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風嘉の白龍 〜花鳥風月奇譚・2〜
ー悪意の果てー
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鴻夏が璉に拘束されて動けなかった頃、密かに璉の指示を受けた嘉魄と暁鴉は、宴を抜け出しそれぞれ別の場所で真相を探っていた。
嘉魄は外で月鷲側の動向を、暁鴉は砦の中で不審者もしくは内通者を探し出す。
璉の読みでは、砦の中に何らかの形で月鷲側の内通者が居り、そのせいで南方軍側の対応が後手になっているのでは…との事だった。
「…あんまり考えたくない事態だけど、こういう時の主の勘って外れないんだよねぇ…」
ボソッと誰に聞かせるでもなくそう呟くと、暁鴉は手始めに南方軍の上官達の部屋が立ち並ぶ領域へと足を踏み入れる。
おそらく敵にとって有益な情報が手に入る人物となると、下っ端などではなく、それなりの地位に居る者でないと無理な話だ。
しかも南方軍側の作戦や動向が、敵に筒抜けになっている可能性が高いという事でもある。
『さてどこから行くかな…?』
心の中でそう考えながら、屋探し対象の顔を思い浮かべ、すぐに暁鴉は決断する。
…やはり偉い人順で確認すべきだろう。
裏切り者の身分が上であればあるほど、事態はより深刻なものとなる。
事と次第によっては、この南方領全体を揺るがす事態になり兼ねないと思いながら、暁鴉はまず夜刃将軍の部屋へと足を踏み入れた。
夜刃将軍は古くからの璉の部下で、おそらくこの南方軍の中でも一、二位を争うほど盲信的に璉に心酔している将軍である。
だが彼自身も知らないまま、利用されている可能性もあるため、一通り調べてはみたが、それらしいものは何も見つからなかった。
少し安心し、次は隣の副官の部屋の方へと移ろうとした暁鴉は、思いがけず感じた人の気配に、慌てて手近な部屋へと滑り込む。
しばらくすると靴音も高らかに、二人の人物が話しながらこちらに向かって歩いてきた。
「…まったく、この砦の連中の『白龍』贔屓にはまいるよなぁ。伝説的な英雄だか知らんが、どうせ誇張された与太話だろ?」
「だよなぁ。あんな妃にデレデレの優男が、一体どうやって『月鷲の金獅子』と渡り合えるってんだよ?しかも当時はまだ十代だったってんだから、絶対話がおかしいって」
そう言って、堂々と自国の皇帝をこき下ろしつつ歩いて来たのは、まだ幼さの残る十代半ばと見られる少年二人だった。
璉が皇帝に立って三年、その前にも三年ほど彼は消息不明になっているので、少年達の年齢を考えると、南方領での『風嘉の白龍』の活躍をあまり知らない世代なのだろう。
確かに一見しただけで、璉の真価まで見極めるのは難しいが、常識的に考えてもこの少年達の言い様は明らかにおかしかった。
『どうも主の事をよく思ってない感じだね…。まさかよりによって、南方領の中からこんなのが出てくるとはね』
呆れと驚きとを交えつつ、暁鴉がそのまま黙って様子を伺っていると、どちらかというと気弱そうな少年の方がこう呟く。
「それはともかく、嫌な時に視察に来たよな…。毎年この時期に来てるとはいえ、今年は少し早くないか?」
「…おい、まさか何か感付かれてるとでも言うのか?普段中央にしか居ない奴が、どうやってこの南方領で起こってる事に気付けるって言うんだよ?」
「そ…れはそうなんだけど…ほら皇家にはお抱えの『影』達が居るそうじゃないか。そいつらが各地に散ってて、常に中央に情報を送ってるって噂だから、あるいは…」
そう不安げに呟いた相手に、もう一人の少年が、フンと鼻を鳴らしながらこう答える。
「…何だよ、臆病風に吹かれたのか?俺達で理想を実現するために、何でもやるって誓ったのは嘘だったのかよ?」
「そ…うじゃない!そうじゃないけど…っ!で、でもホントにこれが皆の為になってるのかが、最近分からなくなってきて…」
戸惑いながらそう話す相手に、もう一人の少年が、それを断ち切るように強く言い放つ。
「觜絡!今更そんな事言うなよ?俺とお前は一心同体、今更後には引けないんだ。いいか?これが上手くいったら、絶対に砦の皆の生活が楽になる。俺を信じろ!」
「わ、わかった。で…でも約束してくれ。絶対に砦の皆を裏切らないと…」
「ああ、約束する。絶対だ」
「…それならいい…」
觜絡と呼ばれた少年は、まだ不安げではあったものの、相手を信じる事にしたようだ。
それを影から伺いながら、暁鴉が静かに二人の少年の顔を確認する。
『あれは夜刃将軍の息子の…暁刃…だったか?そうなるとあちらの觜絡とかいう少年も、側近の誰かの息子の一人か…』
もう一人の少年の顔には覚えがなかったが、この辺りに居たという事は、間違いなく南方軍の上層部の誰かの身内という事になる。
思いがけずビンゴを引いたような気分になりながら、暁鴉は少年達に気付かれないよう、そっと様子を伺い続けた。
すると少年達は暁鴉の存在にまったく気付かないまま、廊下を奥の方へと進んで行く。
その行き先を静かに見守っていると、彼等はある部屋の前で立ち止まり、そのまま迷う事なくその扉を叩いた。
そして中から応えがあったのか、彼等は周りを警戒しつつも、その中へと入っていく。
静かにその扉が閉まるのを確認し、暁鴉はそっと隠れていた部屋から廊下へと滑り出て、彼等の入っていった部屋を確認した。
そして暁鴉はすぐに微妙な顔で眉を顰める。
そこは夜刃将軍の兄、光嚴の部屋であった。
彼は武勇を馳せる弟と違い、身体が丈夫ではなかったために、武人にすらなれなかった男だった。
そしてその代わりに文官となり、この砦の経理関係を一手に担っていると聞いている。
『砦の金庫番と血気盛んな若者達…ね。どうにも嫌な組み合わせだね…?』
そう考えた暁鴉は、彼等が消えた光嚴の部屋を、そのまま探ってみる事にした。
もちろん中に人が居るのがわかっているため、手近な場所から天井裏へと上がり、天井伝いに目的の部屋へと辿り着く。
そっと天井板の継ぎ目から下の様子を伺ってみると、先程の少年達が一人の中年の男に対して、喰ってかかっていた。
「納得出来ません、伯父上!何故せっかくの機会を逃すのです⁉︎」
「少し落ち着け、暁刃。物事を為すには細心の注意を払う必要があるのだ。『白龍』が滞在している今は、無理をしない方がいい」
