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3話 頭が痛い(酒の飲みすぎとこの王子のせいで)
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頭が痛い・・・がんがんする・・・
あれ!俺は酒なんか飲んでいないぞ。
そうだ、A社のプレミアムなビールを飲んで、枝豆をつまんで・・・予定が・・・
俺は死んだんじゃないか・・・それで光の玉が出てきて・・・
ちょっと待て、頭が痛いのに王子と称するやからの記憶なんかいらん。
待てったら、待てよ・・・・・
・・・・・しばらくお待ちください・・・・・
・・・・・画面が復旧しました・・・・・
ちくせう・・・強制インプットだった。
簡単にまとめるとだな、こいつはマリアス王国の第2王子。御年17歳。
こいつと側近4名は婚約者がいるにもかかわらず、夜会で何度も会う一人の男爵令嬢にいれあげた。
そして出会って一月もすると、彼女の出るお茶会、夜会すべてに強引に押しかけ(男爵令嬢が出席するような場に王子は招待されない。そこいら辺は住み分けができている)始終いちゃいちゃしていたわけだ。
そのうえ王族の結婚は伯爵位以上だという暗黙の了解を無視して、婚約者をありもしない罪で断罪し、婚約破棄のうえで、くだんの男爵令嬢と結婚をすることをもくろむ。しかし、あまりにお粗末なやり口に簡単に婚約者に反撃され、そして頭に血の上ったこいつは男爵令嬢の手を引いて出奔。
そうやってノープランで出てきた彼らにはお茶を飲む金もなかった。
王城、貴族街、平民街、下町と壁で区分けされているところの平民街をしかたなくうろついていたらしい。
だが、そんな彼らの元に王家と男爵家からの使いが到着する。何のためにって、手切れ金を渡すためだよ。さすがに無一文で放り出すのは外聞が悪いよな。
王子には大金貨50枚ほど、これは彼個人の持つ財貨(家具やら服やら、あとはお高い壺や絵画等のの装飾品)を売ったら手に入るであろう金と、彼個人所有の宝飾品、身の回りの品が入っているマジックポーチが渡された。
尚、一辺3メートルの立方体ほどの容量を持つポーチの代金(大金貨100枚)は個人資産売却代金から差し引いてあるそうだ。
いまだ家族の情愛は失せていないのか、単に義理堅いのか、外聞をとりつくろっているのか、これではよくわからない。彼らは何を考えているのだろう。こいつの家族なんだからいつかは和解させてやった方がいいのだろうか?
それはともかく、男爵令嬢はお金の入った袋を受け取ると(男爵家が渡したのは金のみだった)早速服屋へと向かった。
おいおい男爵令嬢さんよ、それはないだろう。
着たきりすずめで服が必要なのは分かる、分かるが銀座4丁目のブランド店のようなところに何故行くかな?
王子も分からなかった(こいつも世間知らずだよね)だが、店の中に入り、夜会にでもいくようなドレスを選び始めた彼女にさすがに気が付いたようだ。
止める王子に、首を傾け上目づかいで「えっ、買ってくださらないの?」と言う彼女。あざとい・・・
だがしかし、だがしかしだな。先ほどの断罪騒ぎのあとの王子は一味違った。
首を横に振り、彼女の手を取ると「先に宿屋を決めよう」と言って彼女を無事にブランド店から連れ出した。
やったね王子!しかし彼のがんばりもそこまでだった。
今まで王城に居た彼ら(服が上級貴族ですと語っている)に紹介されるのは高級宿しかない、彼女がここならいいわといったお宿はなんとお一人様一泊金貨3枚でした。もちろん部屋は別々。王子ちょろすぎない?
彼女ととる食事はもちろんワイン、デザート付き、それを食べ散らかす彼女(いわゆる一口、二口食べてはもういらないといって、他の皿を注文することね)
王族はこういうことは厳しくしつけられているので、その行動は王子に違和感を覚えさせたようだ。
そして翌日、どうしても首を縦に振らない王子に業を煮やした男爵令嬢は「父様にいただいたお金があるから、それで支払います」との捨て台詞を残し、ブランド店へお出かけ。ドレスとそれに似合う宝飾品を何組もお持ち帰り。
彼女は無駄に行動力があるようだ。
その間に王子も宿屋の人間に頼んで服を手に入れている。一組金貨3枚のそこそこの商人が普段着にしそうなシャツとズボンだ。多少の刺繍は入っているがフリルもなく地味な一品だ。これと下着を3組。王子でかしたぞ。
それからは宿に引きこもり。食事時以外は2人はあまり顔を合わせなかったようだ。
そうこうしながらもほぼ部屋に閉じ篭もって過ごしていた彼ら、だが毎日大金貨一枚がなくなる現実。居てもたっても居られなくなった王子はやっと冒険者ギルドにお出かけ。
登録はしたものの、掲示板に貼られた依頼表の謝礼金額の低さにショックを受けた。いやいや銀貨1枚は初心者の依頼としては普通だと思うよ。
毎日もっと安い宿に移る,移らないの言い争い。
「ひどい、なんでそんないじわるをされるの」と彼女に泣かれても、残金が大金貨35枚になった王子も後には引けない。毎日不安でおびえているのは王子の方だ。
そして決裂・・・部屋で酒を飲みすぎてへべれけになった王子は転倒してあぽ~ん ← 今ここ。
長のご清聴ありがとうございます。それにしても頭が痛い、どうしようかな?
おっと、目の前にひらひらと紙片が落ちてくる。これは・・・
「無事合体したようで良かった。(おい、男相手になんという嫌な言い方をするんだ)
君へのプレゼントは左手のブレスレットだ。マジックバックになっているのであまり取り出さない大事なものはこちらへ入れて置くように。半径1メートルの耐物理、耐魔法結界も付いていてクローズドセサミの呪文で発動する。
あと、中に入っている薬珠は特殊なもので普通の人に使うと毒になるか、体が爆散する。だがとても有効なものでもある。使い時は薬珠が教えてくれるので必ず従うように。それまでは封印しておくのが無難だろう。
そして、マジックバックの機能は誰にも言わないように。王子の持っているマジックポーチですら、A級冒険者、貴族、それなりの商人にしか持てないものだ。いくら本人にしか使えない様に登録してあるとはいえ用心するに越したことはない。
王子の記憶でそちらの知識も大分手に入っただろう。
あとは君の生きたいように過ごしたまえ。君は自由だ(本当かな??)
この手紙は読み終わると消滅する。では」
・・・・・きらきらとした粒子となって手紙は消えていった・・・・・
あ~あ、ベッドに倒れこみ、ため息を付く俺。あいつは能天気だな、ついでにやばいものを人に押し付けんな。
頭が痛いことだし、もう一眠りしてから動こう。
多分そのほうが効率的だ・・・
あれ!俺は酒なんか飲んでいないぞ。
そうだ、A社のプレミアムなビールを飲んで、枝豆をつまんで・・・予定が・・・
俺は死んだんじゃないか・・・それで光の玉が出てきて・・・
ちょっと待て、頭が痛いのに王子と称するやからの記憶なんかいらん。
待てったら、待てよ・・・・・
・・・・・しばらくお待ちください・・・・・
・・・・・画面が復旧しました・・・・・
ちくせう・・・強制インプットだった。
簡単にまとめるとだな、こいつはマリアス王国の第2王子。御年17歳。
こいつと側近4名は婚約者がいるにもかかわらず、夜会で何度も会う一人の男爵令嬢にいれあげた。
そして出会って一月もすると、彼女の出るお茶会、夜会すべてに強引に押しかけ(男爵令嬢が出席するような場に王子は招待されない。そこいら辺は住み分けができている)始終いちゃいちゃしていたわけだ。
そのうえ王族の結婚は伯爵位以上だという暗黙の了解を無視して、婚約者をありもしない罪で断罪し、婚約破棄のうえで、くだんの男爵令嬢と結婚をすることをもくろむ。しかし、あまりにお粗末なやり口に簡単に婚約者に反撃され、そして頭に血の上ったこいつは男爵令嬢の手を引いて出奔。
そうやってノープランで出てきた彼らにはお茶を飲む金もなかった。
王城、貴族街、平民街、下町と壁で区分けされているところの平民街をしかたなくうろついていたらしい。
だが、そんな彼らの元に王家と男爵家からの使いが到着する。何のためにって、手切れ金を渡すためだよ。さすがに無一文で放り出すのは外聞が悪いよな。
王子には大金貨50枚ほど、これは彼個人の持つ財貨(家具やら服やら、あとはお高い壺や絵画等のの装飾品)を売ったら手に入るであろう金と、彼個人所有の宝飾品、身の回りの品が入っているマジックポーチが渡された。
尚、一辺3メートルの立方体ほどの容量を持つポーチの代金(大金貨100枚)は個人資産売却代金から差し引いてあるそうだ。
いまだ家族の情愛は失せていないのか、単に義理堅いのか、外聞をとりつくろっているのか、これではよくわからない。彼らは何を考えているのだろう。こいつの家族なんだからいつかは和解させてやった方がいいのだろうか?
