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転の流星
職人
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上へと吸い込まれた扉は、ボレアリス達が中ヘ入ってしばらくすると、独りでに降りてきてきっちりと閉まった。
建物の中は人がいるにしては異様に暗く、換気を行っていないのか、湿気と埃っぽい匂いが充満している。
「あのー、お邪魔しまーす……」
シェアトが何処にいるとも知れない住人に向かっておずおずと挨拶をする。
それに応えるかのように、奥の方から何か電源が入るような音が連続して鳴り、やがて一同がいる部屋を明るく照らした。
そこは玄関口にしてはかなり広く、壁際には天井にまで届く本棚が所狭しと並んでいた。
「普通の家では無いよね?どう見ても」
「ああ。何かの研究所だろう」
本棚に並ぶ本のタイトルや、ボードに走り書きされている文字や羅列された数字の集合体。
そして、机の上に乱雑に置かれ、床にも散らばっている山のような書類。
そこまでなら執務室に見えない事は無いのだが、決定的に違うのは、部屋の正面にモニター付の巨大なコンピュータが設置されている事だ。
「すごい。個人でこんなに立派な設備を整えているなんて」
シェアトが圧倒されて感嘆のため息を漏らすと、モニターに光が宿り、外で聞いた機械音が響いた。
「ヤァ、イラッシャイ。オ客ガ来ルノハ久シブリダナ。美味シイ食事と、紅茶ハイカガカナ?」
「え?あ、いや……」
「へっくしょん!うう……」
返事をするより早く、ルクバットが盛大なくしゃみをかまし、鼻を啜りながら身体を震わせる。
「オヤ。先ニ身体ヲ温メタ方ガ良サソウダネ。今湯ヲ張ッテイルカラネ。先ズハ身体ヲ拭ク物ヲ持ッテコヨウ」
そうしてモニターは切れ、変わりに暖かい風が吹き込んできた。
「……とりあえず、歓迎はされたみたいだね」
雨を凌ぐ場所を確保出来た事に安堵したボレアリスは、ぐっしょり濡れて重くなったマントを脱いだ。
ルクバット達も少しでも身軽になろうと荷物を卸したり、身体から外せる衣を脱いで水気を取ったりした。
そうやって少しリラックスしていると、いくつものタオルを抱えた一人の男が奥の部屋からやってきた。
「こんにちは、皆さん」
身長はかなり高め。
琥珀色の細目、片側には銀のモノクル。
足元まで伸びる白衣は、科学者と帝国のシンボル。
腰帯は装飾品なのか、それとも手を拭う為の物か。
少しよれて、何とも微妙な色合いをしている。
髪の色は瞳と同じ琥珀色だが、長く伸びた左の揉み上げ付近だけ、赤い縦筋が入っている。
外見的には二十代後半に見えるが、白衣の襟元を留めている猫型のワッペンや、猫耳のように二又になった帽子、左側だけにある耳当てが、彼を幼く見せている。
「随分と降られたみたいですね。どうぞ、好きにお使いください」
男はにこやかに微笑みながら、一人一人にタオルを配る。
受け取ったタオルからは、今の今まで干していたかのような温もりと、太陽の優しい香りが溢れてくる。
「お気遣い、感謝します」
ボレアリスが礼を述べると、男は表情を変えずに言う。
「礼なら兄に言って下さい。私は、ただ兄に言われただけですから」
「兄?」
「ええ。もう来るかと思いますが……」
その言葉を待っていたかのように、再びモニターから音声が流れた。
「ベイド。数ハ足リタカイ?」
「ええ。大丈夫ですよ兄さん。五人もいませんから、逆に余りました」
ベイドと呼ばれた男はモニターに向かって朗らかに微笑む。
「相変わらず声だけか。兄の方は顔を見せるつもりはないのか?」
「ちょっと、グラフィアス!」
失礼よ、とシェアトが窘めるが、構わないと声は言う。
「すみません。兄は訳あって皆さんに姿をお見せする事が出来ないんです。ただ、兄にとってはあれで、ここに居るのと同義なんです」
「どういう意味ですか?」
弟ベイドの弁解に小首を傾げるシェアト。
それに対して彼は若干困り顔で言う。
「自己紹介がまだでしたね。私はここで兄の研究の手伝いをしています、ベイド=ザウラク・ロー・アクィラェと申します。そしてモニターの中にいるのが私の兄、シェリアク=デネブ・ロー・アクィラェ。この研究所の主です」
「あなた方が、アクィラェ兄弟?」
「おや、ご存知でしたか」
