俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨

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1章 魔法少女とは出逢わない

1章53 Water finds its worst level ⑪

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 気が付いたら画面の中の希咲がジッとこちらを見つめていた。


 物思いに耽る彼女を眺めていたつもりが、いつの間にか立場が逆になっていたらしい。



『ねぇ、今なに考えてた?』

(本当に勘がいい……)


 顰められそうになる眉を動かさないよう意識しながら答える。


「別に。大したことは」

『じゃあ言えばいいじゃん』

「早くセクハラさせろよと、考えていた」

『ばかやろー』


 画面上から飛んでくる視線に冷たい色が混じると、弥堂は彼女がお小言が始める前に先んじて口を開いた。


「お前の方はどうなんだ?」

『あたし?』

「なにか考えこんでただろ?」

『……うん』

「……」

『……』

「……おい」

『あんたが言わなかったからあたしも言わない』

「そうか」


 その理屈でいくなら、聞いてしまったら弥堂も言わなければならなくなるので適当な返事で流した。

 すると希咲は僅かに眉を寄せてムっとする。


『……やっぱ言う』

「いや、結構だ」

『ダメ、聞いて』

「…………」


 あまりの理不尽さに言葉を失うと、その沈黙を了承と受け取ったとのか、希咲は話しだす。


『ねぇ、これ、どうやったら解決できると思う……?』

「…………」


 そしてその話が弥堂にとってあまりしたくない話だったので、今度は彼が眉を顰めることになった。


「……お前の言う“解決”というのは、何もかもを元通りに直すという意味でいいのか?」

『そう、だけど……、他になんか解決ってある……?』

「さぁな」

『なんでいちいちヘンな文句を――やっぱいい、やめとく。そんで? どう思う?』

「…………」


 内心で舌を打つ。

 適当に怒らせて話を逸らそうとしたが、今回は彼女はノってこなかった。


「答えは変わらない。『さぁな』」

『……つめたいっ』

「そう言われてもな。そもそも何故こんなことになっているのかがわからないんだ。まずそこを解明しないことには直し方なんてわかるわけがないだろう?」

『そうだけど……、ねぇ? あんたどうしてこんなことになってるか、わかんない……?』


 窺うような目で問われると、弥堂は音を出さずに小さく嘆息した。

 希咲 七海のことを怒りっぽくて口煩くて厄介な女だと認識しているが、一番厄介なのはこの勘のよさかもしれないと、そう考えた。


「わかるわけがないだろう? ある特定の人物に関する記憶を集団で正しく認知出来なくなる。こんな話は聞いたことがない。どう考えても普通でない、ありえない出来事だ」

『……でも、現場っていうか、おかしくなっちゃったみんなと一緒にいて、なんか思い当たることとか、気付いたこととか……、そういうのなにもない?』

「ないな。まるで理解が出来ない」

『ホントに……?』


 スッと弥堂は眼を細める。


「それはどういう意味だ?」

『……言葉どおりよ。ホントになにも知らないし、わからないの? 何でもいいから心当たりとか……』

「ないって言ってるだろ」

『ホントに? あんたはホントになんにもわかんないの? なんで愛苗がこんな目にあってるかとか』

「さぁな」

『じゃあ、なんであんたはなんともないの?』

「なんともないからだ」

『なによそれっ』

「お前は何故自分の身体が健康で元気かと聞かれて答えられるのか? 病気の原因はわかっても病気でない原因など誰にも答えられないだろ」

『それ、はっ……、そうだけどっ! でもっ……! なによ……もぅ……っ』


 画面に映る彼女の睫毛が伏せられ瞳に暗い色が落ちる。


(なんで言ってくれないのよ……っ)


