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1章 魔法少女とは出逢わない
1章31 風紀委員会 ①
しおりを挟む「それでは今週の予定は以上になります。何か質問のある方はいますか?」
教室中へ向けた木ノ下先生の問いに返ってくる声はない。
「……大丈夫そうですね。変更があればまた報告しますので、みなさん一応この通りでお願いしますね」
今度は了承の声が不揃いに返ってくる。
弥堂のお膝の上でも水無瀬さんが元気いっぱいに「はぁ~い!」とお返事をした。
現在は下校前のHRの時間だ。
この時にはもう誰も弥堂の膝に水無瀬がのっていても何も思わなくなっていた。ただ、疲れていた。
木ノ下先生もチラリと一度視線をやっただけでもう何も言わなかった。
「それでは帰る前に、大事な注意事項です」
てっきりもう終わりだと思っていた生徒たちの何人かは「えぇ~っ」と不満の意を漏らす。
まるで小学生の教室のようだが、今日に限っては彼らは本当にもう帰りたかったのだ。
木ノ下もその気持ちは痛いほどわかっているし、なんなら自分が誰よりも強く帰りたいと願っていたので、「すぐに終わりますから」と苦笑いだけを浮かべ生徒達を咎めはしなかった。
「先週に野崎さんから連絡があったので、みなさんも知っての通りですが、今週は放課後の寄り道は基本的には禁止になります」
先週の金曜日の朝のHRでそれを連絡したのは弥堂だったのだが、木ノ下先生の中では記憶が置き換わっていた。
「意図としては、近頃の街の治安状況を鑑みて生徒の安全のために、ということです」
「えー、心配しすぎだぜ、先生。オレらそんなにヤワじゃねえっての」
「そうだぜ? 先週も繁華街でデカいツラしてやがった“カゲコー”のヤツをタイマンでイワしてやったぜ? ヨユーだよ」
「……そういう言葉が出てくるからこその『放課後はまっすぐお家に帰りましょうキャンペーン』なんですよ?」
暴力性を背景に自らの頼りがいをアピールしてきた須藤くんと鮫島くんに木ノ下先生はジト目を向けた。
「というか傷害事件じゃないですか……、ま、また他校からクレームが……、あの、相手にケガは?」
「あん? 大丈夫だろ」
「先生は大袈裟なんだよ。大体よ、タイマンだぜ? 事件なんかじゃねえよ」
「い、いえ、一対一のケンカなら罪にならないなんて法律はありませんからね?」
「は? なんでだよ⁉ タイマンなのに?」
「でもよ、遥香ちゃん。相手はドーグまで出したんだぜ? こっちはステゴロで勝ったんだから犯罪じゃねーよ」
「……この件は個別に訊きましょう。二人ともこのあと私と一緒に職員室まで来てください……」
「うそだろ⁉」
「マジかよ⁉」
そんなバカなと頭を抱える自身が担当するクラスの生徒の倫理観に木ノ下先生の胃がキリキリと痛んだ。
しかし、こんなことで挫けてはいられない。本丸は次だ。
「えー……、御覧のとおり我が校の生徒さんの素行も問題になっているのですが、みなさんに気を付けて欲しいのは外部の人間です」
須藤くんと鮫島くんに失笑していたクラスメイトたちだが、深刻そうな木ノ下の声のトーンに声を潜め耳を傾けた。
「これは大っぴらな話にはまだなっていないのですが……先週の週末、ちょっとした事件……というか問題が起きました」
その言葉にピクリと眉を動かし反応をしたのは弥堂だ。
水無瀬の口へ酢こんぶを押し込む作業を中断し、教師の方を視る。
もしかしたら訊きたい話が訊けるかもしれないと期待を寄せる。
木ノ下は『事件』と言った。
表沙汰にはなっていないのに、事件と。
弥堂が思い浮かべたのは昨日のショッピングモールの一件だ。
魔法少女と怪物との戦闘が昨日の夕方に行われた。
水無瀬の話だと、結界を展開し周囲から隔離する前にゴミクズーが一般人たちの前で現れ騒ぎになったという話だった。
