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1章 魔法少女とは出逢わない
1章21 旗ノ下ノ定メ ①
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「――ん……んぅ…………」
「マ、マナっ! よかった……目を覚ましたんスね……!」
小さく呻いて水無瀬 愛苗が目を覚ますと、彼女の友人であるネコ妖精のメロが安堵の声をあげる。
「……あれ……? わたし……?」
「つ、疲れてたんッス! マナは疲れてうっかり寝ちゃったんスよ!」
「つかれ……? あれ? そうだっけ……? そんなことないような……」
「いーや、あるッス! 魔力切れッス! いっぱい魔法使って魔力切れしちゃったんスよ!」
「そっかぁ……魔力切れかぁ……。メロちゃんずっと着いててくれたんだね? ゴメンね……?」
「な、なぁにっ、気にすることないッス! 魔力切れなら仕方ねぇーッス!」
水無瀬に気を失う前後の記憶があやふやな様子が見受けられ、メロはワンチャンに賭けて誤魔化しにいった。
お助けマスコットであるネコ妖精的には、自分の主にはトラウマ級の衝撃体験など出来れば忘れて欲しかったからだ。
しかし――
「……あれっ? でも……あっ――そうだ! ゴミクズーさんは⁉ 弥堂くんが……っ!」
「――えっ⁉ あっ、いや……、それは、その……大丈夫ッス!」
「えっ? だいじょうぶ……?」
「だだだだだいじょうぶッス! その、けっこう大丈夫っス!」
「そっかぁ……、だいじょうぶなんだね……」
意識の覚醒に伴い次第に記憶が鮮明になっていく水無瀬の認識の整合がとれるのを少しでも遅らせようとゴリ押しで悪足掻きをする。
メロは自分でもさすがにこれはどうかと思ったが、素直なよいこの愛苗ちゃん相手ならそれでも大丈夫そうだった。
「さ、さぁ……、そろそろ帰るッスよ。もうすぐ晩ごはんの時間ッス。朝にママさんがお花に水やりしながら『今夜はカレー♪』って口ずさんでたッス。悪いけどジブン今夜はガチらせてもらうッスよ」
「え? でも……、メロちゃんはネコさんだし、あんまり刺激の強いものをガチるのは……」
「あっ、えっと、だいじょうぶッス! 安心するッス! ちゃんとカレー抜きのカレーライスにしてもらうッス!」
「あ、そっか。カレーを抜けばいいのか。それなら安心だね! さすがメロちゃん、お利口さんだね!」
「――それはただの米だろうが。お前ら本気で言ってんのか?」
「――え?」
間に挟まれた声の方を見てみると、この魔法少女の活動の現場に巻き込んでしまった同級生の弥堂 優輝が呆れたような瞳を自分たちに向けていた。
路上に座り込んで何かしらの作業に没頭していた弥堂だったが、あまりに気の抜ける会話が聴こえてきた為に、つい手を止めて口を挟んでしまったのだ。
「あ、あわわわわわ……っ!」
「あ、弥堂くん。こんばんは。あのね? ちゃんとお肉とかも洗ってからメロちゃんにあげるから大丈夫なんだよ?」
「……だったらカレー鍋を経由する必要ないだろ。そのままくれてやれよ。生肉のままで十分だろ、そいつみたいなもん」
「なんだとーーッス! 誰がみたいなもんッスか! ちゃんとネコさんの健康にも気を遣えーッス! ポークカレーだったらどうしてくれんスか! ジブンどうなっちゃうんスか⁉」
「知るか」
大声で抗議するメロに迷惑そうな顔を見せると、彼はまた振り向いて元通り何かしらの作業を再開した。
「ところで弥堂くん。何して――」
「――ニャアァァーーーーッス!」