 そう考えてしまって自分で理不尽だと希咲は感じる。

 言えることを全部言っていないのは希咲の方も同じだからだ。

 自分の方から切り出せないから相手に先に言わせようとする。

 そんなのは最低だとわかっているから尚更気分が沈んだ。


 そんな希咲の心の裡は知らないが、落ち込んだことがわかる彼女の顔を見て弥堂は僅かに苛立ちを覚える。


「拗ねるな」

『……すねてないから』

「…………そうだな。俺自身の体験ではないが、人伝に聞いた話で似たような例を知っている」

『えっ、なにそれ! 聞かせてっ』


 途端に目を大きく開け前のめりに画面に近づく希咲へ弥堂は変わらない眼を向ける。


「……聞いたと言ったが実際は資料で閲覧したことがある。とある有識者より知っておくべきだと渡されたものだ。複数件の似たような事例が記されていた」

『えと、それってあんたのお師匠さん? エルフィさん、だっけ……?』

「違う。エルフィは知性よりも暴力性に特化した女性だ。彼女は殆どの物事に対してフィジカルで対応する。それ以外のことはあまり出来ないし、知らない」

『あ、あんたのお師匠さんって感じね……っ。名前めっちゃカワイイのに……』


 弥堂の元カノの新情報に希咲は戦慄する。

 しかしそれはメンヘラメイドシスターの凶暴性だけに慄いたわけはない。

 彼女が最も恐れ慄いたのは現在手の中のスマホに映った無表情男にである。


 この男はきっとそのイカれた素行でそんな狂暴女すらもドン引きさせて、そしてフラれたのだ。


『こんな地雷野郎を映してたらあたしのスマホ呪われないかしら?』と怯えた七海ちゃんのお手てが無意識にプルプルと震える。

 さらに、自身の大事な親友がこんな男の毒牙に自らかかりにいっているという事実にお腹も痛くなってきた。


 弥堂の元カノ話には非常に興味があるが大変に闇も深そうなので、この場では苦渋の決断でスルーし、先を促す。


『……ゴ、ゴメン、話そらしちゃって……。そんで……?』

「あぁ。俺が預かった文献に記されていたのは集団催眠、もしくは常識改変……だったか。そんな事例が多かった」

『催眠はなんとなくわかるけど、常識改変って?』

「催眠と似たようなものだったが、多くの人々が普通でないことを当たり前の常識として違和感をもたずに実行してしまうんだ」

『それって……、今のあたしたちとほとんど一緒じゃん! どうやってそんなことしてるとか書いてなかったの⁉』

「そうだな。大体の場合はスマホだな」

『ん? スマホ……?』

「あぁ。ある日突然自分のスマホに見覚えのないアプリが入っていたり、もしくは偶然ネットで怪しいサイトに辿り着きそこでダウンロードしてしまう。そんな風に描かれていたな」

『んん? よくわかんないんだけど、アプリでなにがどうなるの?』

「俺にもよくわからんがスマホを対象の人物に見せながらそのアプリを実行すると催眠にかかったり、中にはアプリを実行するだけで世界中の常識を思いのままに変えられる。そんなものもあったな」

『……あんた文献って言ったわよね? スマホとかアプリって最近の話じゃない? 都市伝説かなんかなの?』


 真剣に聞き入っていた希咲だったが、話に不可解な点が多く感じられ、その表情が怪訝そうなものに変わる。


『……てゆか、その文献?では催眠とか改変だとかで結局どういうことになっちゃったの?』

「そうだな。俺が見たものでは全裸登校に性処理当番、それからお〇んこ係……、そのようなパターンが多かったな」

『はぁっ⁉』


 ここまでの話の内容に今の自分たちのシリアスな状況――それに全く相応しくない単語が出現し希咲はびっくり仰天する。


『え、えと……? なんて?』


 これはさすがにいくらなんでも自分の聞き違いだろうと、そうであって欲しいとつい聞き返してしまう。


「うん? 聞こえなかったか? いいか、よく聞け。全裸登校に性処理当番、それからおま――」

『――いいっ! もういいっ! 聞き違いじゃなかった! 最後のは絶対言わなくっていい!』

「そうか」


 特定の部位に関する呼称を二度も続けて言わせないよう慌てて制止し、それから朝っぱらにいきなり電話をかけてこられ卑猥な言葉を聞かされたことに対する怒りが遅れて沸き上がってくる。


『あんたねっ! なんでっ……、その、えっと……っ! マジでっ……、だから、あの……、もうっ! びっくりしすぎちゃって何言っていいかわかんないじゃん! マジなんなの⁉ ばかやろー! しねっ!』

「訊かれたことに答えただけなんだが」


 怒りのメーターがいきなりレッドゾーンを突き抜け興奮しすぎた七海ちゃんは感情に思考が追いつかない。そのため、朝の教室で卑猥な単語を口にする変質者を詰るための適切な言葉が思いつかずシンプルに罵倒することしか出来なかった。


『今ってマジメな話してたでしょ⁉ なんでそうやってすぐふざけんの⁉』

「ふざけてなどいない」

『なおさらヤバくない⁉ なんでいきなりえっちなこと言おうと思っちゃうわけ⁉』

「俺はお前に訊かれたことに答えるために事実を口にしただけだ」

『なにが事実か! そんないみのわかんないこと――えっ……? なに? みらい?』


 眉をナナメにして怒鳴りつけてくる希咲が目線を他所へ動かす。

 スマホのスピーカーから僅かに漏れ聴こえてきた別の声から察するに、どうやら誰かに話しかけられたようだ。


『――ん? どゆこと……? は? エロゲ? エロマンガ……? はぁ~っ⁉ ちょっと弥堂っ!』


 他所へ向いていた目がギロリとこちらを睨みつけてくる。


「なんだ」

『なんだじゃねーわよっ! あんたえっちな漫画とかゲームの話してたわけ⁉ なにが文献だばかやろー!』

「俺に言われてもな。そう言って渡されたんだが」

『マジきもいっ! クソキモゲロオタやろーっ! しねっ!』

「なにを怒ってるんだお前は」


 顔を紅くした希咲からの口汚い罵詈雑言に弥堂も不快さを示す。


『なにを⁉ なにをじゃないでしょ! 女の子に男子のそういう……、えっちなキモい話するんじゃないわよっ! クソへんたいっ!』

「だからお前が訊いたんだろうが」

『オマエの性癖なんかきいてねーよ!』

「性癖じゃない。心当たりはないかと訊いただろうが。それをわざわざ答えてやったのに何だその言い草は」

『そうだけど! そうかもだけど、でもおかしいでしょっ!』

「じゃあ何もないと嘘を吐けばよかったのか?」

『そうじゃないけど! でもさ、あたしたち今すっごくマジメな話してたじゃん! マジでヤバイって話してる時になんでえっちな漫画のこととか心当たっちゃうわけ⁉ いっつもそんなことばっか考えてんの⁉ ガチでキモいんだけど⁉』

「そんなわけがあるか」

『つーか、なにが有識者だ! どうせまたあんたんトコのヘンタイ部長でしょ! いい加減にしなさいよ!』

「おい、部長への不敬な発言は許さんぞ」

『許さないのはこっちよ! あたしすっごく真剣な顏で聞いてたでしょ? なのにえっちな漫画の話とか聞かせて! 少しは罪悪感とか感じなかったわけ⁉』

「意味がわからんな。罪悪感など感じる必要ないだろ」

『あるでしょ⁉ だってさ、だいたい……っ! そういうのって高校生は見ちゃダメなやつじゃん! あんたって全方位に犯罪的なの⁉ なんか一個くらいはちゃんとしててよ! マジばかじゃん!』

「うるさい黙れ。俺たちは公式にはそれらを所持していないし、見たこともないことになっているから罪に問われることはない」

『公式ってなによ⁉』


 話し始めた時はどこかしおらしい雰囲気だったのに、結局いつも通りにキャンキャンと喚いてくる女に弥堂は辟易とする。

 面倒になったのでそれ以上は反論せずに好きに喚かせ、エロ漫画に興奮して正気を失った淫乱なギャルJKをただ軽蔑した。


 やがて叫び疲れた希咲は息を整えて、話も整えようとする。


『――わかった? もうそういう話は女子にしないでよね』

「……わかった」

『なんか不満そうじゃない?』

「べつに」

『てゆーかさ。そういうえっちなのじゃなくても、漫画とかゲームの話を出すのはダメでしょ。確かに漫画みたいな不思議なことが起こってるけど、それでもフィクションはナシじゃん』

「そうとは限らんぞ」

『えっ?』


 怪訝そうな態度の希咲へ弥堂は当たり前のことを説明するように語る。


「創作の中の出来事だからといって現実では絶対に起こらない。そんな風に考えるのは危険だ」

『なんでよ。ゲームとリアルは区別しなさいって、いっぱい言われてんじゃん』

「だが現実で起こってしまえばそれはもうリアルだ。絶対に起こることのないフィクションと、まだ一度も起こったことのない現実をどうやって区別する?」

『そんなのヘリクツじゃんっ』

「だが、資料として渡された普通はありえない事。その中のいくつかが実際に現実で起こる。俺はそれを既に体験している」

『はぁ? またテキトーなウソつくんじゃないわよ』

「嘘ではない」

『だってマンガにゲームでしょ? なにがあったってのよ』

「そうだな……、直近の出来事で言うと孕ませ許可証だ」

『はらっ――⁉』


 問い質す必要のない性的ワードを思わず復唱しそうになってしまうが、希咲はギリギリのところで難を逃れた。


『な、なんなのよそれっ!』

「少子化対策の一環でな。その辺にいる女を誰でも好きに孕ませても良いという許可証を国民に発行するドスケベ法令だ」

『なんだそりゃー! 女をバカにしてんのかー⁉』

「あぁ、俺もそう思う。実際にそんな政策が実行されれば社会は大混乱に陥るだろう」

『そんなバカなことする政治家がいるわけないでしょ!』

「だが、先日そのドスケベ法令の実現を企む闇の秘密結社に遭遇したんだ。このように、漫画の中でしかありえないと思われるような非常識かつ非現実的な出来事が現実に起こることもある」

『…………』


 非常識かつ非現実的な与太話を当然のことのように語って聞かせてくる弥堂に希咲は返す言葉が出てこなかった。

 これはまた喧しい叫び声をあげる前の溜め動作に違いないと弥堂は警戒して耳を塞ごうとするが、その前に画面に映る希咲の眉がふにゃっと垂れる。


『かわいそう……』

「あ?」


 また罵詈雑言でも浴びせかけられるのかと構えていたが、彼女の口から出てきたのは憐憫の言葉であった。


『あんた、毎日一人でそんな遊びしてるの……?』

「遊びではない」

『そう……』


 希咲は想像する。

 毎日毎日一人で街を徘徊し、存在しない秘密結社を探して廻る。

 夜までそれを続け、歩き疲れて休憩に立ち寄った空き地で手慰みに穴を掘る。


 そんな弥堂の姿を想像し、心の底から同情心を浮かべた。


『ねぇ? あんたトモダチとか作った方がいいって……』

「いきなりなんの話だ?」

『たまには公園でサッカーとか、そういうことして遊んだ方が……』

「なんなんだお前は。その顔やめろ。馬鹿にしてんのか」

『でも――』

「うるさい。サッカーをしようと思えば相手くらいいる。近所の小学生に誘われることがある。ただやらないだけだ」

『うぅ……っ、小学生にまで気を遣われて……』

「ケンカ売ってんのかてめぇ……」


 なんだかよくわからないがサメザメと泣きだした彼女を睨みつける。


『ねぇ、あんた部活辞めたら……?』

「あ? 関係ねえだろ」

『だって、変態クラブじゃん。どうせそんなおバカなことばっかしてるんでしょ? もう高校生なのよ……?』

「誰が変態クラブだ。我々は日常で起こる可能性が限りなく低い事態にすら備え生き残ることを模索する集団だ。ちょうど俺たちが今直面しているような問題にすらな。こういった事態が起こっている時点で我々の正しさが証明されている」

