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CHAPTER Ⅴ
第233話 新キョウト都市奪還戦争 Ⅰ-⑪ 強者
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睦月クラウドは楢地と分かれた後、すぐに雲の切れ間に隠れる人型グールを見つけ出した。
近づく睦月に気付いた人型グールも迷彩能力を解き敵に備えていた。
「わざわざこんな所まで来るとはの……、お前たちも必死よのう」
姿を表したのは乱れた白髪の小柄な老婆であったが、紛うことなく睦月の敵軍の中でも精鋭である意志あるグールの1体だ。その弱々しい姿が逆に禍々しさをさらに増して見せていた。
睦月は空中で立ち止まると、油断なく魔素を練った。
「……五度天輪。五条護符。五位血黥」
睦月は三宗術を展開しつつ、隙を見せずに人型グールの姿を観察した。
睦月が今まで戦ったことのあるグールの中では間違いなく最強。睦月は人型グールとまともに相対するのは初めてだった。
老婆のグールは睦月から放たれる気配を感じ取り、小さく感嘆の息を吐いた。
「ほう、害虫どもの中ではなかなか強者の様だな。しかし貴様は阿倍野、宝条、佐々木の誰でもない。ただの雑兵であろう? まさか妾に勝つ気でおるのか?」
睦月はぐんぐんと老婆の姿のグールの威圧が強まっていくことを肌で感じ取った。
しかし動揺はない。
「五五式爾形象、 朱糸縅鎧」
睦月は全身に展開した三宗術を全て一体化して、秘技と言える朱色の光の衣を展開した。
この衣は三宗撰集術の奥義であり、天輪、護符、血黥を相互に干渉、昇華させた高等技術だった。
この衣を纏った者は高い身体能力、再生能力、防御能力、超感覚などが備わりまさに鬼人の如き戦闘力を手に入れることかできる。
三度、三条、三位の術を重ね合わせた光衣は紺色に、五度、五条、五位を重ね合わせたものは朱色に、七度、七条、七位を合わせたものは白色に輝く。
白色の衣を展開できるのはワイズの中でも10人も居ないのだが、睦月はワイズ最強の兵。
白色の衣も展開はできるが消耗を考えて朱色の衣を展開した。
「ふふふ。大したものだ。このディーターの相手としてはまあ及第点をやろう」
ディーターと名乗った人型グールの余裕は高まる睦月の力を見ても全く崩れない。
「しかし妾を倒さねば地上を跋扈している骸どもは死なぬぞ。ほうれ、もう貴様らの群れに襲いかかっておるわ」
ディーターの言うとおり、骸の巨人はすでに東軍、西軍の後方に襲いかかっており、その数も少しずつ増えている。
東、西軍それぞれにもう100体近い脅威が攻撃を開始しており、すでにその手に掛かっている者もいた。
「黙れ」
睦月は小さく呟いた。
「何だと?」
「問答は無用だ。貴様はオレたちが必ず倒す」
ドオオオオオ!!!
睦月は全身に滾らせた魔素のエネルギーを手から放出してディーターを攻撃した。
だがディーターは落ち着いてそれを片手で弾き飛した。
「妾を倒す? 害虫が」
睦月は今の一瞬でディーターの背後に回り込み、激しく魔素を込めた蹴り技を繰り出した。
ドン! ドオン!! ドオオオオオ!!!
しかしその強力な攻撃もディーターは全て防ぎきり、逆に睦月に光の奔流をぶつけた。
「ぐ……!!」
たまらず睦月は距離を取る。
今の攻撃も並のS級隊員なら消し炭になるほどの威力だった。
「ほほほ、威勢だけだのう!」
ドドドッオオ!!
激しい攻撃がさらに睦月を襲った。
ディーターは光の腕を4本操り、睦月の体を叩き潰そうと矢継ぎ早に伸縮を繰り返した。
ここでディーターはふと、自身の周りに蛍のような光が多数浮かんでいることに気が付いた。
「これは? 何か仕掛けたのか?」
ディーターは余裕を顔に貼り付けたまま、睦月の攻撃を待った。
ディーターに対する爆炎の向こうで睦月は右手を振るった。
「舞え」
カアアアアア!!!
