22 / 53
皇族即位式〜晩餐会
しおりを挟む
翌日、皇族即位の儀式が大聖堂にて行われ、皇族近親者のみの参列となり、粛々と儀式は進められた。
シルセヴィウス教皇(マヌルネコ種)より。
「それでは新郎新婦は、手を組んで猫神様の像に祈りを捧げてください、新婦は後頭部が見えるように頭を下げてください」
指示通りに二人は祈りを捧げる。
「神よ、セオドール・ブリュイエールの番をお示しください」と教皇が唱えると、ルカの頸にある犬歯の噛み跡がぼんやりと光を放った。
「神がルカ・マルコヴィックを番と認めました、儀式は成功です」と教皇が、けたたましく声を上げると大聖堂は歓声と拍手で包まれた。
続けて、皇族即位の儀式を行った。僕は猫神様像の前に跪いて祈りを捧げる、教皇様が呪文を唱えると身体が熱くなって両耳の金色の毛並みに月星のマークが浮かび上がった。
☆
夕刻より宮殿のホールでは晩餐会を催している。前世でいう披露宴のようだ。ゲストは親類縁者、貴族が殆どだ。
着座形式で、宮殿シェフ選りすぐりの素材の豪華ディナーが振る舞われている。
次から次へと代わる代わる貴族達が挨拶に来た、僕にとっては面識のない人ばかりで人疲れをして表情が強張る。
挨拶が途切れ始めた頃、見知った顔があらわれ頬が緩んだ。
そう、学院時代からの親友レオだ。まだ二十歳を過ぎたばかりの僕等なのに、何故か大人のオスの色気が溢れ出しそうな風貌だ。垂れ目がちな大きな瞳の目元には小さなホクロがあって、色っぽいというか、艶っぽいというか……。
学院時代は男性アイドルのように可愛いらしかったレオが、身長だって入学した頃は僕とさほど変わらなかったのに、あっという間に追い越され現在にいたる。
父親から、家業のワイナリーに入る前に武者修行として現在はバーのオーナーをしている。「客のニーズを理解して来い」と言われているらしい。
「ご結婚おめでとうございます。お二人の未来に栄光あれ! 我がワイナリーで新発売された『またたび酒』をお持ちしました、お味見は如何でしょうか?」
「じゃあ、いただこうか」とセオ。
「じゃあ、僕はこの小さいグラスへ」と食前酒の入っていたグラスを差し出す、お酒は弱いので少しにしておこう。注いでもらった時に「レオありがとうね」と囁くと「親友の結婚式に参列するのは当たり前だ」と返された。
懐かしくて、嬉しくて少し歓談した。
セオはまたたび酒を口にすると「結構あとを引く味で美味しいな」と言った。
せっかくレオが持ってきてくれたんだ、ひと口だけでもと思い口を付けると、辛さと匂いのある日本酒のような味にびっくりしてグラスを遠ざけた。それでもと思い、舌をちろちろとグラスに入れて猫飲みをした。
目線を感じホールを見渡すとエメラルダ先生と目が合って、ぎろっと鋭い眼差しで見られて、慌ててグラスを置いた。
宴もたけなわ、テーブルにメインディッシュが運ばれてきた。
鉄板でジュウジュウと焼かれた音が聞こえてくる。上に被されたクローシュを配膳係りがパカっと外すと……、な、なんと!鉄板上にこんがり焼かれたねずみの丸焼きが現れた!それを見た僕は。
「ぎゃあああああーーーー」と叫んだ。
ホール内の来賓全員の視線が僕に集まる、エメラルダ先生は額に手を当てて倒れ込んだ。僕の思考は固まった。
セオに目配せをして小声で「どうしよう僕、ねずみだけはどうしても食べられない」泣きそうになる。
「宮殿のねずみは指定農園で育てられた有機野菜にトリュフを加えた餌のみを与えている最高級品だぞ……まあ無理しなくていい」そう小声でそう告げると、右手を高々と上げフィンガースナップを鳴らす。
すると此方に集まっていた視線が、それぞれ違う方向を向いてくれた。何!?魔法の指パッチン?
エメラルダ先生の教えに従うのなら、シェフへの感謝を忘れずにひと口だけでも食すこと。僕はねずみの尻尾を少しだけナイフで切りフォークで口に運ぶ……。
口に入った途端に酷い異物感に襲われ。下を向いて、何度も噛み直す……そう猫食いをしてしまったのだ。
何とか飲み込んだあと、エメラルダ先生の方を見やると、先程周りの人に介抱されて立ち上がっていたはずの先生がまたもや倒れている。
僕はテーブルマナーご法度をことごとく行なってしまった。
猫飲み、猫食い、大声を上げる……やらかしのフルコースだ、後でお詫びに行かなければ……。
コース料理の最後にデザートの梨と林檎のコンポートが配膳されて暫く経ったあと、ホール内にバンド奏者が何人かお辞儀をして入って来た。
生バンドに期待が膨らむなか、始めはムーディーな音楽を二曲ほど演奏後、ダンス音楽に変わっていく。
「一曲いかがですか?」とセオは立ち上がり右手のひらを差し出して誘ってくれた。きっと主催者なので早めに踊った方が良いという事だろう。
「はい」僕も立ち上がり差し出された手を取った。
ホール中央にダンススペースがあり、その周りに会食席が設置されていて、ダンスが見やすいように設営されている。
もうダンスでしか名誉挽回する場面はない、曲前、手を組み腰に手を回すと、気合い入れに僕はぐいっとセオを引き寄せた。
「今日は積極的だな」とニヤリと笑うセオ。
「宜しくお願いします」覚悟を決めた僕。
セオのリードに任せながら、時々腰を捻ったり、機微良く振り返る動きを加え、指先足先まで神経を行き渡らせ踊ることに集中した。
セオはダンスが上手く安心して身体を預けられる。
エメラルダ先生とエマが考えてくれたこのタキシードの裾は動きに合わせて、良く靡いている。シャンデリアの煌めきに反射して虹色に光るレースはとても幻想的で美しい。
ホール内は二人のダンスに見惚れて色めき立っている。
曲が終わり、呼吸を整えていると来賓から拍手喝采を浴びた。
顔を合わせると、照れくさそうな笑顔になり、二人でお辞儀をして返した。
シルセヴィウス教皇(マヌルネコ種)より。
「それでは新郎新婦は、手を組んで猫神様の像に祈りを捧げてください、新婦は後頭部が見えるように頭を下げてください」
指示通りに二人は祈りを捧げる。
「神よ、セオドール・ブリュイエールの番をお示しください」と教皇が唱えると、ルカの頸にある犬歯の噛み跡がぼんやりと光を放った。
「神がルカ・マルコヴィックを番と認めました、儀式は成功です」と教皇が、けたたましく声を上げると大聖堂は歓声と拍手で包まれた。
続けて、皇族即位の儀式を行った。僕は猫神様像の前に跪いて祈りを捧げる、教皇様が呪文を唱えると身体が熱くなって両耳の金色の毛並みに月星のマークが浮かび上がった。
☆
夕刻より宮殿のホールでは晩餐会を催している。前世でいう披露宴のようだ。ゲストは親類縁者、貴族が殆どだ。
着座形式で、宮殿シェフ選りすぐりの素材の豪華ディナーが振る舞われている。
次から次へと代わる代わる貴族達が挨拶に来た、僕にとっては面識のない人ばかりで人疲れをして表情が強張る。
挨拶が途切れ始めた頃、見知った顔があらわれ頬が緩んだ。
そう、学院時代からの親友レオだ。まだ二十歳を過ぎたばかりの僕等なのに、何故か大人のオスの色気が溢れ出しそうな風貌だ。垂れ目がちな大きな瞳の目元には小さなホクロがあって、色っぽいというか、艶っぽいというか……。
学院時代は男性アイドルのように可愛いらしかったレオが、身長だって入学した頃は僕とさほど変わらなかったのに、あっという間に追い越され現在にいたる。
父親から、家業のワイナリーに入る前に武者修行として現在はバーのオーナーをしている。「客のニーズを理解して来い」と言われているらしい。
「ご結婚おめでとうございます。お二人の未来に栄光あれ! 我がワイナリーで新発売された『またたび酒』をお持ちしました、お味見は如何でしょうか?」
「じゃあ、いただこうか」とセオ。
「じゃあ、僕はこの小さいグラスへ」と食前酒の入っていたグラスを差し出す、お酒は弱いので少しにしておこう。注いでもらった時に「レオありがとうね」と囁くと「親友の結婚式に参列するのは当たり前だ」と返された。