弥堂はこれまでこの街で1年とちょっと生活をしてきて、化け物が出たなどという話は聞いたことがなかったし、各メディアの報道などでも見たことがなかった。
水無瀬たちが言うには、魔法で別世界を創り出し、そこに敵と自分を隔離する結界を使って、周囲に被害を出さないように、また魔法少女活動の秘密が漏れないようにやってきたという。
しかし、その隠蔽工作は昨日は失敗した。
路地裏にいた大きなネズミ程度ならまだ誤魔化しがきいたかもしれない。だが、ギロチン=リリィという特別な名を冠するあの巨大な花は、そこに存在すれば誰の目をも誤魔化すことは出来ない。
だというのに、昨夜帰宅してからあらゆる媒体をチェックしても、都心部に近いそれなりに人口の多い街に未知の怪物が現れたなどというニュースは一つもなかった。
それどころか、最近ではマスコミの報道よりも早い個人撮影の写真や動画も、SNSに一つたりとも存在しなかった。
夕方のショッピングモールに居た大勢の人間の中の誰一人として、警察に通報すらしないなんてことは考えづらい。
誰かしらが情報統制をしているのか、それとも弥堂には与り知らぬ何らかの力が働いているのか、木ノ下の話からそれを想像することくらいは出来そうだ。
思わず酢こんぶを摘まむ指に力が入ると、パラパラと甘じょっぱい粉が落ちる。
「わわわ……っ⁉」
「おい、うるさいぞ。先生が大事な話をする。時と場合を弁えて静かにしていろ」
慌てて受け皿を作ろうとおててを動かした愛苗ちゃんに理不尽な注意を与え、弥堂は精悍な顔つきを教壇へと向けた。
そんな弥堂をチラリと見て、先生は話を続ける。
「……実は先週、学園付近に変質者が出没したという報告があがりました」
ざわざわと、特に女生徒達が落ち着きを失くす。
(なんだ。変質者か……)
弥堂は早速興味を失い水無瀬の口に酢こんぶを突っこんだ。
そして指についた粉を落とすため、親指と人差し指を擦り合わせようとすると水無瀬さんにハシッとその手を掴まれる。
「おてて拭いてあげるね?」
ニコニコと笑いながら彼女はポッケからウェットティッシュを取り出し、せっせと健気に弥堂の指をキレイにする。
「…………」
弥堂は何かを言おうとしたが特に何も思いつかず、どうせ後は終わりを待つだけの時間だと、植物のことでも考えていることにした。
そんな彼を木ノ下先生は再びチラリと見て、続ける。
「……時間は金曜日の放課後。場所は学園の正門前です」
考えていたよりもずっと近い日時、近い場所での犯行に教室内に不安の声が拡がった。
「実際の犯行内容についてなんですが、その……」
木ノ下先生は難しい顔をして言い澱む。
まさか口に出すことすら憚れるような卑劣な犯罪が行われたのかと、自分たちには関係ないと投げやりな態度だった鮫島くんと須藤くんも姿勢を正し表情を真剣なものに改める。
「その、先生そういうことにあまり詳しくなくて、どう説明していいものか難しいんですけど……」
「先生。変に気を遣わなくていいぜ」
「あぁ。オレたちもガキじゃないんだ。真面目に聞くぜ」
「そうね。私たちだって無関係じゃいられないし……」
「はっきり言っちゃってよ。遥香ちゃんっ!」
社会の抱える問題に真剣に向き合おうとする生徒たちに木ノ下先生はジィーンと胸を打たれる。チラリと一人の生徒に目を向けるとその人物だけは生気のない目で何もない宙空を見つめていた。
木ノ下先生は努めて反応をしないように心掛けた。
「……犯人は男性。おそらく一人。単独犯だと考えられています。被害者は当然女生徒になるんですが、無差別に複数人を対象に犯行に及んだと聞いています」
再び騒めきが拡がる。
「で、でもよ、先生。オレらフツーに帰ったけど全然そんなの気付かなかったぜ?」
「今日だってよ、騒ぎがあったなんて誰も言ってなかったぜ?」
