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第5話.ちょいと成り上がってやりますか!
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「はいよ、これが身分証で、こっちはギルドの認識票ね。君は一番下のEランクからだ」
手続きは数十分ほど。
それまで俺は衣服を直してもらって時間を潰した。
身分証のカードとドッグタグそっくりな認識票には小さな魔力石が埋め込まれているので偽装不可能らしい。
意外とハイテクな世界だ。
「認識票はランクが上がれば色も変わっていくからね。頑張りなよ少年」
「頑張りますっ」
鉄くずを切り取ったかのような色の認識票を首に下げる。
よく見ればセヴィン達は金色の認識票をつけている。
いいなあ~格好いい。
「これで君も晴れて冒険者だ」
「おめでとう~」
拍手を送られ、正直ちょいと照れつつ頭をぺこぺこ下げておく。
「いやあどうもどうも」
意外と、とんとん拍子でうまくいっているな今のところは。ご都合主義さんも青ざめてるところだろうよ。
「能力値を見ていこう」
さあ、気になっていた能力値は、果たして。
もう自分の身体能力については把握しているが……もしかしたらまだ自覚していないだけですごい能力を秘めている可能性も無きにしもあらずだ。
こういう場面、よくある話なら「な、なんだこの能力値は!」「どれも抜きんでている!」「君は才能の塊だ!」って流れになるのだが。
受付嬢は俺の能力値を調べるべく両手をかざし――浮かび上がる図に、その表情は驚愕に変わっていった。
「こ、この能力値は……!」
「どれもすっごい普通……!」
「平凡の塊ね……!」
セヴィン除く後ろ三人の言葉が、グサグサグサと刺さっていく。
「得意属性もこれといってなし! 魔力量も普通! へ、平凡中の平凡だー!」
「そ、そう言うなよ。誰だって最初はこんなものだろ」
セヴィンのフォローが染みるわあ。
受付嬢が表示させた六角形のパラメーターは、俺の能力値であろう部分に色がついていた。
綺麗でさほど大きくない六角形だ、おそらく本当にぴったり平均値をたたき出しているのだろう。
女神に能力は平均値で! って言ったかなぁ? 言ってないよなあ。
可もなく不可もなく、それは別に悪い事ではないだろうが、これといっていい事もないのは何とも……。
彼らの内情を掬うに、反応に困るなあといったところであろうか。
おい受付嬢、とりあえず苦笑いをやめろ。
Sランクパーティがつれてきた奴がまさかこんな凡人だとは思いもよらなかった、期待してたのになあ~って顔に書いてるぞ、消しゴムで化粧ごと消してやろうか?
ちょっとした不満はありつつも、まあいいさ……一先ずハズィーリへと入る。
「おおー……!」
遠くからでも伝わる活気の中にいざ飛び込んでみると、それはまた別世界。
都会の喧騒とは違って、ここの喧騒は心が躍る。
「いい街だろう? この賑わいは心地良いものだよ」
「ふふーん。街の施設も設備も充実してるしねー、すごしやすいよねここは」
店頭販売しているであろう料理人は、魔力石を使って火をおこして調理をしていた。
冷蔵庫らしきものもあり、魔力石によって冷やされて食材の鮮度は十分に保たれているようだ。
料理人が冷蔵庫から取り出した肉は艶やかでかつ見事な霜降りの赤と白の彩りがあった。
「水も魔力石に浄化作用を付与させた施設があるからここの水は美味しいんだぜ。大衆浴場もあるから依頼を受けた後は浴場で汗を流せるよ」
おいおい、文明的に俺の世界とそれほど差はないんじゃないか?
いつも利用しているという宿に向かう道中、セヴィンは様々な店を案内してくれた。
何も知らない俺に一つずつ丁寧に教えてくれる。こいつ、イケメンな上に性格もイケメンだ。
「むむっ!? あれは……」
「ん? あれは人獣種だけど、見た事はないのか?」
「な、ない……。すごい、すごいなっ!」
猫耳っ娘というものを、現実で見るのは初めてだ。
なんというか……いい。
「そんな感動するとは逆にびっくりよ」
「おおっ、もうほぼ獣っぽいのもいるじゃないか!」
「人獣種の中でも受け継いだ血が濃いのはより獣に似るんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
血の濃さによって人獣種の見た目も変わってくる……か。
となればより猫っぽい猫耳っ娘もいるって事だな! いやあ見てみたい!
「この街は主に人獣種とエルフ種が多いかな。ほら、あっちにはエルフ種がいるぜ」
「あれかっ」
セヴィンの視線を辿ると、耳が長くどこか幻想的な――銀髪白肌の男女が歩いていた。
もうオーラでも出てるんじゃないかってくらいに、種族の違いを思い知らされる。
「エルフ種ってみんな持ってる魔力量もすごいし魔法いっぱい使えていいよねー。憧れるわー。それにすっごい綺麗だし、あっ、でもうちのパーティはエルフ種に負けないくらい綺麗なアリアがいるから問題ないわね!」
「張り合ってどうするのよ」
アリアは綺麗だと褒められて嬉しいのか、少し照れ笑いを浮かべながらそう言った。
うん、アリアもエルフ種に負けないほどに綺麗だ。
勿論、マルチャだって綺麗だ。
ボーイッシュなショートヘアーが似合ってる。
筋肉達磨は置いといて、セヴィンのパーティは全てにおいてレベルが高い。流石Sランクパーティ、隙がない。
「実は抜けたパーティってのはエルフ種でね。エルフ種は長寿だから中には気難しい方もいて……」
その尾を引く沈黙は、かつてパーティの一員だったエルフ種がどれだけ気難しい方だったのかをよく教えてくれた。
マルチャは性格が悪い女だったとストレートに言うも、まだまだ言葉が続きそうな彼女の頭をセヴィンは優しく小突いて口を閉ざさせる。
うーん、なんだこのイケメン。俺が女ならすでに惚れてるぞ。
「お腹空いてるか?」
「あ、そういえば何も食べてないな……」
腹の虫が鳴き始めている。
香ばしい肉の香り――匂いを辿ると豪快にも肉を串に刺して魔力石と炭火で焼いている店が目に留まった。
「肉串食うかい? ザリナス産の牛肉はジューシーで最高だよ」
「ぜ、是非!」
お値段は一本200アルヴという値段。
高いのか安いのか、よく分からないが1アルヴ1円の基準で考えるとすれば、まあそれなりに安いと考えていいものなのか。
物価はいまいちよく分からないけれどいくつものやり取りを見て比べた結果――多分、感覚的に……安いと思う。
そうして俺はセヴィン達に衣食住を与えられ、初日から美味しいご飯にしゅわーっとした飲み物、そして屋根の下で眠る事ができ、最高と言える駆け出しではなかろうか。
街ではSランクパーティに東和人が加わったとあって、次の日からはちょいと話題になっていた。
この世界には魔王がいる――クソ女神からはそんな話を聞いたのでセヴィン達にその辺を聞いてみたが、魔族という存在がこの世界を脅かしており、魔王は文字通りその勢力の親玉。
ハズィーリも魔族に何度か襲撃される事があり、そのたびに防壁が高くなっているのだとか。
魔物の数も年々増えていっているが、多くの冒険者が集まるハズィーリではむしろそれは依頼が増えるのでありがたいらしい。
ギルドに連れて行ってもらったが掲示板には所狭しと依頼書が貼り出されていた。
力をつけて成りあがるにはハズィーリは最適な場所、魔王討伐には少なくともSランクへの昇格が必須、とな。
ふむふむ。
ちょいと成り上がってやりますか!
手続きは数十分ほど。
それまで俺は衣服を直してもらって時間を潰した。
身分証のカードとドッグタグそっくりな認識票には小さな魔力石が埋め込まれているので偽装不可能らしい。
意外とハイテクな世界だ。
「認識票はランクが上がれば色も変わっていくからね。頑張りなよ少年」
「頑張りますっ」
鉄くずを切り取ったかのような色の認識票を首に下げる。
よく見ればセヴィン達は金色の認識票をつけている。
いいなあ~格好いい。
「これで君も晴れて冒険者だ」
「おめでとう~」
拍手を送られ、正直ちょいと照れつつ頭をぺこぺこ下げておく。
「いやあどうもどうも」
意外と、とんとん拍子でうまくいっているな今のところは。ご都合主義さんも青ざめてるところだろうよ。
「能力値を見ていこう」
さあ、気になっていた能力値は、果たして。
もう自分の身体能力については把握しているが……もしかしたらまだ自覚していないだけですごい能力を秘めている可能性も無きにしもあらずだ。
こういう場面、よくある話なら「な、なんだこの能力値は!」「どれも抜きんでている!」「君は才能の塊だ!」って流れになるのだが。
受付嬢は俺の能力値を調べるべく両手をかざし――浮かび上がる図に、その表情は驚愕に変わっていった。
「こ、この能力値は……!」
「どれもすっごい普通……!」
「平凡の塊ね……!」
セヴィン除く後ろ三人の言葉が、グサグサグサと刺さっていく。
「得意属性もこれといってなし! 魔力量も普通! へ、平凡中の平凡だー!」
「そ、そう言うなよ。誰だって最初はこんなものだろ」
セヴィンのフォローが染みるわあ。
受付嬢が表示させた六角形のパラメーターは、俺の能力値であろう部分に色がついていた。
綺麗でさほど大きくない六角形だ、おそらく本当にぴったり平均値をたたき出しているのだろう。
女神に能力は平均値で! って言ったかなぁ? 言ってないよなあ。
可もなく不可もなく、それは別に悪い事ではないだろうが、これといっていい事もないのは何とも……。
彼らの内情を掬うに、反応に困るなあといったところであろうか。
おい受付嬢、とりあえず苦笑いをやめろ。
Sランクパーティがつれてきた奴がまさかこんな凡人だとは思いもよらなかった、期待してたのになあ~って顔に書いてるぞ、消しゴムで化粧ごと消してやろうか?
