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魔王!?

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 自宅に帰ると鷹のアルフォードがポストに置いて行ったと思われる、セオからの伝言が入っていた。この世界にはスマホがないのでアルフォードが伝書鷹となってくれている「今晩、ルカの家に行く」と簡潔なメッセージだった。

 ピューウッと口笛を吹くと精悍な姿の鷹が伸ばした腕に止まる。僕もアルフォードの調教を教えて貰った。
 少し頭を撫でてやり、返信を渡すと晩秋の空に飛び立った。

 ソファに座って、先輩から借りた魔石ジャーナルのページをめくる、こたつに使用する魔石をどうしたものかと思案する。
 きっとセオに言えば直ぐに用意してくれるだろうが、何だか宝石を 強請ねだる愛人のようで心苦しい。

 自分で何とか調達したいと考えていると、ある記事に目が止まって「これだ!」と声高く叫んだ。

 帝都から北へ十五キロ程の所にある、ハロルド鉱山で魔獣の化石が見つかり、その中にとても希少な魔石が発見されたと書いてある。
 ハロルド鉱山なら、魔石部の頃から魔石省の収集協力のボランティアで来ていたし、今も収集課の人手が足りない時は協力要請があったりする。
 行き慣れている場所だし、きっと大丈夫だろうと慢心になる。

 振り仰ぐと、鳩時計の鳩が夕方17時を告げる。そろそろ夕飯の支度をする時間だった、数日前、実家で飼っている乳牛のハナからお乳を貰ったので、今晩はシチューにしよう。

ーーショートエプロンを身につけて、手洗いし野菜、鶏肉を手際良くカットしていく。

 セオは学院で二つ上の先輩で、この国の第十五王子であり生徒会長だった。
 学院当時のセオの一人称は『我』で、含み笑いを良くしてたから王様というよりは魔王っぽく思えた。周りにもそんな口調の人は居なかったから、何の影響なのか未だに謎だ、もしかして厨二病?まぁ、アレはあれで格好良かったからいいか。現在は騎士団で揉まれた所為なのか、話し方も普通になって、すっかりスパダリ王子に変身した。
 
ーーカット出来た具材を炒めたら、調味料と水を足し煮込んでいく。

 番になる約束をして許嫁になった、この国の同姓婚は認められている、けれど皇族での同姓婚が実現するなら僕達が初めてになる、きっと反対する人もいるだろう。
 セオが騎士団で武勲を上げてから、皇帝諸々に申し上げる予定だ。
 この国の国民の大多数を占める猫獣人は魔力が弱い人種だ。武力も騎士団と国外から雇っている衛兵頼りだ。
 それ故に、訓練はとても厳しくて、身分関係なく実力を認められなければ栄達は難しい。
 学院時代に運動神経が良かったセオでも、厳しい訓練や長期の討伐遠征に行くと疲労困憊で帰ってくる。

ーーそして時々魔王のようになるーー

 

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