ディーターの周りの光はそれぞれが剣や槍、斧、鞭、弓などに姿を変え、一斉に空中を舞うようにディーターに攻撃を始めた。
睦月は楢地と同じく三宗術以外の固有の術を使う。
その御業はワイズの兵たちからは武器使いと呼ばれ恐れられていた。
これは自身の魔素を予め決めておいた100種の武具へと変換しそれを操ることが出来る能力で、大量の上級グールも一瞬でズタズタに出来る程の威力があった。
「やりおるやりおる。効いたぞい」
しかし老婆のグールは笑みを消さず、無傷で姿を現した。
睦月はそれを見て小さく眉をひそめた。
彼は多少はダメージを与えられると踏んでいたのだ。
「しかしもう終いか?」
ドオオオオオンンン!!!
ディーターの追い打ちを受けた睦月は激しくダメージを負うが、彼の眼光の鋭さは消えていない。
「七度天輪! 七条護符! 七位血黥!!」
初めて霜月が大きく声を上げた。
「おお、必死じゃのう」
睦月は武器使いの術をさらに展開しながら激しくディーターと攻防を続けている。
その合間に武器使いの種とも言える換装魔素もばら撒いて各種の武器をぶつけているが、如何せん敵の攻撃に追いついていない。
「おお! 七七式爾形象! 白糸縅鎧!!」
睦月の全身を守る光の衣が朱色から白色へと色を変えた。
「力が増したなあ! だがまだそれでは足りぬぞ!」
ドドドッオオオオオ!!!
激しい攻撃が空に数多く咲いては散った。
「ぐっぐ……!! まさかここまでの強者とは……!!」
睦月は血反吐を吐きながらディーターを睨んだ。
ほぼ全力の攻撃をしたが、ディーターは大した傷は負っていなかった。
「いやはや。貴様も素晴らしい強者ぞ。まあ害虫の割にはだがな」
睦月は歯噛みしながら大きく肩を上下して息を吐いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
楢地は空中に撒き散らした魔素を爆弾へと変換してBSS級グールへダメージを与え続けた。
「どうした? まさかこれで終わりなのか?」
ギャオオオオオ!!!
爆炎から1体のグールが叫びと共に飛び出した。
グールは1体が完全に防御に徹し、楢地の爆撃を辛くも凌いでいた。
その合間の一瞬の隙を見て、もう1体が全力の突進を試みたのだ。
ドオオオオオ!!!
しかし楢地はそのミサイルのような体当たりを真っ正面から受け止めた。
「いや、思ったよりやるな。衣を展開していなかったらかなり効いていたはずだぞ」
楢地は爆撃の間に間に五五式爾形象、朱糸縅鎧の展開を済ませていた。
三宗術の秘技であるこの衣に包まれた術者は相当な攻撃でもびくともしない。
楢地もBSS級グールの全霊を込めた攻撃を難なく受け止めていた。
「散り爆ぜろ」
楢地の言霊に反応した無数の魔素が木の葉を伝う水玉のように集まり、一気にグールの体へと纏わりついた。
ドオオオオオンンンンン!!!!!
グールは爆撃で全身をズタズタに引き裂かれ、地上へと落下した。
「あと1匹」
グオオオウウウウ!!!
残りのグールは雄叫びを上げて光の玉を何十と体の周りに生み出した。
「悪いが、その攻撃ごと潰させてもらう。爆ぜろ」
ドオオオオオンンン!!!
すでにグールの周囲に集まっていた楢地の爆撃魔素が激しく爆炎を上げた。
しかしグールは光陣を使い何とか体を再生させ、再度楢地へ光の弾丸を放った。
ドドドッ!!
楢地は三宗術の衣を使って攻撃をいなすと、波動の攻撃をグールに放とうと片手を掲げた。
だがその瞬間、足元から倒したはずのグールが現れた。
「なんだと!?」
ドドオオオン!!
「ぐっ!」
楢地は不意を付かれまともに攻撃を受けた。
三宗術の衣も今の衝撃で剥がされてしまっていた。
「再生に迷彩か! なめすぎたな……、しかし!」
楢地の言葉通り、BSS級グールの1体は爆撃のダメージを三重の光陣を使い一気に再生させ、自身の気配を迷彩能力で隠し楢地へと肉薄していた。
2体のグールが牙をむき出しに楢地へと迫っていた。
「オレの爆弾はまだまだあるぞ! 爆ぜろ!」
楢地は結界を展開すると同時に周囲の爆撃魔素を一気に開放した。
ドオオオオオンンン!!!
「ぐう……! さすがに無傷とはいかないか……」
楢地は大規模な攻撃をしたせいで自分にもダメージが及んでいた。しかし血を流しながらも未だふらふらと宙に浮かぶ2体のグールを見つけ、睨みつけた。
今の攻撃で2体の光陣は全て消え失せ、もはや再生は叶わない。
それどころか激しく体を損傷させ、息も絶え絶えだ。
楢地はその様子を見て肩から力を抜いた。
「ふう。だがもういい頃合いだろう」
楢地は渾身の魔素を込め、懐から取り出したメダルを2枚。グールに向かい投げつけた。
投げつけたメダルからは光の帯が飛び出し、2体のグールにからみついた。
ガアアアアア!!!!
グールは激しく抵抗するが、ケガと消耗のせいだろう。思うほど力が出せない。
段々と全身を光に包まれ、グールの叫びも小さくなっていく。
程なくして光の帯に完全に包まれたグールは形も小さくなり、その姿を2枚のメダルに姿を変えた。
「よし、捕獲完了だ。これでユキさんには面目も立つだろう。クラウド、待ってろよ」
睦月と楢地は人型グールの討伐をユキに命じられた際、その捕獲の指令も受けていた。
しかし楢地はその生け捕りのような命令は非常に困難であり、恐らく人型グールの周囲にいるであろう特級グールを捕獲することで叱責を免れようと考えていたのだ。
そしてその目標は達成した。後は全力で人型グールを討伐するのみだ。
楢地は、睦月と楢地。ワイズの精鋭2人掛かりでやっとだろうと考えていた。
楢地はメダルを懐にしまうと、虚空を蹴った。
近づく睦月に気付いた人型グールも迷彩能力を解き敵に備えていた。
「わざわざこんな所まで来るとはの……、お前たちも必死よのう」
姿を表したのは乱れた白髪の小柄な老婆であったが、紛うことなく睦月の敵軍の中でも精鋭である意志あるグールの1体だ。その弱々しい姿が逆に禍々しさをさらに増して見せていた。
睦月は空中で立ち止まると、油断なく魔素を練った。
「……五度天輪。五条護符。五位血黥」
睦月は三宗術を展開しつつ、隙を見せずに人型グールの姿を観察した。
睦月が今まで戦ったことのあるグールの中では間違いなく最強。睦月は人型グールとまともに相対するのは初めてだった。
老婆のグールは睦月から放たれる気配を感じ取り、小さく感嘆の息を吐いた。
「ほう、害虫どもの中ではなかなか強者の様だな。しかし貴様は阿倍野、宝条、佐々木の誰でもない。ただの雑兵であろう? まさか妾に勝つ気でおるのか?」
睦月はぐんぐんと老婆の姿のグールの威圧が強まっていくことを肌で感じ取った。
しかし動揺はない。
「五五式爾形象、 朱糸縅鎧」
睦月は全身に展開した三宗術を全て一体化して、秘技と言える朱色の光の衣を展開した。
この衣は三宗撰集術の奥義であり、天輪、護符、血黥を相互に干渉、昇華させた高等技術だった。
この衣を纏った者は高い身体能力、再生能力、防御能力、超感覚などが備わりまさに鬼人の如き戦闘力を手に入れることかできる。
三度、三条、三位の術を重ね合わせた光衣は紺色に、五度、五条、五位を重ね合わせたものは朱色に、七度、七条、七位を合わせたものは白色に輝く。
白色の衣を展開できるのはワイズの中でも10人も居ないのだが、睦月はワイズ最強の兵。
白色の衣も展開はできるが消耗を考えて朱色の衣を展開した。
「ふふふ。大したものだ。このディーターの相手としてはまあ及第点をやろう」
ディーターと名乗った人型グールの余裕は高まる睦月の力を見ても全く崩れない。
「しかし妾を倒さねば地上を跋扈している骸どもは死なぬぞ。ほうれ、もう貴様らの群れに襲いかかっておるわ」
ディーターの言うとおり、骸の巨人はすでに東軍、西軍の後方に襲いかかっており、その数も少しずつ増えている。
東、西軍それぞれにもう100体近い脅威が攻撃を開始しており、すでにその手に掛かっている者もいた。
「黙れ」
睦月は小さく呟いた。
「何だと?」
「問答は無用だ。貴様はオレたちが必ず倒す」
ドオオオオオ!!!
睦月は全身に滾らせた魔素のエネルギーを手から放出してディーターを攻撃した。
だがディーターは落ち着いてそれを片手で弾き飛した。
「妾を倒す? 害虫が」
睦月は今の一瞬でディーターの背後に回り込み、激しく魔素を込めた蹴り技を繰り出した。
ドン! ドオン!! ドオオオオオ!!!
しかしその強力な攻撃もディーターは全て防ぎきり、逆に睦月に光の奔流をぶつけた。
「ぐ……!!」
たまらず睦月は距離を取る。
今の攻撃も並のS級隊員なら消し炭になるほどの威力だった。
「ほほほ、威勢だけだのう!」
ドドドッオオ!!
激しい攻撃がさらに睦月を襲った。
ディーターは光の腕を4本操り、睦月の体を叩き潰そうと矢継ぎ早に伸縮を繰り返した。
ここでディーターはふと、自身の周りに蛍のような光が多数浮かんでいることに気が付いた。
「これは? 何か仕掛けたのか?」
ディーターは余裕を顔に貼り付けたまま、睦月の攻撃を待った。
ディーターに対する爆炎の向こうで睦月は右手を振るった。
「舞え」
カアアアアア!!!
ディーターの周りの光はそれぞれが剣や槍、斧、鞭、弓などに姿を変え、一斉に空中を舞うようにディーターに攻撃を始めた。
睦月は楢地と同じく三宗術以外の固有の術を使う。
その御業はワイズの兵たちからは武器使いと呼ばれ恐れられていた。
これは自身の魔素を予め決めておいた100種の武具へと変換しそれを操ることが出来る能力で、大量の上級グールも一瞬でズタズタに出来る程の威力があった。
「やりおるやりおる。効いたぞい」
しかし老婆のグールは笑みを消さず、無傷で姿を現した。
睦月はそれを見て小さく眉をひそめた。
彼は多少はダメージを与えられると踏んでいたのだ。
「しかしもう終いか?」
ドオオオオオンンン!!!
ディーターの追い打ちを受けた睦月は激しくダメージを負うが、彼の眼光の鋭さは消えていない。
「七度天輪! 七条護符! 七位血黥!!」
初めて霜月が大きく声を上げた。
「おお、必死じゃのう」
睦月は武器使いの術をさらに展開しながら激しくディーターと攻防を続けている。
その合間に武器使いの種とも言える換装魔素もばら撒いて各種の武器をぶつけているが、如何せん敵の攻撃に追いついていない。
「おお! 七七式爾形象! 白糸縅鎧!!」
睦月の全身を守る光の衣が朱色から白色へと色を変えた。
「力が増したなあ! だがまだそれでは足りぬぞ!」
ドドドッオオオオオ!!!
激しい攻撃が空に数多く咲いては散った。
「ぐっぐ……!! まさかここまでの強者とは……!!」
睦月は血反吐を吐きながらディーターを睨んだ。
ほぼ全力の攻撃をしたが、ディーターは大した傷は負っていなかった。
「いやはや。貴様も素晴らしい強者ぞ。まあ害虫の割にはだがな」
睦月は歯噛みしながら大きく肩を上下して息を吐いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
楢地は空中に撒き散らした魔素を爆弾へと変換してBSS級グールへダメージを与え続けた。
「どうした? まさかこれで終わりなのか?」
ギャオオオオオ!!!
爆炎から1体のグールが叫びと共に飛び出した。
グールは1体が完全に防御に徹し、楢地の爆撃を辛くも凌いでいた。
その合間の一瞬の隙を見て、もう1体が全力の突進を試みたのだ。
ドオオオオオ!!!
しかし楢地はそのミサイルのような体当たりを真っ正面から受け止めた。
「いや、思ったよりやるな。衣を展開していなかったらかなり効いていたはずだぞ」
楢地は爆撃の間に間に五五式爾形象、朱糸縅鎧の展開を済ませていた。
三宗術の秘技であるこの衣に包まれた術者は相当な攻撃でもびくともしない。
楢地もBSS級グールの全霊を込めた攻撃を難なく受け止めていた。
「散り爆ぜろ」
楢地の言霊に反応した無数の魔素が木の葉を伝う水玉のように集まり、一気にグールの体へと纏わりついた。
ドオオオオオンンンンン!!!!!
グールは爆撃で全身をズタズタに引き裂かれ、地上へと落下した。
「あと1匹」
グオオオウウウウ!!!
残りのグールは雄叫びを上げて光の玉を何十と体の周りに生み出した。
「悪いが、その攻撃ごと潰させてもらう。爆ぜろ」
ドオオオオオンンン!!!
すでにグールの周囲に集まっていた楢地の爆撃魔素が激しく爆炎を上げた。
しかしグールは光陣を使い何とか体を再生させ、再度楢地へ光の弾丸を放った。
ドドドッ!!
楢地は三宗術の衣を使って攻撃をいなすと、波動の攻撃をグールに放とうと片手を掲げた。
だがその瞬間、足元から倒したはずのグールが現れた。
「なんだと!?」
ドドオオオン!!
「ぐっ!」
楢地は不意を付かれまともに攻撃を受けた。
三宗術の衣も今の衝撃で剥がされてしまっていた。
「再生に迷彩か! なめすぎたな……、しかし!」
楢地の言葉通り、BSS級グールの1体は爆撃のダメージを三重の光陣を使い一気に再生させ、自身の気配を迷彩能力で隠し楢地へと肉薄していた。
2体のグールが牙をむき出しに楢地へと迫っていた。
「オレの爆弾はまだまだあるぞ! 爆ぜろ!」
楢地は結界を展開すると同時に周囲の爆撃魔素を一気に開放した。
ドオオオオオンンン!!!
「ぐう……! さすがに無傷とはいかないか……」
楢地は大規模な攻撃をしたせいで自分にもダメージが及んでいた。しかし血を流しながらも未だふらふらと宙に浮かぶ2体のグールを見つけ、睨みつけた。
今の攻撃で2体の光陣は全て消え失せ、もはや再生は叶わない。
それどころか激しく体を損傷させ、息も絶え絶えだ。
楢地はその様子を見て肩から力を抜いた。
「ふう。だがもういい頃合いだろう」
楢地は渾身の魔素を込め、懐から取り出したメダルを2枚。グールに向かい投げつけた。
投げつけたメダルからは光の帯が飛び出し、2体のグールにからみついた。
ガアアアアア!!!!
グールは激しく抵抗するが、ケガと消耗のせいだろう。思うほど力が出せない。
段々と全身を光に包まれ、グールの叫びも小さくなっていく。
程なくして光の帯に完全に包まれたグールは形も小さくなり、その姿を2枚のメダルに姿を変えた。
「よし、捕獲完了だ。これでユキさんには面目も立つだろう。クラウド、待ってろよ」
睦月と楢地は人型グールの討伐をユキに命じられた際、その捕獲の指令も受けていた。
しかし楢地はその生け捕りのような命令は非常に困難であり、恐らく人型グールの周囲にいるであろう特級グールを捕獲することで叱責を免れようと考えていたのだ。
そしてその目標は達成した。後は全力で人型グールを討伐するのみだ。
楢地は、睦月と楢地。ワイズの精鋭2人掛かりでやっとだろうと考えていた。
楢地はメダルを懐にしまうと、虚空を蹴った。
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