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第三話 恐れ多い。
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それから暫しの時間が過ぎて昼休み。
午前中の授業は眠気が瞼を下へ下へと引っ張って中々にしんどかったがなんとか乗り越えた。えらいぞ俺。
昼休みは昼食を教室で食べる者もいれば食堂へ行く者、中庭や屋上へ行く者とそれぞれだ。
屋上はベンチが四つあるのみで競争率が激しく、席が空いていない場合が多い。
中庭の場合はベンチの競争率はそれほど高くないので、俺は広場を選ぶとした。
今日のような天気のいい日は中庭で食べるのもまた気持ちがいい。
いくつかの木々が生えており、中央にはきちんと管理された芝生のスペースがあり、そこに座って昼食をとる生徒もいた。
俺はベンチに座り、オレンジジュースを持って芙美を待つ。
「――席の確保、ごくろう」
「おう。ほら、ジュース」
「どうも」
芙美が現れた、その後ろには明日香さんもいる。
ベンチは三人が座るには十分なスペースがある。俺は左側へと位置をずらすと芙美は俺の右隣に座り、明日香さんは芙美の隣へと座った。
「珍しいね、京一くんがお昼誘ってくるのは」
「ん、まあね」
「わざわざわたしを通さないで直接誘えばいいのに」
「クラスではカースト下位の俺がカースト上位の明日香さんを直接誘うなんて恐れ多くて」
「ふふっ、恐れ多いって。気軽に誘ってくれていいんだよ」
明日香さんはそう言って膝の上に弁当を乗せて広げる。
玉子焼きやら鮭やらが綺麗に収まった弁当で美味しそうだった。うちも負けちゃあいないがね。見てよこの唐揚げ、美味そうだろう? 手作りじゃなくて冷凍ものだけど。
芙美はいつもコンビニのサンドイッチやおにぎりにパンといったもののローテーションで、今日はサンドイッチの日。
もう少し健康的な食事をしたらいいのに。
それでいて肌のツヤはいいので一応は食事管理はそれなりにしっかりしているのであろう。
「いい天気だねえ」
明日香さんは空を仰いで卵焼きをぱくり。
「そうね」
「二人はクラスにもう慣れた?」
明日香さんが話を振ってくれる。
俺と芙美だけなら大抵がゲームの話になるがこういった世間話をするのはいつ以来だろうか。
「ぼちぼちってとこね。京一は相変わらずぼっち」
「ぼっちってわけじゃあないんだけど。それなりに話し相手はいるさ」
「そうなの?」
「そうだよ」
でも一番の話し相手は芙美かもしれない。
男子生徒のほうは、まあ一人くらいってとこ。
辛うじてボッチは免れているわけさ。どうだい。
……胸を張って言えることでもないので、胸の内に収めておく。
「二人とも仲いいね」
「そう見える?」
「ただの腐れ縁、こいつは喋るたんぱく質」
「そういうこいつは胸のそこそこでかいたんぱく質」
「セクハラやめろ」
「ごめんなさい」
御覧の通り、仲は良い。
「二人ってさ、付き合ってるの?」
「いや、全然」
「そう、全然」
「そうなんだ」
芙美と顔を見合わせてみた。
お互いに自分達は異性として見れるかと視線を交差させて顔を横に振った。
やっぱりそうだよな、俺達ってただのゲーム仲間。
って彼女の世間話に付き合っていないでそろそろこちらも目的の話に移りたい。
「……あのさ、明日香さん、聞いていい?」
「ん? いいよ? どうしたの?」
「明日香さんって、明日太っていう弟さんいる?」
すると明日香さんは、箸を止めた。
何か知っているような反応だ。
「……芙美、何か話した?」
「わたしは何も」
「そう……」
一旦箸を置き、彼女は再び空を仰いだ。
小さな深呼吸をして。
「ふたりとも放課後、時間ある?」
「あるよ」
「わたしも」
「じゃあ放課後、ちょっと付き合って」
午前中の授業は眠気が瞼を下へ下へと引っ張って中々にしんどかったがなんとか乗り越えた。えらいぞ俺。
昼休みは昼食を教室で食べる者もいれば食堂へ行く者、中庭や屋上へ行く者とそれぞれだ。
屋上はベンチが四つあるのみで競争率が激しく、席が空いていない場合が多い。
中庭の場合はベンチの競争率はそれほど高くないので、俺は広場を選ぶとした。
今日のような天気のいい日は中庭で食べるのもまた気持ちがいい。
いくつかの木々が生えており、中央にはきちんと管理された芝生のスペースがあり、そこに座って昼食をとる生徒もいた。
俺はベンチに座り、オレンジジュースを持って芙美を待つ。
「――席の確保、ごくろう」
「おう。ほら、ジュース」
「どうも」
芙美が現れた、その後ろには明日香さんもいる。
ベンチは三人が座るには十分なスペースがある。俺は左側へと位置をずらすと芙美は俺の右隣に座り、明日香さんは芙美の隣へと座った。
「珍しいね、京一くんがお昼誘ってくるのは」
「ん、まあね」
「わざわざわたしを通さないで直接誘えばいいのに」
「クラスではカースト下位の俺がカースト上位の明日香さんを直接誘うなんて恐れ多くて」
「ふふっ、恐れ多いって。気軽に誘ってくれていいんだよ」
明日香さんはそう言って膝の上に弁当を乗せて広げる。
玉子焼きやら鮭やらが綺麗に収まった弁当で美味しそうだった。うちも負けちゃあいないがね。見てよこの唐揚げ、美味そうだろう? 手作りじゃなくて冷凍ものだけど。
芙美はいつもコンビニのサンドイッチやおにぎりにパンといったもののローテーションで、今日はサンドイッチの日。
もう少し健康的な食事をしたらいいのに。
それでいて肌のツヤはいいので一応は食事管理はそれなりにしっかりしているのであろう。
「いい天気だねえ」
明日香さんは空を仰いで卵焼きをぱくり。
「そうね」
「二人はクラスにもう慣れた?」
明日香さんが話を振ってくれる。
俺と芙美だけなら大抵がゲームの話になるがこういった世間話をするのはいつ以来だろうか。
「ぼちぼちってとこね。京一は相変わらずぼっち」
「ぼっちってわけじゃあないんだけど。それなりに話し相手はいるさ」
「そうなの?」
「そうだよ」
でも一番の話し相手は芙美かもしれない。
男子生徒のほうは、まあ一人くらいってとこ。
辛うじてボッチは免れているわけさ。どうだい。
……胸を張って言えることでもないので、胸の内に収めておく。
「二人とも仲いいね」
「そう見える?」
「ただの腐れ縁、こいつは喋るたんぱく質」
「そういうこいつは胸のそこそこでかいたんぱく質」
「セクハラやめろ」
「ごめんなさい」
御覧の通り、仲は良い。
「二人ってさ、付き合ってるの?」
「いや、全然」
「そう、全然」
「そうなんだ」
芙美と顔を見合わせてみた。
お互いに自分達は異性として見れるかと視線を交差させて顔を横に振った。
やっぱりそうだよな、俺達ってただのゲーム仲間。
って彼女の世間話に付き合っていないでそろそろこちらも目的の話に移りたい。
「……あのさ、明日香さん、聞いていい?」
「ん? いいよ? どうしたの?」
「明日香さんって、明日太っていう弟さんいる?」
すると明日香さんは、箸を止めた。
何か知っているような反応だ。
「……芙美、何か話した?」
「わたしは何も」
「そう……」
一旦箸を置き、彼女は再び空を仰いだ。
小さな深呼吸をして。
「ふたりとも放課後、時間ある?」
「あるよ」
「わたしも」
「じゃあ放課後、ちょっと付き合って」
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