自身と彼との間の宙に浮くメロを右から迂回して弥堂の方を覗き込もうとすると、大慌てな様相でメロが視界に割り込んでくる。
「えっと、弥堂くんが何してるのかなーって――」
「――フニャアァーーーーッス!」
少しだけ怪訝そうにしながら今度は左側に身体を傾けて向こうを覗こうとすると、またもメロが素早く視界を塞いでくる。
ダラダラと顔面の毛皮から汗を流す彼女のことを、水無瀬はぱちぱちと瞬きをして見る。
「メロちゃん、どうしたの?」
「こ、これは――ッスッスディフェンスッス!」
「え?」
「しょ、勝負ッス、マナっ! 1ON1で決着をつけるッス!」
「えっ? えっ?」
「さぁこいッス! カンタンにジブンを抜けると思うなよッス!」
「え、えっと……、じゃあ、いくね……?」
戸惑いつつも水無瀬は『遊んでアピール』をする飼い猫と遊んであげることにしたようだった。
メロが塞ぐ方の逆をとりにいこうとする。
すると――
「ッス! ッス! ッス! ッス! ディーフェン! ディーフェンっ! ッス! ッス! ッス! ッス! ディーフェン! ディーフェンっ!」
「わぁ、すごいっ! メロちゃんがいっぱいいるみたい!」
残像を残すような速度で水無瀬の視界に身体を伸ばしてブロックをする。
水無瀬の目にはそれがネコさんの壁に見えた。
やがて体力を使い果たしゼェーゼェーと息を荒げるメロの肉球から滴る汁を、ポッケから取り出したハンカチで水無瀬が拭いてあげていると――
「おい、お前らさっきから何遊んでんだ」
「こっち向くんじゃあねえよおぉぉぉッバカやろうがあぁッ!」
ネコごときに怒鳴られて弥堂は不快げに眉を歪める。
「なに気分害してんだテメーッ! さっきからジブンがどんだけ苦労して隠してっと思ってんだボケがッ! 少しは空気を読まんかいぃっ!」
「あ? ネコの分際であまりナメた口をきくなよ。躾をされたいか?」
「――あっ⁉」
弥堂が立ち上がり二人の方へ歩き出そうとしたことで、水無瀬の目から隠されていたモノが白日の下に晒された。
「あっ……、あっ……、そんな……ネズミさん……」
彼女は息を呑む。
「なにしてくれとんじゃボケェーーッス!」
「なにだと? お前らのためにペンダントを取り返した上に時間稼ぎまでしてやってたんだろうが」
「そうだったーーッ! けどっ! コンプラを! コンプラを守って欲しいッス!」
「コンプラ……? 意味のわからんことを言うな。ここは戦場だぞ」
言い合いをする弥堂とメロを他所に、水無瀬はペタンと地面にヘタリこむと――
「ひぐっ……、うぇぇ……、うわぁぁぁぁーーんっ!」
――ギャン泣きをした。
「あっ、あぁ、マナっ! ちくしょう……っ! かわいそうに……っ!」
「おい、うるせえぞ。さっさとしろ」
「このど畜生がよおぉっ! オマエふざけんなよ! こんなグロ死体、完全に18禁だろうがっ! エグイもんをウチのマナに見せんじゃねぇッスよ! オマエこれ淫行だからな! 条例にひっかかるッスよ!」
「死体? 死んでねえぞ」
不可解そうに首を傾げると、弥堂はネズミさんの惨殺死体だと思われるものに爪先を蹴り入れる。
すると短く細い声で呻き、ゴミクズーは僅かに身動ぎをした。
それを見た愛苗ちゃんはさらに大きな声で泣く。
「う、うぇぇぇ……、グロすぎッス……。ジブンも毛玉吐きそうっス……」
「よくわからんがこいつがあるのが問題なら、魔法を撃ち込んで消しちまえばいいだろ。とっととこの生ゴミ処分しろ」
「ギャアァァァーッ⁉ 痛い痛い痛いッスー! やめろーっ!」
言いながら弥堂がネズミの頭蓋骨から生えた鉄筋に足を乗せてゴリゴリと踏み躙ると、メロは体感幻覚に似た痛みを感じて頭を抱えた。
