【BL】異世界転移したら猫獣人の国でした〜魔石食べたらチートになりました〜

アベンチュリン

文字の大きさ
上 下
30 / 53

魔導具③

しおりを挟む
 省長に紹介された人物に会いにヴェセリー商会に来ている。
 客間に通され、向かいの席にはシャーロット、シャーロットの母君ははぎみ、老紳士の三名が着席している。
 母君の僕に向けられる目線は鋭く、時々睨んでくる程だ。学院時代に遊びにきた時もそうだった、さぞかし娘の恋敵だった僕の事を今だに恨んでいるようだ。商談を進めていくと……。

「お母様ちょっと廊下へ……」

 母君はシャーロットに連れられ廊下へ。

「もう!いつまで昔の事を引きずってるの!ルカは親友なのよ。そんな態度取るなら出ていってちょうだい!」

 シャーロットさん全部まる聞こえですよ。目の前の人種族の老紳士と互いに苦笑いで笑顔を交わす。話を聞いてみると老紳士の名はバルシュミーデといい、魔導具を見てスキルを発動すると魔法設計(魔法陣)が浮かんでくるというチートスキルの持ち主だった。
 リディオ(シャーロット父)に懇願され、人間の国からネルザンドへ移住してヴェセリー商会で働いているそう。
 僕が持ってきた魔導具を見てもらうと、二点とも問題なく出来ると言っていた。

「いくらほどでやっていただけますか?」

「そうですねぇ、二点で5000ニヤ(通貨単位)で如何でしょうか?」

「わかりました、それでは……」

 いつの間にか戻っていたシャーロットが口をはさむ。

「ルカ、あなた商人のセンスが皆無ね。言い値で買うなんてナンセンスよ!しかも一つは病気の子に無償で配るものでしょ?値切らないでどうするの?バルシュミーデ、3000ニヤでどう?相手は私の親友でもあり、国よ、魔石省!恩を売らないでどうするの?」

 バルシュミーデさんは根負けして3000ニヤで落ち着いた。生産もヴェセリー商会で一手に引き受けて貰えることになり、生産ラインも確保できた。「お互いにウィンウィンね」とシャーロットは上機嫌、やり手の商人そのものだ。
 ねずみ農園に営業に行くと言ったら、商談の進め方の手解きを教えて貰った。

       ☆

 場所は変わり皇室御用達セント・ニコシェねずみ農園。
 園長のベーベルシュタムさん(ブリティッシュショートヘアー種)は皇室御用達農園ともあって品のある人だ。お互いに挨拶を済ませると。

「さて、本日はどのようなご用件で?」

「ご提案とお願いがあって伺いました。こちらの農園ではねずみの収穫はどのようにされていますか?」
 
 収穫はネット等を使って人型で行っていて苦労しているという。

「実は僕、イースタンの領主になりまして……。街の復興と孤児の自立を支援しているのですが、人型になれない病気があることはご存知ですか?猫型でも勤められる仕事を探しています。収穫を猫型で出来たら効率が良いと思いませんか?」

「猫型なんてねずみが傷ついてしまう……」

「そうですよね、そこでこの魔導具『収穫用クリーンシート』を口に装着すると、立てた犬歯は食い込まず見えないシートでねずみを丸め込むので傷つけず簡単に収穫出来て、殺菌効果もある優れものなんです」

「それは良い!」

「もし、人型になれない孤児を雇い入れて貰えるなら、お試しでこのシート50枚入り一箱無料サンプルを差し上げることが出来るのですが……」

「孤児ですか……、衛生面は大丈夫なのですか?」

「孤児グループの衣食住、入浴等の衛生面もしっかり指導していますのでご安心を」

「孤児もシートも何回か仕事をして貰って、継続出来るか判断しても宜しいですか?」

「ええ、もちろんそれで構いません」

 雇い入れの交渉は無事に決まった。

      ☆

 人型が保てる魔導具が出来たので、届ける為に魔石省をお休みした。
 イースタンに到着すると子猫達が口々に「ルカ様、ルカ様」と僕に近寄ってくれて幸せ過ぎて、ああ、此処は天国なのか……、僕は召されたのか……と錯覚するほどだった。復興は順調に進んでいる。
 


 せっかくなので午後は自宅でゆっくりすることにした。
 お茶を飲みながら賢者様とおしゃべりをする。

〈お前も魔力コントロールがだいぶ上達したから、そろそろ俺を実体化してみるか?〉

〈はい!やってみたいです〉

〈金の光に手の平をかざして、魔力を集中させる〉

〈はい〉

〈そろそろ魔力量も充分じゃないか〉

「偉大なる猫神様、賢き彼の者の姿を映したまえ」

 金の光が集まって、大きな個体となり更に光を強く放つと金色のきつねが現れた。

「猫じゃねーじゃん」つい賢者様の口調が出てしまった。
 うすうす気づいてはいたけど……。猫の妖精ケットシーとか言ってたのに、全然猫じゃない。ていうか僕きつねになっちゃったの?本当嫌なんだけど。きつねって嫌な思い出しかないんだけど……。次々と不満が溢れた。

〈そんなチャラいきつねと一緒にするな!まあなんだ、実は……狐神に化かされて間違えて加護を受けちまったんだよ〉

 本当に賢者なんだろうか……、そんな事あるのだろうか。
 ルカは訝しげに賢者様を睨んだ。

〈まあ化けることは得意だから三毛猫の姿になってりゃいいじゃねーか。普段、俺の姿はルカにしか見えないからな。それよりそのお茶とどら焼きをくれよ!〉

 あ!実体化したから食べれるんだ。……というか食べたくて実体化したんじゃないだろうか。
 しぶしぶお茶とどら焼きを出すと、喜色満面の笑顔でどら焼きにかぶりつく、二足歩行でふさふさした尻尾はゆらゆら揺れている。

 気落ちして水気を含んだ瞳で賢者様を一瞥する、もやもやした気分をどうにかしたくて。

〈尻尾触ってもいい?〉

〈お、おう、ちょっとだけだぞ〉

 何故か少し照れる賢者様。触れて撫でてみると、見た目はふわふわなのに何だかごわごわして手触りが良くない。

〈やっぱり猫の毛並みの方が気持ちいいや……〉

〈何だよ、せっかく触らせてやったのに、もういいだろ!〉

 ふぃっ、と尻尾を退けて体に巻きつけてしまった。

 僕はしばし現実を受け入れるために呆然とする。

 
 
 その時突然、玄関の鍵を開ける音がした。平日のこんな時間誰も来ないはずなのに誰!?
 嫌な汗が首をつたった。












 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...