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転の流星
ローマー
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動く森の罠に嵌まり、奇怪な獣人に捕らえられたボレアリス達は、彼等が出てきた木の中を潜り、地下に広がる巨大な施設の牢屋に収容された。
どうやらこの森は、地下にまで及ぶ、要塞のような造りをしているようだ。
「これはまた、立派な施設だな。巧く隠したものだ」
ボレアリスは左手を、壁に取りつけられた手錠に繋がれて拘束されているが、その態度は比較的落ち着いたまま、のんびり辺りを観察しながら呟く。
「……ごめんね」
壁があって姿こそ見えないが、隣の牢屋からシェアトの消え入りそうな謝罪が聞こえてきた。
「シェアトが謝る事は何も無いよ。これは完全に私の失態だ。とりあえず、今は機会を待とう」
それは気休めなどではなく、本心から出た言葉だったが、シェアトには逆効果だったようだ。
「どうしてそんなに落ち着いていられるの?私達、これからどうなるか分からないんだよ?ルクバット君だって何処にいるか分からないし、アリスは心配じゃないの?」
不安のあまり、シェアトの口調には怒気が籠もっている。
ボレアリスは態度を変える事なく、壁向こうのシェアトを落ち着かせるように、敢えてゆっくりとした口調で答える。
「もちろん、これからどうなるかなんて私にだって分からないし、ルクバットだって心配さ。けど、だからと言って今やれる事は何も無い。別に危険が迫ってるわけでも無いんだから、わめいて無駄な体力を使う必要も無い」
「危険が迫ってないって……その根拠は?」
二人の温度差の違いはここだ。
ボレアリスが特に危機感を抱いていないのと対照的に、シェアトはこの現状を命の危機と捉えている。
まずは、シェアトする落ち着かせる事から始めるか。
「ほら、あいつらが言ってただろ?我等に必要な力。協力しろって」
彼等が使ったのはフェディックス語だったが、ボレアリスは現在の共通言語であるフィックスター語で言う。
どうやらシェアトはそこを理解出来ていなかったようで「そうだったんだ」と呟く。
「それと、協力すれば仲間を助けるとも言ってた。それがシェアトかルクバットかは分からないけど、そういうわけでとりあえず、今すぐ死ぬとかは無い筈だから、そんなに身構えなくても大丈夫だよ」
「う、うん……」
声色から混乱と恐怖は多少拭えたようだが、まだまだ不安に襲われている感じだ。
壁越しに私がいるっていっても、一人で牢屋にいるのは精神的にキツいんだろうな。
「じゃあシェアト、少し頭を使おうか」
ボレアリスは、いつもより明るい声でそう提案する。
「ここは何かで魔法を封じられているから、私の右腕は無力化されてる。左手も手錠に繋がれて、武器も取られて丸腰状態。オマケに鉄格子には、高圧電流が流れてるときた。お陰様で気分は最悪。なんなら吐き気もする。運良くここを出られても、こんな地下要塞じゃ、どうすれば外に出られるかも分からないし。ここで出来るのは、今の状況を整理する事だけ。まずは、彼等が何者なのかを知らないといけない」
「……普通の人間、じゃなかったよね」
不平不満を含めて一人でぶつぶつ言っていると、ようやくシェアトが加わる。
だいぶ落ち着いてきたかな。
「ああ。私達とは明らかに違う部位が、身体のあちこちにあった」
彼等の姿は、異形の部分一つ一つを見れば、初めて見る物ではなかった。
「あれは、聖霊や龍の姿だ」
「やっぱりそうなんだ。本でしか見た事なかったけど。……それじゃ、あの人達は転生式を終えているか、もしくは邪竜になりかけてるって事?」
「……いや、それは多分、違うと思う」
相手には見えないが、ボレアリスは首を横に振り否定する。
「転生式を終えていても、表面上の変化はまず見られない。邪に堕ちかけてる者の中には、ああいった症状を見せる者もいるけど、あんな風に集団で行動するなんて不可能だ。それより気になるのは、彼等が使っていた言語だ」
彼等はフェディックス語を当たり前のように使っていた。
「まるで大昔の聖霊と話してる気分だったよ。多分、彼等にとってはあっちが標準語なんだろうね」
そう呟くと、シェアトから聞き慣れない単語が返ってきた。
「もしかしたら、ローマーかも」
「心当たりがあるの?」
「合ってるかは分からないけど、似たような話を聞いた事があるの。前星歴の時代は、今ほど五大国の区別はなくて、黄龍を長とした五大聖獣の元で、全ての生き物は穏やかに暮らしてた。そしていつからか、聖霊達はその姿を人に変え、世界を五つに分けた。でも中には、それを望まない聖霊達もいたの。その者達は姿を変えず、国を持たず、世界を放浪している」
「それがローマー。放浪者ってわけか」
シェアトの説明を受け、言葉を訳し直して納得する。
「彼等の姿からは若干食い違いがあるけど、前星歴からはもう千年も時が流れてる。時代の変化に合わせて、少しずつ姿を変えてきてるのかもしれないね。それ以外は今の条件に当てはまってるし。シェアト、他にローマーについて知ってる事は?」
「えっと、確か……性質的には聖霊や龍と同じ長寿で、身体も強靭だけど、人とは違って気性が荒くて争いが耐えない種族よ。だから、もうとっくに滅びてると思われていたの。これくらいしか、分からないわ」
記憶を辿りながらたどたどしく説明するが、シェアトの口調からは絶対の自信が感じ取れる。
私とそう変わらない年齢なのに、すごい知識量だ。
「ありがとう。十分すぎる情報だよ」
心の底から感謝する。
おかけで、彼等の事がだいぶ理解出来た。
恐らく彼等の言う協力とは、その争いに荷担しろという事だろう。
「彼等はその数少ないローマーの生き残りで、今も同じ種族同士、争ってるってところか」
「でもどうしてなんだろう?同じ仲間で、数だって少ないのに、どうして仲良く出来ないのかな?」
そうシェアトは悲しげに言うが、争う理由なんて、当事者でない限り、分かりはしない。
「さあね。意見が食い違って、お互いにどうしても譲れないのなら、ぶつかり合うのは当然だと思うよ。その手段は、様々だと思うけどね。……どうやら、おしゃべりはここまでみたいだね」
牢屋の向こうから複数人の足音が聞こえ、やがて地上でボレアリス達を捕らえたローマーが姿を見せた。
「出番ダ」
短くリーダー格のローマーがそう言うと、後ろに控えていたローマーがボレアリスの牢屋の電流を切り、中へと入ってきた。
そして、壁に繋がれていた手錠を自分の腕へと掛け、ボレアリスに外へ出るよう命令する。
今はまだ、大人しくしてた方がいいな。
大人しく従い外へ出ると、他のローマーが隣にいるシェアトも連れ出そうとしている所だった。
「待テ。アノ子ハ戦エナイ。私ガ全テ引キ受ケル」
慌ててフェディックス語で伝えると、リーダー格のローマーはシェアトを一瞥し、ボレアリスを見て言い放つ。
「オ前ノ次ハ、コイツダ」
戦力外と判断されたシェアトは、無事牢屋に戻されるが、一人取り残される事となった彼女は今にも泣き出しそうだ。
「アリス!待って、お願い」
「ごめん。でも、そこの方がよっぽど安全だから。すぐに戻ってくるから、不安だろうけど、ちょっとだけ待ってて。あとこれ」
取り乱すシェアトを少しでも安心させる為に、ボレアリスは自分のマントを差し出す。
「邪魔になると思うから、預かってて」
「何ヲシテイル。早クシロ」
