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帰還
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第一騎士団は北部にあるゾワーブの森での魔獣討伐を終え、馬で帰路についていた。先行隊から報告が入る。
「団長!先行隊より伝令です。我が国の民と思わしき負傷者を発見!指示を待つとのことです」
「わかった、すぐに向かうと伝えてくれ」
ラファエル一行が、その場所に到着。部下が「団長ご到着です!」と発すると、騎士達の人だかりが受け入るように間を空ける。
そこには、金色の毛並みの猫のような狐のような獣人がいた。尻尾はふさふさと主張するように揺れている。身体は随分と負傷している様子だ。
「私が連れていく」とラファエル自ら抱き上げ、一度部下に預け、馬に跨ると再び抱き抱える。
馬はゆっくりと駆ける。
☆
セオに似ているが、どこか甘さがないような匂いがする……。ふ、と目を覚まし仰ぎ見ると、頭上目の前に白虎の獣人がいる。
その姿を見て、噂でよく聞く第一王子ラファエル様だとわかった。
精悍な顔立ちで、瞳は碧眼。短髪の前髪は上げて、凛々しい眉を一層引き立てている、毛並みはシルバーに黒のメッシュが入っており、騎士服の上からでもわかるくらい体格も大きく逞しい。思わず見惚れてしまった。
先程まで道端で倒れていたはずなのに、なぜ抱きかかえられて馬に乗っているんだろう……。
「あ、あの僕はどうして……」
「意識が戻りましたか、私は第一騎士団長ラファエルと申します。遠征の帰路、道すがらに気絶している貴方を見つけ保護致しました」
「そんな高貴なお方にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「民を守るのは騎士団の勤めです、どうかお気になさらずに。帝都に戻りましたら病院に行かれますか?」
「いえ、自宅に帰りたいと思います」
「承知しました、無事にご自宅までお送り致しますので、安心してお休みください」
「温かいお心遣い、恐悦至極でございます」
お言葉に甘えて、少し休んだ。再び目を覚ますと、暮色に包まれた見慣れた景色が広がっていた。
自宅の場所を伝え、到着すると壊れ物を扱うように、丁寧に馬から下ろしてもらう。
「それではお身体、大事にしてください」と声をかけ、手綱を引くと、馬が嘶いて駆けていった。
終始、優しく紳士的な方だった。
無事に帰って来れて安堵したせいか、また血流が活発になって頭がくらくらしてくる。
〈賢者様いますか?この具合の悪いのはどうにかできますか〉
〈おう!呼んだか。そうだなぁ、魔力耐性がないお前が急に大量の魔力を得たせいで、魔力返しが起きているようだ。…………恋人にどうにかして貰え……〉最後の方の言葉はもごもごと言う。
恋人?……取り敢えず、鷹のアルフォードを口笛で呼びセオドールへの伝言を渡す。
「団長!先行隊より伝令です。我が国の民と思わしき負傷者を発見!指示を待つとのことです」
「わかった、すぐに向かうと伝えてくれ」
ラファエル一行が、その場所に到着。部下が「団長ご到着です!」と発すると、騎士達の人だかりが受け入るように間を空ける。
そこには、金色の毛並みの猫のような狐のような獣人がいた。尻尾はふさふさと主張するように揺れている。身体は随分と負傷している様子だ。
「私が連れていく」とラファエル自ら抱き上げ、一度部下に預け、馬に跨ると再び抱き抱える。
馬はゆっくりと駆ける。
☆
セオに似ているが、どこか甘さがないような匂いがする……。ふ、と目を覚まし仰ぎ見ると、頭上目の前に白虎の獣人がいる。
その姿を見て、噂でよく聞く第一王子ラファエル様だとわかった。
精悍な顔立ちで、瞳は碧眼。短髪の前髪は上げて、凛々しい眉を一層引き立てている、毛並みはシルバーに黒のメッシュが入っており、騎士服の上からでもわかるくらい体格も大きく逞しい。思わず見惚れてしまった。
先程まで道端で倒れていたはずなのに、なぜ抱きかかえられて馬に乗っているんだろう……。
「あ、あの僕はどうして……」
「意識が戻りましたか、私は第一騎士団長ラファエルと申します。遠征の帰路、道すがらに気絶している貴方を見つけ保護致しました」
「そんな高貴なお方にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「民を守るのは騎士団の勤めです、どうかお気になさらずに。帝都に戻りましたら病院に行かれますか?」
「いえ、自宅に帰りたいと思います」
「承知しました、無事にご自宅までお送り致しますので、安心してお休みください」
「温かいお心遣い、恐悦至極でございます」
お言葉に甘えて、少し休んだ。再び目を覚ますと、暮色に包まれた見慣れた景色が広がっていた。
自宅の場所を伝え、到着すると壊れ物を扱うように、丁寧に馬から下ろしてもらう。
「それではお身体、大事にしてください」と声をかけ、手綱を引くと、馬が嘶いて駆けていった。
終始、優しく紳士的な方だった。
無事に帰って来れて安堵したせいか、また血流が活発になって頭がくらくらしてくる。
〈賢者様いますか?この具合の悪いのはどうにかできますか〉
〈おう!呼んだか。そうだなぁ、魔力耐性がないお前が急に大量の魔力を得たせいで、魔力返しが起きているようだ。…………恋人にどうにかして貰え……〉最後の方の言葉はもごもごと言う。
恋人?……取り敢えず、鷹のアルフォードを口笛で呼びセオドールへの伝言を渡す。
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