「……イヤだな。変態とか。どんなヤツなんだろ……?」
「マホマホ、きっとアレだよっ。春先に出てくる、コートをバッて開いたら『ボロロォ~ン、コンニチワァ~ッ!』ってヤツ! 風物詩だよっ。ね? 遥香ちゃんっ!」
「いえ、それが……」
そんな風物詩は存在して欲しくないなと考えながら、木ノ下先生は事件の詳細を生徒たちに説明していく。
「どうもまだ情報が錯綜していてですね、はっきりしていないことも多いのですが……」
「……? おかしくねえか?」
「被害者はいっぱいいるんだろ?」
「えぇ、ですが、被害を受けた女子たちは口を開きたがらないというか、自分でも何をされたのかわからないとか、混乱しているんだと思うんですけど、そんな証言が多いんです」
「変な話ね。それなのに自分が性被害を受けたという認識はあるというの? 楓、風紀委員会の方で詳しいこと……楓? ちょっと、貴女寝てる……? そんなわけないでしょう。こっち向きなさいよ」
何か明確な回答を避けているかのような野崎さんを詰問する舞鶴の方を見て、気持ちはわかると苦笑いをする。
それからもう一度弥堂の方にもチラっと視線を送り、続きを語る。
「かろうじて集められた証言をまとめるとですね、共通した点が浮かび上がってきました。キーワードとなったのは『リスペクト』という言葉でした……」
『ん?』と生徒さんたちは首を傾げる。
珍しい言葉でもないが、何か最近の出来事の中で記憶に引っかかるものがあったからだ。
「……正直、先生には何のことか全然わからなかったんですが、被害者たちは一様に脱がされたりとか触られたりといった被害はなく、その、なんですか……? スカートの上から下着を『指差しリスペクト』されたと……」
ババババっと教室中の生徒が一人のクラスメイトの方へ反射的に顔を向ける。
十数の視線の交点にいるのは、もちろん弥堂 優輝だ。
ここ数日の間のどこかで、彼と希咲 七海との口論のようなものの中で出てきたワードだ。『おパンツ』を『リスペクト』するとかしないとかなどと彼らが揉めていて、同じ教室内に居た彼らや彼女らの耳に入ってきたのだ。
ちょっと他ではまず聞かないような内容の会話だったので、記憶に印象的に残っていたのである。
「……弥堂君。何か覚えはありませんか……?」
弥堂の反応を窺うように、慎重な様子で木ノ下は聴取をする。
「言っている意味がわかりませんね。もっと具体的な質問をしてもらえませんか」
弥堂には何ら思うようなことはないようだ。少なくともそのようには見える。
「『リスペクト』という言葉以外にも、何人かの子がアナタの名前を出していました。アナタが事件現場で目撃されています」
教室が騒めく。
元々違法性については定評のある男だったが、ついに性犯罪にまで手を染めたかとクラスメイトたちは大きく動揺した。
「まだ何が言いたいのかわかりませんね。まさか俺を犯人だと、そう疑っているのですか?」
「……先生はそうは思っていません。ですが、集めた証言を一緒に検証していた他の先生方の中にはアナタを疑っている方もいらっしゃいます」
「そうですか。では、直接誤解を解きましょう。その教師と俺の名前を出した生徒の名前を言え。全員だ」
「そ、それは言えませんっ! 絶対にダメです!」
「何故です」
「絶対に身の安全を保障するという約束で、お話を聞いたんです!」
「まるで俺がそいつらの安全を脅かすと言っているように聞こえますね」
「と、とにかくっ! お話できないものはできません!」
「そうですか。では、俺もお話出来ることは何もありませんね」
そういえば、HRが開始してから木ノ下先生も不自然に何度も弥堂をチラ見していた。もしかしたら最初から容疑者だと考えていたのかもしれない。
しかし、毅然とした様子で教師に悪態をつく弥堂の態度に、何名かの生徒は冤罪なのではと考えた。
「むむむ、余裕の態度ですねっ。解説のマホマホさん、どう思いますか?」
「誰が解説よ。気になるのは弥堂くんが決して『やってない』とは言ってないこと、かな……?」
日下部さんの鋭い指摘にまた教室はざわつく。
他人の言葉を聞くたびに、いちいち右を向いたり左を向いたり顔を動かす間抜けどもを弥堂は軽蔑した。
なので再び左を向かせる為に発言をする。
「大体、事件当時に俺が正門付近に居たと言いますが、登下校をする際には誰もが通る場所でしょう。それだけで俺を犯人だと認定するのは早計では?」
「で、ですが、被害者が――」
「そいつらは本当に被害者なのですか? 今のご時世、女が性被害を受けたといえば碌に検証もせずにそれを真実だと思い込む間抜けが多い。先生、ちょうど今のアンタのように」
もしも同じ文章をSNSに投稿したら炎上間違いナシな暴言を堂々と言い放った生徒に木ノ下先生は動揺した。
「そ、そんなことは……っ、あの子たちが嘘を吐いていると……っ⁉」
「さぁ? 誰かもわからない人物が言っていることが真実かどうかは俺にはわかりませんね。ただ、そういう商売なんじゃないかと、可能性の話をしただけです。もしも名前だけでも教えてくれれば明日には真実をはっきりさせますよ」
「そ、それは出来ないと――」
「それに。何ですか? 『おパンツ』を『リスペクト』? まったく意味がわかりませんが、そもそもリスペクトしているのならいいのではないんですか? 何故リスペクトが性犯罪に?」
「そ、それは先生にも――」
「いいか、木ノ下教師。お前では話にならない。とっとと巣に帰ってお前の後ろにいる上司にこう伝えろ。『バカめ』とな」
「な、なんですって……っ⁉」
『やった』、『やらない』の平行線にしかならない問答に嫌気がさしたのか、弥堂が上っ面の敬語すら投げ捨てて吐いた暴言に、木ノ下先生はびっくり仰天した。
「碌に証拠もとれていないのに、責任を問われたくないからと安易な解決に逃げるな。お前らは素人だ」
「し、素人ではありませんっ! 先生たちはきちんと教員免許を――」
「それは勉強を教えるための資格だろう。犯罪者の相手をするのには役不足だ。俺はプロフェッショナルだ。お前らより俺の方が上手くやれる」
性犯罪の容疑をかけられている男が突然犯罪の専門家を名乗り始め、教室中が動揺する。酷い侮辱を受けている木ノ下先生だが、自分に自信のない彼女は不安から押され気味だ。
「もしも。これはあくまでもしも、の話だが。仮に俺を犯人だと逮捕をして、その後も被害が止まらなかったらどうする?」
「そ、それは…・・っ」
「お前らの負うべき責任に『冤罪』が追加されるぞ? その程度の勘定もできないのか? だからお前らは素人だと言ったんだ。いいか? もう一度言うぞ? お前の上司にバカめと伝えろ」
「……す、すみません…………」
教師になってまだ二年目の年若く、元来から気の弱い木ノ下先生はつい謝ってしまった。クズ男は内心で『しめた』と唇を舐める。
「おい、今謝ったな? 認めたな、冤罪だと。この落とし前はどう付けるんだ?」
「えっ……? いえ、その、そういうわけでは……」
「では何故今謝罪した? お前は悪いと思ってもいないのに口先で謝罪を口にするのか? それと同じことをしろと生徒にも教えるのか? どうなんだ?」
「そ、そんなに強く言わなくても……」
木ノ下先生の目にジワっと涙が浮かぶ。先生のメンタルはもう限界だ。
ここぞとばかりに女の人を激詰めし始めた男の勢いに他の生徒たちもドン引きし、とっさに止めに入れる者もいない。
このまま地獄のようなハラスメントが目の前で繰り広げられるかと思われたが――
「――冗談です」
「えっ……?」
「冗談だと言ったんです」
「じょう……だん……?」
圧を弱めて肩を竦めてみせる生徒に呆然とした目を向ける。
理解が追いつかず、彼の言葉よりも彼が動かした肩に顔をぶつけて驚いた様子の水無瀬の方が気にかかった。
「なに、そもそもこれはアナタの考えではないのでしょう。どうせ三田村教頭あたりの指金ではないんですか? あの女の考えそうなことだ」
「あ、あの……、教頭先生のことをあの女だなんて……」
「それは今はどうでもいい。そんなことよりも、そうですね。この件、俺に任せてはみませんか?」
「えっ?」
「他人の仕事にケチを付けるだけでは芸がない。それでは無責任でしょう。だから俺が犯人を捕らえてみせます。その成果を以て俺がプロであると証明してみせます」
「いや、でも……っ」
「しかし、そんなに大勢の人員を割く必要はないでしょう。俺一人で十分です。この程度のケチなヤマに人的コストを不必要にかけるのは効率が悪い。あなた方は俺が持ち帰る報告をただ待っていればいい。家畜小屋で餌を待つ豚のようにな」
「はっ……? あっ……? えっ……⁉」
調査を開始する前から事件をケチ呼ばわりした専門家の勢いに木ノ下先生はのまれる。
「では、この件はこれで終わりだ。他の連絡はないのか? 俺は用事が詰まっているんだ。あるのなら早くしろ」
「え……? あ、でも……っ」
「あるのか、ないのか。どっちだ?」
「あ、ありますっ」
「よし、言え」
「は、はいっ!」
羊を柵へ追い込むようにパンパンと手を叩いて急かされ、気の弱い木ノ下は押し切られた。
何かがおかしいと首を傾げながら次の連絡をする。
「え、えっと……、実は学園付近だけでなく、美景川沿いの地帯で他にも変質者が出現すると報告を受けています。こちらは警察や自治体の方から注意喚起されています。被害者は女性で何件も被害届けが出ています。着用している衣服の一部が奪われるようです。先ほどの件と同一犯かはわかりません。みなさん下校時は特に注意をして、なるべく一人にならないように暗くなる前に帰るように心がけましょう……」
先ほどのものとは違って割とガチめの犯罪に関する注意が、このなんとも言えない空気の中でポロッと出され、誰の頭にもスッとは入ってこなかった。
「はぁ~い……」と、気の抜けた返事がまばらに返ってくる。
「よし、ではこれで終わりだな。さっさと帰って捜査権が移ったことを報告してこい」
「い、いえ、弥堂君それは――」
「――起立っ!」
「えっ⁉」
問答無用に放たれた野崎さんの号令に生徒たちは反射的にガタタッと音を立てて立ち上がる。
「気をつけっ、礼っ!」
「さようならぁー!」
「えっ? えっ……?」
木ノ下先生は混乱しキョロキョロと教室を見回すと水無瀬をお姫様抱っこして姿勢よく立つ弥堂に目が留まる。
「………………さよう、なら…………」
先生は心が折れてトボトボと教室を出ていく。
おかげで須藤くんと鮫島くんの呼び出しは有耶無耶になった。ワンチャンそれを期待して彼らは弥堂の横暴に口を出さなかったのだ。
そして、捜査権が犯人自身の手に渡ったことで、永遠に犯人が見つからないまま事件が迷宮入りすることが確定してしまっただけのHRが終わった。
今週最初の放課後が始まる。
まだ初日。
まだ初日なのだ。
制御不能な厄介者を抱えてしまった2年B組の生徒たちは、かつてない疲労感と、こんな日々が続くのだという絶望感に苛まれた。
何故こんな横暴な男が野放しになっているのだと、社会の理不尽さへの疑問を感じ、次に怒りを燃やし、そして救いを求める。
この状況を打破できる存在、あの男に対抗できる存在を求めて、やがて誰もが同一人物を脳裡に浮かべる。
一人の少女だ。
全員がその少女に心から願う。
『早く帰ってきて……っ!』――と。
教室の窓から覗く放課後の空に、きゃるんっとアゴぴーすをキメた希咲さんのドヤ顏が幻影として浮かび上がった。
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