鎖で繋がっているローマーに腕を引かれたせいでしっかりと手渡す事は出来なかったが、これ以上ボレアリスにもどうする事も出来ず、後ろ髪を引かれる思いでシェアトと別れた。
どうやらこの森は、地下にまで及ぶ、要塞のような造りをしているようだ。
「これはまた、立派な施設だな。巧く隠したものだ」
ボレアリスは左手を、壁に取りつけられた手錠に繋がれて拘束されているが、その態度は比較的落ち着いたまま、のんびり辺りを観察しながら呟く。
「……ごめんね」
壁があって姿こそ見えないが、隣の牢屋からシェアトの消え入りそうな謝罪が聞こえてきた。
「シェアトが謝る事は何も無いよ。これは完全に私の失態だ。とりあえず、今は機会を待とう」
それは気休めなどではなく、本心から出た言葉だったが、シェアトには逆効果だったようだ。
「どうしてそんなに落ち着いていられるの?私達、これからどうなるか分からないんだよ?ルクバット君だって何処にいるか分からないし、アリスは心配じゃないの?」
不安のあまり、シェアトの口調には怒気が籠もっている。
ボレアリスは態度を変える事なく、壁向こうのシェアトを落ち着かせるように、敢えてゆっくりとした口調で答える。
「もちろん、これからどうなるかなんて私にだって分からないし、ルクバットだって心配さ。けど、だからと言って今やれる事は何も無い。別に危険が迫ってるわけでも無いんだから、わめいて無駄な体力を使う必要も無い」
「危険が迫ってないって……その根拠は?」
二人の温度差の違いはここだ。
ボレアリスが特に危機感を抱いていないのと対照的に、シェアトはこの現状を命の危機と捉えている。
まずは、シェアトする落ち着かせる事から始めるか。
「ほら、あいつらが言ってただろ?我等に必要な力。協力しろって」
彼等が使ったのはフェディックス語だったが、ボレアリスは現在の共通言語であるフィックスター語で言う。
どうやらシェアトはそこを理解出来ていなかったようで「そうだったんだ」と呟く。
「それと、協力すれば仲間を助けるとも言ってた。それがシェアトかルクバットかは分からないけど、そういうわけでとりあえず、今すぐ死ぬとかは無い筈だから、そんなに身構えなくても大丈夫だよ」
「う、うん……」
声色から混乱と恐怖は多少拭えたようだが、まだまだ不安に襲われている感じだ。
壁越しに私がいるっていっても、一人で牢屋にいるのは精神的にキツいんだろうな。
「じゃあシェアト、少し頭を使おうか」
ボレアリスは、いつもより明るい声でそう提案する。
「ここは何かで魔法を封じられているから、私の右腕は無力化されてる。左手も手錠に繋がれて、武器も取られて丸腰状態。オマケに鉄格子には、高圧電流が流れてるときた。お陰様で気分は最悪。なんなら吐き気もする。運良くここを出られても、こんな地下要塞じゃ、どうすれば外に出られるかも分からないし。ここで出来るのは、今の状況を整理する事だけ。まずは、彼等が何者なのかを知らないといけない」
「……普通の人間、じゃなかったよね」
不平不満を含めて一人でぶつぶつ言っていると、ようやくシェアトが加わる。
だいぶ落ち着いてきたかな。
「ああ。私達とは明らかに違う部位が、身体のあちこちにあった」
彼等の姿は、異形の部分一つ一つを見れば、初めて見る物ではなかった。
「あれは、聖霊や龍の姿だ」
「やっぱりそうなんだ。本でしか見た事なかったけど。……それじゃ、あの人達は転生式を終えているか、もしくは邪竜になりかけてるって事?」
「……いや、それは多分、違うと思う」
相手には見えないが、ボレアリスは首を横に振り否定する。
「転生式を終えていても、表面上の変化はまず見られない。邪に堕ちかけてる者の中には、ああいった症状を見せる者もいるけど、あんな風に集団で行動するなんて不可能だ。それより気になるのは、彼等が使っていた言語だ」
彼等はフェディックス語を当たり前のように使っていた。
「まるで大昔の聖霊と話してる気分だったよ。多分、彼等にとってはあっちが標準語なんだろうね」
そう呟くと、シェアトから聞き慣れない単語が返ってきた。
「もしかしたら、ローマーかも」
「心当たりがあるの?」
「合ってるかは分からないけど、似たような話を聞いた事があるの。前星歴の時代は、今ほど五大国の区別はなくて、黄龍を長とした五大聖獣の元で、全ての生き物は穏やかに暮らしてた。そしていつからか、聖霊達はその姿を人に変え、世界を五つに分けた。でも中には、それを望まない聖霊達もいたの。その者達は姿を変えず、国を持たず、世界を放浪している」
「それがローマー。放浪者ってわけか」
シェアトの説明を受け、言葉を訳し直して納得する。
「彼等の姿からは若干食い違いがあるけど、前星歴からはもう千年も時が流れてる。時代の変化に合わせて、少しずつ姿を変えてきてるのかもしれないね。それ以外は今の条件に当てはまってるし。シェアト、他にローマーについて知ってる事は?」
「えっと、確か……性質的には聖霊や龍と同じ長寿で、身体も強靭だけど、人とは違って気性が荒くて争いが耐えない種族よ。だから、もうとっくに滅びてると思われていたの。これくらいしか、分からないわ」
記憶を辿りながらたどたどしく説明するが、シェアトの口調からは絶対の自信が感じ取れる。
私とそう変わらない年齢なのに、すごい知識量だ。
「ありがとう。十分すぎる情報だよ」
心の底から感謝する。
おかけで、彼等の事がだいぶ理解出来た。
恐らく彼等の言う協力とは、その争いに荷担しろという事だろう。
「彼等はその数少ないローマーの生き残りで、今も同じ種族同士、争ってるってところか」
「でもどうしてなんだろう?同じ仲間で、数だって少ないのに、どうして仲良く出来ないのかな?」
そうシェアトは悲しげに言うが、争う理由なんて、当事者でない限り、分かりはしない。
「さあね。意見が食い違って、お互いにどうしても譲れないのなら、ぶつかり合うのは当然だと思うよ。その手段は、様々だと思うけどね。……どうやら、おしゃべりはここまでみたいだね」
牢屋の向こうから複数人の足音が聞こえ、やがて地上でボレアリス達を捕らえたローマーが姿を見せた。
「出番ダ」
短くリーダー格のローマーがそう言うと、後ろに控えていたローマーがボレアリスの牢屋の電流を切り、中へと入ってきた。
そして、壁に繋がれていた手錠を自分の腕へと掛け、ボレアリスに外へ出るよう命令する。
今はまだ、大人しくしてた方がいいな。
大人しく従い外へ出ると、他のローマーが隣にいるシェアトも連れ出そうとしている所だった。
「待テ。アノ子ハ戦エナイ。私ガ全テ引キ受ケル」
慌ててフェディックス語で伝えると、リーダー格のローマーはシェアトを一瞥し、ボレアリスを見て言い放つ。
「オ前ノ次ハ、コイツダ」
戦力外と判断されたシェアトは、無事牢屋に戻されるが、一人取り残される事となった彼女は今にも泣き出しそうだ。
「アリス!待って、お願い」
「ごめん。でも、そこの方がよっぽど安全だから。すぐに戻ってくるから、不安だろうけど、ちょっとだけ待ってて。あとこれ」
取り乱すシェアトを少しでも安心させる為に、ボレアリスは自分のマントを差し出す。
「邪魔になると思うから、預かってて」
「何ヲシテイル。早クシロ」
鎖で繋がっているローマーに腕を引かれたせいでしっかりと手渡す事は出来なかったが、これ以上ボレアリスにもどうする事も出来ず、後ろ髪を引かれる思いでシェアトと別れた。
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