「『白龍』、『白龍』って、警戒し過ぎなんじゃないですか?あんな妃に夢中なだけの優男、何を怖れる必要があるのです⁉︎」
そう言い切った少年 暁刃に、対峙している中年の男はゆっくりと首を横に振る。
「…お前達はあの男の恐ろしさを知らんから、そう言えるのだ。あれは人の域を超えた化物だ。まさに神憑り的な強さで、征服される寸前だった南方領を救い、あの月鷲に和睦を持ちかけさせた。そして三年前は、あの未曾有の大乱をも鎮圧して退けたのだ。無理をして何か気付かれようものなら、今までの努力がすべて水の泡になる。今は堪えよ」
そう言って中年の男は重々しく窘めたが、あまり若者達の共感は得られなかったようだ。
そして実にあっさりと暁刃はこう答える。
「…伯父上はお年のせいか、臆病風に吹かれておいでのようだ。『白龍』がどうしたというのです?すべて過去の栄光でしょう?」
「暁刃!早まるでない!」
「いいえ、伯父上!冬の間は取引が出来なくなるのですよ?今のうちに多少無理をしてでも回を重ねておかないと、今年の冬は越せないかもしれません。私はこの砦の者達全員を守りたいのです。誰も飢えさせたくない」
「…暁刃…」
暁刃の隣に立つ少年、觜絡が感動したように熱い視線を送る。
しかし肝心の中年の男、光嚴には何の感動も呼び覚ませなかったようだった。
光嚴は呆れたように深い溜め息をつきながら、重ねて暁刃にこう告げる。
「暁刃、勝手な事は許さん。お前の独りよがりで皆を危険な目に合わせるんじゃない」
「…お断りします。伯父上がいつものように渡りを付けてくれないのなら、俺が一人ででもやります」
「暁刃!馬鹿な事はやめろ。皆の今までの努力を無に帰す気か⁉︎」
そう言って光嚴は止めようとしたが、相手はまったく耳を貸さなかった。
「…失礼、伯父上。これ以上話していても無駄なようだ」
「暁刃!」
バタンという音と共に、若者二人がそのまま部屋から退出する。
それを仕方なく見送ると、光嚴は深い溜め息をつきながらこう呟いた。
「…愚か者が…。こうなってはもう仕方がない。計画より早いが、撤退するとしよう」
そう言うと光嚴は急いで手紙をしたため、それを鳩の足へと巻き付け空へと放った。
それをそっと見届けると、暁鴉は素早く天井裏から外へと飛び出し、その行方を追う。
目を凝らすと鳩は何もない空を、ただひたすら一直線に、月鷲の方へと向かっていた。
それを眺めながら、暁鴉が不敵にこう呟く。
「…結構離されたけど、これはもう追うしかないね。さぁて、何が出て来るかな…?」
フフンと独りごちると、暁鴉は勢い良くその場から駆け出し、口笛で愛馬を呼び寄せる。
するとよく慣れた愛馬は、暁鴉の意図を読み取り、すぐさまその場へと駆け付けた。
それと一歩二歩と並走し、軽やかに馬上へと上がると暁鴉はそのまま馬を疾走させる。
途中砦の門があったが、それも門番に合図を送って開けさせると、暁鴉はまったく勢いを殺す事なくそのまま草原へと駆け出した。
その間も暁鴉の目は、常に鳩を見失わないようその行き先を注意深く見守っている。
しばし走り続けると、鳩はあっさりと国境の壁を越え、月鷲側へと飛び去った。
『まずいね…。国境を越えられたか…』
そう思ったが、ふいにその鳩が不自然な動きで羽をバタつかせ、いきなり壁のすぐ向こう側へと堕ちていく。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、ほどなくして壁の向こう側から、その鳩を手にした男がこちら側へと戻ってきた。
それを見た途端、暁鴉が思わず破顔する。
「…なんだ、嘉魄か。また良い所に居てくれたね、あんた」
そう言って声をかけると、相変わらず言葉少なに嘉魄が暁鴉に確認する。
「お前がこれを追ってるように見えたんで、捕らえてみたが…それで良かったか?」
「ああ、助かるよ。多分そいつが面白い手紙を付けてるはずさ」
そう言って暁鴉は素早く馬から飛び降りると、嘉魄が捕らえた鳩から手紙を外し、丁寧にその中身を確認した。
そして予想通りと言った口調で、こう呟く。
「…やはりそういう事か」
「何が書いてあった?」
そう問われ、暁鴉はニヤリと勝ち誇ったようにこう告げる。
「嘉魄、やっぱり主の勘は当たってたみたいだよ。読んでみな?」
そう言って手渡された手紙に素早く目を通し、嘉魄は無言でそれを折り畳む。
「…主に報告するしかないな。こちらもこれに絡んで、少々厄介な事になった」
「厄介って…?」
「月鷲の御仁が主との会談を希望してる」
ボソッと嘉魄が告げた内容に、さすがの暁鴉も声もなく目を見張った。
まだまだ宴たけなわといった感じで周囲が盛り上がり続ける中、ずっと鴻夏を腕の中に閉じ込め続けていた璉は、ふと誰かの視線を感じそちらへと目線を向けた。
すると先程調査に出した嘉魄と暁鴉が、帳の影から無言で璉に合図を送っている。
それをさり気なく確認し、璉はようやく腕の中の鴻夏を解放した。
「れ、璉…?」
急に解放され驚く鴻夏の耳元で、璉は鴻夏にだけ聞こえる声でそっと囁く。
「…嘉魄に呼ばれました。申し訳ありませんが、少しだけ席を外しますね…。鴻夏はここで待っていてください」
そう言い終わると、璉はゆったりとした長衣を靡かせ、スッとその場から姿を消す。
宴の最中に璉を呼び出すくらいだから、おそらくよほどの緊急事態が起こったのだろうという事はわかったが、それが一体何なのかまでは鴻夏にはわからなかった。
とりあえず璉の指示通りに大人しく待っていると、急に先程までは感じなかった鋭い視線が、あちこちから容赦なく鴻夏を貫く。
それと共に悪意に満ちた囁きが、さざめきのように鴻夏の耳まで届いてきた。
「あの方が『白龍』の奥方…?」
「確かに見目麗しい方だけれど、どう見てもまだお子様じゃない…」
「仕方ないわよ。だって政略結婚でお迎えになった方ですもの」
「あんな細い方じゃ、抱き心地も悪いでしょうし、お子様もちゃんと産めるのやら…」
ボソボソといくつかの声が、聞こえよがしに鴻夏の事を貶し始める。
それに対し『聞こえてるんだけど…』と思いつつ、鴻夏はそっと声のする方を伺った。
するとそこには、女性らしい豊満な肉体を持った美女達が、チラチラと鴻夏の事を伺いながらキツい視線を投げかけてくる。
どの女も容姿は鴻夏に遠く及ばないものの、皆それなりに美しく魅惑的な女達であった。
『これはやっぱり、昔 璉と関係を持った方々…なのよね…?璉の奥さんが私だってのが気に入らないんだろうけど、でも私の方だって気に入らないんだけどね…』
少々ムッとしながらも、売られた喧嘩は買うとばかりに、鴻夏はわざとそちらの方に視線をやり、ニッコリと笑ってみせる。
すると一瞬、戸惑う雰囲気を見せたものの、女達はお互い顔を見合わせ、そして意を決したように鴻夏の方へと近付いてきた。
「お妃様…でいらっしゃいますね?少しお話させていただいても…?」
女の一人が、挑戦的に鴻夏に声をかける。
それを受けて、鴻夏は表面上は優雅に微笑みながらこう答えた。
「ええ、よろしいですよ」
「ありがとうございます。まずは御成婚おめでとうございます。『白龍』は南方領の者にとっては、誰よりも大事な御方…。『白龍』の幸せは私達の喜びでもあります」
「…ありがとうございます。私も陛下に嫁げて、本当に良かったと思っております」
出だしはお互い無難な事を語りつつ、相手が何を思っているのか、どういった人物なのかを無言で探り合う。
どの女もまるで品定めをするかのように、頭のてっぺんからつま先に至るまで、じっくりと鴻夏の姿を眺めていたが、そのうちの何人かが少し悔しそうに顔を背けた。
おそらく自分と鴻夏の容姿とを比較し、勝手に負けた気になったのだろう。
今まで自分の容姿に関し、さほど関心がなかった鴻夏だったが、この時ばかりは母譲りのこの容貌にひどく感謝した。
些細な事ではあるが、璉の隣を維持するために、この顔が役立つのなら利用するまでだ。
どう頑張っても自分は女性にはなれないのだから、彼女達のように豊満な肉体を持つ事も、好きな相手の子供を産む事も出来ない。
女性に生まれている時点で、すでに彼女達の方が何倍も璉にふさわしい位置にいる。
だからこそ鴻夏は、数少ない自分の持ち札を最大限に活かす必要があった。
もちろん鴻夏がそう思っている事など、彼女達は知る由もないのだろうが、鴻夏は鴻夏なりに結構必死なのである。
『私が彼女達に勝てるのは、家柄の良さだけだもの…。女性ではないというだけで、最初から不利な立場に居るのだから…』
そう思いつつも、鴻夏は完璧に平静を装いながら、毅然とした態度で女達を見つめ返す。
すると女のうちの一人が、急に吹っ切れたように、鴻夏に向かってこう尋ねてきた。
「お妃様は…政略結婚で『白龍』に嫁がれておられますが、実際のところ『白龍』の事をどのように思っておいでですの?」
「…武と智を兼ね備えた、尊敬すべき方だと思っております。また私のような者にも御心を砕いて下さる、とてもお優しい方です」
皇帝の正妃としては模範的な回答だったが、相手はそうじゃないとばかりに、両手を肩の位置まで引き上げ、盛大に溜め息をつきながら首を横に振る。
そして実に挑戦的な態度で、鴻夏に向かってこう宣った。
「そういう意味ではありませんわ。お妃様ご自身のお気持ちの話です。失礼を承知でお聞きしますが、お妃様はちゃんと『白龍』の事を想っておいでですの?」
もっともな問いかけではあったが、その裏には自分達の方がずっと璉の事を想ってると言いたいのは明らかだった。
それに対しどう答えるべきなのかを一瞬迷った鴻夏は、それっきりその答えを言う機会を逸してしまった。
何故なら女達の態度を見かねた暁鴉が、突然その場に割って入って来たからである。
「…ちょっとあんた達、醜い嫉妬はそこまでにしてくんないかな?」
鴻夏をさり気なく背後に庇いながら、暁鴉は堂々と正面から女達を睨みつけた。
すると知己であったのか、鴻夏を取り囲んでいた女達から次々と驚きと怒りの声が飛ぶ。
「暁鴉…っ⁉︎あんた、なんで…」
「そっちこそ、引っ込んでてくれないかしら?私達は今、お妃様とお話ししてるのよ」
「それとも何?あんた出世のために、お妃様に取り入っておこうっていうわけ?」
暁鴉に対し毒々しい言葉を吐く女達に、鴻夏はこれ以上ないほど激しい怒りを覚える。
自分の事はともかく、大事な暁鴉が女達に蔑められるのは我慢がならない。
そして怒りのあまり思わず立ち上がりかけた鴻夏は、何故かそれを暁鴉自身に制された。
暁鴉はスッと手をかざして鴻夏の動きを止めると、少しだけ鴻夏の方へと振り返り、安心させるかのようにフッと優しく微笑む。
そしてすぐに女達の方へと向き直ると、暁鴉は彼女らしく堂々とした態度でこう言った。
「…まったく、その嫉妬で曇った目を何とかしなよ?このあたしが、出世なんか気にするわけないだろ。あたしは大事な鴻夏様が、あんた達なんかに蔑まれてんのが、我慢ならないんだよ」
「暁鴉…」
まさか自分と同じ事を、暁鴉も思っているとは思わず、鴻夏の口から驚きの声が漏れる。
しかし女達の方はそれが気に入らなかったらしく、怒りもあらわに暁鴉の周囲を取り囲むと、容赦なく言葉で責め立てた。
「ちょっと!失礼な事を言わないでくれる?私達はお妃様とお話ししていただけで、特に何もしてないわよ」
「そうよ、そうよ!南方領の恩人である『白龍』のお妃様に、私達が何かするとでも?」
「そもそもお妃様とあんたに何の関係があるっての?部外者は引っ込んでてくれない?」
そう言われ、暁鴉は怯む事なくこう告げる。
「…関係?あるよ。あたしは鴻夏様の『影』だからね。鴻夏様の身も心も護るのが、あたしの仕事さ。それをさっきから聞いていれば、鴻夏様がお優しいのをいい事に言いたい放題…。あんたらみたいなのはね、礼儀も性根もなってない恥知らずって言うんだよ」
「何ですって⁉︎」
さすがにそれは言い過ぎではないかと思ったが、暁鴉の方はまったく気にしてない。
相手の女達の精神力も相当なものだが、暁鴉のそれはその遥か上をいっている気がする。
そしてすでに収拾がつかなくなってきた事態に、どうしたものかと頭を悩ませていると、ふいにこの騒ぎの元凶とも言える男が、ふわりと背後から鴻夏を抱き締めてきた。
そして自分のせいで起こっている騒動であるにも関わらず、彼は実にのんびりとした口調でこう呟く。
「…せっかく皆が宴を楽しんでいる最中に、随分と剣呑ですねぇ…。一体、何事です?」
「れ、璉っ⁉︎」
「『白龍』⁉︎」
鴻夏とほぼ同時に、周囲の女達からも一斉に驚きの声が上がる。
一体いつ戻ってきたのか、まったく気配も感じさせずにその場に現れた璉は、さも当然のように鴻夏を腕の中に閉じ込めると、チラリと女達に冷ややかな視線を向けた。
途端にビクッと周りを取り囲んでいた女達が、気圧されたように一歩後ろへと後退る。
璉が自分の背後に居るため、鴻夏自身はよくわかっていなかったが、凍るように冷たい視線を受けて、女達は声もなく蒼ざめた。
そしてそんな女達にダメ押しをするかのように、璉が静かにこう告げる。
「…下がりなさい。これ以上、私の妃に無礼は許しません」
その一言で充分だった。
璉の不興を買ったと肌で感じた女達は、ガタガタと震えながらも一礼をすると、蒼白な顔でその場から逃げ去ってしまう。
まるで蜘蛛の子を散らすように、我先にとその場から居なくなった女達を見送ると、暁鴉は璉に向かって恨みがましい一言を放った。
「出て来るのが遅いよ、主?自分の仕出かした事の後始末くらい、ちゃんとしなよ」
「…暁鴉が居ましたからね。私が出ると余計に拗れるかと思い、しばらく我慢していたのですが…思ったより愚かな人達でしたね」
そう冷たく告げると、璉は優しく鴻夏の額に口付けながら素直に謝る。
「すみません、鴻夏。嫌な思いをさせてしまいましたね…」
「れ、璉…あの方達ってやっぱり…?」
恐る恐る璉に向かってそう尋ねると、彼は事も無げにこう答える。
「…昔 南方領に居た頃、相手をした事のある方々ですね。『抱いて欲しい』と迫られて、まぁ特に断る理由もなかったですし、ご希望通りに相手をした覚えがあります。でも恋人にした覚えはないですし、誰か一人を特別扱いした事もないですよ」
男としてはかなり最低な発言をしながらも、璉は悪いのはあちらだと言わんばかりに、軽い溜め息をつく。そして何も言えずに固まる鴻夏を他所に、璉はそれでもう話は終わったとばかりに、別の内容を語り出した。
「それより少々面倒な事になりました」
「面倒な事…?」
「はい。詳細は後で説明しますが、明日はちょっと月鷲側に出掛けてきます」
「は⁉︎」
ニコリと微笑みながら、さらりと壁を越えて隣国へ行って来るという璉に、『仮にも皇帝の地位にある者が、そんな簡単に他国に侵入していいの⁉︎』と心の中で突っ込んだが、続けて璉は更に衝撃的な事を語り出す。
「実は鴎悧帝に呼び出されまして…。私の方も直接会って話したかった事があるので、この機会に会って来ようかと…」
「…っ⁉︎」
思わず叫びそうになったのを、自らの手で口を塞いで何とか堪えた鴻夏は、あまりの事の重大さに呆然とする。
璉は何でもない事のように語っているが、非公式とは言え皇帝同士による直接会談など、一体何事が起こったのかと青くなる。
とりあえず周りを見渡し、鴻夏は今の話の内容が聞かれていなかったかを確認したが、宴も終盤とあって、皆はお互いの会話に夢中でまったくこちらには気付いていなかった。
それを密かに確認し、鴻夏がホッとした表情で胸を撫で下ろしていると、璉がその様子を見ながら穏やかにこう告げる。
「…大丈夫ですよ。そこまで深刻な話ではないです。ただそろそろお互いの陣営に巣食う膿を、出す頃合いだなってだけの話で…」
「お互いの…膿…?」
「そう…。その絡みで今回の視察には、樓爛も西方領から呼び寄せています。明日には合流出来るとの連絡が来てますので、鴻夏も明日の夜には会えますよ」
相変わらず璉の表情からは何も読み取れなかったが、わざわざ西方領から樓爛まで呼び寄せているとなると、実は結構大きな話なのではないか?という気がした。
この南方領で何が起こっているのかはわからないが、璉が無理を押してまでここに来たのは、おそらくその後始末のためである。
それが何なのかが気になり、その後 鴻夏はまったく宴に集中出来なかったが、周囲は我関せずで最後まで大盛り上がりだった。
そして早く終われと念じ続け、ようやく宴から解放され、璉と共に用意されていた部屋へと戻った鴻夏は、今度はすっかり忘れていた問題に再び焦る事になるのだが、この時の鴻夏は完全にその事を失念していたのだった。
その一方、先ほど伯父である光嚴と交渉決裂した暁刃は、友人である觜絡と共に、宴の席から上座に座す皇帝『白龍』を燃えるような目で睨みつけていた。
年若い妃を腕に抱き、穏やかに杯を傾けるこの優男が、何故こうも砦の皆の尊敬と愛を受けるのか…まったくもって理解出来ない。
しかも南方領で武勇を馳せる、夜刃将軍までこの男には心酔し切っているようで、先ほどからまるで少年のように頰を紅潮させ何事かを熱心に語りかけ続けている。
その父親の姿を、暁刃は苦々しく思っていた。
そしてその気持ちを代弁するかのように、隣に座る觜絡がポツリとこう呟く。
「何で親父達は、あそこまで『白龍』に心酔してるのかなぁ?どう見ても見た目は普通…だよな?」
「ああ、そうだな」
「華やかな容姿ってわけでもないし、体つきもごく普通…。隣に居る暁刃の親父の方がよっぽど強そうなのに、なんであんなにペコペコしてるんだか…」
「まったくだ。あんな俺でも勝てそうな優男に、なんで親父はああも媚び諂うのか…」
ギリッと悔しそうに口唇を噛み締め、暁刃は心底腹ただしい思いで『白龍』を睨む。
長い亜麻色の髪を軽く一つに纏め、青を基調とした長衣を身に付けているその男は、こうして上座に座っていなければ、その存在に気付かないほど印象が薄い。
体型も中肉中背、容姿も別に整っていないわけではないが、野に咲く名もない花のようにひっそりと優しげで、相手の気持ちを鼓舞させるような華々しい雰囲気はない。
隣国 月鷲の皇帝は、『金獅子』の渾名を持つ筋骨逞しい美丈夫で、容姿も浅黒い肌に黄金の髪、黄金の瞳という実に華やかな美男。
ただそこに居るだけで、圧倒的な存在感を放ち、敵ながらまさに仕えるに足る皇帝らしい皇帝だというのに、この差は一体何なんだと暁刃は文句を言いたくなる。
そして暁刃は、憎々しげに自国の皇帝を睨み付けながら、心の中で叫んでいた。
『この男のどこが各国に名を轟かせる武帝だって言うんだ?絶対、優秀な部下達に担ぎ上げられてるだけで、本人自体は大した事ないってやつだろう?』
そう暁刃は思っていたが、それこそが大きな間違いであった事を、この時の彼はまだ知らなかった。
そして何も知らない愚かな若者達は、分不相応な理想を掲げて語り合う。
「…觜絡。俺達でこの砦を変えよう」
「ああ、暁刃。俺も他の仲間達も、皆がお前を信じてる。どこまでも付いていくよ」
ニッと笑いながら、少年達は手を叩き合う。
キラキラとした少年特有の希望に満ちた瞳が、自分達こそが正しいのだと信じていた。
けれど彼等は知らなかった。
汚い大人の悪意は、そんな彼等の純粋な気持ちさえも利用するのだという事を。
その事を彼等が思い知るのはまだ後の事で、現時点ではまったく気付いていなかった。
嘉魄は外で月鷲側の動向を、暁鴉は砦の中で不審者もしくは内通者を探し出す。
璉の読みでは、砦の中に何らかの形で月鷲側の内通者が居り、そのせいで南方軍側の対応が後手になっているのでは…との事だった。
「…あんまり考えたくない事態だけど、こういう時の主の勘って外れないんだよねぇ…」
ボソッと誰に聞かせるでもなくそう呟くと、暁鴉は手始めに南方軍の上官達の部屋が立ち並ぶ領域へと足を踏み入れる。
おそらく敵にとって有益な情報が手に入る人物となると、下っ端などではなく、それなりの地位に居る者でないと無理な話だ。
しかも南方軍側の作戦や動向が、敵に筒抜けになっている可能性が高いという事でもある。
『さてどこから行くかな…?』
心の中でそう考えながら、屋探し対象の顔を思い浮かべ、すぐに暁鴉は決断する。
…やはり偉い人順で確認すべきだろう。
裏切り者の身分が上であればあるほど、事態はより深刻なものとなる。
事と次第によっては、この南方領全体を揺るがす事態になり兼ねないと思いながら、暁鴉はまず夜刃将軍の部屋へと足を踏み入れた。
夜刃将軍は古くからの璉の部下で、おそらくこの南方軍の中でも一、二位を争うほど盲信的に璉に心酔している将軍である。
だが彼自身も知らないまま、利用されている可能性もあるため、一通り調べてはみたが、それらしいものは何も見つからなかった。
少し安心し、次は隣の副官の部屋の方へと移ろうとした暁鴉は、思いがけず感じた人の気配に、慌てて手近な部屋へと滑り込む。
しばらくすると靴音も高らかに、二人の人物が話しながらこちらに向かって歩いてきた。
「…まったく、この砦の連中の『白龍』贔屓にはまいるよなぁ。伝説的な英雄だか知らんが、どうせ誇張された与太話だろ?」
「だよなぁ。あんな妃にデレデレの優男が、一体どうやって『月鷲の金獅子』と渡り合えるってんだよ?しかも当時はまだ十代だったってんだから、絶対話がおかしいって」
そう言って、堂々と自国の皇帝をこき下ろしつつ歩いて来たのは、まだ幼さの残る十代半ばと見られる少年二人だった。
璉が皇帝に立って三年、その前にも三年ほど彼は消息不明になっているので、少年達の年齢を考えると、南方領での『風嘉の白龍』の活躍をあまり知らない世代なのだろう。
確かに一見しただけで、璉の真価まで見極めるのは難しいが、常識的に考えてもこの少年達の言い様は明らかにおかしかった。
『どうも主の事をよく思ってない感じだね…。まさかよりによって、南方領の中からこんなのが出てくるとはね』
呆れと驚きとを交えつつ、暁鴉がそのまま黙って様子を伺っていると、どちらかというと気弱そうな少年の方がこう呟く。
「それはともかく、嫌な時に視察に来たよな…。毎年この時期に来てるとはいえ、今年は少し早くないか?」
「…おい、まさか何か感付かれてるとでも言うのか?普段中央にしか居ない奴が、どうやってこの南方領で起こってる事に気付けるって言うんだよ?」
「そ…れはそうなんだけど…ほら皇家にはお抱えの『影』達が居るそうじゃないか。そいつらが各地に散ってて、常に中央に情報を送ってるって噂だから、あるいは…」
そう不安げに呟いた相手に、もう一人の少年が、フンと鼻を鳴らしながらこう答える。
「…何だよ、臆病風に吹かれたのか?俺達で理想を実現するために、何でもやるって誓ったのは嘘だったのかよ?」
「そ…うじゃない!そうじゃないけど…っ!で、でもホントにこれが皆の為になってるのかが、最近分からなくなってきて…」
戸惑いながらそう話す相手に、もう一人の少年が、それを断ち切るように強く言い放つ。
「觜絡!今更そんな事言うなよ?俺とお前は一心同体、今更後には引けないんだ。いいか?これが上手くいったら、絶対に砦の皆の生活が楽になる。俺を信じろ!」
「わ、わかった。で…でも約束してくれ。絶対に砦の皆を裏切らないと…」
「ああ、約束する。絶対だ」
「…それならいい…」
觜絡と呼ばれた少年は、まだ不安げではあったものの、相手を信じる事にしたようだ。
それを影から伺いながら、暁鴉が静かに二人の少年の顔を確認する。
『あれは夜刃将軍の息子の…暁刃…だったか?そうなるとあちらの觜絡とかいう少年も、側近の誰かの息子の一人か…』
もう一人の少年の顔には覚えがなかったが、この辺りに居たという事は、間違いなく南方軍の上層部の誰かの身内という事になる。
思いがけずビンゴを引いたような気分になりながら、暁鴉は少年達に気付かれないよう、そっと様子を伺い続けた。
すると少年達は暁鴉の存在にまったく気付かないまま、廊下を奥の方へと進んで行く。
その行き先を静かに見守っていると、彼等はある部屋の前で立ち止まり、そのまま迷う事なくその扉を叩いた。
そして中から応えがあったのか、彼等は周りを警戒しつつも、その中へと入っていく。
静かにその扉が閉まるのを確認し、暁鴉はそっと隠れていた部屋から廊下へと滑り出て、彼等の入っていった部屋を確認した。
そして暁鴉はすぐに微妙な顔で眉を顰める。
そこは夜刃将軍の兄、光嚴の部屋であった。
彼は武勇を馳せる弟と違い、身体が丈夫ではなかったために、武人にすらなれなかった男だった。
そしてその代わりに文官となり、この砦の経理関係を一手に担っていると聞いている。
『砦の金庫番と血気盛んな若者達…ね。どうにも嫌な組み合わせだね…?』
そう考えた暁鴉は、彼等が消えた光嚴の部屋を、そのまま探ってみる事にした。
もちろん中に人が居るのがわかっているため、手近な場所から天井裏へと上がり、天井伝いに目的の部屋へと辿り着く。
そっと天井板の継ぎ目から下の様子を伺ってみると、先程の少年達が一人の中年の男に対して、喰ってかかっていた。
「納得出来ません、伯父上!何故せっかくの機会を逃すのです⁉︎」
「少し落ち着け、暁刃。物事を為すには細心の注意を払う必要があるのだ。『白龍』が滞在している今は、無理をしない方がいい」
「『白龍』、『白龍』って、警戒し過ぎなんじゃないですか?あんな妃に夢中なだけの優男、何を怖れる必要があるのです⁉︎」
そう言い切った少年 暁刃に、対峙している中年の男はゆっくりと首を横に振る。
「…お前達はあの男の恐ろしさを知らんから、そう言えるのだ。あれは人の域を超えた化物だ。まさに神憑り的な強さで、征服される寸前だった南方領を救い、あの月鷲に和睦を持ちかけさせた。そして三年前は、あの未曾有の大乱をも鎮圧して退けたのだ。無理をして何か気付かれようものなら、今までの努力がすべて水の泡になる。今は堪えよ」
そう言って中年の男は重々しく窘めたが、あまり若者達の共感は得られなかったようだ。
そして実にあっさりと暁刃はこう答える。
「…伯父上はお年のせいか、臆病風に吹かれておいでのようだ。『白龍』がどうしたというのです?すべて過去の栄光でしょう?」
「暁刃!早まるでない!」
「いいえ、伯父上!冬の間は取引が出来なくなるのですよ?今のうちに多少無理をしてでも回を重ねておかないと、今年の冬は越せないかもしれません。私はこの砦の者達全員を守りたいのです。誰も飢えさせたくない」
「…暁刃…」
暁刃の隣に立つ少年、觜絡が感動したように熱い視線を送る。
しかし肝心の中年の男、光嚴には何の感動も呼び覚ませなかったようだった。
光嚴は呆れたように深い溜め息をつきながら、重ねて暁刃にこう告げる。
「暁刃、勝手な事は許さん。お前の独りよがりで皆を危険な目に合わせるんじゃない」
「…お断りします。伯父上がいつものように渡りを付けてくれないのなら、俺が一人ででもやります」
「暁刃!馬鹿な事はやめろ。皆の今までの努力を無に帰す気か⁉︎」
そう言って光嚴は止めようとしたが、相手はまったく耳を貸さなかった。
「…失礼、伯父上。これ以上話していても無駄なようだ」
「暁刃!」
バタンという音と共に、若者二人がそのまま部屋から退出する。
それを仕方なく見送ると、光嚴は深い溜め息をつきながらこう呟いた。
「…愚か者が…。こうなってはもう仕方がない。計画より早いが、撤退するとしよう」
そう言うと光嚴は急いで手紙をしたため、それを鳩の足へと巻き付け空へと放った。
それをそっと見届けると、暁鴉は素早く天井裏から外へと飛び出し、その行方を追う。
目を凝らすと鳩は何もない空を、ただひたすら一直線に、月鷲の方へと向かっていた。
それを眺めながら、暁鴉が不敵にこう呟く。
「…結構離されたけど、これはもう追うしかないね。さぁて、何が出て来るかな…?」
フフンと独りごちると、暁鴉は勢い良くその場から駆け出し、口笛で愛馬を呼び寄せる。
するとよく慣れた愛馬は、暁鴉の意図を読み取り、すぐさまその場へと駆け付けた。
それと一歩二歩と並走し、軽やかに馬上へと上がると暁鴉はそのまま馬を疾走させる。
途中砦の門があったが、それも門番に合図を送って開けさせると、暁鴉はまったく勢いを殺す事なくそのまま草原へと駆け出した。
その間も暁鴉の目は、常に鳩を見失わないようその行き先を注意深く見守っている。
しばし走り続けると、鳩はあっさりと国境の壁を越え、月鷲側へと飛び去った。
『まずいね…。国境を越えられたか…』
そう思ったが、ふいにその鳩が不自然な動きで羽をバタつかせ、いきなり壁のすぐ向こう側へと堕ちていく。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、ほどなくして壁の向こう側から、その鳩を手にした男がこちら側へと戻ってきた。
それを見た途端、暁鴉が思わず破顔する。
「…なんだ、嘉魄か。また良い所に居てくれたね、あんた」
そう言って声をかけると、相変わらず言葉少なに嘉魄が暁鴉に確認する。
「お前がこれを追ってるように見えたんで、捕らえてみたが…それで良かったか?」
「ああ、助かるよ。多分そいつが面白い手紙を付けてるはずさ」
そう言って暁鴉は素早く馬から飛び降りると、嘉魄が捕らえた鳩から手紙を外し、丁寧にその中身を確認した。
そして予想通りと言った口調で、こう呟く。
「…やはりそういう事か」
「何が書いてあった?」
そう問われ、暁鴉はニヤリと勝ち誇ったようにこう告げる。
「嘉魄、やっぱり主の勘は当たってたみたいだよ。読んでみな?」
そう言って手渡された手紙に素早く目を通し、嘉魄は無言でそれを折り畳む。
「…主に報告するしかないな。こちらもこれに絡んで、少々厄介な事になった」
「厄介って…?」
「月鷲の御仁が主との会談を希望してる」
ボソッと嘉魄が告げた内容に、さすがの暁鴉も声もなく目を見張った。
まだまだ宴たけなわといった感じで周囲が盛り上がり続ける中、ずっと鴻夏を腕の中に閉じ込め続けていた璉は、ふと誰かの視線を感じそちらへと目線を向けた。
すると先程調査に出した嘉魄と暁鴉が、帳の影から無言で璉に合図を送っている。
それをさり気なく確認し、璉はようやく腕の中の鴻夏を解放した。
「れ、璉…?」
急に解放され驚く鴻夏の耳元で、璉は鴻夏にだけ聞こえる声でそっと囁く。
「…嘉魄に呼ばれました。申し訳ありませんが、少しだけ席を外しますね…。鴻夏はここで待っていてください」
そう言い終わると、璉はゆったりとした長衣を靡かせ、スッとその場から姿を消す。
宴の最中に璉を呼び出すくらいだから、おそらくよほどの緊急事態が起こったのだろうという事はわかったが、それが一体何なのかまでは鴻夏にはわからなかった。
とりあえず璉の指示通りに大人しく待っていると、急に先程までは感じなかった鋭い視線が、あちこちから容赦なく鴻夏を貫く。
それと共に悪意に満ちた囁きが、さざめきのように鴻夏の耳まで届いてきた。
「あの方が『白龍』の奥方…?」
「確かに見目麗しい方だけれど、どう見てもまだお子様じゃない…」
「仕方ないわよ。だって政略結婚でお迎えになった方ですもの」
「あんな細い方じゃ、抱き心地も悪いでしょうし、お子様もちゃんと産めるのやら…」
ボソボソといくつかの声が、聞こえよがしに鴻夏の事を貶し始める。
それに対し『聞こえてるんだけど…』と思いつつ、鴻夏はそっと声のする方を伺った。
するとそこには、女性らしい豊満な肉体を持った美女達が、チラチラと鴻夏の事を伺いながらキツい視線を投げかけてくる。
どの女も容姿は鴻夏に遠く及ばないものの、皆それなりに美しく魅惑的な女達であった。
『これはやっぱり、昔 璉と関係を持った方々…なのよね…?璉の奥さんが私だってのが気に入らないんだろうけど、でも私の方だって気に入らないんだけどね…』
少々ムッとしながらも、売られた喧嘩は買うとばかりに、鴻夏はわざとそちらの方に視線をやり、ニッコリと笑ってみせる。
すると一瞬、戸惑う雰囲気を見せたものの、女達はお互い顔を見合わせ、そして意を決したように鴻夏の方へと近付いてきた。
「お妃様…でいらっしゃいますね?少しお話させていただいても…?」
女の一人が、挑戦的に鴻夏に声をかける。
それを受けて、鴻夏は表面上は優雅に微笑みながらこう答えた。
「ええ、よろしいですよ」
「ありがとうございます。まずは御成婚おめでとうございます。『白龍』は南方領の者にとっては、誰よりも大事な御方…。『白龍』の幸せは私達の喜びでもあります」
「…ありがとうございます。私も陛下に嫁げて、本当に良かったと思っております」
出だしはお互い無難な事を語りつつ、相手が何を思っているのか、どういった人物なのかを無言で探り合う。
どの女もまるで品定めをするかのように、頭のてっぺんからつま先に至るまで、じっくりと鴻夏の姿を眺めていたが、そのうちの何人かが少し悔しそうに顔を背けた。
おそらく自分と鴻夏の容姿とを比較し、勝手に負けた気になったのだろう。
今まで自分の容姿に関し、さほど関心がなかった鴻夏だったが、この時ばかりは母譲りのこの容貌にひどく感謝した。
些細な事ではあるが、璉の隣を維持するために、この顔が役立つのなら利用するまでだ。
どう頑張っても自分は女性にはなれないのだから、彼女達のように豊満な肉体を持つ事も、好きな相手の子供を産む事も出来ない。
女性に生まれている時点で、すでに彼女達の方が何倍も璉にふさわしい位置にいる。
だからこそ鴻夏は、数少ない自分の持ち札を最大限に活かす必要があった。
もちろん鴻夏がそう思っている事など、彼女達は知る由もないのだろうが、鴻夏は鴻夏なりに結構必死なのである。
『私が彼女達に勝てるのは、家柄の良さだけだもの…。女性ではないというだけで、最初から不利な立場に居るのだから…』
そう思いつつも、鴻夏は完璧に平静を装いながら、毅然とした態度で女達を見つめ返す。
すると女のうちの一人が、急に吹っ切れたように、鴻夏に向かってこう尋ねてきた。
「お妃様は…政略結婚で『白龍』に嫁がれておられますが、実際のところ『白龍』の事をどのように思っておいでですの?」
「…武と智を兼ね備えた、尊敬すべき方だと思っております。また私のような者にも御心を砕いて下さる、とてもお優しい方です」
皇帝の正妃としては模範的な回答だったが、相手はそうじゃないとばかりに、両手を肩の位置まで引き上げ、盛大に溜め息をつきながら首を横に振る。
そして実に挑戦的な態度で、鴻夏に向かってこう宣った。
「そういう意味ではありませんわ。お妃様ご自身のお気持ちの話です。失礼を承知でお聞きしますが、お妃様はちゃんと『白龍』の事を想っておいでですの?」
もっともな問いかけではあったが、その裏には自分達の方がずっと璉の事を想ってると言いたいのは明らかだった。
それに対しどう答えるべきなのかを一瞬迷った鴻夏は、それっきりその答えを言う機会を逸してしまった。
何故なら女達の態度を見かねた暁鴉が、突然その場に割って入って来たからである。
「…ちょっとあんた達、醜い嫉妬はそこまでにしてくんないかな?」
鴻夏をさり気なく背後に庇いながら、暁鴉は堂々と正面から女達を睨みつけた。
すると知己であったのか、鴻夏を取り囲んでいた女達から次々と驚きと怒りの声が飛ぶ。
「暁鴉…っ⁉︎あんた、なんで…」
「そっちこそ、引っ込んでてくれないかしら?私達は今、お妃様とお話ししてるのよ」
「それとも何?あんた出世のために、お妃様に取り入っておこうっていうわけ?」
暁鴉に対し毒々しい言葉を吐く女達に、鴻夏はこれ以上ないほど激しい怒りを覚える。
自分の事はともかく、大事な暁鴉が女達に蔑められるのは我慢がならない。
そして怒りのあまり思わず立ち上がりかけた鴻夏は、何故かそれを暁鴉自身に制された。
暁鴉はスッと手をかざして鴻夏の動きを止めると、少しだけ鴻夏の方へと振り返り、安心させるかのようにフッと優しく微笑む。
そしてすぐに女達の方へと向き直ると、暁鴉は彼女らしく堂々とした態度でこう言った。
「…まったく、その嫉妬で曇った目を何とかしなよ?このあたしが、出世なんか気にするわけないだろ。あたしは大事な鴻夏様が、あんた達なんかに蔑まれてんのが、我慢ならないんだよ」
「暁鴉…」
まさか自分と同じ事を、暁鴉も思っているとは思わず、鴻夏の口から驚きの声が漏れる。
しかし女達の方はそれが気に入らなかったらしく、怒りもあらわに暁鴉の周囲を取り囲むと、容赦なく言葉で責め立てた。
「ちょっと!失礼な事を言わないでくれる?私達はお妃様とお話ししていただけで、特に何もしてないわよ」
「そうよ、そうよ!南方領の恩人である『白龍』のお妃様に、私達が何かするとでも?」
「そもそもお妃様とあんたに何の関係があるっての?部外者は引っ込んでてくれない?」
そう言われ、暁鴉は怯む事なくこう告げる。
「…関係?あるよ。あたしは鴻夏様の『影』だからね。鴻夏様の身も心も護るのが、あたしの仕事さ。それをさっきから聞いていれば、鴻夏様がお優しいのをいい事に言いたい放題…。あんたらみたいなのはね、礼儀も性根もなってない恥知らずって言うんだよ」
「何ですって⁉︎」
さすがにそれは言い過ぎではないかと思ったが、暁鴉の方はまったく気にしてない。
相手の女達の精神力も相当なものだが、暁鴉のそれはその遥か上をいっている気がする。
そしてすでに収拾がつかなくなってきた事態に、どうしたものかと頭を悩ませていると、ふいにこの騒ぎの元凶とも言える男が、ふわりと背後から鴻夏を抱き締めてきた。
そして自分のせいで起こっている騒動であるにも関わらず、彼は実にのんびりとした口調でこう呟く。
「…せっかく皆が宴を楽しんでいる最中に、随分と剣呑ですねぇ…。一体、何事です?」
「れ、璉っ⁉︎」
「『白龍』⁉︎」
鴻夏とほぼ同時に、周囲の女達からも一斉に驚きの声が上がる。
一体いつ戻ってきたのか、まったく気配も感じさせずにその場に現れた璉は、さも当然のように鴻夏を腕の中に閉じ込めると、チラリと女達に冷ややかな視線を向けた。
途端にビクッと周りを取り囲んでいた女達が、気圧されたように一歩後ろへと後退る。
璉が自分の背後に居るため、鴻夏自身はよくわかっていなかったが、凍るように冷たい視線を受けて、女達は声もなく蒼ざめた。
そしてそんな女達にダメ押しをするかのように、璉が静かにこう告げる。
「…下がりなさい。これ以上、私の妃に無礼は許しません」
その一言で充分だった。
璉の不興を買ったと肌で感じた女達は、ガタガタと震えながらも一礼をすると、蒼白な顔でその場から逃げ去ってしまう。
まるで蜘蛛の子を散らすように、我先にとその場から居なくなった女達を見送ると、暁鴉は璉に向かって恨みがましい一言を放った。
「出て来るのが遅いよ、主?自分の仕出かした事の後始末くらい、ちゃんとしなよ」
「…暁鴉が居ましたからね。私が出ると余計に拗れるかと思い、しばらく我慢していたのですが…思ったより愚かな人達でしたね」
そう冷たく告げると、璉は優しく鴻夏の額に口付けながら素直に謝る。
「すみません、鴻夏。嫌な思いをさせてしまいましたね…」
「れ、璉…あの方達ってやっぱり…?」
恐る恐る璉に向かってそう尋ねると、彼は事も無げにこう答える。
「…昔 南方領に居た頃、相手をした事のある方々ですね。『抱いて欲しい』と迫られて、まぁ特に断る理由もなかったですし、ご希望通りに相手をした覚えがあります。でも恋人にした覚えはないですし、誰か一人を特別扱いした事もないですよ」
男としてはかなり最低な発言をしながらも、璉は悪いのはあちらだと言わんばかりに、軽い溜め息をつく。そして何も言えずに固まる鴻夏を他所に、璉はそれでもう話は終わったとばかりに、別の内容を語り出した。
「それより少々面倒な事になりました」
「面倒な事…?」
「はい。詳細は後で説明しますが、明日はちょっと月鷲側に出掛けてきます」
「は⁉︎」
ニコリと微笑みながら、さらりと壁を越えて隣国へ行って来るという璉に、『仮にも皇帝の地位にある者が、そんな簡単に他国に侵入していいの⁉︎』と心の中で突っ込んだが、続けて璉は更に衝撃的な事を語り出す。
「実は鴎悧帝に呼び出されまして…。私の方も直接会って話したかった事があるので、この機会に会って来ようかと…」
「…っ⁉︎」
思わず叫びそうになったのを、自らの手で口を塞いで何とか堪えた鴻夏は、あまりの事の重大さに呆然とする。
璉は何でもない事のように語っているが、非公式とは言え皇帝同士による直接会談など、一体何事が起こったのかと青くなる。
とりあえず周りを見渡し、鴻夏は今の話の内容が聞かれていなかったかを確認したが、宴も終盤とあって、皆はお互いの会話に夢中でまったくこちらには気付いていなかった。
それを密かに確認し、鴻夏がホッとした表情で胸を撫で下ろしていると、璉がその様子を見ながら穏やかにこう告げる。
「…大丈夫ですよ。そこまで深刻な話ではないです。ただそろそろお互いの陣営に巣食う膿を、出す頃合いだなってだけの話で…」
「お互いの…膿…?」
「そう…。その絡みで今回の視察には、樓爛も西方領から呼び寄せています。明日には合流出来るとの連絡が来てますので、鴻夏も明日の夜には会えますよ」
相変わらず璉の表情からは何も読み取れなかったが、わざわざ西方領から樓爛まで呼び寄せているとなると、実は結構大きな話なのではないか?という気がした。
この南方領で何が起こっているのかはわからないが、璉が無理を押してまでここに来たのは、おそらくその後始末のためである。
それが何なのかが気になり、その後 鴻夏はまったく宴に集中出来なかったが、周囲は我関せずで最後まで大盛り上がりだった。
そして早く終われと念じ続け、ようやく宴から解放され、璉と共に用意されていた部屋へと戻った鴻夏は、今度はすっかり忘れていた問題に再び焦る事になるのだが、この時の鴻夏は完全にその事を失念していたのだった。
その一方、先ほど伯父である光嚴と交渉決裂した暁刃は、友人である觜絡と共に、宴の席から上座に座す皇帝『白龍』を燃えるような目で睨みつけていた。
年若い妃を腕に抱き、穏やかに杯を傾けるこの優男が、何故こうも砦の皆の尊敬と愛を受けるのか…まったくもって理解出来ない。
しかも南方領で武勇を馳せる、夜刃将軍までこの男には心酔し切っているようで、先ほどからまるで少年のように頰を紅潮させ何事かを熱心に語りかけ続けている。
その父親の姿を、暁刃は苦々しく思っていた。
そしてその気持ちを代弁するかのように、隣に座る觜絡がポツリとこう呟く。
「何で親父達は、あそこまで『白龍』に心酔してるのかなぁ?どう見ても見た目は普通…だよな?」
「ああ、そうだな」
「華やかな容姿ってわけでもないし、体つきもごく普通…。隣に居る暁刃の親父の方がよっぽど強そうなのに、なんであんなにペコペコしてるんだか…」
「まったくだ。あんな俺でも勝てそうな優男に、なんで親父はああも媚び諂うのか…」
ギリッと悔しそうに口唇を噛み締め、暁刃は心底腹ただしい思いで『白龍』を睨む。
長い亜麻色の髪を軽く一つに纏め、青を基調とした長衣を身に付けているその男は、こうして上座に座っていなければ、その存在に気付かないほど印象が薄い。
体型も中肉中背、容姿も別に整っていないわけではないが、野に咲く名もない花のようにひっそりと優しげで、相手の気持ちを鼓舞させるような華々しい雰囲気はない。
隣国 月鷲の皇帝は、『金獅子』の渾名を持つ筋骨逞しい美丈夫で、容姿も浅黒い肌に黄金の髪、黄金の瞳という実に華やかな美男。
ただそこに居るだけで、圧倒的な存在感を放ち、敵ながらまさに仕えるに足る皇帝らしい皇帝だというのに、この差は一体何なんだと暁刃は文句を言いたくなる。
そして暁刃は、憎々しげに自国の皇帝を睨み付けながら、心の中で叫んでいた。
『この男のどこが各国に名を轟かせる武帝だって言うんだ?絶対、優秀な部下達に担ぎ上げられてるだけで、本人自体は大した事ないってやつだろう?』
そう暁刃は思っていたが、それこそが大きな間違いであった事を、この時の彼はまだ知らなかった。
そして何も知らない愚かな若者達は、分不相応な理想を掲げて語り合う。
「…觜絡。俺達でこの砦を変えよう」
「ああ、暁刃。俺も他の仲間達も、皆がお前を信じてる。どこまでも付いていくよ」
ニッと笑いながら、少年達は手を叩き合う。
キラキラとした少年特有の希望に満ちた瞳が、自分達こそが正しいのだと信じていた。
けれど彼等は知らなかった。
汚い大人の悪意は、そんな彼等の純粋な気持ちさえも利用するのだという事を。
その事を彼等が思い知るのはまだ後の事で、現時点ではまったく気付いていなかった。
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