「チクショー……、このクソニンゲンめ。やりたい放題してくれやがって……、もう許せねえッス!」
「ほう」
「所詮は高校生のガキ。多少燥いでるくらいなら見逃してやろうと思ったッスけど、マナを泣かしたのは完全にライン越えッス!」
「そうか」
「毎日水無瀬家の押入れの襖を引っ掻いて研いでる、この自慢の爪でズタズタに引き裂いてやるッス!」
「お前、本当に何の躾もされてないのか?」
「ククク……ジブンのことより自分のことを心配するんスね」
「……結局誰を心配すればいいんだ?」
「いい加減にその減らない口を閉じろ、ニンゲン。崇高なるネコ妖精のこのワレが矮小なるキサマをシツケてくれるわ」
「そうか。やる気なら余計な口をきかずにとっとと向かってこい。お前の全身の骨を粉々にしてそこのネズミの腹の中に詰めてやる」
「フン……」
崇高なるネコ妖精は頭を低くしてお尻を少し持ち上げて構える。
前足で地面を均すようにフミフミしながら若干後退すると、全身の毛をぶわっと逆立たせてプシッと粗相をした。
「ビビってんじゃねえか」
「チッ、チチチチビってねぇーしッ⁉」
口ぶりとは裏腹にプルプルと震えるメロを、弥堂はつまらなそうに見下した。
「まぁいい。お前はいちいち煩くて生意気だ。ついでにここで躾てやる」
「グッ、ウゥ……」
メロは気圧され後退る。
すると尻尾が何かに触れたことにより、後退する足が止まる。
自分の後ろには泣いている友人がいることを思い出した。
その彼女の後ろへと隠れるか、それとも前に出るか。
その判断に逡巡している間に目の前の男がこちらへ近づこうと一歩を踏み出した。
決断を下す速度に決定的な差がある。
それでもまだ、メロは決断をすることが出来ずに弥堂の二歩目の足が路面を踏むのをただ見つめ――
「――そこまでだぁーーーっ!」
背後から弥堂ではない男の声が突如響き、そして一つの人影が宙を舞った。
「マ、マナっ! よかった……目を覚ましたんスね……!」
小さく呻いて水無瀬 愛苗が目を覚ますと、彼女の友人であるネコ妖精のメロが安堵の声をあげる。
「……あれ……? わたし……?」
「つ、疲れてたんッス! マナは疲れてうっかり寝ちゃったんスよ!」
「つかれ……? あれ? そうだっけ……? そんなことないような……」
「いーや、あるッス! 魔力切れッス! いっぱい魔法使って魔力切れしちゃったんスよ!」
「そっかぁ……魔力切れかぁ……。メロちゃんずっと着いててくれたんだね? ゴメンね……?」
「な、なぁにっ、気にすることないッス! 魔力切れなら仕方ねぇーッス!」
水無瀬に気を失う前後の記憶があやふやな様子が見受けられ、メロはワンチャンに賭けて誤魔化しにいった。
お助けマスコットであるネコ妖精的には、自分の主にはトラウマ級の衝撃体験など出来れば忘れて欲しかったからだ。
しかし――
「……あれっ? でも……あっ――そうだ! ゴミクズーさんは⁉ 弥堂くんが……っ!」
「――えっ⁉ あっ、いや……、それは、その……大丈夫ッス!」
「えっ? だいじょうぶ……?」
「だだだだだいじょうぶッス! その、けっこう大丈夫っス!」
「そっかぁ……、だいじょうぶなんだね……」
意識の覚醒に伴い次第に記憶が鮮明になっていく水無瀬の認識の整合がとれるのを少しでも遅らせようとゴリ押しで悪足掻きをする。
メロは自分でもさすがにこれはどうかと思ったが、素直なよいこの愛苗ちゃん相手ならそれでも大丈夫そうだった。
「さ、さぁ……、そろそろ帰るッスよ。もうすぐ晩ごはんの時間ッス。朝にママさんがお花に水やりしながら『今夜はカレー♪』って口ずさんでたッス。悪いけどジブン今夜はガチらせてもらうッスよ」
