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CHAPTER Ⅰ
第15話 群体
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「いや、すごい光景ですね……」
兵宿舎の練兵場からホバークラフトに揺られ、都市外壁を徒歩で出て、2時間ほど進んだ。
辺りは住宅街跡だ。
もう崩れてしまっている建物が大半で、逞しく樹木が繁っている。
土混じりの冷たい風を感じながら、オレはグールの大群を見ていた。
さすがに500体の大群は迫力が違う。
「山崎班長! 敵との距離は400です!」
山崎班の鈴子が報告をあげる。
「よし、いつも通りだ。設置型魔術を展開。そして150後退だ。菅原班もいいか?」
「了解」
みな、テキパキと準備を始める。
オレは中衛隊員として、罠を仕掛けるユウナ、チバたちを護衛するため周囲を警戒する。
すぐに準備が終わり、開戦の位置へ移動した。
少し大きめの建物の屋上だ。おそらくちょっとしたマンション跡だろう。
「群体との距離、300です」
チバが菅原に報告する。
「了解、待機だ」
「はい」
あとはグールたちが射程に入るのを待つのみだ。
「チバくん、群体っていう言葉にも意味はあるの?」
「佐々木さん……けっこう余裕ですね」
チバはかなり緊張した様子だ。
まあ、あんな怪物たちと戦おうというのだから当然だ。
「いや、チバの気が小さいんだよ」
アオイがチバを茶化す。
「お前は、またそんなことを言って! ボクの方が年上だぞ」
「はいはい」
アオイは全く気にとめていないようだ。
「全く! ああ、群体ですか? これはあれですよ。グールは集合習性がありますからね。100体以上の群れは群体と呼ぶんですよ」
「集合習性?」
「それはまだ知らないですか? グールとグールは引き合うんです。なるべく単体では動かず集まろうとする習性のことですよ」
「へえ、そうなんだ」
「はい、群れになったグールはそれ自体がひとつの生き物のように行動するため、群体と言うんだそうです」
「なるほど……」
「他にも……」
「しっ! そこまでだ。前方注意」
菅原がオレたちのおしゃべりを注意した。
「群体との距離、250……!」
緊張した時間が流れる。
おもむろに山崎が立ち上がった。
「撃て!」
「「了解!」」
号令と共に遠距離攻撃のできるメンバーがグールを攻撃する。もちろんオレも銃でグールを狙撃する。
この世界の銃に基本弾丸はない。魔素をグリップ内部のストレージに充填して、青白く光る衝撃波を発射する。弾速、威力、射程、弾数などを調整して使用する。魔素を込めて引き金を引くだけで攻撃ができるので扱いは容易と言える。
さらに弾丸と言うべき外付けのデバイスも存在し、その弾丸にもそれぞれ魔素を充填し、銃本体の機能を利用して複合的に大威力の攻撃を撃つこともできる。
ただ、弾丸は貴重で、数は多くないため、ここぞという時のために、温存しておく。
オレは5発の弾丸を渡されていた。
グゥゥオオオ!!
俺たちに気づいたグールたちが歩調を早めて向かってくる。
「設置型魔術、起動!」
ドォーオオン!
激しい爆発音が響き、グールを吹き飛ばした。
オレたちはしばらく建物の屋上から迎撃を続けるていると、とうとうグールが近くまで近寄ってきていた。
そしてその中に2メートルを越える大型のグールがいた。
(あれはE級だな! 早めに叩かないと!)
オレはE級に向かい銃を乱射すると、すぐに倒れて動かなくなった。
(よしやった! 倒した! オレは戦えてるぞ! この調子だ!)
オレは討伐隊員としてやっぱり才能があると自信が出てきた。
その時。
ドン!
俺たちの居る屋上に何かが降り立った。
(なんだ!?)
見ると巨大な怪物がこちらを睨み付けていた。
すぐそこだ。
その体は4メートルはあり、基本的なフォルムは人間だが、腕が4本も生えていた。そして口は大きく裂け、凶悪そうな牙が見えていた。
「C級グールだ!」
菅原が声をあげる。
(デカイ! あ、あれがC級? A級じゃなくて!?)
焦って銃を向けるのが遅れた。
瞬間。怪物がオレに向かって走り出した。
(は、早! やられる!)
焦るオレの前に人影が躍り出るのが見えた。
「衝撃剣!」
ズドン!
オレは思わず目を瞑ってしまった。
恐る恐る目を開けると、オレの目の前にセイヤが立っていた。
そしてC級グールの巨体が2つになって屋上の地面に落ちていた。
「大丈夫か? セイ」
「……」
(え? 倒したの? この人が? あの化け物を?……一瞬で??)
「ボーッとするな、迎撃を続けろ! どんどん来るぞ!」
「は、はい!」
菅原に叱咤を受け、眼下のグールに向けて銃撃を再開する。
心臓が激しく音を立てていた。
(くそ! やっぱり、まだまだだ! こんなんじゃ……)
オレはさっき感じた自信を直ぐに取り下げ、自分の実力を大きく下方修正した。
オレはただの新入りだ。油断なんかする暇もない。
「E級の群れです! 数は50!」
鈴子が大きな声で全員に伝える。
「ちっ、C地点へ後退するぞ!」
山崎が銃撃をしながら皆に指示を出す。
オレは魔素のストレージを交換しながら、あらかじめ決められた迎撃ポイントへ移動した。
「撃ちまくれ!」
新しい迎撃地点は崖地だ。オレたちは上から下に向けて攻撃を仕掛ける。
崖の上はグールから見ると15メートルは上だ。そう簡単にはここまでは登って来れない。
どんどん集まってくるグールの中には大型のものの数が増えていった。
(E級だな! 数が多い!)
500という数がどれだけ減ったのか分からない。オレはがむしゃらに銃撃を続けた。
激しい爆発音や銃撃音の中、突然、後ろの方向に気配を感じた。
バッ!
オレは後ろを振り返るがそこには何もいない。
だが、確かに感じる。
(なんだ、これは? 気配……なのか? まさか!)
「菅原班長! 後方にグールの気配を感じます! おそらく、この前の点滅タイプだと思います!」
「何だと!?」
菅原も誰もいない後ろを見る。
「……チバ、後方の索敵結果は?」
「何もいませんよ! 反応無し! ふたりとも! 迎撃してください、C級が崖を登ってきてます!」
「あいつは任せろ」
チバの叫びに山崎が答える。
山崎も銃術士だが、ここでデバイス弾丸を使った。
ドォーン!
たまらず崖からC級が落下するが、まだまだ多数のE級がこちらへ向かって来ている。
「チバ、セイは感覚強化が発現しているんだったな?」
セイヤが俺たちの横に来て言う。
「セイヤまで! 早く攻撃してよ!」
「そうだな。セイ」
「は、はい」
「君はどの感覚が強化されたんだ?」
「えっと、視覚と聴覚、あと触覚でした。あ! 嗅覚も強くなった気がします」
「……」
セイヤがオレを見つめる。
「山崎班長、オレとセイは後方を探索します」
「ああ!? 何言ってんだセイヤ? スズの索敵も反応はねぇぞ!」
「それでも、です」
激しく銃撃を続ける山崎に冷静にセイヤが言った。
「ちっ、すぐ戻って来い! いいな!」
「ありがとうございます、さあセイ、行こう」
「い、いいんですか?」
オレの言葉をすぐに信じてくれたセイヤに逆に戸惑う。
「どのみち気になって前方に集中できないだろう。それに強化感覚が3感覚以上もある人間の言葉は無視できない。付け加えると、ここにはD級が見当たらない」
「? それはどういう……」
「佐々木! 山崎さんも許可を出している! 早く済ませて来い!」
菅原が焦った様子で叫ぶ。
「は、はい!」
「行くぞ、セイ」
オレたちは激しい戦闘が続く崖地を離脱した。
これで何もなかったら……とオレは少し不安になる。
「で、でも俺たち2人で大丈夫でしょうか? もし本当に点滅タイプがいたら……多分5体10体じゃ済まない気がします……」
走りながらセイヤと会話をする。
「大丈夫だよ」
すごい自信だ。
「しかし……」
「オレは結城セイヤ、B級隊員で、この中では最強だ」
兵宿舎の練兵場からホバークラフトに揺られ、都市外壁を徒歩で出て、2時間ほど進んだ。
辺りは住宅街跡だ。
もう崩れてしまっている建物が大半で、逞しく樹木が繁っている。
土混じりの冷たい風を感じながら、オレはグールの大群を見ていた。
さすがに500体の大群は迫力が違う。
「山崎班長! 敵との距離は400です!」
山崎班の鈴子が報告をあげる。
「よし、いつも通りだ。設置型魔術を展開。そして150後退だ。菅原班もいいか?」
「了解」
みな、テキパキと準備を始める。
オレは中衛隊員として、罠を仕掛けるユウナ、チバたちを護衛するため周囲を警戒する。
すぐに準備が終わり、開戦の位置へ移動した。
少し大きめの建物の屋上だ。おそらくちょっとしたマンション跡だろう。
「群体との距離、300です」
チバが菅原に報告する。
「了解、待機だ」
「はい」
あとはグールたちが射程に入るのを待つのみだ。
「チバくん、群体っていう言葉にも意味はあるの?」
「佐々木さん……けっこう余裕ですね」
チバはかなり緊張した様子だ。
まあ、あんな怪物たちと戦おうというのだから当然だ。
「いや、チバの気が小さいんだよ」
アオイがチバを茶化す。
「お前は、またそんなことを言って! ボクの方が年上だぞ」
「はいはい」
アオイは全く気にとめていないようだ。
「全く! ああ、群体ですか? これはあれですよ。グールは集合習性がありますからね。100体以上の群れは群体と呼ぶんですよ」
「集合習性?」
「それはまだ知らないですか? グールとグールは引き合うんです。なるべく単体では動かず集まろうとする習性のことですよ」
「へえ、そうなんだ」
「はい、群れになったグールはそれ自体がひとつの生き物のように行動するため、群体と言うんだそうです」
「なるほど……」
「他にも……」
「しっ! そこまでだ。前方注意」
菅原がオレたちのおしゃべりを注意した。
「群体との距離、250……!」
緊張した時間が流れる。
おもむろに山崎が立ち上がった。
「撃て!」
「「了解!」」
号令と共に遠距離攻撃のできるメンバーがグールを攻撃する。もちろんオレも銃でグールを狙撃する。
この世界の銃に基本弾丸はない。魔素をグリップ内部のストレージに充填して、青白く光る衝撃波を発射する。弾速、威力、射程、弾数などを調整して使用する。魔素を込めて引き金を引くだけで攻撃ができるので扱いは容易と言える。
さらに弾丸と言うべき外付けのデバイスも存在し、その弾丸にもそれぞれ魔素を充填し、銃本体の機能を利用して複合的に大威力の攻撃を撃つこともできる。
ただ、弾丸は貴重で、数は多くないため、ここぞという時のために、温存しておく。
オレは5発の弾丸を渡されていた。
グゥゥオオオ!!
俺たちに気づいたグールたちが歩調を早めて向かってくる。
「設置型魔術、起動!」
ドォーオオン!
激しい爆発音が響き、グールを吹き飛ばした。
オレたちはしばらく建物の屋上から迎撃を続けるていると、とうとうグールが近くまで近寄ってきていた。
そしてその中に2メートルを越える大型のグールがいた。
(あれはE級だな! 早めに叩かないと!)
オレはE級に向かい銃を乱射すると、すぐに倒れて動かなくなった。
(よしやった! 倒した! オレは戦えてるぞ! この調子だ!)
オレは討伐隊員としてやっぱり才能があると自信が出てきた。
その時。
ドン!
俺たちの居る屋上に何かが降り立った。
(なんだ!?)
見ると巨大な怪物がこちらを睨み付けていた。
すぐそこだ。
その体は4メートルはあり、基本的なフォルムは人間だが、腕が4本も生えていた。そして口は大きく裂け、凶悪そうな牙が見えていた。
「C級グールだ!」
菅原が声をあげる。
(デカイ! あ、あれがC級? A級じゃなくて!?)
