Inquirer -誰も知らないその先へ-

海月ツクシ

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第8話 えいえんのわかれ?

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ボクはアストラルへ行く準備をしていた。
昨日の夜、あの後、アオさんは不服そうながらもボクがアストラルに加入することを許可した。
結構無理やりなやり方だったかもしれない。そのせいでちょっとした罪悪感に駆られ、ボクは昨日一睡も出来なかった。しかし、了承は得たのだ。自信を持って行かなくては。
朝からボクとアオさんは喋らなかった。いや、お互い何にも言えなかった、といったほうが正しいかも。
アストラルについてはまだ分からないことだらけだ。でも、フォーライア帝国とドレッドノヴァ連合を平和にしたい、という気持ちがあってから作られた組織だということはわかった。まあそれがアオさんの気持ちからなのかは分からないけどね。
ボクはカバンに服や必要なものをつめる。
グルっと部屋を見渡した。
ああ、好きだったなこの窓。ヴェールランドの町と湖を毎朝見るのがボクの日課だった。
ここに来てまだ三年しか経ってなかったけど楽しかったなぁ。
そんなことを考えていた。
♦♦♦♦♦
コンコンコン
玄関から扉を叩く音が聞こえる。
多分ハカセだろう。
「はーい」
返事をして扉を開けた。
「やあ、ナノちゃん」
昨日ぶりの綺麗な銀髪の男の人が立っていた。
「あ…こんにちは」
「あれ?アオは??」
「えっと、アオさーん」
2階に向かって名前を呼んだ。
「アオー、私だよー」
ハカセもアオさんを呼んだ。
「…今行く」
上からは小さな声が聞こえた。
アオさんが来る間にボクはまとめた荷物を玄関に持ってきた。その時、ハカセはボクに変な質問をした。
「?…何その荷物」
「んえ?ボクの私物とか入ってるものですけど…」
「え!?そんなでかいカバン持って捜査するの?!??!…フッ……おもしろ…笑」
んん?なんでボク笑われてるんだ??
訳が分からないまま首を傾げていた。
「…フフ………ごめんごめん」
ハカセは笑うのをやめてボクを見た。
「いや、それにしてもアオが許可を出してくれるなんて。昨日まであんなにつれなかったのにねぇ」
「アオさん、許可出すって言ったんですか?」
「返事が何も無かったからいいってことなんだなって思ったんだよ」
そっか。何も返事がなければ迎えに来るって言ってたっけ。
…あれ?じゃあ昨日見た書き途中だったメールは送らなかったってことかな?
「…ごめん、待たせた」
「あ……」
アオさんが来た。見ればわかる。アオさんはしょんぼりしていた。ボクと同じで昨日、寝れなかったのかな。
「…………ナノ」
「…うん」
「頑張れよ、俺が居なくても」
「うん、ちゃんと、守りたいもの守れるように頑張るね」
「ああ」
「ボク、絶対に強くなって帰ってくるから…!」
そう言ってアオさんとボクは抱きしめ合った。

「あのー……なんで私はドラマのような一場面を目の前で見せられているのかな…?」

…………………ん?
ハカセの言葉にボクらは耳を疑った。
え、いやだって、ボクはこれからアストラルに行くんだし。ちゃんと覚悟決めてるんだし。アオさんもたくさん考えてくれた結果がこれなんだけど?

「お前何言ってんだよ…お前がナノを『アストラル』に連れてくんだろ」
「いやそうだけどさ…なんで永遠の別れ、みたいなことしてんのさ」
「だから、ナノは『アストラル』に連れてかれるから会えなくなるんだって…」
うーん?とハカセは唸った。でも次の瞬間、全てを理解したような顔をした後突然、
「フッ…ハハハハハハ!!」
大声を上げて笑い始めたのだ。
その姿にボクとアオさんはもちろんドン引き。
え。ほんとになんだ、この人。
「ハハ…ごめ……つい…おもしろ……くて…………」
笑いがおさまらないハカセを見てイラッと来たのか、アオさんは怒り始めた。
「おい!!昨日の夜、俺らが真剣に悩んでこの道を選んだんだ!お前も真剣にこの状況を受け止めやがれ!!!!」
流石にこの強い言葉には笑ってなどいられない。
ハカセはすぐに笑うのをやめた。でも目には涙が浮かんでいる。
「……いや、…あのね、今起きていることが非常に、とんでもなく面白くてね、…笑うしかないんだこれは」
ハカセはまだ少し笑いながらふーっと呼吸を整えた。

「まあ、私が笑ってる理由を言えばさ、
アオ、君も『Astral』に来るんだよ?」

「「………は?」」
 
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