『でも、えっちぃことしか考えてないじゃん。バカの秘密結社じゃぁんっ……』

「バカはお前だ。現実にありえないことが起きているのを目撃しておいて、それでもそんなのはゲームや漫画の中だけでのことだと受け入れない。そんなことでは遠くない内に後悔することになるぞ」

『あんたの話をマジメに聞いてあたしもう後悔してる』

「その程度で済めばいいな。旅行から帰ってきたらお前は全裸で登校することになるかもしれんぞ」

『そんなわけないでしょ、ばかっ』


 希咲は深い溜息で戯言と断じた弥堂の言葉を押し流す。


『あんたの部活って、なんかすっごい怪しくてすっごい悪いことしてるんじゃないかって思ってたけど、そんなバカなことばっかしてんのね……』

「そう思いたいなら思っていればいい」

『じゃあ他は? なんか魔法少女に出会っちゃったらとか言ってなかったっけ』

「現在討論中のテーマがそうだな。その次は滞在中の施設がテロリストに襲われたらというテーマの予定だ」

『やっぱバカじゃん……』

「そうか? そうだといいな」

『なによそれ』

「べつに」


 ヒントは与えてやったとばかりに弥堂は口を噤んだ。


『てゆーか、なんの話してたんだっけ? なんであんたと話してるといつも『なんの話だっけ?』になっちゃうの?』

「お前のせいだろ。俺たちがしていたのは『何故セクハラをすることが有効なのか』という話だ。そこでお前が『なにか現状の事態に心当たりはないか』と聞くからそれに答えてやった」

『それだけ聞くとあたしが話逸らしてるみたいでナットクいかない……』

「お前の納得など必要としていない。俺も、そして現実もな」

『あっそ。とにかく、HR終わってあんたに話しかけてきたみんなの様子がヘンってことね。それこそ今までの常識が改変でもされちゃったみたいに』

「そういうことだ。だから彼女らは俺に話しかけてきて、会話をしながらも俺の膝の上の水無瀬に声をかけることはなかった」

『それが変わった瞬間があった……。そう言いたいのよね? それが――』

「――あぁ。セクハラだ」


 核心を突いたように鋭い眼光とともに宣言をする弥堂に希咲はまたふにゃっと眉を下げた。


「その顔やめろっつってんだろ」

『だって……、あたしもう情けなくって……』

「なにがだよ」

『だってさ。あんたがさっき言ってたマンガとかだとさ、あ、えっちなのじゃないフツーのマンガね? それだと周りの人がみんなおかしくなっちゃったけど主人公たちだけがフツーのままで、とかってのが定番でしょ? そういう時ってその残ったフツーの人たちで頑張るって話になるんじゃないの?』

「大体そんな感じだろ」

『ちがうじゃん! あたしと愛苗とあんたで力を合わせて立ち向かおうってなってないじゃん! なんか色々と考えたりやってくれたりしてたのは伝わったけどさ! それでなんで最終的に出てきた答えがセクハラなの⁉ なんでそうなっちゃうの⁉ あたし、なんだか自分まで情けなくなってきちゃって……、うぅ……っ』

「何で泣くんだよ。バカじゃねえのか」

『あんたがバカだからよぅ……っ』

「うるせえ。いいから早くセクハラさせろ」

『イヤに決まってんでしょ?』

「だからそうする必要があると説明してるだろ。とりあえず最後まで話をきけ」

『やだよぅ……、どんな話されたって、それで「なるほど」ってなってもさ。そんで「じゃあセクハラしてもいいよ」って、なるわけないじゃん……。なんでそんなおバカなの……? もぅやだよぅ……』


 こんな馬鹿なことを説明しなければならない状況に、こんなことを説明してもわからない馬鹿な男に、そしてそんな馬鹿を頼らなければならない自分に。

 様々なものを情けなく思って希咲はシクシクと泣きだす。


 セクハラの必要性などという馬鹿な話など絶対に聞きたくなかったが、しかし、それを聞かないと先に進めないことだけは理解出来てしまう。

 結局いつもこうやって流されなければならない自分の境遇をまた情けなく思った。
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