32 / 39
賢者様②★
しおりを挟む
これから戦闘だという時に、団員が見ている前で……キス!?
こんな美少女漫画みたいな展開……、いやいや、このまま全滅なんて嫌だ!
意を決してセオの元に駆け寄り、「戦闘前にごめんね」と告げて舌を絡めてディープキスをすると、セオは紺青色の瞳を見開きびっくりしている様子。
その光景を目の当たりにした団員の頬は赤らんでぽうっとしている。
暫くするとセオが構えていた剣に青黒い炎が纏う。
〈あとは団員に攻撃力と防御力を上げるバフ系魔法をかけりゃ良い〉
〈魔法で出来るならキスしなくても良かったじゃん……〉
〈わかってねぇなー、ステータス見てみろ!直接入れたほうが爆上がりなんだよ!〉
そうかもしれないけど……、納得いかない。
〈おい、頭を切り替えろ!〉
〈はい!!〉
「行きます、皆さん宜しくお願いします!」
囮作戦は馬術に優れた団員に同乗させてもらい、ワイバーン達が砂漠地帯で餌が少ないと見込んで、野営で残ったオーク肉の燻製干し肉を紐に結んで匂いで誘き寄せる。
オアシス全体に干し肉の匂いが行き渡るよう風上側からゆっくりと走り抜ける。
すると水飲みや水浴びをしていたワイバーン達が雄叫びをあげてこちらに向かってくる。
そこからは全速力で駆け抜け、岩場にいる仲間達の最後尾まで逃げ込んだ。
団員の皆は「シャーー」「ヴゥーー」と各々威嚇をしている。
ワイバーンが岩場まで着くと、前衛隊が斬り込む、ここでは無理をせず一撃二撃与えられれば上出来、後衛で仕留める算段だ。
後方から戦場を見ると、飛んで上空から攻撃しようとするワイバーン相手でも猫ならではの跳躍力を駆使して岩場に駆け上がりジャンプ攻撃での反撃や猫爪でワイバーンの躯体を駆け上がり目潰し攻撃をする猛者もいた。
生々しい戦場を目のあたりにして、胸焼けするような感覚を覚えた。
セオは後衛の要で、前衛が討ち損ねたワイバーンをほぼ一撃で仕留める。
迷いのない剣筋は青い炎で絵取られ、所作までもが絵になり見惚れてしまった。
そうして最後の一匹をセオが岩場から跳んで剣を振り下ろし射止め、団員は一斉に勝ち鬨を上げる。
「怪我のある方ー、重症者から教えてください」と歩きながら声をかけ治癒魔法を行なった、重症者はいなく怪我も軽い程度で安堵した。
少し休憩後、帰路に向かうことになった。
生きてて良かった……、心弛みしたらどうしても我慢出来なくなり、隣りにいたセオに。
「お願い。今すぐ猫型になって!」と懇願する。
きょとんとした顔になったが、すぐに猫型になってくれた。セオはどんな時も優しい。
気の済むまで撫でで猫吸いをした、この国で猫型を撫でる行為は求愛行動と見られる。視界に入って紅潮する団員もいたが気にしない。
人型でハグするより恥ずかしくない、普通に猫吸いしてるだけ……と自分に言い聞かせる。
戦闘で緊張していたのがわかったのか、猫型のセオは擦り寄って僕の指を舐めたり甘噛みしてくれて、気が休まった。
一行は帰路につく。
☆
保護していた愛猫ミルクの里親が見つかった。人種族の国ポースタルシャからの行商人の御者が飼いたいと申し出てくれたようだ。どんな人物なのか念のため会って直接手渡したくて、馬繋ぎ場に向かった。
ちょうど馬の手入れをしているところだった。声を掛けると、どこか父の雰囲気に似てる温和そうな紳士だった。確認するように。
「猫がお好きなんですね」と言うと。
「子供達が特に大好きで、家に二匹飼っていてもう一匹飼いたいと話をしていたんですよ」
人は嘘をついて動揺すると魔力の揺らぎが見られるが、この御者には見られなかった。馬の手入れも行き届いている、きっと動物好きなのだろう。
籠に入れて連れてきたミルクを蓋を開けて撫でてやると、頭を擦りつけて指先を舐めてくれた。お別れが来たことを察知したのだろうか。
ネルザンドで生きていくと決めたからには、もう普通の猫を飼うことはないだろう。最後に頭と耳の後ろを撫でて「幸せになるんだよ」と小声で伝えて蓋を閉じ御者へ渡した。
御者は蓋を開けて確認すると「ほう、本当に牛のような柄で可愛らしい、きっと子供達も喜びます」と口元を綻ばせた。
「この子を宜しくお願いします」と願いを込めて伝える。
☆
魔石省では設計付与課の仕事も順調で、今はアルノーさんの助手をやっている。加工課にいた実績があるので加工も出来て、魔力も増大にあるので都合が良いのだそう。
助手をしながら設計付与を詳しく教わったり、魔石の扱い方等も丁寧に教えてくれる。気になる魔石素材があれば採取にも行く。
休みの日はイースタンに出向いたりと忙しい日々を送っている。
こんな美少女漫画みたいな展開……、いやいや、このまま全滅なんて嫌だ!
意を決してセオの元に駆け寄り、「戦闘前にごめんね」と告げて舌を絡めてディープキスをすると、セオは紺青色の瞳を見開きびっくりしている様子。
その光景を目の当たりにした団員の頬は赤らんでぽうっとしている。
暫くするとセオが構えていた剣に青黒い炎が纏う。
〈あとは団員に攻撃力と防御力を上げるバフ系魔法をかけりゃ良い〉
〈魔法で出来るならキスしなくても良かったじゃん……〉
〈わかってねぇなー、ステータス見てみろ!直接入れたほうが爆上がりなんだよ!〉
そうかもしれないけど……、納得いかない。
〈おい、頭を切り替えろ!〉
〈はい!!〉
「行きます、皆さん宜しくお願いします!」
囮作戦は馬術に優れた団員に同乗させてもらい、ワイバーン達が砂漠地帯で餌が少ないと見込んで、野営で残ったオーク肉の燻製干し肉を紐に結んで匂いで誘き寄せる。
オアシス全体に干し肉の匂いが行き渡るよう風上側からゆっくりと走り抜ける。
すると水飲みや水浴びをしていたワイバーン達が雄叫びをあげてこちらに向かってくる。
そこからは全速力で駆け抜け、岩場にいる仲間達の最後尾まで逃げ込んだ。
団員の皆は「シャーー」「ヴゥーー」と各々威嚇をしている。
ワイバーンが岩場まで着くと、前衛隊が斬り込む、ここでは無理をせず一撃二撃与えられれば上出来、後衛で仕留める算段だ。
後方から戦場を見ると、飛んで上空から攻撃しようとするワイバーン相手でも猫ならではの跳躍力を駆使して岩場に駆け上がりジャンプ攻撃での反撃や猫爪でワイバーンの躯体を駆け上がり目潰し攻撃をする猛者もいた。
生々しい戦場を目のあたりにして、胸焼けするような感覚を覚えた。
セオは後衛の要で、前衛が討ち損ねたワイバーンをほぼ一撃で仕留める。
迷いのない剣筋は青い炎で絵取られ、所作までもが絵になり見惚れてしまった。
そうして最後の一匹をセオが岩場から跳んで剣を振り下ろし射止め、団員は一斉に勝ち鬨を上げる。
「怪我のある方ー、重症者から教えてください」と歩きながら声をかけ治癒魔法を行なった、重症者はいなく怪我も軽い程度で安堵した。
少し休憩後、帰路に向かうことになった。
生きてて良かった……、心弛みしたらどうしても我慢出来なくなり、隣りにいたセオに。
「お願い。今すぐ猫型になって!」と懇願する。
きょとんとした顔になったが、すぐに猫型になってくれた。セオはどんな時も優しい。
気の済むまで撫でで猫吸いをした、この国で猫型を撫でる行為は求愛行動と見られる。視界に入って紅潮する団員もいたが気にしない。
人型でハグするより恥ずかしくない、普通に猫吸いしてるだけ……と自分に言い聞かせる。
戦闘で緊張していたのがわかったのか、猫型のセオは擦り寄って僕の指を舐めたり甘噛みしてくれて、気が休まった。
一行は帰路につく。
☆
保護していた愛猫ミルクの里親が見つかった。人種族の国ポースタルシャからの行商人の御者が飼いたいと申し出てくれたようだ。どんな人物なのか念のため会って直接手渡したくて、馬繋ぎ場に向かった。
ちょうど馬の手入れをしているところだった。声を掛けると、どこか父の雰囲気に似てる温和そうな紳士だった。確認するように。
「猫がお好きなんですね」と言うと。
「子供達が特に大好きで、家に二匹飼っていてもう一匹飼いたいと話をしていたんですよ」
人は嘘をついて動揺すると魔力の揺らぎが見られるが、この御者には見られなかった。馬の手入れも行き届いている、きっと動物好きなのだろう。
籠に入れて連れてきたミルクを蓋を開けて撫でてやると、頭を擦りつけて指先を舐めてくれた。お別れが来たことを察知したのだろうか。
ネルザンドで生きていくと決めたからには、もう普通の猫を飼うことはないだろう。最後に頭と耳の後ろを撫でて「幸せになるんだよ」と小声で伝えて蓋を閉じ御者へ渡した。
御者は蓋を開けて確認すると「ほう、本当に牛のような柄で可愛らしい、きっと子供達も喜びます」と口元を綻ばせた。
「この子を宜しくお願いします」と願いを込めて伝える。
☆
魔石省では設計付与課の仕事も順調で、今はアルノーさんの助手をやっている。加工課にいた実績があるので加工も出来て、魔力も増大にあるので都合が良いのだそう。
助手をしながら設計付与を詳しく教わったり、魔石の扱い方等も丁寧に教えてくれる。気になる魔石素材があれば採取にも行く。
休みの日はイースタンに出向いたりと忙しい日々を送っている。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる