君に花を飾る〜闇堕ち王子に乱される騎士〜

三ガロンの生乳

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忠誠をあなたに

5.君のかけらを拾う

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 シリルは夜明けと同時に舞踏会場を出た。
 まずは騎士団の宿舎に戻り、軽く湯を浴びて清潔にしてから他の騎士たちと共に朝の鍛錬を行い、朝食を取った。昨夜はほとんど何も食べていないので多めに食事をしたが、朝食の時間からしばらくしてすぐに空腹を感じ始めて首を捻った。
(王都に帰ってからというもの、たびたびこうなる気がする。戦場のひもじい食事から解き放たれて、体が喜んでいるのか…?これに慣れては、次に戦場へ出征した時に辛いかもしれん)

 騎士とはいえ、シリルは軍師職なので書類仕事というのがあった。毎日一定の報告書を読み、国境の戦後処理の進み具合と、捕虜や難民の処遇を検討している軍部と司法院の議事録を確認するのが主だ。
 国境の戦後処理は芳しくない。昨晩は思わぬ騒動もあったが、募金を募る呼びかけも多くの貴族へ投げかけることができた。その募金は聖殿を通じて集められ、軍部や国境の統治部隊へ届けられる仕組みだ。
 いくら集まるのかはわからないが、報告によれば国境付近の小さな村や街には、次から次へと困窮した隣国の難民が押し寄せているとあり、次第に逼迫した状況になりつつあると記されている。金であっても物資であっても、不足は考えられるが余ることはなさそうだ。
 まだ早朝と言っていい時間。静かな朝のひと時に書類を読むのは実に適している。一般の騎士たちはこの時間に馬房の世話をしている。シリルにとっては一人きりで過ごす貴重な時間だった。
 シリルは文字を読むことに集中していたが、朝を喜ぶ鳥の声に混じって無骨な鎧の擦れる音が聞こえてくることに気づいた。顔を上げて椅子の背もたれに体を預ける。
 その足音の主は開け放っていた事務室の扉を「ゴンゴン!」と二、三叩き、溌剌とした笑顔を見せながら現れた。
「やぁ、英雄どの。ひさしぶりだな」
「マルセル…お前だったのか」
 国境で共に戦った同胞の騎士、マルセル・マルタンだ。懐かしい顔の登場に、シリルは驚いた。
 
 マルセルはニッと笑うと、軽い足取りで部屋に入り、無遠慮に椅子を引いてドカンと腰を下ろした。礼儀にうるさい貴族の作法など、この男の前では意味をなさない。赤みが強いブルネットの髪を指で乱暴にかき上げ、挑発するように片眉を跳ね上げる。
「シリル、昨夜は金集めに奔走したそうだな。女嫌いのお前が婦人たちに囲まれてアタフタしていたと、辺境伯から聞いたぞ」
 ニヤつくその顔に、シリルは小さく眉をひそめたが、気心知れた仲間の顔を見ていると、自然と頬が綻んでいく。
「マルセル…私は女嫌いではない。得意ではないというだけだ。お前はいつ国境から戻った? まだそっちの部隊の任期は解かれていないだろう。喋るのがやめられず、よそ見をして負傷でもしたか」
「ははは! いいや、お前の顔がどうにも恋しくてな、たまらず帰ってきた~…と、言いたいところだが違うんだ」
 マルセルは軽口の勢いのまま、手に持っていた封筒を机の上に放った。軍の封蝋が割れている。シリルは手に取りすぐに開封した。
「さっき軍部の参謀役にも届けてきたが、国境から急ぎの報告があってな。転移魔法で持ってきたところだ。辺境伯は昨夜のうちに二回も国境と王宮を飛んでいた…お疲れなのさ。だから俺が代わりにってわけだ」
「昨夜のうちに二回も…。舞踏会の途中で姿が見えなくなったと思ったが、そんな大変なことが起きていたのか? なにがあった」
 辺境伯が直々に動くほどの事態とは、決して穏やかではない。
 シリルが眉を寄せ、書面に目を落とした。マルセルはシリルが全文を読むのを待つつもりはなく、淡々と続けた。
「暴動だ。難民が困窮に耐えかねて、国境近くの城塞都市に塊で乗り込んできた。やつら、食うに困ってるからと言って、王国側の施しが少ないと文句を言ってやがる。隣国は王位簒奪が起きてるらしいし、自国には頼れないと見限ってる。まぁ、生きるために死に物狂いなんだろうな」
 その声には、非難でも憐れみでもない、ただ現実を見据えた兵の冷静さがあった。だが、シリルは言葉を失い、しばし視線を書面に落としたままだった。
「…酷いな。戦争というものは」
「ずっと続くよりマシだ。戦いは終わったんだから徴兵も供出も無くなった。あとは食い扶持があれば完璧。王国の民も難民も、同じだ。みんな、だいたいそんなとこだろ」
 マルセルの口ぶりは軽いが、その背中には、国境という名の最前線で命を守る者の疲労と諦観がにじんでいた。彼の鎧の継ぎ目には、泥が乾いた跡が残っている。休む間もなく、転移魔法で王宮に飛んできたのだろう。
「…王宮にいると、国境の話はあまり入ってこない。そういうわけで、貴族連中も戦後処理などまだまだ他人事だ。地方の領主たちの中には、すでに備蓄に不安を感じている者もいると聞く。中央に窮状を訴えて直訴しようと準備している者も少なからず出てきているのだそうだ」
 シリルは椅子から立ち上がり、窓の外に目をやった。春はすぐそこに来ている。
 暖かな日差しは王都の何万という民が暮らす家々の屋根をあたため、人々を安穏とした空気で包んでいる。しかし彼の瞼の裏には、国境にひきめきあっていた飢えた民の姿がこびりついている。
「私も本来は、内地でぬくぬくと過ごす身分ではないのだがな…。お前が指揮する国境統治部隊は、毎日休まる暇もないだろう? 少し痩せたな」
 マルセルは肩をすくめ、そして初めて、疲れの色を露骨に見せた。
「痩せたのは、飯がまずいせいさ。お前の王都での生活は噂に聞いているが、資金集めをしながら毎晩いい飯を食ってるわりに、騎士団の食堂ではしっかりと三人分食べるそうだな?」
「…人と笑顔で話すのも疲れるのだ。三人分は言い過ぎだが、まぁ、腹一杯食べているのは本当のことだ。お前も食べてきたらどうだ」
「いーや、今食ったら寝ちまうよ。俺は辺境伯が起きたらすぐにトンボ帰りだし…ま、今は話す時間があるだけマシだな。次の報告までは、少し猶予がある」
 その後、二人は近況を報告しあってしばらく共に時間を過ごした。
 騎士同士、戦争が終わったとはいえ、ただの再会では済まなかった。戦場の跡地に燻っていた火の粉が、大きな火事になるような…そんな嵐の予感を感じていた。




王子宮の中庭には、ゆったりとした四阿が建っている。ここを我が物とできるのはごく限られた人物たちだけだった。多種多様な植物が季節ごとに美しさを披露しているが、今はまだ朝晩に寒さを感じる季節…傷心で駆け込んできた人物を慰める花は、まだ咲いていない……。
 

 王子宮の五つの塔が朝日に照らされ、外壁に混じる金剛石がキラキラと輝いている。四阿の床にはこの王国の叡智と繁栄を詰め込んだ豪華な装飾がなされ、五つの塔が照り返した朝日を取り込んでほのかに発光している。その床に膝をつき、髪の長い人影の膝に突っ伏しているのは…皇太子アレクシス・アルノアルマンだった。

 「レクシー。母君はお前のためを思っておっしゃっているのだ…お前も割り切れるようにならなければ」
 皇太子に膝を貸し、謗法の体で慰めているのは大公アーク・ジュリアスである。
 彼の声は静かだったが、その語尾には微かに哀しみが滲んでいた。彼は皇太子の肩に手を置き、支えながら立たせる。皇太子は悲痛な様子で、瞳を閉じたまま俯いており、打ちひしがれていた。
「酷い顔だ…泣いた顔を見たのはいつぶりだろうな。お前が泣くときはいつも決まって、彼に関係することや…自分が思い通りにならない時だ。私はいつも、お前の苦しさをわかってやれるだろう?なんでも良い、気持ちを話してくれ」
 皇太子は大公の言葉に顔を上げ、鼻を啜った。大公は優しくも強いまなざしでその瞳を覗き込んでいる。
 大公は今にも涙を流しそうな皇太子の頬を優しく両手で包んだ。
「私たちが背負うものについては、いつも客観的に考えておかねば…」
 その瞬間――――
「やめてくれ!」
 皇太子がその手を振り払うように後ずさる。
「わかっている。充分、私はこのことについて考えてきたし…耐えてもきたのだ…!」
 声が震え、唇が噛みしめられる。まるで張りつめた糸が今にも切れそうなほどだった。
 皇太子は女王に言い渡された「命令」が受け入れられず感情を昂らせ、言動が制御ができず混乱していた。大公は慰めが少しも響かない皇太子の様子に戸惑い、わずかに息を呑んだ。
 皇太子がこのように感情の制御を失うのは初めてではない…最近では、顕著に表れている「発作」のようなものだった。
 発作の引き金となる物事は、ふたつある。皇太子が求めてやまぬある人物に関係する物事が八割、残りの二割が大公に関係する物事だ。
 しかしこのように皇太子が手のつけられない状態になる時、いつも受け止め役になるのは大公ひとりきりだった。
 皇太子は震える指で己の髪を掴み、苦悩を晴らすことなどできないといった様子で身のうちに渦巻く感情を発露していた。
「四年だ!四年を彼と離れて過ごし、毎夜無事を祈る日々だったのだぞ」
 その瞳には潤んだ光が浮かび、鼻先が赤くなる。振り回すように身振り手振りする拳は小さく震えていた。
「レクシー…」
 大公は言葉を探しながら、四阿の近くでオロオロと様子を見守っている侍従に手を差し出した。
 侍従はすかさず懐からベルベットの小さな箱を出し、大公の手のひらに乗せた。
 大公が蓋を開け中を確認する。侍従にひとつ頷いて見せると、侍従は姿を消し…いよいよ四阿に二人きりとなった。大公の手の中の箱には、金の指輪が朝日を吸い込んで光っていた。
「指輪をちゃんとつけなさい。さぁ、左手をこちらに」
 皇太子はぎこちなく頷くと、震える手を素直に差し出した。大公は差し出された白い手をそっと取り、金の指輪を中指にはめ込む。そのまま両手で皇太子の手を温め、胸に引き寄せる。肩をさすり、皇太子の顔を黙って覗き込んで落ち着くのを待つ。その動きには優しさと、少しの哀願が宿っていた。
「また、この手が届く場所へ戻ってきた…」
 皇太子は大公の両手に包まれた己の手をじっと見つめ、胸の奥から込み上げるものを吐き出すように慎重に言葉を繰り出している。
「もう、腕の中に閉じ込めようとするのを我慢できない。私はこの衝動に抗えないところまでしてしまっているのだ…。もし、彼に拒否されれば…何をするかわからない。そのことばかりが頭を占めていく。このまま狂ってしまうのではないかとさえ、思うのだ」
 その告白には、普段隠されていた皇太子の本心がにじみ出ていた。皇太子の声は掠れて低く、震え混じりだった。
「レクシー、滅多なことを言うな」
 大公は一歩踏み出し、皇太子の震える肩を両腕で包むようにして抱きしめた。勤めて温かい声で、真摯に囁いた。
「弱気になればの思う壺だぞ。まだだ。私の父上は三十年を耐えた。お前は今、始まったばかりではないか…お前は強い。そうだな…?」
 大公がかける言葉には、深い愛情が感じられる。しかし、皇太子は堪えきれないと言ったように顔を顰め涙をこぼしている。
「ルルー…無理だ…」
 皇太子はその腕から逃れるように振り払うと、四阿の柱に額を打ち付け、背を向けた。ガツンと音が鳴る。
「レクシー!」
「私はあと一年…いや数ヶ月も我慢できやしない!彼がユリシーズに微笑むのを見て、目の前が真っ赤になるほど嫉妬してしまった…!」
 皇太子の声は怒りとも苦しみともつかない叫びだった。胸は大きく上下し、編み込んだ髪はほつれ、頬は紅潮している。その姿はまるで、心臓を引き裂かれようとしている獰猛な獣のようだった。

 大公は皇太子の腰に腕を回し、背中を抱きしめた。
「…では、彼に…シリルに話すんだ。レクシー、お前がそんなに苦しいのなら…」
 大公は寂しそうに呟いた。
「シリルがすべて受け入れ、お前の側で支えてくれるのならば…私はお前がしっかりと一人で立てるようになるのを見届けた後に、この指輪を彼に渡しても構わない」
 その言葉に、皇太子はハッとしたようだ。
 背中を抱きしめる大公を振り向き、腰にまわっている大公の腕を強く掴んだ。
 大公の手には…皇太子と同じ金の指輪が光っている。金色のその指輪は、朝日を吸い込みさまざまな色に光っていた。
「それは…それだけは許さない‼︎お、お前がわたしの目の前から去って、知らぬところで粉々になっていくことは…許さないぞ…!」
「レクシー。皆、順番に死ぬのだ」
「いやだ…!順番など知ったことか!お前も私の愛する男の一人なのだぞ!…誰であっても、お前の髪一本ですら掠めとるなど許さん‼︎」

 二人はしばらく、見つめあっていた。
 皇太子は大公の穏やかな瞳を見つめ続けることが辛くなり、ついにみっともなく嗚咽する。

「すまない…すまない、ルルー。お前一人を愛することができたなら…」
「………」
 大公は何も言わなかった。ひとつ頷いて皇太子の腰から腕を解くと、一歩後ずさった。
 皇太子はパッと振り向き、ぶつかるようにして正面から大公を抱きしめ、肩口に齧り付くようにしてさめざめと泣いた。かき抱く腕の力は強く、大公はそこから逃れられなかった。
「我々のことを、シリルにすべて打ち明ける他あるまい…女王もそう言っている。彼にも知る権利があり、選ぶことが許されているのだから…」
「シリルにすべてを…?いいや、無理だ‼︎」
 皇太子はバッと顔をあげ、大公を見つめる。
「シリルは私と同じように、私を愛しはしまい…」
 その相貌には混乱と不安、怒り…精神の安定から離れた感情が浮かんでいる。
「こんなことは狂ってる。彼が私をどんな目で見るか…おそろしくてたまらない」 
 大公は嘆息すると脱力し皇太子に体重を預けた。指輪…特殊な魔術がかけられたこの指輪が皇太子を落ち着かせるまで、彼の背を優しく撫で続け、慰めた。



