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ハロルド鉱山② ☆
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山肌に手をあてるとごつごつとしている。オリバー先輩のような鑑定スキルがあれば魔石を探り当てられるのだけど、僕にはそんな能力はない、なので鏡を太陽に反射させて不自然な光を放つ場所に目星をつける。
最初は光った場所の周りをピックハンマーの平らな方で細かく砕いていく、鉱石が出てきたら、尖った方で鉱石を取り出す。
出てくるのは、魔力レベルの低いものばかりだった。
いくつか掘り進めては、鏡で光を当て場所を変えながら、地道な作業は続けられる。
せっかく来たのだからと意地になっていた。
鏡を当てポイントを変えながら、虹色に反射する箇所を見つける。夢中になっていた、薄暗い場所に入り混んでいた事にすら気づかずに…………。
ふと、横を見ると二つの赤く光るものが近づいてくる。
間近まで来て、やっと気づく。
ゴブリンだった。
林間学校で実物を見たことがあるけれど、やっぱり気持ち悪い。
ゴブリンの急所は、頭、首、胸……、心の中で、学んだ護身術を復唱する。
腰に佩いたナイフに手をかけ、駆け寄りゴブリンの首に刃を入れるが、傷がついた程度だった。
ゴブリンは退き、雄叫びを上げて、向かってくる。
猫の跳躍力を駆使して、ゴブリンの頭上に高く跳ぶ、そして頭上から脳天にナイフを突き刺す。
とどめを刺せたようで、ゴブリンに乗ったまま崩れ落ちる。
息も絶え絶え、周りを見渡すと洞穴の入り口にいた。
嫌な予感がして、踵を返し一目散に出口に走り出した。
走りながら、振り返ると奥からいくつもの赤い眼光がこちらに向かってやってくる。どうやらゴブリンの棲家に足を踏み入れてしまったようだ。
護身術では、ゴブリンの群れに遭遇したら猫型になって逃げ切る、が鉄則だ。
すぐに猫型になって走る。
突然、僕の身体は宙に浮き、目の前にゴブリンの顔が見えた。外から戻ったゴブリンに首根っこを捕まられている。
すると、身体は放り投げられて、地面に落ちると思ったら、違うゴブリンの足元に落ち、蹴り上げるとまた違うゴブリンに蹴り上げられる。
蹴球のように、その動作は繰り返される。身体の至る所が打撲して、耐え難い痛みが続く。
--やめて、やめて、やめて--
--痛い、痛い、痛い--
いくら叫んでも止めてもらえない、どうしようもない痛みを僕は知っている。前世の悍ましい記憶が蘇る。
☆
秋風が吹く季節。下校途中、夕陽の橙が落ちかけた頃、クラスメイトの高田達のグループを公園で見かける。
高田達は、クラスでもやんちゃな柄の悪い奴等で、なるべく関わりたくない人種だ。そそくさと足早に通り抜けようと思った時、ふと高田達の足元を見た……。
足元にいたのは黒猫だった……。
猫好きな僕は、高田達に蹴られ虐待を受けているその猫を見て、いても立ってもいられなくなった。
咄嗟に身体が動き出し、囲まれている猫を抱き上げかかえ込んだ。
「猫を傷つけないで!」
キッ、と高田達を睨んだ。
仲間内で誰だ誰だと騒つく。すると高田が。
「よく見たら、同クラの……、誰だったっけ?まぁ地味男くんで良いや。……お前しゃべるんだな」
顔を覗かれる、仲間達も一緒に僕を囃し立て愚弄する。
「猫を傷つけないで~か、傷つけて欲しくないなら、代わりが必要だよな!」
真似をして揶揄うように告げたあと、冷たく低い声で語尾を強調する。
僕の髪を鷲掴みに引っぱり上げて、冷笑を見せつけて手を離し、僕の腰を一蹴する。
猫に衝撃がかからないように、必死に抱え込む。違う誰かが一蹴すると、代わる代わる蹴られる。
「顔、腕、足は蹴るなよー、痣が出来たらめんどくせぇから」
--やめて、やめて、やめて--
--痛い、痛い、痛い--
どんなに叫んでも止めてくれない、耐え難い痛みだけが増えていく。
いつの間にか、猫は腕をすり抜けて逃げて行った。無事に逃げられて良かったと思うのと同時に、こんな風になるのなら、飛び出さずに高田達がいなくなってから猫を保護すれば良かった、しくじったと思った。
一頻り蹴られて、飽きたのか高田達は何処かに行ってしまった。
