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第壱部-Ⅵ:尼嶺の王子

65.5.*紫鷹 やらかす

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(※注:性的な表現を含みます。苦手な方は、次へ飛ばしてください。)










「しおう、うれしい、と思って、おふろ聞いた、のに、ちがうが、かなしかった、」

風呂から出た日向が、俺の膝に跨って言う。

冷えた体を温めるために、風呂へ送ったが、泣き声が聞こえて心配した。何度も風呂場に飛び込みそうになったのを萩花に止められて待っていたのに。
なんでそんな可愛いことを言うんだ。

「…俺が寂しいって言ったから、考えてくれたんだ?」
「でも、ちがう、」
「違うなんて言うな、俺は嬉しかったよ。」
「うん、」

湯上がりで紅潮した頬を撫でてやると、すりすりと寄ってくる。
愛しさが体中に溢れて、鼓動が早くなった。

頭にかぶせたタオルの間から、潤んだ水色に見つめられる。泣いたせいで目元が赤い。少しぼんやりとしているのは、湯上がりだからだろうか。


ちゃんと責任をとって慰めてください、と宇継に渡されたが、正直それどころじゃない。


やばい、可愛い。エロい。



俺に日向を託した宇継は、先に浴室を片付けて参りますから、と俺に時間を与えた。
水蛟は、日向の夕食の準備で出て行った。
護衛は、風呂の時は日向に配慮して、いつも部屋を出る。扉を隔てたすぐそこにいるのだろうが。

現状、二人きりなわけで。

俺は、風呂の前に日向に誘われて、気持ちが高揚した。それが、風呂の最中には、泣き声に不安させられた。今は可愛い理由を聞かされ、愛しさでいっぱいになっている。

感情の変化に翻弄されているというのに。
日向はいつもより可愛くて、エロくて、俺にすり寄ってきて。


我慢できるわけがなかった。



「好きだ、日向、」

そう告げて、口づけを落とす。
火照った頬と同様に、唇もいつもより熱い気がした。
触れるだけのキスを繰り返すと、日向は同じように返してくれる。

初めて口づけをしたときは、日向は眠っていて、答えてはくれなかったけれど。
目覚めている時だって、拒まず、最初から受け入れてくれた。
だから、うぬぼれてしまう。

日向も、俺のことが好きだろう?

唇を舐めて強請ると、小さな口が開いて、舌を受け入れてくれる。
水色の瞳がとろんと、とろけ始めた。

「可愛いな、日向、」

開いた唇に舌を割り込ませて上顎を舐める。すぐに日向も舌を絡めてきた。
唾液が混ざって、舌がすり合い、気持ちがいい。
何より、俺が日向を求めるのと同じように、日向が俺を欲しがってくれるのが、心地よかった。
もう一度上顎を舐めると、日向の体が短く震える。

体からくたりと力が抜けた。
胸に崩れ落ちてくる小さな体を受け止め、見下ろす。
紅潮していた頬が上気して林檎みたいだ。俺を見上げる水色が完全にとろけて、潤んでいる。唾液で濡れた唇は、薄く開いて少し呼吸が速くなっていた。


これ、感じてるよな。
ふわふわする、と日向はいつも言っていた。


「日向、気持ちいい?」
うん、
「もっとしていい?」
ぅん、


わかっているのか、わかっていないのか、日向は声もなく、瞳で頷く。

もっと乱れさせてみたかった。
口付けをしてとろけるくせに、日向は声を出さない。
もっと気持ち良くさせたら、もっと感じさせたら、どんな声で鳴くだろうか。

そう思ったらたまらなくて、日向の腰を引き寄せ、また舌を絡ませる。いつもより深く、いつもより激しく。
日向の腰がぴくぴく震えるのがたまらなくて、俺の中心も熱くなる。
口内に唾液が溢れた。それを上向いた日向の口内に絡めれば、こくりと喉がなって、日向は受け入れてくれる。


やばい、可愛い。
ほしい、全部欲しい。
肌に触れて、喘がせたい。
気持ちいいって、日向に言わせたい。


離れた唇を、日向の首筋に落とす。林檎の香りがした。
べろりと舐めると、林檎の味はせず、少し塩の味がする。白い肌がしっとりと汗をかいていて、日向も興奮しているのだと思った。
ちゅうっと吸い付くと、細い肩が震えて、耳元に吐息がかかる。熱い。
気をよくしてさらに吸い付くと、小さく「あ、」と日向の声が漏れた。


まずい、勃った。


膝にまたがった日向の腰を強く引き寄せていたせいで、股間の高まりが、日向の足に当たる。
足の感覚が鈍い日向に、気づくなと期待したが、そんな奇跡は起こらない。

「しぉ、なあ、に?」

ぼんやりとした日向が、耳元で吐息交じりに尋ねるせいで、上半身が震える。何だ、これ。

「待って、日向、しゃべるな、」
「しぉ、」

不思議そうに息を吐く日向が、みじろぎすると、俺の中心が直接刺激されて急速に昂った。

「ひな、た、待、て、ホントに、ちょっと、やば、」
「しぉ、おちんちん、ぉっき、く、なった、」
「ひぃ…、」

やめろ、日向。
多分お前、意味わかってないだろ。
事実をそのまま口にする、いつもの表現だろ。

だが、この状況でそれは、俺がまずい。

そんな無垢な表情で、俺を見るな。

「しぉ、」
「待って、待って、本当にまずい、から、」

とろんと見つめられて、舌足らずに呼ばれると、今度は俺の腰が震えた。
やばい、やばい、やばい。

「しぉ、ちゅう、は、おぁり?」

ぞくぞくと背中をかける衝撃に、たまらず日向の体を引き離した。
それがまずかった。

日向の視線が落ちる。

「わ、日向、待て、」

白い手が、俺の股間に伸びる。
嘘だろ、そんな、何もわかってないような手で触られたら。

思わず抱きしめて日向を止めようとするが、遅かった。

「は、…んん、」
「しぉ、しゃせぃ、した、」
「…ん、は、お願い、日向、ちょっと黙って…、」

情けなくて、泣きたくなる。
解放された熱が、下履きを濡らして、日向の下肢に触れた。
日向がみじろぎするのが怖くて、強く抱きしめる。
その瞬間、「ん、」と小さく聞こえたかと思うと、日向は急に脱力した。

「え、何、どうした、日向、」

口づけをした時とは違う力の抜け具合に驚く。
すぐに、すう、と寝息が聞こえた。
なんで、と思考する間もなく、今度は悪寒が走る。



「で、ん、か?」



いつもは表情の変わらない宇継が、般若の面をかぶっていた。

無意識に日向の服のボタンを、一つ外した。
そのせいで、白い首が顕わになってる。同時に、俺がつけた赤い跡も。
小さく開いた口が濡れているのが何故かなんて、もうバレているだろう。
何よりまずいのは、俺の股間が濡れていることと、そこに日向の白い手が乗っていることだと思う。

般若が何か言う。
右手に持ったブラシが、凶器に見えた。

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