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閑話★
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セオドール王子妃となって宮殿に住まうことを辞退したいと申し出ると、王位継承権を破棄するのならばと了承された。
セオは躊躇うこともなく承諾した、本当に良かったのだろうか……。
あいもかわらず、セオが建ててくれたログハウスに住んでいる。二人だと少し手狭だ。
セオはこたつではイチャイチャ出来ないとご立腹で、なぜかこたつの周りをソファが居座っている。
そのソファの背もたれは座面との間が開いていて、尻尾が出せる猫獣人仕様だ。
イースタンから保護の為、連れ帰ったミルクに手作りの猫餌をあげて、夕食後ソファでまったりしながらミルクを撫でてやると気持ちいいのか頭を擦り寄せて、指を舐めたり甘噛みをする、ひさびさの猫に絶賛いやされ中だ。
「いい子だね~」と声を掛けながら、顎の下を撫でてやるとニャーアと鳴いて、もっと撫でてと言わんばかりに首を押し付けてくる。
猫らしく過ごして欲しくて、イースタンに行った日以降、念話はしていない。
色んな意味で僕のメンタルが崩壊しそうだからだ。
迷子になるといけないので従魔契約は続行している。
さらにミルクの身体を撫でていると、食後のコーヒーを飲み終わったセオがこちらを見やって不機嫌そうに尻尾をバタンバタンと背もたれや床に当てている。不貞腐れた顔で口を尖らせながら呟く。
「そんなに猫を撫でたいなら、俺を撫でればいいだろ」
心を落ち着かせる為に一呼吸してから諭すように、ミルクを撫でながら穏やかに伝える。
「普通の猫は、撫でてもらうことが仕事みたいなものなんだよ」
「都合の良い仕事だな」小さく吐き捨てた。
本音を言うと、セオを撫でればビロードのような艶やかな漆黒の毛並みが気持ち良すぎて、癒されるというよりは官能的な気分になってしまうのだ。
それを言ってしまったら、その後の報復が恐ろしくて言えずにいた。
今なら家の中だし、言っても平気かな……。勇気を出してセオに耳打ちをした。
「あのね、……セオを撫でると毛並みが気持ち良くてエッチな気分になっちゃうから、まだ時間も早いし夜に撫でてあげるね♡」
セオは少し頬を赤らめたと思ったら、すぐさま猫型になってベッド上で丸くなると「待ってる」とぼそりと呟いて目をつむる。
え!?今、まだ夜八時だよ。……まあ機嫌が良くなって何より。
入浴を済まして、ベッド上を見やるとセオはそのまま丸くなって猫耳と尻尾が動いている。
「お待たせ」と声をかけて、ベッドに腰掛けると、すりすりと擦り寄って来る。
「撫でろ」と言わんばかりに僕の手に頭を擦り寄せてニャーオと鳴く。
あぁ……可愛い、間違いなく僕だけの猫だ。すぅーと猫吸いをするとセオの甘くて良い匂いがする。
闇夜にさざめく漆黒の海のように綺麗な毛並みをそっと指先で梳くと、するりと滞りなく尻尾近くまで持っていかれるほどだ。
ーー本当に綺麗な猫ーー
この綺麗な猫の血筋が絶えてしまうのは残念でしかたない。他人に言われたからではなく、心からそう思う。
この国の皇族の番は正妃のみだが、側妃をとることは可能だ。
たくさん撫でさせてもらいながら、気持ちの昂りを抑えて。
「もし、……お世継ぎが必要なら、……側妃をとっても良いよ、……平気だから」
鼻にかかった声を絞り出すように一言一言告げる。
今にも泣き出しそうな僕をみたセオは。
「全然平気じゃないじゃないか、……そういうの昔から嫌いだろ、正妃だけでいい、正妃のルカだけでいいんだ、子供が欲しければ養子だっていい」
次から次へと溢れ出す涙を、めいっぱい背伸びをして猫型の舌で舐めとってくれた。ざらついた舌だからか、ひりついて苦笑する。
「さあ、たくさん撫でてもらったから、お返ししなきゃな」
空気を変えるようにセオが言うと、ポンッ、と音がして人型になる、が、裸だ。
慌てて眼を塞いだ指の隙間から見える、細めだけれど引き締まった彫刻のように美しい躯体は、何度見ても見慣れなく胸が高鳴ってしまう。
「どうせ脱ぐんだ、裸でいいだろ」
紺青色の瞳が僕を見つめ唇を重ねると、ベッドに組み敷かれ、フィンガースナップを鳴らすと照明が消える。
天窓のステンドグラスから溢れる月光は、揺れる二人の影を落とす。
セオは躊躇うこともなく承諾した、本当に良かったのだろうか……。
あいもかわらず、セオが建ててくれたログハウスに住んでいる。二人だと少し手狭だ。
セオはこたつではイチャイチャ出来ないとご立腹で、なぜかこたつの周りをソファが居座っている。
そのソファの背もたれは座面との間が開いていて、尻尾が出せる猫獣人仕様だ。
イースタンから保護の為、連れ帰ったミルクに手作りの猫餌をあげて、夕食後ソファでまったりしながらミルクを撫でてやると気持ちいいのか頭を擦り寄せて、指を舐めたり甘噛みをする、ひさびさの猫に絶賛いやされ中だ。
「いい子だね~」と声を掛けながら、顎の下を撫でてやるとニャーアと鳴いて、もっと撫でてと言わんばかりに首を押し付けてくる。
猫らしく過ごして欲しくて、イースタンに行った日以降、念話はしていない。
色んな意味で僕のメンタルが崩壊しそうだからだ。
迷子になるといけないので従魔契約は続行している。
さらにミルクの身体を撫でていると、食後のコーヒーを飲み終わったセオがこちらを見やって不機嫌そうに尻尾をバタンバタンと背もたれや床に当てている。不貞腐れた顔で口を尖らせながら呟く。
「そんなに猫を撫でたいなら、俺を撫でればいいだろ」
心を落ち着かせる為に一呼吸してから諭すように、ミルクを撫でながら穏やかに伝える。
「普通の猫は、撫でてもらうことが仕事みたいなものなんだよ」
「都合の良い仕事だな」小さく吐き捨てた。
本音を言うと、セオを撫でればビロードのような艶やかな漆黒の毛並みが気持ち良すぎて、癒されるというよりは官能的な気分になってしまうのだ。
それを言ってしまったら、その後の報復が恐ろしくて言えずにいた。
今なら家の中だし、言っても平気かな……。勇気を出してセオに耳打ちをした。
「あのね、……セオを撫でると毛並みが気持ち良くてエッチな気分になっちゃうから、まだ時間も早いし夜に撫でてあげるね♡」
セオは少し頬を赤らめたと思ったら、すぐさま猫型になってベッド上で丸くなると「待ってる」とぼそりと呟いて目をつむる。
え!?今、まだ夜八時だよ。……まあ機嫌が良くなって何より。
入浴を済まして、ベッド上を見やるとセオはそのまま丸くなって猫耳と尻尾が動いている。
「お待たせ」と声をかけて、ベッドに腰掛けると、すりすりと擦り寄って来る。
「撫でろ」と言わんばかりに僕の手に頭を擦り寄せてニャーオと鳴く。
あぁ……可愛い、間違いなく僕だけの猫だ。すぅーと猫吸いをするとセオの甘くて良い匂いがする。
闇夜にさざめく漆黒の海のように綺麗な毛並みをそっと指先で梳くと、するりと滞りなく尻尾近くまで持っていかれるほどだ。
ーー本当に綺麗な猫ーー
この綺麗な猫の血筋が絶えてしまうのは残念でしかたない。他人に言われたからではなく、心からそう思う。
この国の皇族の番は正妃のみだが、側妃をとることは可能だ。
たくさん撫でさせてもらいながら、気持ちの昂りを抑えて。
「もし、……お世継ぎが必要なら、……側妃をとっても良いよ、……平気だから」
鼻にかかった声を絞り出すように一言一言告げる。
今にも泣き出しそうな僕をみたセオは。
「全然平気じゃないじゃないか、……そういうの昔から嫌いだろ、正妃だけでいい、正妃のルカだけでいいんだ、子供が欲しければ養子だっていい」
次から次へと溢れ出す涙を、めいっぱい背伸びをして猫型の舌で舐めとってくれた。ざらついた舌だからか、ひりついて苦笑する。
「さあ、たくさん撫でてもらったから、お返ししなきゃな」
空気を変えるようにセオが言うと、ポンッ、と音がして人型になる、が、裸だ。
慌てて眼を塞いだ指の隙間から見える、細めだけれど引き締まった彫刻のように美しい躯体は、何度見ても見慣れなく胸が高鳴ってしまう。
「どうせ脱ぐんだ、裸でいいだろ」
紺青色の瞳が僕を見つめ唇を重ねると、ベッドに組み敷かれ、フィンガースナップを鳴らすと照明が消える。
天窓のステンドグラスから溢れる月光は、揺れる二人の影を落とす。
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