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26.舞踏会3
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「あれ」
その時、後ろから新たな声が聞こえた。
体を寄せ合っていたクラウスとギルバートは、ビクッとして慌てて体を離す。
「こんな所に居たんだ~。ギルバート、父上が呼んでる」
声の主は王太子、アーサーだった。相変わらずの色男っぷりで笑顔は爽やかだが、油断ならないオーラを纏う。
「父上が?分かった。クラウス、少し待っていてくれ」
ギルバートが中に戻っていくのを、クラウスはアーサーと共にバルコニーの入り口で見ていた。
「…随分、仲良いね」
アーサーが、探るような目で俺を見下ろしながら言った。
み、見られてたのか。
「そ、そうですかね」
さっきの妙に甘い空気を思い出して、少し恥ずかしくなる。
「はは、別に覗き見しようとしてたわけじゃないよ?…俺、まさかギルバートが本気だとは思ってなかったんだよねぇ。君みたいな人をギルバートが舞踏会に誘うのかな~って、何か裏があるんじゃないかって思ってたんだけど」
…結構直球で言ってくる人だ。が、俺みたいな平凡なのがギルバートの隣にいるのは、俺も疑問だ。
「…どうやら君には本気のようだ(ボソ)」
彼は、ギルバートによく似た青い目をぐっと細めた。
そして、ふと会場に目を向ける。
「──あ、ほら見て」
指差した先には、オスカー王とギルバートがいた。その向かいには、騎士っぽい男性と、その娘だろうか。とても美しく可憐な見た目のお嬢さんがいた。どうやら、ギルバートとそのお嬢さんが挨拶しているらしい。
光に照らされて立つ美男美女。そのあまりに絵になる光景に、俺は一瞬目を奪われた。
「…可愛いよね、彼女。騎士団長のご令嬢だよ。ギルバートより少し年下だけど、昔から交流はあってね。…彼女は昔からギルバートのことが好きなんだ」
美少女は、ギルバートにニコリと笑いかけた。花が綻ぶようだ。
ズキ…
ギルバートのことを慕う生徒は今まで何十人も見てきた。それこそ、今の彼女のようにギルバートに恋するように笑いかける子も沢山。それなのに、クラウスは初めて自分がその光景を見て動揺しているのを感じた。
それは、彼女と話すギルバートも冷徹な雰囲気をとりさらって、柔らかな表情を浮かべているからだろうか。どこか、ウキウキした雰囲気のままだ。
…もしかして、あの子のことが好きなのか?
そういえば、前、『収穫祭』に誘いたい子がいると言っていたな。結局、誘われたのが俺で、それで俺はギルバートの想い人が自分だと勘違いしそうになったわけだけど…。もしかして、あの子を誘いたかったけど、誘えなかったとか…?
その考えがカチリとハマった気がして、急に心臓の辺りが痛くなるのを感じた。
「…君が、何か裏があってギルバートに近づくのか、それともギルバートに恋でもしているのか分からないけど──これ以上踏み込まない方がいい」
アーサーの目は冷たくクラウスを見下ろす。
「君には…ギルバートの心に近づくことは無理だ」
──ッ。
アーサーの言葉は、俺の中に湧いていた淡い感情に釘を刺すようだった。
何も答えられない俺を、アーサーはじっと観察するように見るだけだった。が、その目には何故か敵意ではなく、読み取れない表情を浮かべていた。
「──兄さん、クラウスと何を話しているんだ?」
その時、鋭い声がして、いつの間にかギルバートが近くに来ていたのに気がついた。
何故だか、不機嫌なオーラをまとっているような気がする。
それを見て、アーサーはニヤリとした。
「そんな顔すんなって。…ただ、挨拶させてもらっただけだよ」
「…兄さん、何か言ったんじゃないんだろうな?」
「はは、お前から警戒心を向けられる日が来るとはなぁ。そう心配するなよ。…これからの話をしていただけだ」
アーサーの目が、そうだよな?というようにコチラを見たので、クラウスはその無言の圧力を感じて頷いた。
「──それより、もう中に戻った方がいいな。ほら、そろそろ舞踏会の終わりのダンスが始まる」
その時、後ろから新たな声が聞こえた。
体を寄せ合っていたクラウスとギルバートは、ビクッとして慌てて体を離す。
「こんな所に居たんだ~。ギルバート、父上が呼んでる」
声の主は王太子、アーサーだった。相変わらずの色男っぷりで笑顔は爽やかだが、油断ならないオーラを纏う。
「父上が?分かった。クラウス、少し待っていてくれ」
ギルバートが中に戻っていくのを、クラウスはアーサーと共にバルコニーの入り口で見ていた。
「…随分、仲良いね」
アーサーが、探るような目で俺を見下ろしながら言った。
み、見られてたのか。
「そ、そうですかね」
さっきの妙に甘い空気を思い出して、少し恥ずかしくなる。
「はは、別に覗き見しようとしてたわけじゃないよ?…俺、まさかギルバートが本気だとは思ってなかったんだよねぇ。君みたいな人をギルバートが舞踏会に誘うのかな~って、何か裏があるんじゃないかって思ってたんだけど」
…結構直球で言ってくる人だ。が、俺みたいな平凡なのがギルバートの隣にいるのは、俺も疑問だ。
「…どうやら君には本気のようだ(ボソ)」
彼は、ギルバートによく似た青い目をぐっと細めた。
そして、ふと会場に目を向ける。
「──あ、ほら見て」
指差した先には、オスカー王とギルバートがいた。その向かいには、騎士っぽい男性と、その娘だろうか。とても美しく可憐な見た目のお嬢さんがいた。どうやら、ギルバートとそのお嬢さんが挨拶しているらしい。
光に照らされて立つ美男美女。そのあまりに絵になる光景に、俺は一瞬目を奪われた。
「…可愛いよね、彼女。騎士団長のご令嬢だよ。ギルバートより少し年下だけど、昔から交流はあってね。…彼女は昔からギルバートのことが好きなんだ」
美少女は、ギルバートにニコリと笑いかけた。花が綻ぶようだ。
ズキ…
ギルバートのことを慕う生徒は今まで何十人も見てきた。それこそ、今の彼女のようにギルバートに恋するように笑いかける子も沢山。それなのに、クラウスは初めて自分がその光景を見て動揺しているのを感じた。
それは、彼女と話すギルバートも冷徹な雰囲気をとりさらって、柔らかな表情を浮かべているからだろうか。どこか、ウキウキした雰囲気のままだ。
…もしかして、あの子のことが好きなのか?
そういえば、前、『収穫祭』に誘いたい子がいると言っていたな。結局、誘われたのが俺で、それで俺はギルバートの想い人が自分だと勘違いしそうになったわけだけど…。もしかして、あの子を誘いたかったけど、誘えなかったとか…?
その考えがカチリとハマった気がして、急に心臓の辺りが痛くなるのを感じた。
「…君が、何か裏があってギルバートに近づくのか、それともギルバートに恋でもしているのか分からないけど──これ以上踏み込まない方がいい」
アーサーの目は冷たくクラウスを見下ろす。
「君には…ギルバートの心に近づくことは無理だ」
──ッ。
アーサーの言葉は、俺の中に湧いていた淡い感情に釘を刺すようだった。
何も答えられない俺を、アーサーはじっと観察するように見るだけだった。が、その目には何故か敵意ではなく、読み取れない表情を浮かべていた。
「──兄さん、クラウスと何を話しているんだ?」
その時、鋭い声がして、いつの間にかギルバートが近くに来ていたのに気がついた。
何故だか、不機嫌なオーラをまとっているような気がする。
それを見て、アーサーはニヤリとした。
「そんな顔すんなって。…ただ、挨拶させてもらっただけだよ」
「…兄さん、何か言ったんじゃないんだろうな?」
「はは、お前から警戒心を向けられる日が来るとはなぁ。そう心配するなよ。…これからの話をしていただけだ」
アーサーの目が、そうだよな?というようにコチラを見たので、クラウスはその無言の圧力を感じて頷いた。
「──それより、もう中に戻った方がいいな。ほら、そろそろ舞踏会の終わりのダンスが始まる」
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