12 / 53
猫獣人
しおりを挟む
僕は魔石省の白の詰襟の制服に身を包み、仕事で魔石の研磨を行っている。最近の悩みの種の賢者様の声が脳内に響いてくる。念話以外でも僕の心の声まで聞こえてしまうから厄介だ。
〈おい、お前!せっかく俺様の魔力を受け継いだのに、そんなチンケな石ばっかり磨いてないでさー、修業に出かけたりしなくていいのかよ〉
〈この魔石を磨くのが僕の仕事なの!もう、危ない所には1人で行かないと、セオと約束したんだ……行かないよ!〉
〈僕、ぼく、ボク……って二十歳にもなって!僕っ子ぶりっこかっ!〉
俺って言ってみたら違和感があったんだから仕方ないじゃん。ぶりっこって……死語だし……。
〈私語?ん、なんだそれ〉
あ、おじいちゃん……。
〈俺はお前のおじいちゃんじゃねぇ!〉
この国のどんな偏屈なおじさんも猫だと思うと、何だかほっこりして憎めなくなるのだが、この意識体の金色の光、即ち賢者様だけはどうしても無理だ。
〈それはそうと、僕はなんで金色の毛並みで尻尾はふさふさになってしまったの?〉
〈それは俺の最強魔力の影響だな!カッケェだろ!〉
金色とか嫌なんですけど……、出来れば保護色が良かった。すぐに魔獣にやられそう……。
〈最強だから安心しろ!嫌なら三毛猫に変化すりゃいいだろ?ピーピーうるせぇな〉
隣のデスクで作業しているサクラさん(黒ブチ猫、ハチワレ)が、表情がくるくる変わり溜め息や怒っている僕の様子を見て、この人大丈夫なのか?と言いたげな目線を送ってくるので、愛想笑いで誤魔化す。
〈賢者の俺様が、お前にこの国の起源について話をしてやろう〉
〈仕事中なので結構です〉
〈大事な話だから、まあ、聞いとけって!石磨きながらでいいからよぉ〉
気乗りしない僕を他所に話し出す。
〈昔、魔女と猫が多く住む小さな国があって、魔女は猫を愛し幸せに暮らしていたんだ。人間が住む隣国は、強力な魔法を恐れて魔女を異端として位置付け、排除することになった。それが、あの魔女狩りだ。
魔女狩りと称し、その国の魔女全員を処刑して、殆どの猫を時計台から投げ殺した〉
〈酷いな…….殆どの猫って……史実では黒猫だけの筈だけど……〉
〈黒猫だけじゃねぇ、化けてるかもしれねぇからって殆どの猫が投げ殺された、
魔力もスキルも国随一と言われていた魔女クレアはその光景を見て、嘆き、死ぬ間際に、こんな悲しいことが二度と起こらないようにと、最後に生き残った番の猫に自分の魔力を注ぎ込んで、この2匹を守人として、次に生まれる子供からは過度の魔力は与えず、その代わりに人としての知恵を与えた。過度な魔力は魔女狩りの標的になると思ったんだ。それが猫獣人の謂れだ。クレアの希望……、言わば呪いだな。
産まれて来た子供が人型になれずに亡くなる子がいるのも呪いの弊害だ。
守人になった番の猫は、どうにかこうにか逃げ延びて、遥か東方の緑が豊かなこの土地に一国を築き上げた。
この国の高い建物の屋上は柵に覆われているだろ!物理的に柵で覆えない時計台や、窓から見える学院の鐘塔も出来る限り高く創り、上に登って足が 含んで立っていられないようになっている。
それはそうと、始祖の番の一人は誰だと思う?〉
え!?誰って僕の知ってる人かなぁ?
