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ハロルド鉱山

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 身支度を整えてから、夕食を完成させる。
 お風呂から上がったセオの髪を乾かして、夕食にする。

 セオは食事をしながらも、眠りに落ちそうになっている。
 二人とも公務員なので土日休み。毎週と言っていい程、会うことが多いが、来週末は討伐遠征で休日返上だそうだ。
 話しによると近頃、魔物の出現が多く討伐要請も沢山来ているらしい。

 せっかくだから、来週末は一人で鉱山に魔石収集に行こうかと考え浮かぶ。

 うつらうつらしながら歯磨きをするセオを横目に、夕食の片付けをして、鉱山への持ち物は何が必要か思考を巡らせる。

 セオは暫くするとベッドに入り眠ってしまった。
 自分だけに見せてくれる表情にほっこりした気分になる。
 ベッド脇に座り、そっと黒く艶やかな髪を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らしている。猫耳に触れてしまいピクピクと瞬く、起こしてしまったかもと思い、顔を覗くとしっかり眠っている。
 あまり無茶をしないで欲しい、無事であって欲しいと強く願う。

 疲れはてた姿を見ると、魔石のことはどうしても、言い出せなかった。

     ☆

 一週間後、天気が良い日に作戦は決行された。中型のツルハシ、スコップにふるい、ピックハンマー、鏡に昼食用の猫草入りサンドウィッチをマジックバッグに入れ、護身用のナイフを腰に佩き準備万端だ。

 帝都の北城門を出るには、通行証が必要になる。帝都への侵入者の取締はもちろん、外へ出る民の安全も守っている。

 僕の今回のミッションを告げても、役所で通行証など出るはずもないだろう。
 昔、レオに聞いた抜け道で外に出ることにした。

 北城門から、門壁伝いに東に十八メートル程の場所に生垣が植えてあり、茂みを掻き分けると、その壁が崩れている箇所がある。猫型になって、その抜け穴を潜ると……。

 雄大なる一面の黄金色の草原、遠くには山脈があり、鬱蒼たる森は赤、黄、茶色に紅葉した木々が生い茂っている。
 草原を吹き抜ける風は、秋晴れのせいかさほど寒くなく気持ちが良い。

 人型に戻った僕は、景色を眺め、植物や昆虫を眺めながら足を進める。
 途中、スライムやホーンラビット等をナイフで倒して進む。
 護衛術は、学院で学んでいたので難なくこなせた。

 お腹が空いたので、途中にあった池の畔で昼食にした。
 池の水面で手を洗うと、ひやっ、とする。

 帝都で、整備された都会の生活に慣れていたせいか、自然の心地よさに心が洗われるようだ。

 遠くで鳥の鳴き声が聞こえる、秋の虫達は草木と戯れている。その音色を聞きながらサンドウィッチを食す。水辺の秋風は少し肌寒くて、暖かいお茶にして良かったと水筒に口をつける。

 腹ごしらえができ、池を後にして、一時間程歩くとハロルド鉱山に到着した。

 それは、道々にあった樹の緑に囲まれた山々とは違い、岩壁が連なる山脈だった。
 幾重にも地層が重なって、自然が生み出した地表の柄の芸術的な美しさに、はっ、と目が奪われた。

 

 

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