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 アランとカイが恋人になったと聞いて、ジャックもクララもアンナも、やっとか!と開口一番に叫んだ。

 …なぜだ。

 俺だけがアランの気持ちに気づいていなかったみたいで、なんとも申し訳ない気持ちになる。

 俺とアランは、これから世界を旅しながら、冒険者を続けるつもりだ。冒険者と言っても、誰かを倒すのではなく、人や魔族を助ける旅だ。
 色んな所へ行って、色んな物を食べて…楽しみは尽きない。


 
 ──だが、俺には、最後に一つやらなければならないことがある。



「アラン、ちょっといいか?」

 旅立つ前、カイはアランと共に暮らしている『ミッドシティ』の家でくつろぐ彼に、声をかけた。

「ん?どうしたの?」

 付き合ってからのアランは前にも増してカイに甘々で、今も両手を広げて抱き寄せてくる。

 …火が出るくらい恥ずかしい。

 ってそうじゃない。

「…アランに伝えなくちゃいけないことがある」
「…待って…。別れたいとか言わないよね?」

 俺があまりにただならぬ顔をしていたからだろうか。アランが急に低い声で言うと、手首を掴んでくる。

 いや、目怖いって!違う!違うから!

「いや、違うって!…あのな、その…」

 アランが今度は心配そうに見つめてくる。

「…俺の言うこと信じてくれるか…?」
「信じるよ、もちろん」
「…ありがと。──実は、俺さ、前世の記憶があるんだ」

 アランは思いがけない話に目をぱちくりさせた。

「前世の?」
「ああ。俺は、前世で、サラリーマンって職業に就いてたんだが、亡くなってしまって、この世界に生まれ変わったんだ。──それで、この世界は、俺が前世でやっていたゲームにそっくりな世界なんだ」
「…ゲーム…」
「…ああ、信じられないだろ?でも、俺は、自分が裏切って殺される運命なんだって知ってた。正確に言うと、途中で思い出したんだ。それまでは忘れていた。──剣士学校の試験に合格した時、あの時に、全てを思い出したんだ。──それで、アランを裏切らないって誓ったんだ。最初は自分のためだったけど、段々、君のことが好きになって…君を守りたいから裏切らないって決意したんだ」

 カイは恐る恐るアランを見たが、アランは想像していた表情とは違い、真剣にカイの話を聞いていた。

「信じてもらえなくてもいいんだ…ただ、アランには全て知って欲しくて…」
「信じるよ。驚いたけど、カイが言うことは嘘じゃないから」

 アランはきっぱりと言う。
 今度はカイが驚く番だ。

「でもこんな突拍子もないこと…」
「…実はさ、カイが思い出したらしい、その試験の日、俺、カイがなんか変わったなって思ったんだよ。今、納得した。カイはその時、思い出したんだね。──それに、時々、カイが同い年と思えない時があるんだ。もしかして、カイは前世だと俺より年上なの?」
「…わ、わかる?そう、俺、30歳だったから」
「…30歳…そうなんだ…可愛いね。年上なの萌えるな」
(何に萌えるんだ…?)
「じゃあ俺は、同年代のカイも、年上のカイも同時に堪能できるんだね!」
「…いや、お前のポジティブさはよく分からん…」
「そうか…話してくれてありがとう。…前世でも、俺は君を絶対見つけただろうな」

 …アラン。

「…ありがとうな。でも、この世界でアランと出会えたのが嬉しい」

 アランはそれを聞くと、この上なく綺麗に笑った。
 そのまま抱きしめられ、2人の影が重なる。

 

 俺は、この世界に転生して幸せだ。 




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