「え? でも……、メロちゃんはネコさんだし、あんまり刺激の強いものをガチるのは……」
「あっ、えっと、だいじょうぶッス! 安心するッス! ちゃんとカレー抜きのカレーライスにしてもらうッス!」
「あ、そっか。カレーを抜けばいいのか。それなら安心だね! さすがメロちゃん、お利口さんだね!」
「――それはただの米だろうが。お前ら本気で言ってんのか?」
「――え?」
間に挟まれた声の方を見てみると、この魔法少女の活動の現場に巻き込んでしまった同級生の弥堂 優輝が呆れたような瞳を自分たちに向けていた。
路上に座り込んで何かしらの作業に没頭していた弥堂だったが、あまりに気の抜ける会話が聴こえてきた為に、つい手を止めて口を挟んでしまったのだ。
「あ、あわわわわわ……っ!」
「あ、弥堂くん。こんばんは。あのね? ちゃんとお肉とかも洗ってからメロちゃんにあげるから大丈夫なんだよ?」
「……だったらカレー鍋を経由する必要ないだろ。そのままくれてやれよ。生肉のままで十分だろ、そいつみたいなもん」
「なんだとーーッス! 誰がみたいなもんッスか! ちゃんとネコさんの健康にも気を遣えーッス! ポークカレーだったらどうしてくれんスか! ジブンどうなっちゃうんスか⁉」
「知るか」
大声で抗議するメロに迷惑そうな顔を見せると、彼はまた振り向いて元通り何かしらの作業を再開した。
「ところで弥堂くん。何して――」
「――ニャアァァーーーーッス!」
自身と彼との間の宙に浮くメロを右から迂回して弥堂の方を覗き込もうとすると、大慌てな様相でメロが視界に割り込んでくる。
「えっと、弥堂くんが何してるのかなーって――」
「――フニャアァーーーーッス!」
少しだけ怪訝そうにしながら今度は左側に身体を傾けて向こうを覗こうとすると、またもメロが素早く視界を塞いでくる。
ダラダラと顔面の毛皮から汗を流す彼女のことを、水無瀬はぱちぱちと瞬きをして見る。
「メロちゃん、どうしたの?」
「こ、これは――ッスッスディフェンスッス!」
「え?」
「しょ、勝負ッス、マナっ! 1ON1で決着をつけるッス!」
「えっ? えっ?」
「さぁこいッス! カンタンにジブンを抜けると思うなよッス!」
「え、えっと……、じゃあ、いくね……?」
戸惑いつつも水無瀬は『遊んでアピール』をする飼い猫と遊んであげることにしたようだった。
メロが塞ぐ方の逆をとりにいこうとする。
すると――
「ッス! ッス! ッス! ッス! ディーフェン! ディーフェンっ! ッス! ッス! ッス! ッス! ディーフェン! ディーフェンっ!」
「わぁ、すごいっ! メロちゃんがいっぱいいるみたい!」
残像を残すような速度で水無瀬の視界に身体を伸ばしてブロックをする。
水無瀬の目にはそれがネコさんの壁に見えた。
やがて体力を使い果たしゼェーゼェーと息を荒げるメロの肉球から滴る汁を、ポッケから取り出したハンカチで水無瀬が拭いてあげていると――
「おい、お前らさっきから何遊んでんだ」
「こっち向くんじゃあねえよおぉぉぉッバカやろうがあぁッ!」
ネコごときに怒鳴られて弥堂は不快げに眉を歪める。
「なに気分害してんだテメーッ! さっきからジブンがどんだけ苦労して隠してっと思ってんだボケがッ! 少しは空気を読まんかいぃっ!」
「あ? ネコの分際であまりナメた口をきくなよ。躾をされたいか?」
「――あっ⁉」
弥堂が立ち上がり二人の方へ歩き出そうとしたことで、水無瀬の目から隠されていたモノが白日の下に晒された。
「あっ……、あっ……、そんな……ネズミさん……」
