【BL】異世界転移したら猫獣人の国でした〜魔石食べたらチートになりました〜

アベンチュリン

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皇族即位式〜晩餐会

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 翌日、皇族即位の儀式が大聖堂にて行われ、皇族近親者のみの参列となり、粛々と儀式は進められた。

 シルセヴィウス教皇(マヌルネコ種)より。

「それでは新郎新婦は、手を組んで猫神様の像に祈りを捧げてください、新婦は後頭部が見えるように頭を下げてください」

 指示通りに二人は祈りを捧げる。

「神よ、セオドール・ブリュイエールの番をお示しください」と教皇が唱えると、ルカの頸にある犬歯の噛み跡がぼんやりと光を放った。

「神がルカ・マルコヴィックを番と認めました、儀式は成功です」と教皇が、けたたましく声を上げると大聖堂は歓声と拍手で包まれた。

 続けて、皇族即位の儀式を行った。僕は猫神様像の前に跪いて祈りを捧げる、教皇様が呪文を唱えると身体が熱くなって両耳の金色の毛並みに月星のマークが浮かび上がった。

     ☆

 夕刻より宮殿のホールでは晩餐会を催している。前世でいう披露宴のようだ。ゲストは親類縁者、貴族が殆どだ。
 着座形式で、宮殿シェフ選りすぐりの素材の豪華ディナーが振る舞われている。

 次から次へと代わる代わる貴族達が挨拶に来た、僕にとっては面識のない人ばかりで人疲れをして表情が強張る。

 挨拶が途切れ始めた頃、見知った顔があらわれ頬が緩んだ。
 そう、学院時代からの親友レオだ。まだ二十歳を過ぎたばかりの僕等なのに、何故か大人のオスの色気が溢れ出しそうな風貌だ。垂れ目がちな大きな瞳の目元には小さなホクロがあって、色っぽいというか、艶っぽいというか……。
 学院時代は男性アイドルのように可愛いらしかったレオが、身長だって入学した頃は僕とさほど変わらなかったのに、あっという間に追い越され現在にいたる。
 父親から、家業のワイナリーに入る前に武者修行として現在はバーのオーナーをしている。「客のニーズを理解して来い」と言われているらしい。

「ご結婚おめでとうございます。お二人の未来に栄光あれ! 我がワイナリーで新発売された『またたび酒』をお持ちしました、お味見は如何でしょうか?」

「じゃあ、いただこうか」とセオ。

「じゃあ、僕はこの小さいグラスへ」と食前酒の入っていたグラスを差し出す、お酒は弱いので少しにしておこう。注いでもらった時に「レオありがとうね」と囁くと「親友の結婚式に参列するのは当たり前だ」と返された。
 
 懐かしくて、嬉しくて少し歓談した。

 セオはまたたび酒を口にすると「結構あとを引く味で美味しいな」と言った。
 せっかくレオが持ってきてくれたんだ、ひと口だけでもと思い口を付けると、辛さと匂いのある日本酒のような味にびっくりしてグラスを遠ざけた。それでもと思い、舌をちろちろとグラスに入れて猫飲みをした。
 目線を感じホールを見渡すとエメラルダ先生と目が合って、ぎろっと鋭い眼差しで見られて、慌ててグラスを置いた。

 宴もたけなわ、テーブルにメインディッシュが運ばれてきた。
 鉄板でジュウジュウと焼かれた音が聞こえてくる。上に被されたクローシュを配膳係りがパカっと外すと……、な、なんと!鉄板上にこんがり焼かれたが現れた!それを見た僕は。

「ぎゃあああああーーーー」と叫んだ。
 
 ホール内の来賓全員の視線が僕に集まる、エメラルダ先生は額に手を当てて倒れ込んだ。僕の思考は固まった。

 セオに目配せをして小声で「どうしよう僕、ねずみだけはどうしても食べられない」泣きそうになる。

宮殿ウチのねずみは指定農園で育てられた有機野菜にトリュフを加えた餌のみを与えている最高級品だぞ……まあ無理しなくていい」そう小声でそう告げると、右手を高々と上げフィンガースナップを鳴らす。

 すると此方に集まっていた視線が、それぞれ違う方向を向いてくれた。何!?魔法の指パッチン?

 エメラルダ先生の教えに従うのなら、シェフへの感謝を忘れずにひと口だけでも食すこと。僕はねずみの尻尾を少しだけナイフで切りフォークで口に運ぶ……。
 口に入った途端に酷い異物感に襲われ。下を向いて、何度も噛み直す……そう猫食いをしてしまったのだ。
 何とか飲み込んだあと、エメラルダ先生の方を見やると、先程周りの人に介抱されて立ち上がっていたはずの先生がまたもや倒れている。
 僕はテーブルマナーご法度をことごとく行なってしまった。
 猫飲み、猫食い、大声を上げる……やらかしのフルコースだ、後でお詫びに行かなければ……。



 コース料理の最後にデザートの梨と林檎のコンポートが配膳されて暫く経ったあと、ホール内にバンド奏者が何人かお辞儀をして入って来た。
 生バンドに期待が膨らむなか、始めはムーディーな音楽を二曲ほど演奏後、ダンス音楽に変わっていく。

「一曲いかがですか?」とセオは立ち上がり右手のひらを差し出して誘ってくれた。きっと主催者なので早めに踊った方が良いという事だろう。

「はい」僕も立ち上がり差し出された手を取った。

 ホール中央にダンススペースがあり、その周りに会食席が設置されていて、ダンスが見やすいように設営されている。

 もうダンスでしか名誉挽回する場面はない、曲前、手を組み腰に手を回すと、気合い入れに僕はぐいっとセオを引き寄せた。

「今日は積極的だな」とニヤリと笑うセオ。

「宜しくお願いします」覚悟を決めた僕。

 セオのリードに任せながら、時々腰を捻ったり、機微良く振り返る動きを加え、指先足先まで神経を行き渡らせ踊ることに集中した。
 セオはダンスが上手く安心して身体を預けられる。

 エメラルダ先生とエマが考えてくれたこのタキシードの裾は動きに合わせて、良く靡いている。シャンデリアの煌めきに反射して虹色に光るレースはとても幻想的で美しい。

 ホール内は二人のダンスに見惚れて色めき立っている。
 
 曲が終わり、呼吸を整えていると来賓から拍手喝采を浴びた。

 顔を合わせると、照れくさそうな笑顔になり、二人でお辞儀をして返した。






 

 


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