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きらめくハロウィンナイト

3 (r-18)

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 バスバブルを入れ、白い泡でいっぱいになったバスタブは、二人で入っても十分な広さがあった。

「やん、あ、あ」

 鼻にかかった甘い嬌声がバスルームに響く。
 千晶はアンジェロの胸に背を預けるように抱きかかえられていた。張りのある滑らかな肌の感触にうっとりしながらも、それを味わう余裕はない。いつもは鍵盤を叩いている右手の指が優しく胸をまさぐり、左手の方は大きく開いた脚の間に伸びていたのだから。

「だめ、あ――」

 水音に時おり混じる嬌声は、自分のものとは思えないくらい艶めいて聞こえる。恥ずかしくて声を堪えようとすると、後ろから右の耳たぶをそっと食まれた。

「ひぁん!」
「千晶、我慢しないで。かわいい声をもっと聞かせて」
「だって、あ、やぁっ!」

 そっと乳首をくすぐったかと思うと、次の瞬間には軽く引っ張ったり、押し潰すように捻ったり、しなやかな指は自在に動く。アンジェロは泡のぬめりを利用して、熱を帯びた秘部も優しく、けれども容赦なく探って、複雑で繊細なパッセージを奏で続けた。

「千晶が感じるところ……また見つけた」
「あっ! そこ、嫌!」

 いたずらな指がいじり始めたのは、秘裂の先にある最も敏感な花芽だ。狙いすましたようにクリクリと擦られ、さらに爪の先で弾かれて、千晶は声にならない悲鳴を上げた。
 少しでも反応を見せると、アンジェロはそこばかりを攻め、どこまでも追い上げようとする。まだ身体を繋げていないのに、千晶はバスタブの中ですでに何度か達していた。
 さっき洗面台の前に座らされてからは、まるで魔法にかけられたようだった。
 アンジェロは千晶を「僕のお姫様」と呼んでくれたけれど、何度となくキスされながら大切そうにパンプスを脱がされ、肩からワンピースを落とされて、イヤリングを外された。気がつけば下着も取り去られていて、いつの間にかシャワーブースの中で裸の彼に抱き締められていたのだ。
 それから大きな手のひらで撫でるように、時間をかけて全身くまなく洗われた。
 日に何時間もピアノに向かっているのに、アンジェロの指先は柔らかい。その動きもしなやかで、肌の上を滑るたびに、千晶の身体は甘く震えた。ただ洗われているだけなのに、腰の奥に淫らな疼きを感じてしまうのだ。
 バスタブに移動してから、愛撫はさらに本格的なものになった。そのくせ、すでに形を成しているアンジェロの昂りには触れさせてもらえない。

「僕のことはいい。だって今夜は千晶のための夜なんだから」

 そうは言うものの彼に余裕があるようには見えないし、手慣れている感じもしない。それでもとにかく尽くしてくれようとしていて、千晶はその必死さにも煽られた。

「アン、ジェロ……もう、十分だから」
「ごめん、千晶。だけど君がかわい過ぎて、やめてあげられない」
「でも……早く、ひとつに……なりたいの」

 瞬間、背後で息を呑む気配がした。
 続いて、答えの代わりに返ってきたのはキスだった。彼の腕の中で身体の向きを変えられ、さらに何度も唇を奪われる。

「ん……う、ん」

 今夜だけでもあきれるくらいキスしているはずなのに、いくら繰り返しても満足できない。

「ティ・アモ……アンジェロ」

 こんなふうに気が遠くなりそうなほど愛してもらうのは初めてで、だからこそ千晶は自分のすべてをアンジェロに捧げたいと思った。
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