グールムーンワールド

神坂 セイ

文字の大きさ
上 下
104 / 264
CHAPTER Ⅲ

第104話 中継基地設営任務②

しおりを挟む
 オレは志布志という名前に聞き覚えを感じたオレは、新ミナトミライ都市の防衛戦争のことを思い出していた。

(確か……防壁の上で案内か何かしてくれた人たちだったな)

「結城さん、月城さん、安城さん、佐々木さん! ご無沙汰しています!」

「ああ、こんなところで奇遇だな。志布志隊員」

「志布志さんもお元気そうで」

「いや、新ミナトミライを思い出すなー」

 オレ以外のみんなは志布志に対して、久しぶりだと気安く会話を始めていた。

「ところで、やはり刎野さんはいないんですね」

「やはりというと?」

 セイヤが志布志に聞き返した。

「いえ、新トウキョウ都市のS級隊員3名は単独行動にて東部都市圏でのS級グール討伐を命じられていると聞いたものですから。あ、石動市長が教えてくれたんです」

「なるほど、石動市長、烏丸秘書官も変わりないか?」

「ええ、ふたりとも魔導石とかいう魔導具を手に入れて階級がアップしてますよ。凄く強くなっています。凄い道具が出来たみたいですね」

「ああ、そうだな」

「あれ、そう言えば志布志くん達の階級って何だっけ? それに魔導石は手に入れたの?」

 オレはふと疑問に思って班長同士の会話に口を挟んだ。

「はい、まだ魔導石は貰えてないですが最近みんな昇級することが出来まして、オレはA+隊員になりました」

「え!?」

(お、オレより上じゃん!)

「あとは、こちらの佐治と金澤がA-、それに橘と谷田部か
B+になります。オレたちはB+部隊です」

(新ミナトミライの防衛戦のときはオレたちより格上だったのかな。あ、あの時はモモさんのお陰でオレたちはA級部隊だったからな)

「セイ、彼らは新ミナトミライのトップ部隊だ」

「そ、そうなんだ。凄いね」

(態度から何となくそこまでの階級じゃないと思っていたとはとても言えないな……)

「いえ! ありがとうございます!」

「佐々木は分かりやすいな」

 アオイとユウナがオレの考えを見透かして笑っていた。
 オレたちはその後1日を共に過ごし、翌日にそれぞれの都市へと帰路についた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「さて、次は新オオミヤ都市への運搬任務だな」

「初めて行く場所ですね」

 オレたちは新トウキョウ都市へ戻り、次の任務まで数日を過ごした。
 今は任務について一度打ち合わせをしようということで集まっており、セイヤとユウナが話をしていた。

「新オオミヤってのは何かあるの?」

「何かって何だよ?」

 アオイの顔に何が聞きたいんだよと出ている。

「いや、ほら気を付けることとか。知っておいた方が良いこととか。オレは知識が乏しいからさ」

「いや、特にないな。オレも初めて行く場所だし、通常にライフシェルを5つ運ぶというだけだな」

 セイヤが答えてくれた。

「そうか」

「あ、そう言えば二宮さんは現在新オオミヤ都市に滞在しているらしいですよ」

「へえ、あの二宮さんが」

(二宮って、誰だっけ……?)

「佐々木、二宮さんっていうのは、この新トウキョウ都市最強のS級隊員だよ」

「へ、へえ」

(なんでオレの考えがわかったんだよ、アオイ)

「セイ、モモが言うには二宮隊員はS級隊員3人の中でも突出して強いらしい。モモが3人居ても勝てるか分からないと言っていた」

「ええ!? さすがにそれはないんじゃ……」

 刎野はS級隊員として非常に高い戦闘能力を持っている。
 オレたちはその実力を何度も目の前で見ていたし、その3人分なんてとても信じられない。

「だけど、阿倍野マスターもSS級に勝てる可能性があるのは二宮さんくらいだって言ってましたしね。それだけの実力だと言うことですよね」

「ああ……」

 オレはユウナの言葉に先日の阿倍野の話しを思い出していた。確かに阿倍野はこの都市でSS級と戦える隊員は1人しかいないと言っていた。

「オレたちと面識はないし、まあ気にすることでもないな。2日後に出発しよう。みんな準備を頼む。では……」

 セイヤが具体的な準備の内容の打合せを始めた。



その2日後、オレたちは問題なく中継基地にてライフシェルを設営し、動作確認の期間に入っていた。

「今回も今のところ大したグールは出てこないな」

「そうですね。また訓練に時間を当てましょう」

「ところでみんなのその闘衣? だっけ。どんな感じなの?」

「……」

(あれ?)

「そうだな、セイ。正直な話し、全く習得は出来ていない」

「ええ? そうなの? ユウナは?」

「私もまるでダメです。まだまだですね」

(そんなに難しいのか……?)

「私もダメだけど、まあ習得は難しいって言われてたからな。地道に頑張ろうぜ」

「まあ、アオイはそうだろうけど」

「何だと! 佐々木」

 オレたちがそう言って時間をもて余しているとライフシェルの索敵装置に反応が出た。

「結城さん!」

「来たか。距離と敵数を報告してくれ」

 索敵装置はあくまでグールの反応を感知するのみで、詳細はユウナの索敵魔術やオレのグール感知能力で確認するようになっていた。

「はい。……距離は1300、数は……」

「?」

「測定不能です。おそらく大規模群体レベルと思われます。大多数はD級のようですが、C級、B級、A級の反応もあります……!」

 ユウナの索敵魔術は、魔導石を利用して1500までの距離を感知出来るようになっていた。だが、1200を越えるとまだ精度が低い。

「セイも同じか?」

「……ああ。それに……これは、S級もいるっぽいな」

「「!!」」

「それは、私たちだけじゃ対応しきれないな……」

 アオイの言うとおりだ。

「ああ、新オオミヤ都市、新トウキョウ都市に応援の要請連絡を入れる」

 セイヤはそう宣言するとこれもライフシェルに設置されている通信装置を使って援軍の連絡をした。
 少しするとセイヤが戻ってきたが、少し怪訝な表情を浮かべていた。

(なんだ? 応援が却下でもされたのか?)

「どうしたんだ? セイヤ」

「新オオミヤ都市の本営が、グールに対する交戦は不要と言っている。グールの群体は新オオミヤ都市へ向かっているから都市で対処すると」

「は? ここから新オオミヤ都市はかなり離れてるよな?」

「ああ、たまたま近くに隊員がいるらしい」

「……」

(で、でも大規模群体は1部隊じゃ倒せないんじゃないか……?)

「じゃ、じゃあオレたちも応援に行った方が……」

「それが、攻撃の邪魔になるから近付かないようにとのことだ」

「そんな……大丈夫なのか?」

「佐々木さん! 結城さん! どうやら戦闘が始まったようです。グールの数が減っていきます!」

「え? ユウナ、1500も離れてたら100体単位くらいしか数が分からないんじゃなかった?」

「アオイ、そ、それが、敵が100体単位で減っていってるみたい」

「はあ?」

 オレはかなり距離があるが、感知能力を最大化してグールの気配を伺った。
オレの感知能力も1200くらいが有効範囲だ。だが、しばらく感知を続けているとなんとなく様子が分かった。

(よく、分からないが、確かにグールの数が減っていってるようだ)

 オレは敵の数がどんどん減っていってることを感じ、対応している部隊の強さを感じていた。

「あ!」

「どうした?セイ?」

「い、今、S級の反応が消えたみたいだ……」

「なに? 討伐したということか?」

「いや、分からないが多分そうじゃないかな」

 その時、ライフシェルの通信装置に連絡が入った。オレたちはスピーカーでその通信の声を聞くことにした。

『中継都市の設営部隊の皆さん。お疲れ様です。ただいま近隣に現れた大規模群体は二宮隊員により殲滅が完了しました。安心して任務を続行してください』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

新やる気が出る3つのDADA

Jack Seisex
SF
摩訶不思議な冒険SFダダ小説。

【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。 そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。 プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。 しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。 主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。 孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。 その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。 多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。 「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」 「君にだけは言われたくなかった」 ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数! 圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。 ===========目録====================== 1章:お爺ちゃんとVR   【1〜57話】 2章:お爺ちゃんとクラン  【58〜108話】 3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】 4章:お爺ちゃんと生配信  【239話〜355話】 5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】 ==================================== 2020.03.21_掲載 2020.05.24_100話達成 2020.09.29_200話達成 2021.02.19_300話達成 2021.11.05_400話達成 2022.06.25_完結!

冬に鳴く蝉

橋本洋一
SF
時は幕末。東北地方の小さな藩、天道藩の下級武士である青葉蝶次郎は怠惰な生活を送っていた。上司に叱責されながらも自分の現状を変えようとしなかった。そんなある日、酒場からの帰り道で閃光と共に現れた女性、瀬美と出会う。彼女はロボットで青葉蝶次郎を守るために六百四十年後の未来からやってきたと言う。蝶次郎は自身を守るため、彼女と一緒に暮らすことを決意する。しかし天道藩には『二十年前の物の怪』という事件があって――

銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。 その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。 日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。 主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。 史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。 大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑) ※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

流星のアドヴェント ~魔装少女の回旋曲~

兎城宮ゆの
SF
現代世界は科学と魔法で満ちている。 そんな当たり前の世界に突如起こった次元震。それは魔法兵装『XUNIS』の生まれる前触れとして、引き起こされた異世界との境界を隔てた門の扉が開いた瞬間だった。 扉の先に広がるのは、地球に似たもう一つの世界。 科学の進歩は勿論、魔法が栄えた時期でもあった為に発足された異世界探索部隊の進行。 それは安泰を侵す事件の幕開けでもあった。 外交し得る事の出来ない圧倒的技術の差に世界は涙し、血は大量に流れてしまった。 世界に放たれた脅威に月面都市で暮らしていた『カグヤ』は、その事件を機に異世界の目標に定められてしまった。

恋愛発電

みらいつりびと
SF
授業中だったけれど、好きな人と目が合い、胸がキュンとなって、わたしは恋愛発電した。 心臓の横に埋め込まれている発電ユニットが回転するヴーンという音を、わたしは骨伝導で聴いた。 この音はわたしが恋をしている証拠。 そう思うだけで、また胸がドキドキして、ヴヴヴヴーンと発電機が激しく震動した。 なんだか恥ずかしくて、顔が熱くなった。 好きな人はもう黒板を見ていて、わたしの方を向いてはいない。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...