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子猫皇女②☆
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本日の妃教育はダンスレッスン。エメラルダ先生は見学で、ダンス講師のジャンパオロ先生(ボンベイ種・オス)に指導してもらっている。
セオとはまた違うタイプの黒猫で、しなやかな身体つきに上下黒のレオタードに身を包み、ゴールドの腰布を巻いている。その身体のラインが丸見えのピッチピチのレオタードは先生の中心の存在感を露わにしている。前世だったら公然わいせつ罪に値するんじゃないかと思うほどだ。
「アン、ドゥ、トロワ、パートナーに身を委ねて、遠心力で引き寄せる。」
「はい!」
「曲のテンポに合わせて、足がもつれないように」
「はい!」
学院時代にプロムの練習でもジャンパオロ先生に教わった事があるけれど、その時はもっと普通だったと思う。でも今はすごく密着してくるし、息を吹きかけられたり、耳元で囁かれたり正直気持ち悪い、話し方からしてもオネエだ。学院生の子供には興味がなくて、大人になった僕なら良いのかな?どう見ても僕、オネエ受けするタイプじゃなさそうなのに……。
気持ちを紛らわそうと、ドアの方を見やるとエメラルダ先生と衣装担当の侍女エマが何やら打ち合わせをしていて聞き耳を立ててみる。
「タキシード同士のダンスでしょ……、妃側がターンした時に裾がレース等でひらひら出来たら素敵なんだけど……」
「レース良いですね!普通のタキシード同士じゃ華がないですものね、妃側は柔らかい生地を採用して、レースをふんだんに使って、少しタックも入れて動きを出しましょう」
「まあ!それは華やかで素敵ね」
僕が映えるように色々考えてくれてるんだ……、ありがたい、眼頭が熱くなる。
「ダンスに集中!」
先生に抱き寄せられて、また密着する……。
「素敵な衣装になりそうね♡」と耳元で囁かれる。
気持ち悪い……。でもさすがはプロ、教え方は上手だし、わかりやすいから文句が言えない。
「衣装に合わせて腰の動きを追加しちゃおうかしら」
腰を捻る動きが加わった。曲が終わった頃、もうすぐ終了でお昼かなと時計を見ていたら。
「本番が上手くいくおまじないを教えてあげるわ!ダンスが始まる前、パートナーと向き合った瞬間、腰をぐぃっと引き寄せなさい、パートナーのスイッチが入って、より情熱的なダンスになるわよ、ほらやってみて」
えぇー、とテンション低めに引き寄せる。
「もっとしっかり」耳元で囁かれる。
やけになって強めに引き寄せる。
「あっ♡いいわ、そのくらいがベターよ」
先生が引き寄せて欲しかっただけなんじゃないだろうか……。
「私のレッスンは今日で最後になります、頑張りましたね。素敵な晩餐会になるよう祈っております」
「先生!ありがとうございました」やっとこの時間から開放されると思うと満面の笑みとなった。
「じゃあ、お昼休憩に」エメラルダ先生の掛け声で、入り口ドアを見やると。
可愛い、可愛い僕の癒しの子猫皇女が絵本を腕に抱え、こちらを覗きこんでいる。先程までの苦悶の時間が浄化されるようだ。
最近はすっかり仲良くなって、お昼休みには遊びに来てくれる。
「どこで遊ぶ?」
「ガゼボ!」
はぁ~、可愛い。可愛いの権化。いつものガゼボのベンチに座ると、ちょこんと隣に子猫皇女様が座る。
「すぐにサンドウィッチ食べ終わるから、少し待っててね。午前中は何して遊んだの?」
「ごぜんちゅうはね、えをならったの。ごごはぴあのやるって」
まだ小さいのに英才教育……大変だなぁ。まだまだ母親に甘えたい時期だろうに……。
絵本を読んでほしいとせがまれ、読み始めて暫く経つと、彼女は僕にもたれ眠ってしまった。
周りを見回して、人がいない事を確認して、人型なら頭を撫でても平気だよね?自問自答する。
そーっと、猫耳に触らないように頭を撫でてみる。子供ならではの柔毛が心地良く、するすると指が動く。喉を鳴らして心地良さそうにしている。
そのうち目を覚まして、絵本の続きを読む。
この癒やしのランチタイムも今日で終わりだと思うと寂しさが募った。
「……アンジェリーヌ様、ランチの時間に遊べるのは今日で最後になります」
「え!?もうあえないの?」皇女様の瞳が曇る。心配を打ち消すように穏やかな笑みを返す。
「ううん逆かな、これからは兄妹になるんだからいつでも会えるようになるよ!」
喜色満面の皇女様。すると侍女が迎えに来て、抱き抱えられて連れて行ってしまった。
こうして僕の妃教育が終了した。
セオとはまた違うタイプの黒猫で、しなやかな身体つきに上下黒のレオタードに身を包み、ゴールドの腰布を巻いている。その身体のラインが丸見えのピッチピチのレオタードは先生の中心の存在感を露わにしている。前世だったら公然わいせつ罪に値するんじゃないかと思うほどだ。
「アン、ドゥ、トロワ、パートナーに身を委ねて、遠心力で引き寄せる。」
「はい!」
「曲のテンポに合わせて、足がもつれないように」
「はい!」
学院時代にプロムの練習でもジャンパオロ先生に教わった事があるけれど、その時はもっと普通だったと思う。でも今はすごく密着してくるし、息を吹きかけられたり、耳元で囁かれたり正直気持ち悪い、話し方からしてもオネエだ。学院生の子供には興味がなくて、大人になった僕なら良いのかな?どう見ても僕、オネエ受けするタイプじゃなさそうなのに……。
気持ちを紛らわそうと、ドアの方を見やるとエメラルダ先生と衣装担当の侍女エマが何やら打ち合わせをしていて聞き耳を立ててみる。
「タキシード同士のダンスでしょ……、妃側がターンした時に裾がレース等でひらひら出来たら素敵なんだけど……」
「レース良いですね!普通のタキシード同士じゃ華がないですものね、妃側は柔らかい生地を採用して、レースをふんだんに使って、少しタックも入れて動きを出しましょう」
「まあ!それは華やかで素敵ね」
僕が映えるように色々考えてくれてるんだ……、ありがたい、眼頭が熱くなる。
「ダンスに集中!」
先生に抱き寄せられて、また密着する……。
「素敵な衣装になりそうね♡」と耳元で囁かれる。
気持ち悪い……。でもさすがはプロ、教え方は上手だし、わかりやすいから文句が言えない。
「衣装に合わせて腰の動きを追加しちゃおうかしら」
腰を捻る動きが加わった。曲が終わった頃、もうすぐ終了でお昼かなと時計を見ていたら。
「本番が上手くいくおまじないを教えてあげるわ!ダンスが始まる前、パートナーと向き合った瞬間、腰をぐぃっと引き寄せなさい、パートナーのスイッチが入って、より情熱的なダンスになるわよ、ほらやってみて」
えぇー、とテンション低めに引き寄せる。
「もっとしっかり」耳元で囁かれる。
やけになって強めに引き寄せる。
「あっ♡いいわ、そのくらいがベターよ」
先生が引き寄せて欲しかっただけなんじゃないだろうか……。
「私のレッスンは今日で最後になります、頑張りましたね。素敵な晩餐会になるよう祈っております」
「先生!ありがとうございました」やっとこの時間から開放されると思うと満面の笑みとなった。
「じゃあ、お昼休憩に」エメラルダ先生の掛け声で、入り口ドアを見やると。
可愛い、可愛い僕の癒しの子猫皇女が絵本を腕に抱え、こちらを覗きこんでいる。先程までの苦悶の時間が浄化されるようだ。
最近はすっかり仲良くなって、お昼休みには遊びに来てくれる。
「どこで遊ぶ?」
「ガゼボ!」
はぁ~、可愛い。可愛いの権化。いつものガゼボのベンチに座ると、ちょこんと隣に子猫皇女様が座る。
「すぐにサンドウィッチ食べ終わるから、少し待っててね。午前中は何して遊んだの?」
「ごぜんちゅうはね、えをならったの。ごごはぴあのやるって」
まだ小さいのに英才教育……大変だなぁ。まだまだ母親に甘えたい時期だろうに……。
絵本を読んでほしいとせがまれ、読み始めて暫く経つと、彼女は僕にもたれ眠ってしまった。
周りを見回して、人がいない事を確認して、人型なら頭を撫でても平気だよね?自問自答する。
そーっと、猫耳に触らないように頭を撫でてみる。子供ならではの柔毛が心地良く、するすると指が動く。喉を鳴らして心地良さそうにしている。
そのうち目を覚まして、絵本の続きを読む。
この癒やしのランチタイムも今日で終わりだと思うと寂しさが募った。
「……アンジェリーヌ様、ランチの時間に遊べるのは今日で最後になります」
「え!?もうあえないの?」皇女様の瞳が曇る。心配を打ち消すように穏やかな笑みを返す。
「ううん逆かな、これからは兄妹になるんだからいつでも会えるようになるよ!」
喜色満面の皇女様。すると侍女が迎えに来て、抱き抱えられて連れて行ってしまった。
こうして僕の妃教育が終了した。
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