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1章 魔法少女とは出逢わない
1章21 旗ノ下ノ定メ ⑤
しおりを挟む「おい、お前ら。もう――ぅがっ」
離れろと命じようとしたらメロがより身体を密着させてきて、口と鼻の中に毛が入り酷く不快さを感じる。
「お、落ち着いてっ! 落ち着いて弥堂くんっ!」
「もがえが……っ!」
『お前が落ち着け』と言いたかったが、メロのネコさんボディに口を塞がれていたために上手く発音できない。それどころか舌に大量の抜け毛が張り付きこの上なく不愉快になった。
とりあえずこのクソネコをどかそうと、塞がれた視界の中で当てずっぽうに手を遣ると、掴み損ねてネコがズリ下がってきた。
「ワニャニャニャニャ……っ⁉」
弥堂の顏に頭を下にしてへばり付いていたネコ妖精は身体の半ばまで落ちそうになったところで慌てて弥堂の首にしがみつく。首筋の薄皮に浅く爪が食い込んだ。
前足で弥堂の首を掴み後ろ足で頬を挟んで落とされまいと抵抗をする。
すると、自然とプリップリのメスネコア〇ルが弥堂の目前に突き付けられた。
ビキッと大量の青筋を浮かべて、尻尾を掴んで無理矢理引き剥がそうとする。
「ウニャニャニャッス⁉ マ、マナッ! 飛行魔法ッス! 飛んでしまえばコイツはもう何も出来ないッス!」
「あっ、えっ……⁉ は、はいっ!」
言われるがままに水無瀬は弥堂のお腹に顔を押し付けて「むむむ……っ」と念じる。
「【飛翔】!」
弥堂の腰に抱き着いたまま魔法の言葉を放つと、彼女のショートブーツに生えた光の羽がふよふよと蠢き、酷く不安定な挙動で、弥堂と彼の顔面に張り付くメロ諸共に宙に浮かび上がっていく。
「フハハハハーッス! 少年っ! オマエの野望もここまでだっ!」
「ふざけるな、降ろせ」
「このまま暫くジブンらと一緒に空中散歩とシャレこもうぜぇーッス!」
「お断りだ」
弥堂はネコから目線を外し自身の下腹部を視る。
現在のこの状態を作り出す浮力を生み出しているのはネコ妖精ではなく、自身の腰にしがみつきながら下腹部に顔を押し付けてる魔法少女の方だ。
彼女は苦手な飛行魔法の制御に集中するためか、ぎゅっとお目めを瞑り「むむむ……っ」と念じている。
彼女のその声の振動か、魔法の力の波動のようなものなのかは不明だが、身体の外部を徹り抜けて膀胱に振動が伝わってくる。
「ガハハハハーッス! 己の翼を持つことも出来ぬ憐れなニンゲンめぇ! どうだ今の気分はっ⁉ 空中で自分を制御できぬ不自由さにキンタマをヒュッとさせるがいいっ! フハハハハー…………あ、あれ……? マナ? ちょっと高度上げ過ぎじゃないッスかね……?」
魔王のような高笑いをあげていたメロは途中で言葉に不安さを滲ませ、恐る恐る弥堂の股間部分を覗き込み水無瀬を窺う。
「こ――これは……っ⁉」
「おい、どうした?」
自身の股間部分を見ながら驚愕に目を見開く淫蕩なネコに弥堂は問いかける。
「これは『いっしょけんめいモード』に入ってるッスね」
「……なんだそれは?」
「他のことは何も考えられないくらいがんばってるッス」
「……つまりどういうことだ?」
「この後どうなるかもうわかんねえってことッスね」
数秒ほど、下腹に顔を押し付けながら何かに没頭する少女のことをネコ妖精と一緒に眺める。その間も高度は少しずつ上がり続けている。
「ところで少年?」
「なんだ」
「このアングル。エロくないッスか?」
「あ?」
右の前足で水無瀬を示しながら、左の前足を自身の口元に添えながら「ニャシシ」と笑うネコに怪訝な眼を返す。
「だぁーからぁーっッス! これもう構図が完全にペェズリィペッラじゃねぇッスか!」
「ペェズ……なんだと? どこの言葉だ、イタリア語か?」
「かぁーっ! もうっ! このニブチンコがよぉっ! アレに決まってんだろぉッス! おっぺぇで挟んでジュッポジュッポするアレによぉっ!」
ガハハと下品な笑いをあげるネコに軽蔑の眼差しを向けるが、奴はこちらの気分を察するどころか余計に興奮をする。
尻尾を掴まれたままジタジタと宙を泳ぎ、耳元に荒い息遣いを寄せてきた。
「ハァ……、ハァ……ッ! ど、どうなんスか少年? ジッサイのところ……っ」
「なにがだ」
「ヘッ、ヘヘッ……、クラスでいつも隣に座ってる女の子のこんな姿を見ちまって……、興奮しないッスか? 意識しちゃわないッスか……?」
「お前の言うことはまるで理解できん」
「こんの野郎っ! 男子高校生めっ! 誤魔化しちゃって可愛いヤツめッス! どこまでジブンを興奮させる気っスか!」
「おい、息が生臭ぇぞ。離れろ」
「お、教えてくれッス。男子高校生はこういう時は勃起しちゃうんスか? もちろんするッスよね? だって男子高校生だもの。ジブンにだけこっそり教えてくれッス」
「お前は男子高校生を何だと思ってるんだ」
中年男性に匹敵するようなセクハラを耳元でネットリと囁いてくる自称ネコ妖精に弥堂は顔を顰めた。普通に気持ち悪かったからだ。
「い、いいだろぉッス……。勃起は恥ずかしいことじゃないッスよ? むしろエライことッス。勃起してるって教えてくれたら、ちゃんとジブンも『勃起できてエライね?』ってホメてあげるッスから堂々と勃起していいんスよ?」
「何回言うんだよ。お前勃起が好き過ぎだろ」
「ハァハァ……、こ、今夜はやっぱアレッスか……? これでヌくんスか? も、もしヌいたら今度会った時に教えてくれな?」
「お前の期待するようなことは起こらない」
「またまたぁ……。おねがいしますよぉ……、ウチのタレント、脱いだらイイモン持ってんスよ……? 今夜の男子的営みのお供にぜひ……。そしてその暁にはぜひゴールデンの出演を……」
「意味のわからんことを言うな」
「ツレねえこと言うなよぉ……。悦びは分け合おうッス。悦びを連鎖させて循環させて世界中が幸せになるんス。これぞ快環の理っス!」
「…………」
弥堂は卑猥な妖精との意思の疎通を諦め、事態の解決を図るため魔法少女の方へアプローチをする。
彼女の身体に足を巻きつけギュッと締め付ける。
「――ぴっ⁉」
突然の圧迫感に愛苗ちゃんはびっくり仰天した。
「お、おい! コラっ! マナになにするんスか⁉」
「もう面倒だ。このまま締め落してやる」
「頭おかしいんスか、この野郎っ! そんなことしたら地面に真っ逆さまして汚ぇシミになるッスよ!」
「お前らをクッションにすれば足の1.2本で済むだろ」
「や、やめろっ! このイカレやろ…………オォゥ、ふぁびゅらぁ~す」
慌てて弥堂の足の絞め技からパートナーの救出に向かおうとしたメロだったが、要救助者の状態を視認して思わず唸る。
何事だと弥堂も視線を向けてみると、自身の足に挟まる水無瀬の絵面は先程よりもマズイことになっていた。
下腹部に顔を押し付ける形から、足で絞め上げられたショックで身体が弓反りになった関係でぽよんっと躍動した愛苗ちゃんの暴れん坊が弥堂の股間の上に乗っかった。
股の間で苦悶する彼女の動きに合わせてグニングニンと形を変える。
「絞めづらいな。乳が邪魔なのか?」
「オイっ! オマエやめろッス! マナが苦しそうだろ!」
「前から思っていたがこれ偽物なんじゃねえか? 希咲みたいになんか詰めてんだろ。お前ちょっとその乳取れ」
言いながら弥堂は愛苗ちゃんのボリューミーな左のペェをガッと鷲掴みにした。
「オイっ! オイッ……! オマエ調子のりすぎッスよ! IVは許すけどAVはダメだって言ってんじゃろがいっ! ここのラインを越えるなッス!」
「いてぇな。引っ掻くんじゃねえよ。つーか、これ本物か。ガキみてぇな顏してるくせに生意気だな」
「蛮族かオマエはぁーッス! 愛苗は初めてなんッス! 初体験で空中ペェズリィの強要とか可哀想ッス! 初めては夜景の見えるホテルの一室でベッドに隣あって座りながらワインとか飲んでる時に徐に肩を抱き優しくキスをするところから始めて欲しいッス!」
ネコが何やら具体的な展望を語っていたが無視をして、水無瀬の乳に意識を向ける。
先日の希咲のような胸パッドの感触が返ってくるとばかり考えていたら、意外にも天然100%のソフトタイプのようで、弥堂はモミモミと手を動かして真贋を確かめた。
「――ふみゃぁーーーーっ⁉」
その猥褻行為によって『いっしょけんめいモード』が解除されてしまった愛苗ちゃんは、魔法のコントロールを失う。
「わ……っ! わ……っ⁉ 落ちちゃうぅぅっ⁉」
「ギャーーーッス⁉ は、はなせーッス!」
いち早く飛んで逃げようとしていたネコ妖精の尻尾を強く掴み直すと断末魔のような悲鳴をあげた。
3人一緒に急速落下していく。
「あわわわわ……っ! ぎゅぅーっ!」
大慌てで水無瀬が魔法に強く魔力をこめる。
すると一気に落ちて一気に上がるジェットコースターのような軌道で、地面ギリギリを掠めながら今度は急上昇をする。
「あっ、あっ……! も、もうダメぇぇぇぇっ⁉」
何とか持ち直したと思いきや、弥堂の腹に抱きついた彼女がお目めをバッテンにしてそう叫ぶと、一定高度まで上がったところで急に浮力を失う。
飛行魔法が解除されたように思えたがそうではなく、力のベクトルがあちこちに暴れ出す。
そして最終的にギュルンギュルン横回転をしながら天地反転し、頭を下に向けた状態で地上へと加速をする。
今度は軌道修正をされることはなく、胴体をガッチリとホールドされたままドリルのように横回転状態で弥堂の脳天は地面に衝突をし、グリンっと目玉を裏返して気絶した。
失神KOされた弥堂の腕が投げ出されたため、彼の手に尻尾を掴まれていたメロはビターンっと地面に叩きつけられ、グリンっと目玉を裏返し気絶した。
弥堂のお腹にギュッとしていた愛苗ちゃんは身長差の影響で頭を打つことはなく事無きを得た。
弥堂が意識を手放す直前、地面に衝突する瞬間に、翼を生やした立派な白馬が「ひひーん」と力強く嘶くイメージが幻視されたような気がした。
「び、びとうくーーんっ! メロちゃぁーーんっ!」
味方二人を纏めて葬った少女の悲痛な叫びが木霊する。
こうして魔法少女ステラ・フィオーレの活躍により、悪の風紀委員の野望は打ち砕かれ、か弱き怪人の生命は守られた。
だが戦いはまだ終わったわけではない。
がんばれフィオーレ。負けるなフィオーレ。
美景市の平和はキミの魔法にかかっている。
「ごめんなさぁーーいっ!」
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