〈俺様のこの顔見てもわからないのかよ!〉
いや、意識体だし。表情は見えない……。
〈お前が魔力コントロールがポンコツだからだろっ! 始祖の一人は俺様だよ!〉
えー!またまたぁ、始祖様はそんな話し方はしないってー。
〈お前の基準は、全て話し方なのか? ……まぁいいや、俺ら守人は初めは猫の妖精として実体化して戦っていたんだけど、何百年と経って魔力はあっても自分では上手く使えなくなっていって……誰かに魔力を譲渡しないと使えなくなったんだ。
だからお前はもっと精進して、魔法を覚えなくちゃならないんだ!〉
〈そんなこと言われても……〉
〈この前は、随分お楽しみだったみてえじゃねぇか。また魔力コントロールが上手く行かなくなったら恋人に縋るのかぁ?〉
お楽しみとか言わないでよ、恥ずかしい。
〈そりゃ、困るけど……。 うーん、危ない所には絶対行かないからね!……そうだ!場所は良い所がある、僕に任せて!〉
週末、魔法の練習に行くことになった。
〈おい、お前!せっかく俺様の魔力を受け継いだのに、そんなチンケな石ばっかり磨いてないでさー、修業に出かけたりしなくていいのかよ〉
〈この魔石を磨くのが僕の仕事なの!もう、危ない所には1人で行かないと、セオと約束したんだ……行かないよ!〉
〈僕、ぼく、ボク……って二十歳にもなって!僕っ子ぶりっこかっ!〉
俺って言ってみたら違和感があったんだから仕方ないじゃん。ぶりっこって……死語だし……。
〈私語?ん、なんだそれ〉
あ、おじいちゃん……。
〈俺はお前のおじいちゃんじゃねぇ!〉
この国のどんな偏屈なおじさんも猫だと思うと、何だかほっこりして憎めなくなるのだが、この意識体の金色の光、即ち賢者様だけはどうしても無理だ。
〈それはそうと、僕はなんで金色の毛並みで尻尾はふさふさになってしまったの?〉
〈それは俺の最強魔力の影響だな!カッケェだろ!〉
金色とか嫌なんですけど……、出来れば保護色が良かった。すぐに魔獣にやられそう……。
〈最強だから安心しろ!嫌なら三毛猫に変化すりゃいいだろ?ピーピーうるせぇな〉
隣のデスクで作業しているサクラさん(黒ブチ猫、ハチワレ)が、表情がくるくる変わり溜め息や怒っている僕の様子を見て、この人大丈夫なのか?と言いたげな目線を送ってくるので、愛想笑いで誤魔化す。
〈賢者の俺様が、お前にこの国の起源について話をしてやろう〉
〈仕事中なので結構です〉
〈大事な話だから、まあ、聞いとけって!石磨きながらでいいからよぉ〉
気乗りしない僕を他所に話し出す。
〈昔、魔女と猫が多く住む小さな国があって、魔女は猫を愛し幸せに暮らしていたんだ。人間が住む隣国は、強力な魔法を恐れて魔女を異端として位置付け、排除することになった。それが、あの魔女狩りだ。
魔女狩りと称し、その国の魔女全員を処刑して、殆どの猫を時計台から投げ殺した〉
〈酷いな…….殆どの猫って……史実では黒猫だけの筈だけど……〉
〈黒猫だけじゃねぇ、化けてるかもしれねぇからって殆どの猫が投げ殺された、
魔力もスキルも国随一と言われていた魔女クレアはその光景を見て、嘆き、死ぬ間際に、こんな悲しいことが二度と起こらないようにと、最後に生き残った番の猫に自分の魔力を注ぎ込んで、この2匹を守人として、次に生まれる子供からは過度の魔力は与えず、その代わりに人としての知恵を与えた。過度な魔力は魔女狩りの標的になると思ったんだ。それが猫獣人の謂れだ。クレアの希望……、言わば呪いだな。
産まれて来た子供が人型になれずに亡くなる子がいるのも呪いの弊害だ。
守人になった番の猫は、どうにかこうにか逃げ延びて、遥か東方の緑が豊かなこの土地に一国を築き上げた。
この国の高い建物の屋上は柵に覆われているだろ!物理的に柵で覆えない時計台や、窓から見える学院の鐘塔も出来る限り高く創り、上に登って足が 含んで立っていられないようになっている。
それはそうと、始祖の番の一人は誰だと思う?〉
え!?誰って僕の知ってる人かなぁ?
〈俺様のこの顔見てもわからないのかよ!〉
いや、意識体だし。表情は見えない……。
〈お前が魔力コントロールがポンコツだからだろっ! 始祖の一人は俺様だよ!〉
えー!またまたぁ、始祖様はそんな話し方はしないってー。
〈お前の基準は、全て話し方なのか? ……まぁいいや、俺ら守人は初めは猫の妖精として実体化して戦っていたんだけど、何百年と経って魔力はあっても自分では上手く使えなくなっていって……誰かに魔力を譲渡しないと使えなくなったんだ。
だからお前はもっと精進して、魔法を覚えなくちゃならないんだ!〉
〈そんなこと言われても……〉
〈この前は、随分お楽しみだったみてえじゃねぇか。また魔力コントロールが上手く行かなくなったら恋人に縋るのかぁ?〉
お楽しみとか言わないでよ、恥ずかしい。
〈そりゃ、困るけど……。 うーん、危ない所には絶対行かないからね!……そうだ!場所は良い所がある、僕に任せて!〉
週末、魔法の練習に行くことになった。
11
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる