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12話
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「昨日は遅くに電話しちゃってごめんねー、未央ちゃん」
桜浜の隣町にある小さなカフェで、冬海がモンブランにフォークを刺した。未央はマロンのロールケーキ・アイスクリーム添えを注文した。
「ううん、ヒマだったから大丈夫だよ」
昨夜、寝る少し前に冬海から電話があり、今日の午前中が急に空いたので、お気に入りカフェの秋メニューを一緒に食べに行こうと誘われたのだ。
「すーくんはさ、あんな可愛い顔してるくせに甘いもの嫌いなんだよー。だから一緒にケーキとか食べに行っても面白くないの」
「そういえば門真さんはコーヒーもブラックだし、社食でもデザートとか食べてるところ見たことないや」
「でしょー? 憲征はね、ああ見えて甘いもの大好きなんだよ。ケーキだろうがパフェだろうががっつりいけるクチ。……崎本さんは?」
事情を知っているのか知らないのか、冬海が普通に尋ねてきた。
「崎本さんは……普通、かな」
二人でレストランに行った時、未央が三度の飯よりも好きなアイスクリームをデザートに注文したのだが、崎本は彼女につきあうようにチーズケーキを頼んでいた。チーズケーキが好きなのかと尋ねると、
『んー、疲れた時とか、たまにコンビニで買ったりしてるから、チーズケーキは好きな方かなぁ。クリームたっぷりなやつはそんなに食べないよ。嫌いじゃないけどね』
と、笑みながらケーキを食していた。
(ほんと、何でも美味しそうに食べるなぁ)
そんな崎本を見て、未央も嬉しくなったのを覚えている。
「ね、未央ちゃん。今度さ、一緒に薙の原に行かない? そこの牧場のソフトクリームがめっちゃ濃厚で美味しいんだよ。食べたことある?」
「行きたい! ……でも、薙の原って遠くない? 電車で行く?」
薙の原は葉月ヶ浜よりも更に遠い山沿いの観光地だ。避暑地としても有名で、沢山の有名人が別荘を構えている。
「もちろんすーくんの車でだよー」
「私……お邪魔じゃない?」
「全然! 私、女の子の友達あまりいないから、もっと未央ちゃんと出かけたりしたい!」
冬海は元来人見知りな上、そのスペックから周囲の女子から妬まれることも多かったようで、信頼出来る女友達がほとんどいないらしい。
門真からそんなことを聞かされ、未央は「美人も大変なんですね……」と、漏らしたことがある。すると門真は「俺はイズッチや崎本に同じこと思ってるよ……」と、乾いた笑いを浮かべた。
「冬海ちゃんにそう言ってもらえると、私も嬉しい」
門真からも「冬海と仲良くしてやってくれ」と言われたのだが、こうして一緒にいると、冬海はルックスこそ近寄りがたさを備えているが、本当に普通の女の子で。好きな芸能人や食べ物、趣味や彼氏の話などで盛り上がったりする。中身は自分とそれほど変わらないな、と未央は思う。
それから二人は更にケーキを注文した。もちろん、初めに食べたものとは違うケーキだ。二人で食べ比べをし、それから三十分ほど話し込んだ後、冬海が仕事に向かう時間になるとカフェを出た。
「未央ちゃん、今日はありがとね! ケーキ美味しかったねー」
「こっちこそありがとう。ほんとケーキ美味しかった」
改札に入ったところで立ち止まると、冬海は未央の両手を取った。
「……余計なお世話かもだけど、ほんとにちゃんと崎本さんと話した方がいいよ? 絶対後悔するよ」
「冬海ちゃん……」
「もし……もしもほんとにダメになっちゃったらさ……一緒に泣いてあげるからー……」
そう言う冬海は既に涙目だった。
「冬海ちゃんが泣いてどうするの。これから仕事でしょ? 泣いちゃまずいんじゃない? ……泣かないで」
自分は泣くわけにいかない未央は、無理に笑って冬海の背中を擦った。
「ん……ごめ……」
「ありがとね、冬海ちゃん。週末に考えてみるから」
「ん……また、ね、未央ちゃん」
目元を擦りながら、冬海は未央とは反対のホームに続く階段を上がって行った。
この年になって、こんな風に自分のことで泣いてくれるような友達と出逢えたことに、未央は感謝した。
(ほんとありがとね、冬海ちゃん……でも、)
今はまだそんな勇気が出ない――それを伝えることは出来なかった。
崎本とつきあっていた時は、週末が来るのが楽しみで仕方がなかった。ほぼ毎週末、二人でどこかに出かけていた。それはテーマパークだったり、映画だったり、動物園だったり。
崎本が部屋に来た時は手料理を披露したこともある。
『未央ちゃん……料理も出来るなんてすごいな。しかも美味いし』
『一人暮らしなんでやらざるを得ないんですよ。普段は簡単なものしか作りませんし』
『俺も一人暮らしだけど、滅多に作らないよ?』
『崎本さんは私より忙しい人ですから、仕方がないですよ』
『じゃあ未央ちゃんが作って?』
『え~、家政婦は嫌です』
『……どうして思考がそっち方向に行くかなぁ』
ミステリー映画のブルーレイも何度か一緒に観たりした。
『崎本さん、原作読んだんですよね? 犯人のネタバレ、絶対しないでくださいね?』
『ミステリーファンの名にかけてしないから安心していいよ。……あ、この男、この後風呂場で女に殺されるよ?』
『ちょっ……! 何そのえげつないネタバレ! ひどい!』
『冗談だってば』
『もう! ……あっ、今いいところだったのに見逃しちゃったじゃないですか! ちょっと戻してください!』
『はいはい』
崎本にとってどうだったのかは分からないが、未央にとっては充実していて幸せな日々だった。
いつか――ちゃんと思い出として昇華出来る時が来るだろうか。
何もない土曜の午後は本当に久しぶりだった。未央は冬海と別れて帰宅した後、時間を持て余していた。崎本と週末を過ごすようになる前はこんな日もよくあり、何も考えずにただぼうっと座って過ぎる時間を堪能する贅沢を味わっていた。
しかし誰かと幸せな時間を過ごす味を知ってしまった今となっては、この贅沢な時間にどう向き合えばいいのか分からなくて。雑誌を手に取ってみたり、読みかけの小説を開いてみたりしたが、どれもしっくり来なかった。
夕方になってレンタルショップへ赴き、適当にブルーレイをいくつか借りた。夕食と風呂を済ませた後、ジャケット借りしたミステリー映画を観ていた。が、やっぱり内容は全然頭に入って来ない。どうしたって崎本のことを思い出してしまうのだ。
突然、部屋のチャイムが鳴った。ギクリと肩を震わせる未央。恐る恐るインターフォンを取り、
「はい……」
蚊の鳴くような声で応答した。
「宅配便でーす。サインか印鑑お願いしまーす」
ちょうど数日前にネット通販で本を注文していたことを思い出し、ホッとして印鑑を持ってドアを開ける。
「ご苦労様で……」
玄関の向こうに現れた顔を見た瞬間、反射的にドアを閉めた……が、既に足で阻まれていて、それは叶わなかった。
「無用心だなぁ。女の子の一人暮らしなんだから、ちゃんとチェーンかけたまま開けないと」
スーツ姿に大きめのブリーフケースを持った崎本が、満面の笑みを貼りつかせたままづかづかと部屋へ入って来た。どうやら出張先から直行したようだ。
「な、なんで……!?」
目を見開いて驚く未央を尻目に、崎本はブリーフケースから有名な地方洋菓子店のチョコレートの箱を出し、コーヒーテーブルへ置いた。
「お土産」
「……」
未央は何とリアクションを取ったらいいのか分からずにいた。
「あ~疲れた」
崎本は勝手知ったる様子でソファに座り、首を動かしながら大きくため息をついた。
「崎本さん、月曜日まで出張じゃなかったんですか?」
「未央ちゃん、言いたい放題言ってくれたから。俺にだって言わせてもらう権利あるだろ? だから向こうでの仕事を早く終わらせてきた。大変だったな~、愛想振りまきっぱなし頭下げっぱなしで」
不敵な笑みでもって、パジャマ姿の未央の全身を往復する崎本の瞳。
「……へぇ、未央ちゃん、そういうの着て寝てるんだ? 今まで裸で寝てるところしか見たことなかったから新鮮」
後半部分にわざと重きを置いて意地悪く放たれた発言に、未央はいたたまれなくなる。
「……あの」
「何?」
「言いたいことがあるなら、早く言ってください。それで、帰ってください」
「そんなに嫌わなくても」
「別に嫌ってるわけじゃ……」
崎本の目を見ることが出来ず、俯く未央。
「……まぁいいや。聞きたいでしょ? 芹沢さんのこと」
「っ、そんなことは聞きたくないです。……聞かなくても分かってますから」
「――いいから聞いて」
凪いだ海のように穏やかな声音だった。しかし、有無も言わさない静かな迫力に未央は気圧される。捕らえた獲物は逃がさないと宣言するような鋭利な瞳。
怒りとも哀惜とも違う――普段の崎本からは到底想像出来ない表情だ。
「……っ、」
