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小休憩 ~アオとハカセの会話~
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俺はナノとハカセが運転する車に乗ってアストラルに向かっていた。
窓の外を見て色々と考え事をしていた。
俺がアストラルについてあまり知らなかったことは本当に申し訳ないと思った。
いつもなら研究に関するメールばかりだからしっかり目を通すのだが、ハ̀カ̀セ̀のメールとなると研究に関することではないことを知っていたのであまり見ていなかったのだ。
まあそもそもアストラルに入るつもりなどなかったからなのだが。
でも、それ以上に考えていたのは、
昨夜知ったナノの思いについてだった。
自分の中では分かっていたように思っていたが、実際はナノの気持ちをあまり知らなかったことに気付かされた気がした。
今まで見てきたナノは“被検体として”のナノだったから。
守らなきゃ、ってずっとそればっかり考えていた。
だから、考えられていなかった、のかもしれない。
そして気がつけば自分が「守りたい」と思われるような存在になっていた。
ナノは幼くして辛い思いを沢山してきたはずなのに、それでも誰かを守りたい、という気持ちがあったことに目を向けていなかった自分に怒りたかった。いや、ナノは「怒ってもしょうがないでしょ」なんて言ってきそうだな。
本当、君には敵わない。
ふと横に目をやった。
「………寝てる?!!」
隣にはスースーと寝息をたてている少女がいた。
「ん?どした?」
俺の声でハカセが反応した。
「あ、いや、ふと見たら寝ていたから…」
「あらら、ほんとだ」
「ご、ごめんな気づかなくて。今起こすから…」
「いやいや!いいよ、ゆっくり寝てもらえば」
「え、でもヴェールランドの中にあるならすぐ着くだろう?」
「まあそこまで時間はかからないけどさ…」
ルームミラー越しにハカセと目が合った。
「アオも寝な?私は運転してるから」
「なんで俺も寝ることになるんだ??」
「だって明らかに顔色悪いでしょ」
そうか?と疑って鏡を見る。別に普段と変わらないように見えるが。
「そんな悪いようにも見えないと思うけど」
「私は分かっちゃうんだよね~、アオのコト」
「うわ何だそれ。気持ち悪いな」
「どストレートに悪口言うね…」
苦笑しながらハカセはしゃべり続ける。
「アオ、毎日しっかり時間決めて寝てただろう?だからちょっとでも睡眠時間が短かったりすると調子悪そうなのがすぐ分かってるんだよね」
「ストーカーかお前は…」
「研究員時代の話ですぅ」
「そこからずっと把握してるってことか?!」
「そういうコト」
寒気がして身体が震えた。
確かにあの時は少しでも体調を悪くしないよう心がけていたので睡眠時間の管理はよくしていた。
でもまさか、こいつにバレていたなんて…。
「まあそんなこともう過去の話でどうでもいいからさ。寝なよ」
「あぁ……」
「あ、ちゃんと着きそうになったら起こすからさ、安心して」
「分かった…」
「じゃ、おやすみ~。ちゃんと寝てねー」
「あ、ありがとう……」
流されるようにして答えてしまったが、実は昨日はあんなことがあったから気が気じゃなくて眠れなかったのだ。
きっと、彼女もそうだったのだろう。
よし、ちゃんと仕事ができるように言葉に甘えて少し寝させてもらうか。
そう思った途端、急に眠気が襲ってきた。
本当に疲れてたんだな。
そう感じながら目を閉じた。
♦♦♦♦♦
「…………………」
静かになった車の中。
会話は無いけれど寝息が聞こえていた。
ふとルームミラーに映った二人を見た。
「………本物の親子かよ」
二人は肩を並べ、お互い安心するかのように身を寄せて寝ていた。
「…ほんっと、昔から変わってないんですね、先̀輩̀」
静かに呟いた。
私はヴェールランドの湖を何周回ったか分からないほどドライブをした。
窓の外を見て色々と考え事をしていた。
俺がアストラルについてあまり知らなかったことは本当に申し訳ないと思った。
いつもなら研究に関するメールばかりだからしっかり目を通すのだが、ハ̀カ̀セ̀のメールとなると研究に関することではないことを知っていたのであまり見ていなかったのだ。
まあそもそもアストラルに入るつもりなどなかったからなのだが。
でも、それ以上に考えていたのは、
昨夜知ったナノの思いについてだった。
自分の中では分かっていたように思っていたが、実際はナノの気持ちをあまり知らなかったことに気付かされた気がした。
今まで見てきたナノは“被検体として”のナノだったから。
守らなきゃ、ってずっとそればっかり考えていた。
だから、考えられていなかった、のかもしれない。
そして気がつけば自分が「守りたい」と思われるような存在になっていた。
ナノは幼くして辛い思いを沢山してきたはずなのに、それでも誰かを守りたい、という気持ちがあったことに目を向けていなかった自分に怒りたかった。いや、ナノは「怒ってもしょうがないでしょ」なんて言ってきそうだな。
本当、君には敵わない。
ふと横に目をやった。
「………寝てる?!!」
隣にはスースーと寝息をたてている少女がいた。
「ん?どした?」
俺の声でハカセが反応した。
「あ、いや、ふと見たら寝ていたから…」
「あらら、ほんとだ」
「ご、ごめんな気づかなくて。今起こすから…」
「いやいや!いいよ、ゆっくり寝てもらえば」
「え、でもヴェールランドの中にあるならすぐ着くだろう?」
「まあそこまで時間はかからないけどさ…」
ルームミラー越しにハカセと目が合った。
「アオも寝な?私は運転してるから」
「なんで俺も寝ることになるんだ??」
「だって明らかに顔色悪いでしょ」
そうか?と疑って鏡を見る。別に普段と変わらないように見えるが。
「そんな悪いようにも見えないと思うけど」
「私は分かっちゃうんだよね~、アオのコト」
「うわ何だそれ。気持ち悪いな」
「どストレートに悪口言うね…」
苦笑しながらハカセはしゃべり続ける。
「アオ、毎日しっかり時間決めて寝てただろう?だからちょっとでも睡眠時間が短かったりすると調子悪そうなのがすぐ分かってるんだよね」
「ストーカーかお前は…」
「研究員時代の話ですぅ」
「そこからずっと把握してるってことか?!」
「そういうコト」
寒気がして身体が震えた。
確かにあの時は少しでも体調を悪くしないよう心がけていたので睡眠時間の管理はよくしていた。
でもまさか、こいつにバレていたなんて…。
「まあそんなこともう過去の話でどうでもいいからさ。寝なよ」
「あぁ……」
「あ、ちゃんと着きそうになったら起こすからさ、安心して」
「分かった…」
「じゃ、おやすみ~。ちゃんと寝てねー」
「あ、ありがとう……」
流されるようにして答えてしまったが、実は昨日はあんなことがあったから気が気じゃなくて眠れなかったのだ。
きっと、彼女もそうだったのだろう。
よし、ちゃんと仕事ができるように言葉に甘えて少し寝させてもらうか。
そう思った途端、急に眠気が襲ってきた。
本当に疲れてたんだな。
そう感じながら目を閉じた。
♦♦♦♦♦
「…………………」
静かになった車の中。
会話は無いけれど寝息が聞こえていた。
ふとルームミラーに映った二人を見た。
「………本物の親子かよ」
二人は肩を並べ、お互い安心するかのように身を寄せて寝ていた。
「…ほんっと、昔から変わってないんですね、先̀輩̀」
静かに呟いた。
私はヴェールランドの湖を何周回ったか分からないほどドライブをした。
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