 シリルはマルセルと別れてすぐに、王子宮の中庭へと足を速めた。目指すは、庭園とも表現できる中庭の中心にある四阿だ。
騎士団の宿舎から王宮の深部までは、半刻も歩けばたどり着く距離だった。
 王族の私的な領域に足を踏み入れることが許されている者は、決して多くない。だがシリルは、皇太子の夜のサロンに招かれる以前から、この王子宮の中庭で遊んでいた。勝手知ったる様子で、外宮から王子宮の東棟へと軽やかに入っていく。
エントランスを抜け、中庭に面して開け放たれた回廊を歩いていたとき──
 ちょうど庭へ降りようとしたその時、西棟の近くにある薔薇の植え込みの側に、見知った後ろ姿を見つけた。
(あれは…第二王子?)
 長身でありながら、どこか繊細な印象を与える細い背中。引き締まった腰にはしなやかな強さが宿り、長い手足は立っているだけでも絵になる。そして、肩甲骨のあたりで揃えて切られた長い黒髪が、朝の日差しを受けて、微かに艶めいていた。
「…っ、第二王子殿下!」
 思わず声が出てしまったことに、シリルは自分でも驚いた。慌てて姿勢を正し、数歩、控えめに歩み寄る。
「王子宮にいらっしゃるとは思いもせず…つい、お声をかけてしまいました。薔薇を手入れしておられたのですね」
 振り返った第二王子は、柔らかく笑んだ。けれどその眼差しには、どこか遠くを見るような静けさがあった。
「ええ。この薔薇は、毎年咲くのが少し早いのです。まだ肌寒い季節に、一度だけ魔力を与えて、肥料代わりに栄養をつけてやっていました」
「…にお住まいだと伺っていましたが、昨夜は舞踏会のあと、こちらでお休みだったのですか?」
 シリルは言葉を選びながら問いかける。なるべく平静を装っていたが、声にはどこか緊張がにじんでいた。
「いいえ。通常通り、別棟に戻りましたよ。でも、私はあまり眠りを必要としませんので…夜明けから昼餐時までは、庭で過ごすことを許されているのです」
 静かで儚げな様子で彼は答えた。薔薇の葉をそっと撫でながら。
「ここ数日、温かい日差しが続いていますから。薔薇の様子が気になっていたのです」
「そうだったのですか…」
 少しの間が空き、シリルが問いかける。
「…殿下は…地下に入られるのはお寂しいのでは…」
「シリルは、兄上のご用事ですか?」
 唐突に話題を変えられ、シリルは軽くたじろいだ。
「え、ええ…そうです。四阿でお待ちのはずで…」
「夜通し舞踏会で過ごしたあと、朝食の時間を少し過ぎたくらいの時刻に呼び出されても、溌剌として会いに来るなんて……頼もしい友ですね」
「…ライズ?」
 その名を呼ぶと、第二王子──ライズの肩が、わずかに揺れた。
「…っ」
 声にならない想いが、彼の瞳に一瞬浮かんでは消えた。
「…また、親しくお話ができるようになると良いのですが。王宮の地下へ奉仕に入られても、少しは地上に出てこられるのですよね」
「いいえ。それはほとんど無理でしょう」
 第二王子は小さく首を振る。その声は冷静で、そしてどこか決意めいていた。
「そう…ですか」
 シリルの胸に、淡い痛みが差す。
「でも…」
 第二王子の声が、少し震えた。独り言のようなかすかな囁き。
「あなたが粉々になってしまう前に、なんとか…」
「え…?私が何か?」
 シリルが不安そうに問い返すと、ライズは彼から目をそらし、ゆっくりと息を吐いた。
「…行ってください。兄上の元へ。何を聞いても、あなたは兄上を選ぶでしょうから。心配いりません」


 シリルは第二王子から少しだけだが、はっきりとした拒絶を感じ取った。もう話を切り上げるべきなのだろう。
「では…また」
「ええ」
 シリルはどこか腑に落ちないまま、その場を立ち去った。

 すこし小走りで四阿を目指す後ろ姿を、第二王子は暗い瞳で見ていた…。
「シリル。あなたはきっと、兄上を…選ぶ」
 それは、確信のようで、願いのようでもあった。
「地下に沈む私を忘れて、兄上と仲睦まじく過ごし……やがて、あなたのカケラが王宮の地下の湖に落ちてくるようになり、そのカケラを、私が拾うようになる──」


「そんなのは、嫌だ…」
 第二王子は、声を絞り出すように言った。その指先が、まだ咲きかけの薔薇のつぼみにそっと触れる。けれど、彼の目は激しい感情に揺らぎ、目の前の蕾を見てなどいない。


 
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