ちょっとした不満はありつつも、まあいいさ……一先ずハズィーリへと入る。
「おおー……!」
遠くからでも伝わる活気の中にいざ飛び込んでみると、それはまた別世界。
都会の喧騒とは違って、ここの喧騒は心が躍る。
「いい街だろう? この賑わいは心地良いものだよ」
「ふふーん。街の施設も設備も充実してるしねー、すごしやすいよねここは」
店頭販売しているであろう料理人は、魔力石を使って火をおこして調理をしていた。
冷蔵庫らしきものもあり、魔力石によって冷やされて食材の鮮度は十分に保たれているようだ。
料理人が冷蔵庫から取り出した肉は艶やかでかつ見事な霜降りの赤と白の彩りがあった。
「水も魔力石に浄化作用を付与させた施設があるからここの水は美味しいんだぜ。大衆浴場もあるから依頼を受けた後は浴場で汗を流せるよ」
おいおい、文明的に俺の世界とそれほど差はないんじゃないか?
いつも利用しているという宿に向かう道中、セヴィンは様々な店を案内してくれた。
何も知らない俺に一つずつ丁寧に教えてくれる。こいつ、イケメンな上に性格もイケメンだ。
「むむっ!? あれは……」
「ん? あれは人獣種だけど、見た事はないのか?」
「な、ない……。すごい、すごいなっ!」
猫耳っ娘というものを、現実で見るのは初めてだ。
なんというか……いい。
「そんな感動するとは逆にびっくりよ」
「おおっ、もうほぼ獣っぽいのもいるじゃないか!」
「人獣種の中でも受け継いだ血が濃いのはより獣に似るんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
血の濃さによって人獣種の見た目も変わってくる……か。
となればより猫っぽい猫耳っ娘もいるって事だな! いやあ見てみたい!
「この街は主に人獣種とエルフ種が多いかな。ほら、あっちにはエルフ種がいるぜ」
「あれかっ」
セヴィンの視線を辿ると、耳が長くどこか幻想的な――銀髪白肌の男女が歩いていた。
もうオーラでも出てるんじゃないかってくらいに、種族の違いを思い知らされる。
「エルフ種ってみんな持ってる魔力量もすごいし魔法いっぱい使えていいよねー。憧れるわー。それにすっごい綺麗だし、あっ、でもうちのパーティはエルフ種に負けないくらい綺麗なアリアがいるから問題ないわね!」
「張り合ってどうするのよ」
アリアは綺麗だと褒められて嬉しいのか、少し照れ笑いを浮かべながらそう言った。
うん、アリアもエルフ種に負けないほどに綺麗だ。
勿論、マルチャだって綺麗だ。
ボーイッシュなショートヘアーが似合ってる。
筋肉達磨は置いといて、セヴィンのパーティは全てにおいてレベルが高い。流石Sランクパーティ、隙がない。
「実は抜けたパーティってのはエルフ種でね。エルフ種は長寿だから中には気難しい方もいて……」
その尾を引く沈黙は、かつてパーティの一員だったエルフ種がどれだけ気難しい方だったのかをよく教えてくれた。
マルチャは性格が悪い女だったとストレートに言うも、まだまだ言葉が続きそうな彼女の頭をセヴィンは優しく小突いて口を閉ざさせる。
うーん、なんだこのイケメン。俺が女ならすでに惚れてるぞ。
「お腹空いてるか?」
「あ、そういえば何も食べてないな……」
腹の虫が鳴き始めている。
香ばしい肉の香り――匂いを辿ると豪快にも肉を串に刺して魔力石と炭火で焼いている店が目に留まった。
「肉串食うかい? ザリナス産の牛肉はジューシーで最高だよ」
「ぜ、是非!」
お値段は一本200アルヴという値段。
高いのか安いのか、よく分からないが1アルヴ1円の基準で考えるとすれば、まあそれなりに安いと考えていいものなのか。
物価はいまいちよく分からないけれどいくつものやり取りを見て比べた結果――多分、感覚的に……安いと思う。
そうして俺はセヴィン達に衣食住を与えられ、初日から美味しいご飯にしゅわーっとした飲み物、そして屋根の下で眠る事ができ、最高と言える駆け出しではなかろうか。
街ではSランクパーティに東和人が加わったとあって、次の日からはちょいと話題になっていた。
この世界には魔王がいる――クソ女神からはそんな話を聞いたのでセヴィン達にその辺を聞いてみたが、魔族という存在がこの世界を脅かしており、魔王は文字通りその勢力の親玉。
ハズィーリも魔族に何度か襲撃される事があり、そのたびに防壁が高くなっているのだとか。
魔物の数も年々増えていっているが、多くの冒険者が集まるハズィーリではむしろそれは依頼が増えるのでありがたいらしい。
ギルドに連れて行ってもらったが掲示板には所狭しと依頼書が貼り出されていた。
力をつけて成りあがるにはハズィーリは最適な場所、魔王討伐には少なくともSランクへの昇格が必須、とな。
ふむふむ。
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