彼女は息を呑む。
「なにしてくれとんじゃボケェーーッス!」
「なにだと? お前らのためにペンダントを取り返した上に時間稼ぎまでしてやってたんだろうが」
「そうだったーーッ! けどっ! コンプラを! コンプラを守って欲しいッス!」
「コンプラ……? 意味のわからんことを言うな。ここは戦場だぞ」
言い合いをする弥堂とメロを他所に、水無瀬はペタンと地面にヘタリこむと――
「ひぐっ……、うぇぇ……、うわぁぁぁぁーーんっ!」
――ギャン泣きをした。
「あっ、あぁ、マナっ! ちくしょう……っ! かわいそうに……っ!」
「おい、うるせえぞ。さっさとしろ」
「このど畜生がよおぉっ! オマエふざけんなよ! こんなグロ死体、完全に18禁だろうがっ! エグイもんをウチのマナに見せんじゃねぇッスよ! オマエこれ淫行だからな! 条例にひっかかるッスよ!」
「死体? 死んでねえぞ」
不可解そうに首を傾げると、弥堂はネズミさんの惨殺死体だと思われるものに爪先を蹴り入れる。
すると短く細い声で呻き、ゴミクズーは僅かに身動ぎをした。
それを見た愛苗ちゃんはさらに大きな声で泣く。
「う、うぇぇぇ……、グロすぎッス……。ジブンも毛玉吐きそうっス……」
「よくわからんがこいつがあるのが問題なら、魔法を撃ち込んで消しちまえばいいだろ。とっととこの生ゴミ処分しろ」
「ギャアァァァーッ⁉ 痛い痛い痛いッスー! やめろーっ!」
言いながら弥堂がネズミの頭蓋骨から生えた鉄筋に足を乗せてゴリゴリと踏み躙ると、メロは体感幻覚に似た痛みを感じて頭を抱えた。
「チクショー……、このクソニンゲンめ。やりたい放題してくれやがって……、もう許せねえッス!」
「ほう」
「所詮は高校生のガキ。多少燥いでるくらいなら見逃してやろうと思ったッスけど、マナを泣かしたのは完全にライン越えッス!」
「そうか」
「毎日水無瀬家の押入れの襖を引っ掻いて研いでる、この自慢の爪でズタズタに引き裂いてやるッス!」
「お前、本当に何の躾もされてないのか?」
「ククク……ジブンのことより自分のことを心配するんスね」
「……結局誰を心配すればいいんだ?」
「いい加減にその減らない口を閉じろ、ニンゲン。崇高なるネコ妖精のこのワレが矮小なるキサマをシツケてくれるわ」
「そうか。やる気なら余計な口をきかずにとっとと向かってこい。お前の全身の骨を粉々にしてそこのネズミの腹の中に詰めてやる」
「フン……」
崇高なるネコ妖精は頭を低くしてお尻を少し持ち上げて構える。
前足で地面を均すようにフミフミしながら若干後退すると、全身の毛をぶわっと逆立たせてプシッと粗相をした。
「ビビってんじゃねえか」
「チッ、チチチチビってねぇーしッ⁉」
口ぶりとは裏腹にプルプルと震えるメロを、弥堂はつまらなそうに見下した。
「まぁいい。お前はいちいち煩くて生意気だ。ついでにここで躾てやる」
「グッ、ウゥ……」
メロは気圧され後退る。
すると尻尾が何かに触れたことにより、後退する足が止まる。
自分の後ろには泣いている友人がいることを思い出した。
その彼女の後ろへと隠れるか、それとも前に出るか。
その判断に逡巡している間に目の前の男がこちらへ近づこうと一歩を踏み出した。
決断を下す速度に決定的な差がある。
それでもまだ、メロは決断をすることが出来ずに弥堂の二歩目の足が路面を踏むのをただ見つめ――
「――そこまでだぁーーーっ!」
背後から弥堂ではない男の声が突如響き、そして一つの人影が宙を舞った。
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