すると先程まで姿が見えなかった猫が、横たわっている僕の頬を舐めてくれた。 這々の体で自宅に連れ帰り、この猫を飼いたいと母に懇願して、しぶしぶ了承を得た。
それから時々、高田達に人目の少ない場所に呼び出され虐待を受ける日々が続いた。
最初は光った場所の周りをピックハンマーの平らな方で細かく砕いていく、鉱石が出てきたら、尖った方で鉱石を取り出す。
出てくるのは、魔力レベルの低いものばかりだった。
いくつか掘り進めては、鏡で光を当て場所を変えながら、地道な作業は続けられる。
せっかく来たのだからと意地になっていた。
鏡を当てポイントを変えながら、虹色に反射する箇所を見つける。夢中になっていた、薄暗い場所に入り混んでいた事にすら気づかずに…………。
ふと、横を見ると二つの赤く光るものが近づいてくる。
間近まで来て、やっと気づく。
ゴブリンだった。
林間学校で実物を見たことがあるけれど、やっぱり気持ち悪い。
ゴブリンの急所は、頭、首、胸……、心の中で、学んだ護身術を復唱する。
腰に佩いたナイフに手をかけ、駆け寄りゴブリンの首に刃を入れるが、傷がついた程度だった。
ゴブリンは退き、雄叫びを上げて、向かってくる。
猫の跳躍力を駆使して、ゴブリンの頭上に高く跳ぶ、そして頭上から脳天にナイフを突き刺す。
とどめを刺せたようで、ゴブリンに乗ったまま崩れ落ちる。
息も絶え絶え、周りを見渡すと洞穴の入り口にいた。
嫌な予感がして、踵を返し一目散に出口に走り出した。
走りながら、振り返ると奥からいくつもの赤い眼光がこちらに向かってやってくる。どうやらゴブリンの棲家に足を踏み入れてしまったようだ。
護身術では、ゴブリンの群れに遭遇したら猫型になって逃げ切る、が鉄則だ。
すぐに猫型になって走る。
突然、僕の身体は宙に浮き、目の前にゴブリンの顔が見えた。外から戻ったゴブリンに首根っこを捕まられている。
すると、身体は放り投げられて、地面に落ちると思ったら、違うゴブリンの足元に落ち、蹴り上げるとまた違うゴブリンに蹴り上げられる。
蹴球のように、その動作は繰り返される。身体の至る所が打撲して、耐え難い痛みが続く。
--やめて、やめて、やめて--
--痛い、痛い、痛い--
いくら叫んでも止めてもらえない、どうしようもない痛みを僕は知っている。前世の悍ましい記憶が蘇る。
☆
秋風が吹く季節。下校途中、夕陽の橙が落ちかけた頃、クラスメイトの高田達のグループを公園で見かける。
高田達は、クラスでもやんちゃな柄の悪い奴等で、なるべく関わりたくない人種だ。そそくさと足早に通り抜けようと思った時、ふと高田達の足元を見た……。
足元にいたのは黒猫だった……。
猫好きな僕は、高田達に蹴られ虐待を受けているその猫を見て、いても立ってもいられなくなった。
咄嗟に身体が動き出し、囲まれている猫を抱き上げかかえ込んだ。
「猫を傷つけないで!」
キッ、と高田達を睨んだ。
仲間内で誰だ誰だと騒つく。すると高田が。
「よく見たら、同クラの……、誰だったっけ?まぁ地味男くんで良いや。……お前しゃべるんだな」
顔を覗かれる、仲間達も一緒に僕を囃し立て愚弄する。
「猫を傷つけないで~か、傷つけて欲しくないなら、代わりが必要だよな!」
真似をして揶揄うように告げたあと、冷たく低い声で語尾を強調する。
僕の髪を鷲掴みに引っぱり上げて、冷笑を見せつけて手を離し、僕の腰を一蹴する。
猫に衝撃がかからないように、必死に抱え込む。違う誰かが一蹴すると、代わる代わる蹴られる。
「顔、腕、足は蹴るなよー、痣が出来たらめんどくせぇから」
--やめて、やめて、やめて--
--痛い、痛い、痛い--
どんなに叫んでも止めてくれない、耐え難い痛みだけが増えていく。
いつの間にか、猫は腕をすり抜けて逃げて行った。無事に逃げられて良かったと思うのと同時に、こんな風になるのなら、飛び出さずに高田達がいなくなってから猫を保護すれば良かった、しくじったと思った。
一頻り蹴られて、飽きたのか高田達は何処かに行ってしまった。
すると先程まで姿が見えなかった猫が、横たわっている僕の頬を舐めてくれた。 這々の体で自宅に連れ帰り、この猫を飼いたいと母に懇願して、しぶしぶ了承を得た。
それから時々、高田達に人目の少ない場所に呼び出され虐待を受ける日々が続いた。
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