ボレアリスが驚いて言うと、ベイドもまた驚いた顔をする。
「ええ。実は、旅の途中で義手を壊してしまいまして」
「義手?」
「はい。それで、良い腕の職人がいないか国境の兵に尋ねたところ、あなた方を紹介されました。兄上は行方不明だと聞いていたのですが……」
最後の一言は聞いて良かったのか分からず尻すぼみする。
ベイドは少し考え込むようなしぐさを見せて言う。
「行方不明、ですか……。一割は正解、というところですかね」
「ソウダネ。現ニ、私ハ此処ニ居ルカラネ」
シェリアク自身も笑いながらそう肯定する。
何かしら理由がありそうだが、彼等の言っている事は今一理解出来ない。
そんなぼやっとした答えをされて、グラフィアスが嫌みっぽく言い返す。
「ずいぶんぼかした言い方だな。何か都合の悪い事でもあるのか?」
「いえいえ、とんでもない。ただ話が長くなりますし、そろそろ湯が沸く頃合いですから。それに、そこの少年が風邪を引く前に話し終わる自信もありませんからね」
ベイドに呼ばれたルクバットは、それにくしゃみで返事をした。
「ふえっくしょん!……ふえ?」
皆が湯に浸かって温まっている間、自力で体温を戻したボレアリスは、ホットミルクを飲みながらベイドに義手を診てもらっていた。
「……これが義手ですか?初めて見るタイプですね。一見して、普通の装飾品にしか見えませんが」
数分間、眺めたり触ったり、スパナで叩いてみたりした後、唸るように呟く。
「私も詳しくは無いですけど、そうとう特殊な構造なんだと思いますよ。私の想像した通りの物を作り出しますから」
「想像したものを、作る……?」
ベイドは信じられないといった風に眉を潜める。
そして、彼よりも反応を示したのは、彼の兄シェリアクだった。
「ソレハ何処マデ可能ナンダイ?例エバ生成物ノ硬度ヤ精密度、体感温度ヤ持続力ハ?」
いかにも専門家らしい質問に、ボレアリスは出来る限りの答えを返す。
「精製には魔力を要するので、量次第ですね。普段はマントで隠していますが、無意識のうちに腕を形作っています。でもそこは無意識ですから見た目だけで、細部も細かくありません。神経は通っていないので何も掴めません。仕事の関係上、武器をよく作るのですが、本物のそれに硬度は劣りません。魔力を注げば更に良くなりますが、その分体力は使います」
「神経ハ通ッテイナイ?ナラ君ハ……」
「兄さん。少し落ち着いて下さい」
ベイドが声をかけると、シェリアクは我に返ったように謝罪する。
「ボレアリスさん、でしたね。このような義手をどこで手に入れたんですか?それに、どうしてこのような特殊な物が必要なんです?」
「どこで誰の手によって作られたかは私にもか分かりません。友人の紹介で、その……気付いたらこうなっていました。これが必要な理由は、私がバスターだからです。元々の腕を失ったのも、それが原因です」
歯切れ悪く答えると、シェリアクがあまり気にしない様子で尋ねてきた。
「モシカシテ、蒼竜ニ一人デ立チ向カッタトイウバスターハ、君ノ事カイ?最年少デ、グルミウム出身ノ」
「ええ。そうですが」
肯定すると、彼のテンションは更に上がる。
「ナラ君ハ、グルミウム王国ノ姫君カナ?」
「……は?」
あまりに唐突な質問に、間抜けな声を漏らす。
答えずに困惑していると、ベイドが苦笑しながら言った。
「兄さん、またその話ですか?」
「我々ノ研究ノ原点ヲマタ呼バワリハ無イダロ、ベイド。ソレデバスター君?正解カナ」
彼の口調はだったら良いな、くらい軽い。
「……いえ。私はただの生き残りです」
「ソウカ。ソレハ残念」
そう言うわりには、あまり残念そうには聞こえない。
「あの、何故私が王女だと?研究の原点とは一体?」
二人が何の研究をしているのか、そこに自分がどう関わっているのか、謎な事だらけだ。
そんな疑問に答えてくれたのはベイドだった。
「原始分解再構築、という言葉を聞いた事はありますか?」
「……失われた技法、ですね」
瞬間、脳裏に蒼龍の姿が過る。
「はい。流石に、旅をしているだけあって知識が豊富ですね。私達はその研究をしておりまして、今より安全に、誰もが転生式を行えるようにするのが目標なんです」
「転生式を、安全に?」
転生式と聞くと、嫌でもあの日の事を思い出してしまう。
危険を伴う転生式を安全に行う事など、本当に出来るのだろうか?
「赤の襲撃。あの事件を境に、その思いはより強固な物へと変わりました。私達はあの日、王女の死をこの目で見ています。そこで幾つかの疑問が浮かび、グルミウム王女は今も生きているのではないかという見解に至ったのです」
研究途中でシェリアクは身体を原始分解したまま、元に戻れなくなった等、ベイドは研究の経過を掻い摘まんで教えてくれた。
彼等の推測は合っている。
グルミウム王女は今も生きている。
二人の、目の前で。
しかし、本人がその事を伝えるわけがなく、別の話をした。
「では、世の中に伝わっているグルミウム王女生存説は、あなた方が起源なんですね」
「ソンナ説ガアルノカイ?知ラナカッタナ」
シェリアクはまんざらでもなく嬉しそうだ。
そして丁度良い所に、湯から上がったシェアト達が戻ってきた。
「お帰りなさい。温まれましたか?」
「はい、もうすっかり。ありがとうございました。アリス、腕の方はどう?」
シェアトが礼を述べた後具合を尋ねると、それにはベイドが答えてくれた。
「まだ軽く診ただけですから、これから私の研究室で詳しく診ようと思っています。アリスさんは休まれなくて大丈夫ですか?」
「はい、平気です」
「では行きましょうか。皆さんはここで、兄とお待ち下さい」
ベイドに案内されるがまま、ボレアリスは奥の研究室へと向かった。
建物の中は人がいるにしては異様に暗く、換気を行っていないのか、湿気と埃っぽい匂いが充満している。
「あのー、お邪魔しまーす……」
シェアトが何処にいるとも知れない住人に向かっておずおずと挨拶をする。
それに応えるかのように、奥の方から何か電源が入るような音が連続して鳴り、やがて一同がいる部屋を明るく照らした。
そこは玄関口にしてはかなり広く、壁際には天井にまで届く本棚が所狭しと並んでいた。
「普通の家では無いよね?どう見ても」
「ああ。何かの研究所だろう」
本棚に並ぶ本のタイトルや、ボードに走り書きされている文字や羅列された数字の集合体。
そして、机の上に乱雑に置かれ、床にも散らばっている山のような書類。
そこまでなら執務室に見えない事は無いのだが、決定的に違うのは、部屋の正面にモニター付の巨大なコンピュータが設置されている事だ。
「すごい。個人でこんなに立派な設備を整えているなんて」
シェアトが圧倒されて感嘆のため息を漏らすと、モニターに光が宿り、外で聞いた機械音が響いた。
「ヤァ、イラッシャイ。オ客ガ来ルノハ久シブリダナ。美味シイ食事と、紅茶ハイカガカナ?」
「え?あ、いや……」
「へっくしょん!うう……」
返事をするより早く、ルクバットが盛大なくしゃみをかまし、鼻を啜りながら身体を震わせる。
「オヤ。先ニ身体ヲ温メタ方ガ良サソウダネ。今湯ヲ張ッテイルカラネ。先ズハ身体ヲ拭ク物ヲ持ッテコヨウ」
そうしてモニターは切れ、変わりに暖かい風が吹き込んできた。
「……とりあえず、歓迎はされたみたいだね」
雨を凌ぐ場所を確保出来た事に安堵したボレアリスは、ぐっしょり濡れて重くなったマントを脱いだ。
ルクバット達も少しでも身軽になろうと荷物を卸したり、身体から外せる衣を脱いで水気を取ったりした。
そうやって少しリラックスしていると、いくつものタオルを抱えた一人の男が奥の部屋からやってきた。
「こんにちは、皆さん」
身長はかなり高め。
琥珀色の細目、片側には銀のモノクル。
足元まで伸びる白衣は、科学者と帝国のシンボル。
腰帯は装飾品なのか、それとも手を拭う為の物か。
少しよれて、何とも微妙な色合いをしている。
髪の色は瞳と同じ琥珀色だが、長く伸びた左の揉み上げ付近だけ、赤い縦筋が入っている。