それはともかく、男爵令嬢はお金の入った袋を受け取ると(男爵家が渡したのは金のみだった)早速服屋へと向かった。
おいおい男爵令嬢さんよ、それはないだろう。
着たきりすずめで服が必要なのは分かる、分かるが銀座4丁目のブランド店のようなところに何故行くかな?
王子も分からなかった(こいつも世間知らずだよね)だが、店の中に入り、夜会にでもいくようなドレスを選び始めた彼女にさすがに気が付いたようだ。
止める王子に、首を傾け上目づかいで「えっ、買ってくださらないの?」と言う彼女。あざとい・・・
だがしかし、だがしかしだな。先ほどの断罪騒ぎのあとの王子は一味違った。
首を横に振り、彼女の手を取ると「先に宿屋を決めよう」と言って彼女を無事にブランド店から連れ出した。
やったね王子!しかし彼のがんばりもそこまでだった。
今まで王城に居た彼ら(服が上級貴族ですと語っている)に紹介されるのは高級宿しかない、彼女がここならいいわといったお宿はなんとお一人様一泊金貨3枚でした。もちろん部屋は別々。王子ちょろすぎない?
彼女ととる食事はもちろんワイン、デザート付き、それを食べ散らかす彼女(いわゆる一口、二口食べてはもういらないといって、他の皿を注文することね)
王族はこういうことは厳しくしつけられているので、その行動は王子に違和感を覚えさせたようだ。
そして翌日、どうしても首を縦に振らない王子に業を煮やした男爵令嬢は「父様にいただいたお金があるから、それで支払います」との捨て台詞を残し、ブランド店へお出かけ。ドレスとそれに似合う宝飾品を何組もお持ち帰り。
彼女は無駄に行動力があるようだ。
その間に王子も宿屋の人間に頼んで服を手に入れている。一組金貨3枚のそこそこの商人が普段着にしそうなシャツとズボンだ。多少の刺繍は入っているがフリルもなく地味な一品だ。これと下着を3組。王子でかしたぞ。
それからは宿に引きこもり。食事時以外は2人はあまり顔を合わせなかったようだ。
そうこうしながらもほぼ部屋に閉じ篭もって過ごしていた彼ら、だが毎日大金貨一枚がなくなる現実。居てもたっても居られなくなった王子はやっと冒険者ギルドにお出かけ。
登録はしたものの、掲示板に貼られた依頼表の謝礼金額の低さにショックを受けた。いやいや銀貨1枚は初心者の依頼としては普通だと思うよ。
毎日もっと安い宿に移る,移らないの言い争い。
「ひどい、なんでそんないじわるをされるの」と彼女に泣かれても、残金が大金貨35枚になった王子も後には引けない。毎日不安でおびえているのは王子の方だ。
そして決裂・・・部屋で酒を飲みすぎてへべれけになった王子は転倒してあぽ~ん ← 今ここ。
長のご清聴ありがとうございます。それにしても頭が痛い、どうしようかな?
おっと、目の前にひらひらと紙片が落ちてくる。これは・・・
「無事合体したようで良かった。(おい、男相手になんという嫌な言い方をするんだ)
君へのプレゼントは左手のブレスレットだ。マジックバックになっているのであまり取り出さない大事なものはこちらへ入れて置くように。半径1メートルの耐物理、耐魔法結界も付いていてクローズドセサミの呪文で発動する。
あと、中に入っている薬珠は特殊なもので普通の人に使うと毒になるか、体が爆散する。だがとても有効なものでもある。使い時は薬珠が教えてくれるので必ず従うように。それまでは封印しておくのが無難だろう。
そして、マジックバックの機能は誰にも言わないように。王子の持っているマジックポーチですら、A級冒険者、貴族、それなりの商人にしか持てないものだ。いくら本人にしか使えない様に登録してあるとはいえ用心するに越したことはない。
王子の記憶でそちらの知識も大分手に入っただろう。
あとは君の生きたいように過ごしたまえ。君は自由だ(本当かな??)
この手紙は読み終わると消滅する。では」
・・・・・きらきらとした粒子となって手紙は消えていった・・・・・
あ~あ、ベッドに倒れこみ、ため息を付く俺。あいつは能天気だな、ついでにやばいものを人に押し付けんな。
頭が痛いことだし、もう一眠りしてから動こう。
多分そのほうが効率的だ・・・
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