口元に笑みさえ浮かべたその眼差しに、弾かれるように目を合わせた未央は、底知れぬ畏怖を感じ身体を震わせた。
すぐに崎本は緊張を緩めたが、未央はそれ以上抗うのはやめた。
桜浜の隣町にある小さなカフェで、冬海がモンブランにフォークを刺した。未央はマロンのロールケーキ・アイスクリーム添えを注文した。
「ううん、ヒマだったから大丈夫だよ」
昨夜、寝る少し前に冬海から電話があり、今日の午前中が急に空いたので、お気に入りカフェの秋メニューを一緒に食べに行こうと誘われたのだ。
「すーくんはさ、あんな可愛い顔してるくせに甘いもの嫌いなんだよー。だから一緒にケーキとか食べに行っても面白くないの」
「そういえば門真さんはコーヒーもブラックだし、社食でもデザートとか食べてるところ見たことないや」
「でしょー? 憲征はね、ああ見えて甘いもの大好きなんだよ。ケーキだろうがパフェだろうががっつりいけるクチ。……崎本さんは?」
事情を知っているのか知らないのか、冬海が普通に尋ねてきた。
「崎本さんは……普通、かな」
二人でレストランに行った時、未央が三度の飯よりも好きなアイスクリームをデザートに注文したのだが、崎本は彼女につきあうようにチーズケーキを頼んでいた。チーズケーキが好きなのかと尋ねると、
『んー、疲れた時とか、たまにコンビニで買ったりしてるから、チーズケーキは好きな方かなぁ。クリームたっぷりなやつはそんなに食べないよ。嫌いじゃないけどね』
と、笑みながらケーキを食していた。
(ほんと、何でも美味しそうに食べるなぁ)
そんな崎本を見て、未央も嬉しくなったのを覚えている。
「ね、未央ちゃん。今度さ、一緒に薙の原に行かない? そこの牧場のソフトクリームがめっちゃ濃厚で美味しいんだよ。食べたことある?」
「行きたい! ……でも、薙の原って遠くない? 電車で行く?」
薙の原は葉月ヶ浜よりも更に遠い山沿いの観光地だ。避暑地としても有名で、沢山の有名人が別荘を構えている。
「もちろんすーくんの車でだよー」
「私……お邪魔じゃない?」
「全然! 私、女の子の友達あまりいないから、もっと未央ちゃんと出かけたりしたい!」
冬海は元来人見知りな上、そのスペックから周囲の女子から妬まれることも多かったようで、信頼出来る女友達がほとんどいないらしい。
門真からそんなことを聞かされ、未央は「美人も大変なんですね……」と、漏らしたことがある。すると門真は「俺はイズッチや崎本に同じこと思ってるよ……」と、乾いた笑いを浮かべた。
「冬海ちゃんにそう言ってもらえると、私も嬉しい」
門真からも「冬海と仲良くしてやってくれ」と言われたのだが、こうして一緒にいると、冬海はルックスこそ近寄りがたさを備えているが、本当に普通の女の子で。好きな芸能人や食べ物、趣味や彼氏の話などで盛り上がったりする。中身は自分とそれほど変わらないな、と未央は思う。
それから二人は更にケーキを注文した。もちろん、初めに食べたものとは違うケーキだ。二人で食べ比べをし、それから三十分ほど話し込んだ後、冬海が仕事に向かう時間になるとカフェを出た。
「未央ちゃん、今日はありがとね! ケーキ美味しかったねー」
「こっちこそありがとう。ほんとケーキ美味しかった」
改札に入ったところで立ち止まると、冬海は未央の両手を取った。
「……余計なお世話かもだけど、ほんとにちゃんと崎本さんと話した方がいいよ? 絶対後悔するよ」
「冬海ちゃん……」
「もし……もしもほんとにダメになっちゃったらさ……一緒に泣いてあげるからー……」
そう言う冬海は既に涙目だった。
「冬海ちゃんが泣いてどうするの。これから仕事でしょ? 泣いちゃまずいんじゃない? ……泣かないで」
自分は泣くわけにいかない未央は、無理に笑って冬海の背中を擦った。
「ん……ごめ……」
「ありがとね、冬海ちゃん。週末に考えてみるから」
「ん……また、ね、未央ちゃん」
目元を擦りながら、冬海は未央とは反対のホームに続く階段を上がって行った。
この年になって、こんな風に自分のことで泣いてくれるような友達と出逢えたことに、未央は感謝した。
(ほんとありがとね、冬海ちゃん……でも、)
今はまだそんな勇気が出ない――それを伝えることは出来なかった。
崎本とつきあっていた時は、週末が来るのが楽しみで仕方がなかった。ほぼ毎週末、二人でどこかに出かけていた。それはテーマパークだったり、映画だったり、動物園だったり。
崎本が部屋に来た時は手料理を披露したこともある。
『未央ちゃん……料理も出来るなんてすごいな。しかも美味いし』
『一人暮らしなんでやらざるを得ないんですよ。普段は簡単なものしか作りませんし』
『俺も一人暮らしだけど、滅多に作らないよ?』
『崎本さんは私より忙しい人ですから、仕方がないですよ』
『じゃあ未央ちゃんが作って?』
『え~、家政婦は嫌です』
『……どうして思考がそっち方向に行くかなぁ』
ミステリー映画のブルーレイも何度か一緒に観たりした。
『崎本さん、原作読んだんですよね? 犯人のネタバレ、絶対しないでくださいね?』
『ミステリーファンの名にかけてしないから安心していいよ。……あ、この男、この後風呂場で女に殺されるよ?』
『ちょっ……! 何そのえげつないネタバレ! ひどい!』
『冗談だってば』
『もう! ……あっ、今いいところだったのに見逃しちゃったじゃないですか! ちょっと戻してください!』
『はいはい』
崎本にとってどうだったのかは分からないが、未央にとっては充実していて幸せな日々だった。
いつか――ちゃんと思い出として昇華出来る時が来るだろうか。
何もない土曜の午後は本当に久しぶりだった。未央は冬海と別れて帰宅した後、時間を持て余していた。崎本と週末を過ごすようになる前はこんな日もよくあり、何も考えずにただぼうっと座って過ぎる時間を堪能する贅沢を味わっていた。
しかし誰かと幸せな時間を過ごす味を知ってしまった今となっては、この贅沢な時間にどう向き合えばいいのか分からなくて。雑誌を手に取ってみたり、読みかけの小説を開いてみたりしたが、どれもしっくり来なかった。
夕方になってレンタルショップへ赴き、適当にブルーレイをいくつか借りた。夕食と風呂を済ませた後、ジャケット借りしたミステリー映画を観ていた。が、やっぱり内容は全然頭に入って来ない。どうしたって崎本のことを思い出してしまうのだ。
突然、部屋のチャイムが鳴った。ギクリと肩を震わせる未央。恐る恐るインターフォンを取り、
「はい……」
蚊の鳴くような声で応答した。
「宅配便でーす。サインか印鑑お願いしまーす」
ちょうど数日前にネット通販で本を注文していたことを思い出し、ホッとして印鑑を持ってドアを開ける。
「ご苦労様で……」
玄関の向こうに現れた顔を見た瞬間、反射的にドアを閉めた……が、既に足で阻まれていて、それは叶わなかった。
「無用心だなぁ。女の子の一人暮らしなんだから、ちゃんとチェーンかけたまま開けないと」
スーツ姿に大きめのブリーフケースを持った崎本が、満面の笑みを貼りつかせたままづかづかと部屋へ入って来た。どうやら出張先から直行したようだ。
「な、なんで……!?」
目を見開いて驚く未央を尻目に、崎本はブリーフケースから有名な地方洋菓子店のチョコレートの箱を出し、コーヒーテーブルへ置いた。
「お土産」
「……」
未央は何とリアクションを取ったらいいのか分からずにいた。
「あ~疲れた」
崎本は勝手知ったる様子でソファに座り、首を動かしながら大きくため息をついた。
「崎本さん、月曜日まで出張じゃなかったんですか?」
「未央ちゃん、言いたい放題言ってくれたから。俺にだって言わせてもらう権利あるだろ? だから向こうでの仕事を早く終わらせてきた。大変だったな~、愛想振りまきっぱなし頭下げっぱなしで」
不敵な笑みでもって、パジャマ姿の未央の全身を往復する崎本の瞳。
「……へぇ、未央ちゃん、そういうの着て寝てるんだ? 今まで裸で寝てるところしか見たことなかったから新鮮」
後半部分にわざと重きを置いて意地悪く放たれた発言に、未央はいたたまれなくなる。
「……あの」
「何?」
「言いたいことがあるなら、早く言ってください。それで、帰ってください」
「そんなに嫌わなくても」
「別に嫌ってるわけじゃ……」
崎本の目を見ることが出来ず、俯く未央。
「……まぁいいや。聞きたいでしょ? 芹沢さんのこと」
「っ、そんなことは聞きたくないです。……聞かなくても分かってますから」
「――いいから聞いて」
凪いだ海のように穏やかな声音だった。しかし、有無も言わさない静かな迫力に未央は気圧される。捕らえた獲物は逃がさないと宣言するような鋭利な瞳。
怒りとも哀惜とも違う――普段の崎本からは到底想像出来ない表情だ。
「……っ、」
口元に笑みさえ浮かべたその眼差しに、弾かれるように目を合わせた未央は、底知れぬ畏怖を感じ身体を震わせた。
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