外見的には二十代後半に見えるが、白衣の襟元を留めている猫型のワッペンや、猫耳のように二又になった帽子、左側だけにある耳当てが、彼を幼く見せている。
「随分と降られたみたいですね。どうぞ、好きにお使いください」
男はにこやかに微笑みながら、一人一人にタオルを配る。
受け取ったタオルからは、今の今まで干していたかのような温もりと、太陽の優しい香りが溢れてくる。
「お気遣い、感謝します」
ボレアリスが礼を述べると、男は表情を変えずに言う。
「礼なら兄に言って下さい。私は、ただ兄に言われただけですから」
「兄?」
「ええ。もう来るかと思いますが……」
その言葉を待っていたかのように、再びモニターから音声が流れた。
「ベイド。数ハ足リタカイ?」
「ええ。大丈夫ですよ兄さん。五人もいませんから、逆に余りました」
ベイドと呼ばれた男はモニターに向かって朗らかに微笑む。
「相変わらず声だけか。兄の方は顔を見せるつもりはないのか?」
「ちょっと、グラフィアス!」
失礼よ、とシェアトが窘めるが、構わないと声は言う。
「すみません。兄は訳あって皆さんに姿をお見せする事が出来ないんです。ただ、兄にとってはあれで、ここに居るのと同義なんです」
「どういう意味ですか?」
弟ベイドの弁解に小首を傾げるシェアト。
それに対して彼は若干困り顔で言う。
「自己紹介がまだでしたね。私はここで兄の研究の手伝いをしています、ベイド=ザウラク・ロー・アクィラェと申します。そしてモニターの中にいるのが私の兄、シェリアク=デネブ・ロー・アクィラェ。この研究所の主です」
「あなた方が、アクィラェ兄弟?」
「おや、ご存知でしたか」
ボレアリスが驚いて言うと、ベイドもまた驚いた顔をする。
「ええ。実は、旅の途中で義手を壊してしまいまして」
「義手?」
「はい。それで、良い腕の職人がいないか国境の兵に尋ねたところ、あなた方を紹介されました。兄上は行方不明だと聞いていたのですが……」
最後の一言は聞いて良かったのか分からず尻すぼみする。
ベイドは少し考え込むようなしぐさを見せて言う。
「行方不明、ですか……。一割は正解、というところですかね」
「ソウダネ。現ニ、私ハ此処ニ居ルカラネ」
シェリアク自身も笑いながらそう肯定する。
何かしら理由がありそうだが、彼等の言っている事は今一理解出来ない。
そんなぼやっとした答えをされて、グラフィアスが嫌みっぽく言い返す。
「ずいぶんぼかした言い方だな。何か都合の悪い事でもあるのか?」
「いえいえ、とんでもない。ただ話が長くなりますし、そろそろ湯が沸く頃合いですから。それに、そこの少年が風邪を引く前に話し終わる自信もありませんからね」
ベイドに呼ばれたルクバットは、それにくしゃみで返事をした。
「ふえっくしょん!……ふえ?」
皆が湯に浸かって温まっている間、自力で体温を戻したボレアリスは、ホットミルクを飲みながらベイドに義手を診てもらっていた。
「……これが義手ですか?初めて見るタイプですね。一見して、普通の装飾品にしか見えませんが」
数分間、眺めたり触ったり、スパナで叩いてみたりした後、唸るように呟く。
「私も詳しくは無いですけど、そうとう特殊な構造なんだと思いますよ。私の想像した通りの物を作り出しますから」
「想像したものを、作る……?」
ベイドは信じられないといった風に眉を潜める。
そして、彼よりも反応を示したのは、彼の兄シェリアクだった。
「ソレハ何処マデ可能ナンダイ?例エバ生成物ノ硬度ヤ精密度、体感温度ヤ持続力ハ?」
いかにも専門家らしい質問に、ボレアリスは出来る限りの答えを返す。
「精製には魔力を要するので、量次第ですね。普段はマントで隠していますが、無意識のうちに腕を形作っています。でもそこは無意識ですから見た目だけで、細部も細かくありません。神経は通っていないので何も掴めません。仕事の関係上、武器をよく作るのですが、本物のそれに硬度は劣りません。魔力を注げば更に良くなりますが、その分体力は使います」
「神経ハ通ッテイナイ?ナラ君ハ……」
「兄さん。少し落ち着いて下さい」
ベイドが声をかけると、シェリアクは我に返ったように謝罪する。
「ボレアリスさん、でしたね。このような義手をどこで手に入れたんですか?それに、どうしてこのような特殊な物が必要なんです?」
「どこで誰の手によって作られたかは私にもか分かりません。友人の紹介で、その……気付いたらこうなっていました。これが必要な理由は、私がバスターだからです。元々の腕を失ったのも、それが原因です」
歯切れ悪く答えると、シェリアクがあまり気にしない様子で尋ねてきた。
「モシカシテ、蒼竜ニ一人デ立チ向カッタトイウバスターハ、君ノ事カイ?最年少デ、グルミウム出身ノ」
「ええ。そうですが」
肯定すると、彼のテンションは更に上がる。
「ナラ君ハ、グルミウム王国ノ姫君カナ?」
「……は?」
あまりに唐突な質問に、間抜けな声を漏らす。
答えずに困惑していると、ベイドが苦笑しながら言った。
「兄さん、またその話ですか?」
「我々ノ研究ノ原点ヲマタ呼バワリハ無イダロ、ベイド。ソレデバスター君?正解カナ」
彼の口調はだったら良いな、くらい軽い。
「……いえ。私はただの生き残りです」
「ソウカ。ソレハ残念」
そう言うわりには、あまり残念そうには聞こえない。
「あの、何故私が王女だと?研究の原点とは一体?」
二人が何の研究をしているのか、そこに自分がどう関わっているのか、謎な事だらけだ。
そんな疑問に答えてくれたのはベイドだった。
「原始分解再構築、という言葉を聞いた事はありますか?」
「……失われた技法、ですね」
瞬間、脳裏に蒼龍の姿が過る。
「はい。流石に、旅をしているだけあって知識が豊富ですね。私達はその研究をしておりまして、今より安全に、誰もが転生式を行えるようにするのが目標なんです」
「転生式を、安全に?」
転生式と聞くと、嫌でもあの日の事を思い出してしまう。
危険を伴う転生式を安全に行う事など、本当に出来るのだろうか?
「赤の襲撃。あの事件を境に、その思いはより強固な物へと変わりました。私達はあの日、王女の死をこの目で見ています。そこで幾つかの疑問が浮かび、グルミウム王女は今も生きているのではないかという見解に至ったのです」
研究途中でシェリアクは身体を原始分解したまま、元に戻れなくなった等、ベイドは研究の経過を掻い摘まんで教えてくれた。
彼等の推測は合っている。
グルミウム王女は今も生きている。
二人の、目の前で。
しかし、本人がその事を伝えるわけがなく、別の話をした。
「では、世の中に伝わっているグルミウム王女生存説は、あなた方が起源なんですね」
「ソンナ説ガアルノカイ?知ラナカッタナ」
シェリアクはまんざらでもなく嬉しそうだ。
そして丁度良い所に、湯から上がったシェアト達が戻ってきた。
「お帰りなさい。温まれましたか?」
「はい、もうすっかり。ありがとうございました。アリス、腕の方はどう?」
シェアトが礼を述べた後具合を尋ねると、それにはベイドが答えてくれた。
「まだ軽く診ただけですから、これから私の研究室で詳しく診ようと思っています。アリスさんは休まれなくて大丈夫ですか?」
「はい、平気です」
「では行きましょうか。皆さんはここで、兄とお待ち下さい」
ベイドに案内されるがまま、ボレアリスは奥の研究室へと向かった。
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