焦って銃を向けるのが遅れた。
瞬間。怪物がオレに向かって走り出した。
(は、早! やられる!)
焦るオレの前に人影が躍り出るのが見えた。
「衝撃剣!」
ズドン!
オレは思わず目を瞑ってしまった。
恐る恐る目を開けると、オレの目の前にセイヤが立っていた。
そしてC級グールの巨体が2つになって屋上の地面に落ちていた。
「大丈夫か? セイ」
「……」
(え? 倒したの? この人が? あの化け物を?……一瞬で??)
「ボーッとするな、迎撃を続けろ! どんどん来るぞ!」
「は、はい!」
菅原に叱咤を受け、眼下のグールに向けて銃撃を再開する。
心臓が激しく音を立てていた。
(くそ! やっぱり、まだまだだ! こんなんじゃ……)
オレはさっき感じた自信を直ぐに取り下げ、自分の実力を大きく下方修正した。
オレはただの新入りだ。油断なんかする暇もない。
「E級の群れです! 数は50!」
鈴子が大きな声で全員に伝える。
「ちっ、C地点へ後退するぞ!」
山崎が銃撃をしながら皆に指示を出す。
オレは魔素のストレージを交換しながら、あらかじめ決められた迎撃ポイントへ移動した。
「撃ちまくれ!」
新しい迎撃地点は崖地だ。オレたちは上から下に向けて攻撃を仕掛ける。
崖の上はグールから見ると15メートルは上だ。そう簡単にはここまでは登って来れない。
どんどん集まってくるグールの中には大型のものの数が増えていった。
(E級だな! 数が多い!)
500という数がどれだけ減ったのか分からない。オレはがむしゃらに銃撃を続けた。
激しい爆発音や銃撃音の中、突然、後ろの方向に気配を感じた。
バッ!
オレは後ろを振り返るがそこには何もいない。
だが、確かに感じる。
(なんだ、これは? 気配……なのか? まさか!)
「菅原班長! 後方にグールの気配を感じます! おそらく、この前の点滅タイプだと思います!」
「何だと!?」
菅原も誰もいない後ろを見る。
「……チバ、後方の索敵結果は?」
「何もいませんよ! 反応無し! ふたりとも! 迎撃してください、C級が崖を登ってきてます!」
「あいつは任せろ」
チバの叫びに山崎が答える。
山崎も銃術士だが、ここでデバイス弾丸を使った。
ドォーン!
たまらず崖からC級が落下するが、まだまだ多数のE級がこちらへ向かって来ている。
「チバ、セイは感覚強化が発現しているんだったな?」
セイヤが俺たちの横に来て言う。
「セイヤまで! 早く攻撃してよ!」
「そうだな。セイ」
「は、はい」
「君はどの感覚が強化されたんだ?」
「えっと、視覚と聴覚、あと触覚でした。あ! 嗅覚も強くなった気がします」
「……」
セイヤがオレを見つめる。
「山崎班長、オレとセイは後方を探索します」
「ああ!? 何言ってんだセイヤ? スズの索敵も反応はねぇぞ!」
「それでも、です」
激しく銃撃を続ける山崎に冷静にセイヤが言った。
「ちっ、すぐ戻って来い! いいな!」
「ありがとうございます、さあセイ、行こう」
「い、いいんですか?」
オレの言葉をすぐに信じてくれたセイヤに逆に戸惑う。
「どのみち気になって前方に集中できないだろう。それに強化感覚が3感覚以上もある人間の言葉は無視できない。付け加えると、ここにはD級が見当たらない」
「? それはどういう……」
「佐々木! 山崎さんも許可を出している! 早く済ませて来い!」
菅原が焦った様子で叫ぶ。
「は、はい!」
「行くぞ、セイ」
オレたちは激しい戦闘が続く崖地を離脱した。
これで何もなかったら……とオレは少し不安になる。
「で、でも俺たち2人で大丈夫でしょうか? もし本当に点滅タイプがいたら……多分5体10体じゃ済まない気がします……」
走りながらセイヤと会話をする。
「大丈夫だよ」
すごい自信だ。
「しかし……」
「オレは結城セイヤ、B級隊員で、この中では最強だ」
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