懐かしくて、嬉しくて少し歓談した。
セオはまたたび酒を口にすると「結構あとを引く味で美味しいな」と言った。
せっかくレオが持ってきてくれたんだ、ひと口だけでもと思い口を付けると、辛さと匂いのある日本酒のような味にびっくりしてグラスを遠ざけた。それでもと思い、舌をちろちろとグラスに入れて猫飲みをした。
目線を感じホールを見渡すとエメラルダ先生と目が合って、ぎろっと鋭い眼差しで見られて、慌ててグラスを置いた。
宴もたけなわ、テーブルにメインディッシュが運ばれてきた。
鉄板でジュウジュウと焼かれた音が聞こえてくる。上に被されたクローシュを配膳係りがパカっと外すと……、な、なんと!鉄板上にこんがり焼かれたねずみの丸焼きが現れた!それを見た僕は。
「ぎゃあああああーーーー」と叫んだ。
ホール内の来賓全員の視線が僕に集まる、エメラルダ先生は額に手を当てて倒れ込んだ。僕の思考は固まった。
セオに目配せをして小声で「どうしよう僕、ねずみだけはどうしても食べられない」泣きそうになる。
「宮殿のねずみは指定農園で育てられた有機野菜にトリュフを加えた餌のみを与えている最高級品だぞ……まあ無理しなくていい」そう小声でそう告げると、右手を高々と上げフィンガースナップを鳴らす。
すると此方に集まっていた視線が、それぞれ違う方向を向いてくれた。何!?魔法の指パッチン?
エメラルダ先生の教えに従うのなら、シェフへの感謝を忘れずにひと口だけでも食すこと。僕はねずみの尻尾を少しだけナイフで切りフォークで口に運ぶ……。
口に入った途端に酷い異物感に襲われ。下を向いて、何度も噛み直す……そう猫食いをしてしまったのだ。
何とか飲み込んだあと、エメラルダ先生の方を見やると、先程周りの人に介抱されて立ち上がっていたはずの先生がまたもや倒れている。
僕はテーブルマナーご法度をことごとく行なってしまった。
猫飲み、猫食い、大声を上げる……やらかしのフルコースだ、後でお詫びに行かなければ……。
コース料理の最後にデザートの梨と林檎のコンポートが配膳されて暫く経ったあと、ホール内にバンド奏者が何人かお辞儀をして入って来た。
生バンドに期待が膨らむなか、始めはムーディーな音楽を二曲ほど演奏後、ダンス音楽に変わっていく。
「一曲いかがですか?」とセオは立ち上がり右手のひらを差し出して誘ってくれた。きっと主催者なので早めに踊った方が良いという事だろう。
「はい」僕も立ち上がり差し出された手を取った。
ホール中央にダンススペースがあり、その周りに会食席が設置されていて、ダンスが見やすいように設営されている。
もうダンスでしか名誉挽回する場面はない、曲前、手を組み腰に手を回すと、気合い入れに僕はぐいっとセオを引き寄せた。
「今日は積極的だな」とニヤリと笑うセオ。
「宜しくお願いします」覚悟を決めた僕。
セオのリードに任せながら、時々腰を捻ったり、機微良く振り返る動きを加え、指先足先まで神経を行き渡らせ踊ることに集中した。
セオはダンスが上手く安心して身体を預けられる。
エメラルダ先生とエマが考えてくれたこのタキシードの裾は動きに合わせて、良く靡いている。シャンデリアの煌めきに反射して虹色に光るレースはとても幻想的で美しい。
ホール内は二人のダンスに見惚れて色めき立っている。
曲が終わり、呼吸を整えていると来賓から拍手喝采を浴びた。
顔を合わせると、照れくさそうな笑顔になり、二人でお辞儀をして返した。
12
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。
N2O
BL
狼の獣人(異世界転移者)×兎の獣人(童顔の魔法士団団長)
お互いのことが出会ってすぐ大好きになっちゃう話。
待てが出来ない狼くんです。
※独自設定、ご都合主義です
※予告なくいちゃいちゃシーン入ります
主人公イラストを『しき』様(https://twitter.com/a20wa2fu12ji)に描いていただき、表紙にさせていただきました。
美しい・・・!

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる