードの姿を見失う。
「――お呼びじゃあねェんだよ雑魚が……ッ!」
一瞬後にはもう弥堂の目の前に。
「くっ――!」
振り落とされる拳を弥堂は身体を横に投げ出して躱す。
しかし――
「――ぐっ⁉」
飛んだ方向には銀色の光の壁。
クルードの打撃は避けたものの、その壁に身体を強く弾かれた。
そして――
「――本当にお呼びではありませんよ」
続けてアスの手から放たれた複数の魔法弾に滅多撃ちにされ、弥堂は地を転がる。
「弥堂くん――っ⁉」
目の前に転がってきた弥堂に愛苗は手を伸ばす。
「あぐぅ……っ⁉」
だが、胸に激しい痛みを覚えて彼女も倒れてしまった。
前方に投げ出された手の指先に塗れた感触がする。
無理をしてそちらへ目を向けると指先が赤く染まっていた。
倒れた弥堂の身体の下から地面に血が拡がっている。
「び、びとうくん……、ぅくっ……」
すぐにでも彼を助けにいきたいが、胸の痛みはさらに激しくなり身体に力が入らなかった。
愛苗の窮地に弥堂が現れたが、しかし状況は何も変わらず。
目の前には敵が。
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二人は遂に絶対絶命のところまで追い詰められてしまった。
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